説明

電動パワーステアリング装置

【課題】ラック&ピニオンギアに過負荷を作用させることなく、ラックエンド付近でアシストを制限する電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【解決手段】操向ハンドル3からの入力により生じる操舵トルクに応じて、電動機4が補助トルクを発生し、補助トルクを前輪1L,1Rのステアリング系に伝達する電動パワーステアリング装置100Aにおいて、操舵トルクを検出するトルクセンサ110と前輪のステアリング系に補助トルクを伝達する補助トルク伝達機構との間に、操向ハンドル3の左右への回転操作量を規制する回転終端機構6Aを設け、転舵角がラックエンド角になっているときに、それ以上の操向ハンドルの切り増し操作をしても、ピニオン軸の回転を阻止することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のステアリング系に電動機による操舵補助力を付与するようにした電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置は、電動機が操舵トルクの大きさに応じた補助トルクを発生し、この補助トルクをステアリング系に伝達して、運転者が操舵する操舵力を軽減するものである。
【0003】
一般的な電動パワーステアリング装置では、一定以上のステアリング用車輪の転舵を阻止するため、ラック軸にラックエンドが、ラック軸を収容するラックハウジング部にはハウジングエンドが設けられ、このラックエンドとハウジングエンドで構成するラックエンド機構によって、操向ハンドルを中立位置から左右にそれぞれ所定の角度まで操舵して、ステアリング用車輪の転舵角が最大転舵角(以下、ラックエンド角と称する)に達すると、左右一方側のラックエンド機構においてラックエンドとハウジングエンドが当接して、それ以上は同方向にステアリング用車輪を転舵できないようになっている。
【0004】
このため、操向ハンドルがラックエンド角近傍まで操舵されているにも拘わらず、操向ハンドルに大きな操舵トルクが加えられて、ラックエンド角に到達すると、ステアリング用車輪を転舵できないので、運転者は更に大きな操舵トルクを入力する。この操舵トルクに応答して、電動機からステアリング系に大きな操舵補助力が与えられることにより、ステアリング系の一部を構成するラック&ピニオンギアに大きな過負荷が加わって、大きな衝撃音を発生したり、破損や変形等を生じたりする可能性がある。そして、更に、電動機の慣性モーメントによる回転運動エネルギにより、電動機の回転がオーバーシュートすることでも、大きな過負荷が、ラック&ピニオンギアに作用するので、ラック&ピニオンギアに破損や変形等が生じる可能性がある。
【0005】
このような問題を回避する装置として、例えば〔特許文献1〕に開示されているものがある。〔特許文献1〕に記載の装置では、操向ハンドルの操舵角(操作量)がラックエンド角近傍の所定角度に達した後、目標電流値を転舵角の増加に伴って減少させて行き、転舵角がラックエンド角に達したときに目標電流値を零にすることにより、ラックエンド機構に大きな過負荷が加わることを防止するようにしている。
【0006】
しかしながら、〔特許文献1〕に記載の装置では、操向ハンドルがラックエンド角近傍で反対方向へ切り返された場合に、転舵角が所定角度以下になるまでの間、目標電流値に制限が加えられるため、操舵トルクに応じた十分な操舵補助力をステアリング系に与えることができず、操向ハンドルが重くなり、運転者が操作できる実質的なラックエンド角が小さくなり、機械的に設けられたラックエンド角まで操向ハンドルが切れなくなってしまう問題がある。
【0007】
その対策として、〔特許文献2〕に記載の装置では、ラックエンド角付近の転舵角θ以上で、且つモータ回転速度ωが設定値ω以上の場合に、操舵トルク値Tのゲインを下げるようになっている。
また、ラックエンド角付近の操舵角(操作量)以上で、且つ切増し時のみ電動機角速度フィードバックのゲインを上げるようにしている。
【特許文献1】特公平6−4417号公報
