説明

制御装置、リーチ式フォークリフトおよびプログラム

【課題】運転者に違和感を与えたり危険を及ぼしたりする可能性のある状態であることを、事前に運転者へ通知できるようにする。
【解決手段】操舵モードをロックモードへと切り替えるための操作が運転者により行われた際(s120「YES」)、操舵輪53の操舵角がロック角以上になっていると、切替条件が満たされていないとしてロックモードへの切替を保留するとともに(s130「NO」)、切替条件が満たされていないことを通知することができる(s140)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトの動作を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトにおいては、操舵輪を操舵すべき操舵量を運転者に通知すべく、目標となる操舵角までのステアリング操作に連動して表示態様が変化するインジケータ(回転指示量、2つの記号)を表示部に表示させ、運転者によるステアリング操作を支援するものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3317394号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フォークリフトの中には、操舵輪の操舵角を規定の操舵角(例えば最小旋回角度など)で維持すべく、その操舵角へと向かわせるためのアシストトルクを付与するなどして、操舵輪の操舵角を維持する制御を行うものがあるが、上記従来技術を含め、この制御に際して運転者に通知を行うものはない。
【0005】
この種の制御では、例えば、ステアリングに対して制御前の操作方向と異なる方向にアシストトルクが付与されるような状況下において、ステアリングが運転者の意図と異なる挙動を示すことになり、運転者に対して違和感を与えるだけでなく、ステアリングの急激な変位が運転者に危険を及ぼす可能性すらあるため、そのようなことが起こらないように事前の通知を行うことが望ましい。
【0006】
ここでいう危険には、例えば、操舵輪に追従したステアリングの急激な変位に押されて運転者が運転席から脱落する、ステアリングと他の部位との間に体の一部を挟む、フォークリフトが急激な進行方向の変化に伴って周囲に衝突する、といった事態が想定される。
【0007】
このように、上記操舵輪の操舵角を維持する制御を行う構成においては、運転者に違和感を与えたり危険を及ぼしたりする可能性があるため、そのような状態であることを事前に運転者へ通知し、そのことを認識させられるようにすることが望ましい。
【0008】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、運転者に違和感を与えたり危険を及ぼしうる状態であることを、事前に運転者へ通知できるようにするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた第1の構成(請求項1)に係る発明は、フォークリフトの動作を制御する制御装置であって、運転者の操作を受けて、フォークリフトにおける操舵輪の操舵に関する操舵モードを、あらかじめ定められた操舵角であるロック角を維持するように制御するロックモード、および、該制御を行わない通常モードのいずれか一方へと切り替えるモード切替手段と、前記操舵モードを前記ロックモードへと切り替えるための操作が受け付けられた際、その時点における操舵輪の操舵角が前記ロック角以上となっていない、という切替条件が充足されているか否かを判定する条件判定手段と、前記条件判定手段により切替条件が充足されていないと判定された場合に、その旨を運転者に通知する未充足通知手段と、を備えている。
【0010】
そして、前記モード切替手段は、前記操舵モードを前記ロックモードへと切り替えるための操作が受け付けられた以降、前記条件判定手段により切替条件が充足されていると判定されるまで、操舵モードの前記ロックモードへの切替を行わない。
【0011】
この構成に係る制御装置であれば、操舵モードをロックモードへと切り替えるための操作が運転者により行われた際、操舵輪の操舵角がロック角以上になっていると、切替条件が満たされていないとしてロックモードへの切替を保留するとともに、切替条件が満たされていないことを通知することができる。
【0012】
ロックモードは、操舵輪の操舵角をロック角で維持すべく制御する操舵モードであり、操舵角がロック角以上となったままで制御が開始されると、操舵角がロック角に向けて戻されるため、運転者に対し、操舵輪に追従したステアリングの変位により違和感を与えるだけでなく、危険を及ぼしてしまう可能性がある。
【0013】
ところが、上記構成では、操舵輪の操舵角がロック角以上になっていると、ロックモードへの切替を保留したうえで、その切替条件が満たされていないことを通知することができるため、その切替により違和感や危険を生むことを防止しつつ、その旨を事前に通知して切替が行われないことを運転者に認識させることができる。
【0014】
上記構成において、「切替条件」とは、切替操作受付時点における操舵輪の操舵角がロック角以上になっていない、というものであるが、その時点におけるステアリングの操作方向によっては、運転者に違和感を与えたり危険を及ぼさないこともありうるため、操舵角がロック角以上になっていても例外的に切替条件を充足する場合があってもよい。
【0015】
具体的な例としては、その時点においてステアリングが操作されていない、つまり駆動輪が変位していない状況や、ステアリングの操作により駆動輪がロック角から離れつつある状況では、ロックモードとなった以降、操舵輪の操舵方向が運転者の意図と異なる可能性が高いため、この場合には切替条件を充足するものと判定すべきではない。
【0016】
しかし、その時点におけるステアリングの操作により駆動輪がロック角に近づきつつある状況では、ロックモードとなった以降でも、操舵輪の操舵方向が運転者の意図と一致することになると考えられるため、その場合、切替条件を充足しているものとしてロックモードに切り換えたとしても、違和感を与えたり危険を及ぼす可能性が低い。よって、ステアリングの操作により駆動輪がロック角に近づく状況については、例外的に切替条件を充足していると判定することとしてもよい。
【0017】
このための構成としては、上記構成を以下に示す第2の構成(請求項2)のようにするとよい。
第2の構成は、前記操舵モードを前記ロックモードへと切り替えるための操作が受け付けられた際、その時点において操舵輪の操舵されている方向を判定する方向判定手段、を備えている。
【0018】
そして、前記条件判定手段は、前記操舵モードを前記ロックモードへと切り替えるための操作が受け付けられた際、その時点における操舵輪の操舵角が前記ロック角以上となっている場合であっても、前記方向判定手段により判定された操舵方向が前記ロック角へと近づく方向であれば、前記切替条件を充足していると判定する。
【0019】
この構成であれば、操舵角がロック角以上になっていたとしても、その時点における操舵輪の操舵方向がロック角に近づく方向であれば、必ずしも運転者に違和感を与えたり危険を及ぼすとはいえないものとして、例外的に操舵モードをロックモードへと切り替えることができる。
【0020】
なお、この構成では、操舵輪の操舵方向がロック角へと近づく方向であるうえに、操舵されている速度が一定以下である場合に、例外的に切り換えることとしてもよく、操舵輪の操舵方向と無関係に操舵されている速度が一定以下である場合に例外的に切り換えることとしてもよい。
【0021】
また、上記各構成では、切替条件が充足されるまでロックモードへの切替が保留されるが、その後、切替条件が充足された場合、そのことをもって直ちにロックモードへの切替を実行してもよいし、別の条件が追加的に充足されたことをもってロックモードへの切替を実行するようにしてもよい。
【0022】
ここで、ロックモードへの切替を実行するための上述した別の条件としては、どのような条件であってもよいが、例えば、運転者により、再度、操舵モードをロックモードへと切り替えるための操作が行われたこと、が考えられる。
【0023】
このためには、例えば、上記各構成を以下に示す第3の構成(請求項3)のようにするとよい。
第3の構成において、前記モード切替手段は、前記条件判定手段により切替条件が充足されていないと判定された以降、該切替条件が充足されていると判定された場合に、再度、前記操舵モードを前記ロックモードへと切り替えるための操作が受け付けられた際に、操舵モードを前記ロックモードへと切り替える。
【0024】
この構成であれば、ロックモードへの切替は、切替条件が充足するまで保留されたのち、再度の操作を待って実行されるため、運転者は、通知を受けた際、ロック角未満となるまで操舵角を戻し、準備が整ってから再度同じ操作を行うことにより、意図的にロックモードへの切替を実行させることができる。
【0025】
なお、この再度の操作までに切替条件が充足されなくなった場合には、当然、ロックモードへの切替は保留されることとなる。
ところで、上述したロックモードでは、ロック角以上の操舵を妨げる制御を行うことになるが、その具体的な制御方法については特に限定されない。
【0026】