【特許文献2】特開2006−248252号公報(段落[0038],[0047]参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、〔特許文献2〕の技術では、モータ回転速度ωの絶対値が設定値|ω|より小さいときや、速いモータ回転速度ωでラックエンドに突き当てると、電動機の慣性モーメントによる運動エネルギにより、電動機の回転がオーバーシュートし、ラック&ピニオンギア等に大きな過負荷が発生するという問題は解消されない。そのため、ラックエンドとハウジングエンドが当接状態で更に切増し操作がされても、その過負荷によりステアリング系の機械的な健全性に問題を生じないように、ラック&ピニオンギア(ラックギア、ピニオンギア)や、軸受けや、ハウジング等の強度を増す必要がある。
そこで、本発明は、前記問題を解決するため、ラック&ピニオンギアに過負荷を作用させること無く(作用を抑制し)、ラックエンド付近でアシストを制限する電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、少なくとも、操作子からの入力により生じる操舵トルクに応じて、電動機が補助トルクを発生し、補助トルクを前輪のステアリング系に伝達する電動パワーステアリング装置において、操舵トルクを検出するトルクセンサと前輪のステアリング系に補助トルクを伝達する補助トルク伝達機構との間に、操作子の動作終端を形成する回転終端機構を設けたことを特徴とする
【0010】
請求項1に係る電動パワーステアリング装置によれば、操作子が動作終端に達したときには、回転終端機構が、動作終端において操作子によるそれ以上の回転操作を阻止するだけでなく、トルクセンサに対して補助トルク伝達機構(例えば、減速機構、さらに具体的には、ウォームホイールギア)の側に設けられ補助トルク伝達機構とともに回転するピニオン軸の回転を阻止する。ピニオン軸の回転が阻止できれば、ピニオン軸に設けられるピニオンギアとこのピニオンギアに噛み合うラックギアとを有するラック&ピニオンギアに、補助トルクを伝達するピニオン軸(ウォームホイール)の回転にともなう過負荷を、作用させることはなくなる。そして、ピニオン軸の回転を阻止する際の転舵角が、ラックエンド角となって、ラックエンド付近でのアシストを制限することができる。
また、操作子さらには電動機の回転がオーバーシュートしても、回転終端機構は、ピニオン軸の回転を阻止することができるので、オーバーシュートによる回転は、ラック&ピニオンギアに、伝達されず、過負荷を作用させることは無くなる(作用を抑制する)。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、回転終端機構は、減速機構を有し、動作終端によって規制される操作子の許容回転操作範囲を変更することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、回転終端機構は減速機構により操作子の許容回転操作範囲を変更できるので、運転者に従来と同じ操向ハンドル(操作子)における左右の操舵角(操作量)範囲を与えることができる。
【0013】
また、回転終端機構は、操作子の回転軸からの回転が伝達される、外歯ギアを有する入力軸と、内軸の外歯ギアと噛み合う内歯ギアを有する、外周側に第1の突出部を設けたリングギアと、リングギアを囲む環状の固定部と、からなり、内軸の外歯ギアとリングギアの内歯ギアが減速機構を構成し、固定部の内周側には、第1の突出部に当接して第1の突出部の回動を規制する第2の突出部を設けたものとすることが望ましい。
この、回転終端機構では、内軸の外歯ギアとリングギアの内歯ギアにより、内軸の回転角度に対してリングギアの回転角度を低下できるので、運転者に従来と同じ操向ハンドル(操作子)における左右の操舵角(操作量)範囲を与えることができる。更に、リングギアを交換するだけでラックエンド角に対応する操向ハンドルの操作量を変更でき、さまざまな車種に対応できる。
【0014】
また、回転終端機構は、減速機構としての遊星歯車減速機ユニットと、遊星歯車減速機ユニットの外輪ギアを固定する固定部と、からなり、遊星歯車減速機ユニットの遊星キャリアに第1の突出部を設け、遊星歯車減速機ユニットの太陽ギアに操作子の回転軸からの回転が伝達され、固定部又は外輪ギアには、第1の突出部に当接して第1の突出部の回動を規制する第2の突出部を設けたものとすることが好ましい。