例えば、ステアリングの操作とは無関係に操舵輪の操舵角をロック角に近づける方向へとアシストトルクを付与し、また、操舵輪の操舵角をロック角外とするようなステアリングの操作に対して反対方向のアシストトルクを付与する、といった制御が考えられる。
【0027】
この後者のためには、例えば、以下に示す第4の構成(請求項4)のようにすることが考えられる。
第4の構成において、前記ロックモードでは、操舵輪の操舵角を前記ロック角外とする方向へのステアリングの操作に対し、該方向と反対方向のアシストトルクを付与することにより、前記ロック角を維持する。
【0028】
この構成であれば、操舵輪の操舵角をロック角外とするようなステアリング操作に対し、その反対方向へのアシストトルクを付与すべく制御することにより、操舵角をロック角で維持することができる。
【0029】
また、上記各構成において、切替条件が充足されていない旨の通知は、切替条件の未充足と判定されたときにのみ行われてもよいが、切替条件が未充足となっている間、継続的に行われることとしてもよい。
【0030】
この後者のように通知を行うためには、上記各構成を以下に示す第5の構成(請求項5)のようにすることが考えられる。
第5の構成において、前記未充足通知手段は、前記条件判定手段により切替条件が充足されていないと判定されている間にわたり、該切替条件が満たされていない旨を運転者に通知する。
【0031】
この構成であれば、切替条件が充足されていない旨を、切替条件が未充足となっている間にわたって継続的に通知することができる。
また、上記各構成において、運転者への通知を行うための具体的手段については特に限定されない。
【0032】
例えば、通知用メッセージや通知用画像・図形の表示部への表示・ランプの点灯による構成、メッセージの音声での出力、振動による構成などが考えられる。
これらのうち、表示部への表示・ランプの点灯により通知を行うためには、上記各構成を以下に示すようにするとよい。
【0033】
例えば、前記未充足通知手段は、通知用メッセージや通知用画像・図形の表示部への表示、または、ランプの点灯によって運転者への通知を行う、といった構成である。
この構成であれば、運転者への通知をメッセージや画像・図形の表示またはランプの点灯により行うことができる。
【0034】
また、メッセージの音声での出力により通知を行うためには、上記各構成を以下に示すようにするとよい。
例えば、前記未充足通知手段は、メッセージの音声での出力によって運転者への通知を行う、といった構成である。
【0035】
この構成であれば、運転者への通知を音声メッセージの出力により行うことができる。
また、振動により通知を行うためには、上記各構成を以下に示すようにするとよい。
例えば、フォークリフトの運転席において運転者と接触する接触領域に設けられ、外部からの指令を受けて振動を発する振動発生部、を備えており、前記未充足通知手段は、前記振動発生部を振動させることによって運転者への通知を行う、といった構成である。
【0036】
この構成であれば、運転者への通知を振動発生部の振動により行うことができる。
また、上記各構成において、ロックモードでは、操舵輪の操舵角がロック角で維持されるため、その操舵角の検出値がロック角を大きく外れているような場合、その制御に異常が発生しているといえる。この場合、運転者がロックモードに入っていないのに入っていると思い旋回すると、意図通りの旋回をせずに、周辺のものに衝突させてしまうようなことも想定され、危険な状態である。そのため、このような異常発生は警告できるようにしておくことが望ましく、このためには、上記各構成を以下に示す第6の構成(請求項6)のようにするとよい。
【0037】
第6の構成においては、前記モード切替手段によりロックモードへと切り替えられている状態において、前記操舵輪の操舵角をチェックする操舵角チェック手段と、前記操舵角チェック手段によりチェックされている操舵角が、前記ロック角を所定のしきい値以上外れた角度となっている場合に、前記ロックモードの制御に異常が発生している旨の警告を実施する異常警告手段と、を備えている。
【0038】
この構成であれば、ロックモードにおいて操舵輪の操舵角がロック角を大きく外れたような場合に、そのロックモードでの制御に異常が発生したものとして、その旨を警告することができる。
【0039】
また、上記課題を解決するため第7の構成(請求項7)は、第1〜第5のいずれかの構成に係る制御装置を搭載してなることを特徴とするリーチ式フォークリフトである。
この構成であれば、上記各構成と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
また、上記課題を解決するためには、コンピュータを、第1〜第9のいずれかの構成に係る制御装置として機能させるためのプログラムとしてもよい。