この、回転終端機構では、遊星歯車減速機ユニットにより、太陽ギアの回転角度に対して遊星キャリアの回転角度を低下できるので、運転者に従来と同じ操向ハンドル(操作子)における左右の操舵角(操作量)範囲を与えることができる。更に、操作子の回転軸と同軸に配置でき、バランスの良い回転終端機構の搭載ができるとともに、第1の突出部と第2の突出部が当接したときに遊星歯車1個当たりに掛かる荷重が、遊星キャリアにより分担され、より大きな荷重に耐えることができる。従って、その分回転終端機構を小型化できる。
【0015】
また、回転終端機構は、操作子の回転軸からの回転が伝達される、雄ネジを有するネジ部と、ネジ部に固定され、外周側に第1の突出部を設けた環状の第1のストッパと、ネジ部と噛み合う雌ネジを有して、第1のストッパの上方に配置され、その下面側に第1の突出部と当接する第2の突出部を設けた第2のストッパと、ネジ部と噛み合う雌ネジを有して、第1のストッパの下方に配置され、その上面側に第1の突出部に当接する第3の突出部を設けた第3のストッパと、第1及び第2のストッパの回転を阻止して、ネジ部の軸方向に沿って第2及び第3のストッパを移動させるガイド部材と、から構成され、ネジ部、第2のストッパ、第3のストッパ及びガイド部材が減速機構を構成すしたものが望ましい。
【0016】
この、回転終端機構では、ネジ部の回転が第2及び第3のストッパの上下移動に変換され、第1のストッパの第1の突出部が、第2のスットパの第2の突出部又は第3のスットパの第3の突出部と当接するまでのネジ部の回転角度が大きくなるので、運転者に従来と同じ操向ハンドル(操作子)における左右の操舵角(操作量)範囲を与えることができる。
更に、この回転終端機構では、操向ハンドルにおける左右の操舵角を大きく、例えば、2回転以上(720°以上)に設定することができ、自動車以外の車両にも適用することができるとともに、ギアを有しないので回転終端機構の外径を小さく構成でき、車両への搭載性を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、操作子が動作終端に達したときには、回転終端機構が動作終端において操作子によるそれ以上の操作を阻止するだけでなく、トルクセンサに対してウォームホイールギアの側に設けられウォームホイールギアとともに回転するピニオン軸の回転を阻止することができ、ラック&ピニオンギアに過負荷が作用するのを抑制できる。そして、ラック&ピニオンギア周辺のステアリング系の機械強度を不必要に増加させる必要は無くなり、軽量化できる。また、回転終端機構に電動機の補助トルクが作用しないので、減速機構(補助トルク伝達機構)とラック&ピニオンギアとの間に回転終端機構を設けた場合と比べて回転終端機構の強度を小さくすることができ、回転終端機構さらには電動パワーステアリング装置を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
《第1の実施形態》
本発明の第1の実施形態を図1から図9を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成図である。
図2は、図1におけるステアリングギアボックスのトルクセンサ及びピニオンギア近傍の側面図である。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100Aは、操向ハンドル(操作子)3が設けられたハンドル軸3aと、シャフト3cと、入力軸3dとが、2つの自在継ぎ手3bによって連結され、入力軸3dは、トーションバー111を介してピニオン軸7と接続し、又、ピニオン軸7の下端部に設けられたピニオンギア7aは、車幅方向に往復運動可能なラック軸8のラックギア8aに噛合し、ラック軸8の両端には、タイロッド9、9を介して左右の前輪1L、1Rが連結されている。
【0019】
図2に示すように、ラック軸8は、ラックガイド31によってラックギア8aの反対側からピニオンギア7a側に押すように、且つ左右に摺動可能に支持され、更に圧縮ばね33を介して調整ボルト32にて付勢されることでラックギア8aをピニオンギア7aに押し付けるものである。34は調整ボルト32の緩み止めのロックナットである。
【0020】
なお、図1に示すように、入力軸3dからトーションバー111を経たピニオン軸7はその上部、中間部、下部を軸受3e、3f、3gを介してステアリングギアボックス10Aに支持されている。
ラック軸8の両端にはラックエンド8b,8bが設けられている。また、前記したステアリングギアボックス10Aのうち、ピニオンギア7a、ラック軸8、軸受3gを収容するラックハウジング部11Aの内部に、ラック軸8を軸方向自在に摺動させる滑り軸受14を設け、更に左右端部にはハウジングエンド11a,11aが設けられている。
【0021】
しかし、これらのラックエンド8b,8b及びハウジングエンド11a,11aは、従来のように最大転舵角(ラックエンド角)を規制するために設けるものでは無く、車両等の製造時等においてステアリングギアボックス10Aを単品で組み立てる際のラック軸8の移動のセンタを出すための位置決めのために用いられる。
従って、本実施形態においては、後記する回転終端機構6Aが設定する左右一杯の操向ハンドル3の操作量(操舵角)において、最大転舵角(ラックエンド角)を規制しており、組み立て時の位置決めのためのラックエンド8bとラックハウジング11aとは、最大転舵角において当接しないように、余裕を取って設けてある。
以下に説明する本実施形態の回転終端機構6A、後記する本実施形態の変形例の回転終端機構6B、6B’、6C、及び第2の実施形態の回転終端機構6の説明において、「ラックエンド角」とは、回転終端機構6A、6B、6B’、6C、6、が規定する最大転舵角のことを言う。
前記の構成により、電動パワーステアリング装置100Aは、操向ハンドル3の操作時に車両の進行方向を変えることができる。なお、ラック軸8、ラックギア8a、タイロッド9、9は転舵機構を構成している。
【0022】
また、電動パワーステアリング装置100Aは、操向ハンドル3による操舵力を軽減するための補助操舵力を供給する電動機4を備えており、この電動機4の出力軸に設けられたウォームギア5aが、ピニオン軸7に設けられたウォームホイールギア5bに噛合している。
すなわち、ウォームギア5aとウォームホイールギア5bとで減速機構(補助トルク伝達機構)5Aが構成されている。また、電動機4の回転子と電動機4に連結されてているウォームギア5aとウォームホイールギア5bとピニオン軸7とラック軸8とラックギア8aとタイロッド9、9等により、ステアリング系が構成されている。
【0023】
電動機4は、複数の界磁コイルを備えた固定子(図示せず)とこの固定子の内部で回動する回転子(図示せず)からなる3相ブラシレスモータであり、電力を機械的動力(P=ω)に変換するものである。
ここで、ωは電動機4の角速度であり、Tは電動機4の発生トルクである。
【0024】
ここで、操向ハンドル3に加えられる操舵トルクをTs、減速機構を介して倍力された電動機4の発生トルクによりアシストするアシスト量をA、アシスト量Aの係数を、例えば、車速VSの関数として変化するk(VS)とする。この場合、A=k(VS)×Tsであるから、ピニオン軸7に掛かるピニオントルクTpは、次式(1)のように表される。
Tp=Ts+A
=Ts+k(VS)×Ts ・・・・・・・(1)
これより、操舵トルクTsは、次式(2)のように表現される。
Ts=Tp/(1+k(VS)) ・・・・・・・(2)
【0025】
したがって、操舵トルクTsは、ピニオントルクTp(負荷)の1/{1+k(VS)}倍に軽減される。例えば、車速VS=0のときにk(0)=2ならば、操舵トルクTsは、ピニオントルクTpの1/3の軽さに制御され、車速VS=100km/hのときに、k(100)=0ならば、操舵トルクTsは、ピニオントルクTpと等しくなり、マニュアルステアリングと同等のしっかりとした重さの操舵トルクの手応え感に制御される。すなわち、車速VSに応じて操舵トルクTsを制御することにより、低速走行時には軽やかに、高速走行時にはしっかりとした安定な操舵トルクの手応え感が付与される。
【0026】
また、電動パワーステアリング装置100Aは、電動機4を駆動する電動機駆動回路23と、レゾルバ25と、ピニオン軸7に加えられるピニオントルクTpを検出するトルクセンサ110と、トルクセンサ110の出力を増幅する差動増幅回路21と、車両の速度(車速)を検出する車速センサSと、トルクセンサ110に入力される操向ハンドル3の動きをラックエンドにおいて規制する回転終端機構6A、電動機4の駆動を制御する操舵制御ECU(Elctric Control Unit)200を備えている。