このプログラムにより機能するコンピュータは、上記各構成と同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
なお、上述したプログラムは、コンピュータシステムによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものであって、各種記録媒体や通信回線を介して制御装置またはフォークリフトや、これを利用するユーザに提供されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】フォークリフト全体の斜視図
【図2】ステアリング装置の内部を示すブロック図
【図3】操舵モード切替処理を示すフローチャート
【図4】ロック角を示す図
【図5】異常警告処理を示すフローチャート
【図6】別の実施形態における操舵モード切替処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0043】
(1)基本構成
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
フォークリフト1は、荷役作業に用いられるものであり、図1に示すように、本体2の前方に荷役機構3が設けられ、本体2の後方に運転席4およびステアリング装置5が設けられている。
【0044】
このステアリング装置5は、本体2の後方側において運転席4と隣接する位置に搭載されたものであり、図2に示すように、運転者の操作を受けるステアリング51、フォークリフト1を移動させるべく駆動される操舵輪53、操舵輪53を支持する駆動支持部55、操舵輪53を回転させるための駆動モータ59、ステアリング51の操作トルクを操舵輪53に伝達させて操舵輪53を操舵する操舵伝達機構61、ステアリング51による操舵輪53の操舵をアシストするアシストモータ63、アシストモータ63を動作させる動作回路65、ステアリング51の操作トルクを検出するトルクセンサ71、操舵輪53の操舵角を検出する舵角センサ73、ステアリング装置5全体の動作を制御する制御装置であるコントローラ75、運転者による操作を受け付ける操作部77などを備えている。
【0045】
これらのうち、駆動支持部55は、操舵輪53が操舵される方向に沿って回転可能な状態で本体2に固定されており、その回転方向に駆動支持部55を取り囲む操舵ギヤ57が形成されている。
【0046】
また、アシストモータ63は、操舵伝達機構61により伝達されるステアリング51の操作トルクに応じて、駆動支持部55の操舵ギヤ57と噛み合わされたギヤ(図示されない)を回転させることにより、この操舵ギヤ57を介して、駆動支持部55および駆動支持部55に支持された操舵輪53を操舵する。なお、以降、このアシストモータ63が操舵輪53を操舵する際に付与するトルクをアシストトルクという。
【0047】
また、操舵伝達機構61は、ステアリング51から駆動支持部55に向けて延びるロッド状の部材であり、操舵輪53側の端部(下端)に、駆動支持部55の操舵ギヤ57と噛み合わされた伝達ギヤ67が設けられており、ステアリング51の操作トルクが、この伝達ギヤ67および操舵ギヤ57を介して、駆動支持部55および駆動支持部55に支持された操舵輪53に伝達される。
(2)操舵モード切替処理
ここで、コントローラ75が内蔵メモリに格納されたプログラムに従って実行する操舵モード切替処理の処理手順を図3に基づいて説明する。この操舵モード切替処理は、ステアリング装置5が起動した以降、繰り返し実行される。
【0048】
この操舵モード切替処理が起動されると、まず、フォークリフト1における操舵輪53の操舵に関する操舵モードが通常モードに設定される(s110)。
本実施形態では、操舵モードとして、ステアリング51の操作トルクに応じた大きさでアシストトルクを発生させるべく制御する通常モードと、あらかじめ定められた操舵角であるロック角で操舵輪53が維持されるように制御するロックモードと、を選択的に設定できるように構成されており、このs110では、コントローラ75の内蔵メモリに格納されている操舵モード用の変数に、通常モードである旨の値をセットすることにより、操作モードの通常モードへの設定が行われる。
【0049】
なお、本実施形態では、図4に示すように、ロックモードにおける「ロック角」として、フォークリフト1が最も小さい旋回半径で旋回する場合の操舵角として定められた最小旋回角度(θ1・θ2)と、フォークリフト1が直角積み付けに伴う旋回をするのに適した操舵角として定められた直角積付角度(θ3・θ4)と、を含む複数種類の操舵角が、それぞれフォークリフト1の直進方向を基準に定められており、これら操舵角の中から、操作部77の操作を受けて任意に選択(設定)された操舵角がロック角として以降の処理に用いられる。
【0050】
こうして、操舵モードが通常モードに設定されて以降、コントローラ75は、トルクセンサ71により検出された操作トルクに応じた大きさの操舵トルクがアシストモータ63により発生されるよう、動作回路65への指令を実行するようになる。
【0051】
次に、操作部77を介して、操舵モードをロックモードへと切り換えるための操作が行われるまで待機状態となり(s120:NO)、その後、ロックモードへと切り替えるための操作が行われたら(s120:YES)、ロックモードへの切替条件が充足されているか否かがチェックされる(s130)。
【0052】
ここでは、該当する操作が受け付けられた時点における操舵輪53の操舵角がロック角以上となっていない、または、ロック角以上となっていても操舵輪53の操舵方向が操舵角をロック角へと近づける方向である場合に、切替条件が充足されていると判定される。
【0053】
なお、本実施形態では、舵角センサ73による検出値の推移を監視するように構成されているため、このs130では、一定期間における検出値の推移から操舵輪53の操舵方向および操舵速度が推定され、操舵角が所定速度以上でロック角に近づいていると推定される場合に、操舵方向が操舵角をロック角へと近づける方向であると判定される。
【0054】
上記s130で切替条件が充足していないと判定された場合(s130:NO)、切替条件が満たされていない旨が運転者に通知された後(s140)、プロセスがs120へと戻る。この後のs120では、ロックモードへと切り替えるための操作が解除されていないかがチェックされることとなる。
【0055】
このs140では、操作部77に設けられた表示パネルへの通知用メッセージや通知用画像・図形の表示、ランプの点灯、および、スピーカーからの音声(ブザー音または通知用メッセージ)の出力、といった手段により、運転者への通知が行われる。
【0056】
こうして、ロックモードへと切り替えるための操作が行われている状態で(s120:YES)、切替条件が充足するまでの間は(s130:NO)、切替条件が充足していない旨の通知が継続的に行われ(s140)、以降の処理(s150)による操舵モードのロックモードへの切替が保留される。
【0057】
その後、切替条件が充足した場合には(s130:YES)、操舵モードがロックモードに設定される(s150)。ここでは、コントローラ75の内蔵メモリに格納されている操舵モード用の変数に、ロックモードである旨の値をセットすることにより、操作モードのロックモードへの設定が行われる。
【0058】
こうして、操舵モードがロックモードに設定されて以降、コントローラ75は、ロック角外(ロック角を中心とする一定の角度範囲外としてもよい;以下同様)にまで操舵輪53が操舵されている場合、ステアリング51の操作とは無関係に、操舵輪53の操舵角をロック角に近づける方向へアシストトルクを付与し、また、操舵輪53の操舵角をロック角外とするようなステアリング51の操作に対して反対方向のアシストトルクを付与することにより、操舵角がロック角で維持されるよう、動作回路65への指令を実行するようになる。
【0059】
こうして、操舵モードがロックモードに設定された以降、操作部77を介して、操舵モードを通常モードへと切り換え直すための操作が行われるまで待機状態となり(s160:NO)、その操作が行われたら(s160:YES)、プロセスがs110へと戻り、操舵モードが通常モードに設定し直された後、上記s120以降の処理が繰り返される。
(3)異常警告処理
続いて、コントローラ75が内蔵メモリに格納されたプログラムに従って実行する異常警告処理の処理手順を図5に基づいて説明する。この異常警告処理は、ステアリング装置5が起動した以降、繰り返し実行される。
【0060】
この異常警告処理が起動されると、まず、操舵モード切替処理にてロックモードへの切替が行われるまで待機状態となる(s310:NO)。
その後、ロックモードへの切替が行われた場合(s310:YES)、操舵輪53の操舵角が、ロック角を所定のしきい値以上離れた角度となっているか否かがチェックされる(s350)。このs350では、ロック角として維持されるべき角度範囲を「しきい値」とし、その角度範囲から離れているか否かをチェックすることになる。
【0061】
このs350で、操舵輪53の操舵角が、ロック角をしきい値以上離れた角度になっていると判定された場合には(s350:YES)、ロックモードであるにも関わらず操舵輪53の操舵角がロック角で維持できていないことになるため、プロセスがs340へと移行し、ロックモードによる制御に異常が発生した旨の警告が実施される(s340)。