【0027】
電動機駆動回路23は、例えば、3相のFETブリッジ回路のような複数のスイッチング素子を備え、操舵制御ECU200(図7参照)からのDUTY(DUTY U、DUTY V、DUTY W)信号を用いて、矩形波電圧を生成し、電動機4を駆動するものである。
また、電動機駆動回路23は図示しないホール素子を用いて3相の電動機電流I(IU、IV、IW)を検出する機能を備えている。
【0028】
レゾルバ25は、電動機4の電動機回転角θを検出し、角度信号θを出力するものであり、例えば、磁気抵抗変化を検出するセンサを周方向に等間隔の複数の凹凸部を設けた磁性回転体に近接させたものがある。
車速センサSは、車速を単位時間あたりのパルス数として検出するものであり、車速信号VSを出力する。
【0029】
(トルクセンサ)
次に図2から図4を参照しながらトルクセンサの構成について説明する。図3は図2におけるA−A矢視断面図である。図4は操舵トルクが加わった状態における上部遊動部、下部遊動部及びスライダの変位を説明する図であり、(a)はニュートラル状態を示し、(b)は左操舵トルクを掛けて入力軸3dに対してピニオン軸7がニュートラル状態から約30°左回転している状態を示し、(c)は右操舵トルクを掛けて入力軸3dに対してピニオン軸がニュートラル状態から約30°右回転している状態を示す図である。
トルクセンサ110は、操向ハンドル3(図1参照)に加えられる操舵トルクTsの大きさと方向を検出するものであり、図2に示すように、ラックハウジング部11A部の上にフランジ接続されたリッド部13Aの中に、入力軸3d、ピニオン軸7と一体に組み立てられて、軸受3e,3fとともに収容されている。
【0030】
図2に示すように、トルクセンサ110は、軸受3e,3fと、入力軸3dとピニオン軸7との間に同軸に設けられた図示されない軸受により相対回転可能に支承されるとともに、入力軸3dとピニオン軸7がトーションバー111により接続されている。そして、トルクセンサ110は、トーションバー111でピニオン軸7と接続された入力軸3dの下端側の上部遊動部112と、ピニオン軸7の上端側の下部遊動部113と、上部遊動部112及び下部遊動部113のそれぞれの外周面に固定されたピン117A,117A,117B,117B(図3参照)と、スライダ115、と第1検出コイル114A及び第2検出コイル114Bとを含んで構成されている。
【0031】
図3に示すように、上部遊動部112は、対向する遊動片112a,112aを有している。下部遊動部113は、中心部に中空部113aを有する厚肉の筒状体の形状であり、筒状体の側面が、対向する側面において薄肉となるように形成された薄肉周面部113b、113bと、薄肉でない残りの側面部分の突出周面部113c,113cとを有している。
【0032】
薄肉周面部113bの径方向外側に遊動片112aを重ねるように、上部遊動部112と下部遊動部113が組み合わせられている。このとき薄肉周面部113bの外周面と遊動片112aの内周面との間に間隙が形成され、所定の相対回転角度、例えば、−5°〜+5°回動可能になっている。これ以上の相対回転に対しては、遊動片112aの周方向端部と突出周面部113cの周方向端部とが当接してそれ以上トーションバー111が捩じれないようになっている。
【0033】
なお、上部遊動部112の遊動片112aの外周面の径と、下部遊動部113の突出周面部113cの外周面の径は同じである。上部遊動部112及び下部遊動部113の外周面に摺動可能に筒状体のスライダ115がかぶさる。スライダ115には、ピン117A,117Aが挿通する軸方向に縦長の長孔118A、118Aが対向して穿たれ、ピン117B,117Bが挿通する斜め長孔118B,118Bが対向して穿たれている。そして、ピン117A,117A,117B,117Bを、トーションバー111、上部遊動部112、下部遊動部113を組み合わせてから、長孔118A,118A及び斜め長孔118B,118Bそれぞれを通して上部遊動部112、下部遊動部113に設けられた図示しない前記ピン孔に圧入することで、トルクセンサ110は組み立てられている。
【0034】
スライダ115は、磁性コア材でできている。スライダ115の外周面に対向するようにリッド部13Aの内周面に固定され、ヨーク材で囲まれた第1の検出コイル114A、第2の検出コイル114Bが上下2段に配置されている。
ここで、ピン117A,117A,ピン117B,117B、長孔118A,118A、斜め長孔118B,118Bはカム機構を構成し、上部遊動部112と下部遊動部113とが捩じれると、図4に示すようにスライダ115は長孔118Aと斜め長孔118Bに誘導されて軸方向上下に移動する。
【0035】
このような磁性体コアでできたスライダ115の上下方向の変位が、第1検出コイル114A、第2検出コイル114Bの周辺に磁束密度の変化を生じさせ、第1検出コイル114Aと第2検出コイル114Bのインダクタンスは一方が大きくなり、他方が小さくなるようにそれぞれ変化し、第1検出コイル114Aと第2検出コイル114Bは、それぞれ図5に示すようなトルク検出電圧VT1,VT2を出力する。
第1検出コイル114A、第2検出コイル114Bからのトルク検出電圧VT1,VT2は、差動増幅回路21(図2参照)で増幅され、トルク検出電圧(トルク信号)VT3を操舵制御ECU200(図1参照)に出力する。
【0036】
(回転終端機構)
次に図6を参照しながらステアリング用車輪の転舵角が最大転舵角に達するラックエンド角において操向ハンドル3の動きを規制する回転終端機構6Aについて説明する。図6は本実施形態における回転終端機構の模式的な平面断面図である。図6(a)は操向ハンドルが左右のラックエンド(ラックエンド角)に対してニュートラル位置に有る場合を示し、図6(b)は、目一杯の左操舵状態(「左ラックエンド」の状態)を示し、図6(c)は、目一杯の右操舵状態(「右ラックエンド」の状態)を示している。
【0037】
図1に示すように、回転終端機構6Aは入力軸3dの軸方向位置において、トルクセンサ110とウォームホイールギア5bとの間に設けられ、図6に示すように、ピニオン軸7の外周に固定された、径方向外方側に外周面の一部を突出させた突出部41aを有する略筒状体の回転ストッパ41と、リッド部13Aの内周面に固定され、径方向内方側に内周面の一部を突出させた突出部43aを有する略筒状体の固定ストッパ43とでストッパ40を構成されている。回転ストッパ41は、固定ストッパ43の内周側で、操向ハンドル3の許容操作量範囲(許容回転操作範囲)として略180°左右に回動可能である。
【0038】
図6(a)に示すように、操向ハンドル3がニュートラル位置の場合、突出部43aに対して突出部41aが180°反対方向に位置している。
ラック軸8が目一杯の左操舵により、「左ラックエンド」のラックエンド角の状態においては、図6(b)に示すように突出部43aに突出部41aが周方向に逆時計回りに当接し、操向ハンドル3をこれ以上左に回すことができない。
【0039】
逆にラック軸8が目一杯の右操舵により、「右ラックエンド」のラックエンド角の状態においては、図6(c)に示すように、突出部43aに突出部41aが周方向に時計回りに当接し、操向ハンドル3をこれ以上右に回すことができない。
【0040】
(操舵制御ECU)
次に図7、図8を参照しながら操舵制御ECUについて説明する。図7は操舵制御ECUの機能ブロック図であり、図8(a)はベース信号演算部における入力であるトルク信号に対して出力するベース信号の関係を示すデータテーブルであり、図8(b)はダンパ補償信号演算部における入力である電動機の回転速度に対して出力する補償信号の関係を示すデータテーブルである。
操舵制御ECU200は、CPU,ROM,RAM等を備えるマイクロコンピュータ及びプログラムからなり、図7の機能ブロック図に記載される機能を実現する。
操舵制御ECU200は、ベース信号演算部220と、イナーシャ補償信号演算部210と、ダンパ補償信号演算部225と、Q軸(トルク軸)PI制御部240と、D軸(磁極軸)PI制御部245と、2軸3相変換部260と、PWM変換部270と、3相2軸変換部265と、電動機速度算出部280と、励磁電流生成部285とを備える。
【0041】