【0062】
このs340では、操作部77に設けられた表示パネルへの警告用メッセージや警告用画像・図形の表示、ランプの点灯、および、スピーカーからの音声(警告音または警告用メッセージ)の出力、といった手段により、警告が実施される。
【0063】
この警告の実施後は、上記と同様、プロセスが上記s350へと戻り、操舵輪53の操舵角がチェックされる(s350)。
また、上記s350で、操舵輪53の操舵角が、ロック角をしきい値以上離れた角度になっていない、つまりロック角からしきい値範囲内の角度になっていると判定された場合には(s350:NO)、操舵モード切替処理にて通常モードへの切替が行われていなければ(s360:NO)、プロセスがs350へと戻る一方、その切替が行われていれば(s360:YES)、プロセスがs310へと戻り、以降の処理が繰り返される。
(4)作用効果
上記実施形態におけるフォークリフト1のコントローラ75であれば、操舵モードをロックモードへと切り替えるための操作が運転者により行われた際(図3のs120)、操舵輪53の操舵角がロック角以上になっていると、切替条件が満たされていないとしてロックモードへの切替を保留するとともに(同図s130「NO」)、切替条件が満たされていないことを通知することができる(同図s140)。
【0064】
ロックモードは、操舵輪53の操舵角をロック角で維持すべく制御する操舵モードであり、操舵角がロック角以上となったままで制御が開始されると、操舵角がロック角に向けて戻されるため、運転者に対し、操舵輪53に追従したステアリング51の変位により違和感を与えるだけでなく、危険を及ぼしてしまう可能性がある。
【0065】
ところが、上記実施形態では、操舵輪53の操舵角がロック角以上になっていると、ロックモードへの切替を保留したうえで、その切替条件が満たされていないことを通知することができるため、その切替により違和感や危険を生む可能性のある状態になることを防止しつつ、その旨を事前に通知して運転者に認識させることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、操舵角がロック角以上になっていたとしても、その時点における操舵輪53の操舵方向がロック角に近づく方向であれば、例外的に切替条件を充足すると判定し(図3のs130「YES」)、操舵モードをロックモードへと切り替えている(同図s150)。これは、操舵角がロック角以上になっていたとしても、操舵輪53の操舵方向がロック角に近づく方向であれば、必ずしも運転者に違和感を与えたり危険を及ぼすとはいえないからである。
【0067】
このように、ステアリング51の操作により操舵輪53がロック角に近づきつつある状況では、ロックモードとなった以降でも、操舵輪53の操舵方向が運転者の意図と一致していると考えられる。そのため、その場合については、切替条件を充足しているものとしてロックモードに切り換えたとしても、違和感を与えたり危険を及ぼす可能性が低い。こうして、より運転者の意図を反映させた制御を行うことができる。

また、上記実施形態において、ロックモードへの切替は、切替条件が充足するまで保留された後(図3のs130「NO」)、その充足をもって実行されるため(同図s150)、運転者は、通知を受けた際、ロック角未満となるまで操舵角を戻すことにより、ロックモードへの切替を実行させることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、操舵輪53の操舵角をロック角外とするようなステアリング51の操作に対し、その反対方向へのアシストトルクを付与すべく制御することにより、操舵角をロック角で維持することができる。
【0069】
また、上記実施形態では、切替条件が充足されていない旨を、切替条件が未充足となっている間にわたって継続的に通知することができる(図3のs130「NO」→s140)。
【0070】
また、上記実施形態では、運転者への通知をメッセージなどの表示・ランプの点灯、または、音声メッセージの出力により行うことができる(図3のs140)。
また、上記実施形態では、ロックモードにおいて操舵輪53の操舵角がロック角を大きく外れたような場合に(図5のs350「YES」)、そのロックモードでの制御に異常が発生したものとして、その旨を警告することができる(同図s340)。
(5)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0071】
まず、上記実施形態では、切替条件が充足されていない旨の通知が、切替条件が未充足となっている間、継続的に行われるように構成されている(図3のs130「NO」→s140)。しかし、この通知については、切替条件の未充足と判定されたときにのみ行われるようにしてもよい。
【0072】
このための構成としては、例えば、操舵モード切替処理において、図6に示すように、s130で切替条件が充足していないと判定されたら(s130「NO」)、切替条件が充足していないことの通知を行った後で(s140)、通常モードへと切り替えるための操作が行われていないことを条件に(s210:NO)、あらためて切替条件を充足しているか否かの判定を行い(s220)、充足していると判定された場合に(s220:YES)、後述のs230、s240を経てs150へと移行し、ロックモードへの切替を行うようにする、といったことが考えられる。
【0073】
なお、この構成において、s210で通常モードへの切替が行われた場合には(s210:YES)、プロセスがs120へと戻るようにし、s220で切替条件が充足していないと判定された場合には(s220:NO)、プロセスがs140へと戻るようにするとよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、切替条件が充足された後、直ちに操舵モードをロックモードへと切り替えるように構成されているが、この切替に先立ち、切替条件が充足された旨を通知するように構成してもよい。
【0075】
このための構成としては、例えば、操舵モード切替処理において、図6に示すように、上述したs220で切替条件を充足していると判定された場合に(s220:YES)、切替条件が充足されたことの通知を行ってから(s230)、s150へと移行してロックモードへの切替を行うようにする、といったことが考えられる。
【0076】
このように構成すれば、切替条件が充足されていると判定された場合には、その旨についても通知することができる。そのため、運転者にとっては、ロックモードへの切替が可能になった際に、そのような状態になったことを認識することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、切替条件が充足されるまでロックモードへの切替が保留された後、切替条件が充足されたことをもってロックモードへの切替を実行するように構成されている(図3のs130「YES」→s150)。しかし、このロックモードへの切替は、別の条件が追加的に充足されたことをもって実行するようにしてもよく、例えば、運転者により再度操舵モードをロックモードへと切り替えるための操作が行われたこと、を条件とすることが考えられる。
【0078】
このための構成としては、例えば、操作モード切替処理において、図6に示すように、上述したs230で通知を行った後、一定期間内に運転者からの再度の操作が受け付けられた場合にのみ(s240:YES)、s150へ移行してロックモードへの切替を行うようにし、一定期間内に再度の操作が受け付けられない場合には(s240:NO)、プロセスがs120へと移行する、ようにすることが考えられる。なお、この再度の操作までに切替条件が充足されなくなった場合には、s120ではなく、s140へと戻るようにしてもよい。
【0079】
この構成であれば、ロックモードへの切替は、切替条件が充足するまで保留されたのち、再度の操作を待って実行されるため(s240「YES」→s150)、運転者は、通知を受けた際、ロック角まで操舵角を戻し、準備が整ってから再度同じ操作を行うことにより、意図的にロックモードへの切替を実行させることができる。
【0080】
また、上記実施形態では、運転者への通知をメッセージなどの表示・ランプの点灯、または、音声メッセージの出力により実施している(図3のs140)。
しかし、運転者への通知を行うための具体的手段については上記のものに限定されず、例えば、振動により通知を行う構成を考えることができる。
【0081】
具体的には、フォークリフト1の運転席において運転者と接触する接触領域に設けられ、外部からの指令を受けて振動を発する振動発生部として、ステアリング51や専用の部品などを用意し、これらを振動させることにより運転者への通知を行うことが考えられる。
【0082】
ここで、振動発生部としてステアリング51を採用する場合には、周期的に変動するアシストトルクを付与することにより、ステアリング51を振動させることとすればよい。
この構成であれば、運転者への通知を振動発生部の振動により行うことができる。
(5)本発明との対応関係
以上説明した実施形態において、操舵モード切替処理のs110,s150が本発明におけるモード切替手段であり、同処理のs130が本発明における条件判定手段および方向判定手段であり、同処理のs140が本発明における未充足通知手段である。
【符号の説明】
【0083】
1…フォークリフト、2…本体、3…荷役機構、4…運転席、51…ステアリング、53…操舵輪、55…駆動支持部、57…操舵ギヤ、59…駆動モータ、5…ステアリング装置、61…操舵伝達機構、63…アシストモータ、65…動作回路、67…伝達ギヤ、71…トルクセンサ、73…舵角センサ、75…コントローラ、77…操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトの動作を制御する制御装置であって、
運転者の操作を受けて、フォークリフトにおける操舵輪の操舵に関する操舵モードを、あらかじめ定められた操舵角であるロック角を維持するように制御するロックモード、および、該制御を行わない通常モードのいずれか一方へと切り替えるモード切替手段と、
前記操舵モードを前記ロックモードへと切り替えるための操作が受け付けられた際、その時点における操舵輪の操舵角が前記ロック角以上となっていない、という切替条件が充足されているか否かを判定する条件判定手段と、
前記条件判定手段により切替条件が充足されていないと判定された場合に、その旨を運転者に通知する未充足通知手段と、を備え、
前記モード切替手段は、前記操舵モードを前記ロックモードへと切り替えるための操作が受け付けられた以降、前記条件判定手段により切替条件が充足されていると判定されるまで、操舵モードの前記ロックモードへの切替を行わない
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記操舵モードを前記ロックモードへと切り替えるための操作が受け付けられた際、その時点において操舵輪の操舵されている方向を判定する方向判定手段、を備えており、
前記条件判定手段は、前記操舵モードを前記ロックモードへと切り替えるための操作が受け付けられた際、その時点における操舵輪の操舵角が前記ロック角以上となっている場合であっても、前記方向判定手段により判定された操舵方向が前記ロック角へと近づく方向であれば、前記切替条件を充足していると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記モード切替手段は、前記条件判定手段により切替条件が充足されていないと判定された以降、該切替条件が充足されていると判定された場合に、再度、前記操舵モードを前記ロックモードへと切り替えるための操作が受け付けられた際に、操舵モードを前記ロックモードへと切り替える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ロックモードでは、操舵輪の操舵角を前記ロック角外とする方向へのステアリングの操作に対し、該方向と反対方向のアシストトルクを付与することにより、前記ロック角を維持する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制御装置。
【請求項5】
前記未充足通知手段は、前記条件判定手段により切替条件が充足されていないと判定されている間にわたり、該切替条件が満たされていない旨を運転者に通知する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御装置。
【請求項6】
前記モード切替手段によりロックモードへと切り替えられている状態において、前記操舵輪の操舵角をチェックする操舵角チェック手段と、
前記操舵角チェック手段によりチェックされている操舵角が、前記ロック角を所定のしきい値以上外れた角度となっている場合に、前記ロックモードの制御に異常が発生している旨の警告を実施する異常警告手段と、を備えている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の制御装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の制御装置を搭載してなる
ことを特徴とするリーチ式フォークリフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−49387(P2013−49387A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189408(P2011−189408)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000183222)住友ナコ マテリアル ハンドリング株式会社 (39)
【Fターム(参考)】