3相2軸変換部265は、電動機駆動回路23が検出する、電動機4の3相電流IU,IV,IWを、電動機4の回転子の磁極軸であるD軸と、このD軸に対して電気的に90度回転した軸であるQ軸との2軸に変換するものであり、Q軸電流IQは電動機4の発生トルクTに比例し、D軸電流IDは励磁電流に比例する。電動機速度算出部280は、角度信号θを微分演算して角速度信号ωを生成する。励磁電流生成部285は、電動機4の励磁電流「0」の目標信号を生成するが、必要に応じD軸電流とQ軸電流とを略等しくすることにより、弱め界磁制御を行うことができる。
【0042】
ベース信号演算部220は、トルク信号VT3と車速信号VSとから出力トルクT’の目標信号IMの基準となるベース信号Dを生成する。この信号生成は、予め実験測定等によって設定されたべーステーブル220aをトルク信号VT3と車速信号VSとで参照することによって行われ、図8の(a)にべーステーブル220aに格納されているベース信号Dの関数を示す。ベース信号演算部220は、トルク信号VT3の値が小さいときはベース信号Dがゼロに設定される不感帯N1が設けられ、トルク信号VT3の値がこの不感帯N1よりも大きくなるとゲインG1で直線的に増加する特性を備えている。また、ベース信号演算部220は、所定のトルク値で出力はゲインG2で増加し、さらにトルク値が増加すると出力が飽和する特性を備えている。
【0043】
また、一般に車両は、走行速度に応じて路面の負荷(路面反力)が異なるため、車速信号VSによりゲインが調整される。車速ゼロの据え切り操作時が最も負荷が重く中低速では比較的負荷が軽くなる。このため、ベース信号演算部220は、車速VSが大きく高速になるにしたがってゲイン(G1,G2)を低く、且つ、不感帯N1を大きく設定して、マニュアルステアリング領域を大きくとって路面情報を運転者に与える。すなわち、車速VSの増大に応じてしっかりとした操舵トルクTsの手応え感が付与される。このとき、マニュアルステアリング領域においてもイナーシャ補償がなされることが必要である。
【0044】
図7に戻り、ダンパ補償信号演算部225は、ステアリング系が備える粘性を補償するため、また車両が高速走行時に収斂性が低下する際にこれを補償するステアリングダンパ機能を有するために設けられるものであり、角速度信号ωがダンパテーブル225aを参照することによって行われる。図8の(b)は、ダンパテーブル225aの特性関数を示す図であり、電動機4の回転速度ωが増加するほど補償値Iが直線的に増加し、所定速度で補償値が急激に増加する特性を備えている。
また、車速信号VSの値が高いほど、ゲインを大きくして電動機4の回転速度、すなわち、操舵速度(操舵回転速度)に応じて電動機4の出力トルクT’を減衰させている。
言い換えれば、操向ハンドル3を切るときには、電動機4の電流を減じ、逆に戻すときには電動機4に大きな電流が供給される。例えば、操向ハンドル3の切り増し時に、回転速度が速くなると、電動機4の慣性によって直ぐには回転速度が低下しないので、この現象を回避するために、ダンパ補償信号演算部225は、電動機4の電流を増大させて供給し、操向ハンドル3の戻り時の回転速度を抑制制御している。
【0045】
分かり易く言うと、切り増し時には、操向ハンドル3の回転速度が高くなるに従って、電動機4への電流を小さくして操向ハンドル3の操舵感を重くし、操向ハンドル3の戻し時には電動機4への電流を大きくして戻りづらくしている。このステアリングダンパ効果により、操向ハンドル3の収斂性を向上させ、車両特性を安定化させることができる。
【0046】
再び図7に戻り、加算器251は、操向ハンドル3を切っているときは、ベース信号演算部220の出力信号Dからダンパ補償信号演算部225の出力信号を減算するものであり、逆に操向ハンドル3を戻すときにはダンパ補償信号演算部225の出力信号を加算する。加算器250は、加算器251の出力信号とイナーシャ補償信号演算部210の出力信号とを加算するものである。なお、ベース信号演算部220とダンパ補償信号演算部225と加算器251とで基本的なアシスト制御が行われる。
【0047】
イナーシャ補償信号演算部210は、ステアリング系の慣性による影響を補償するものであり、トルク信号VT3がイナーシャテーブル210aを参照することによって演算される。
また、イナーシャ補償信号演算部210は、電動機4の回転子の慣性による応答性の低下を補償している。言い換えれば、電動機4は正回転から逆回転に、又は、逆回転から正回転に回転方向を切り替える際、慣性によってその状態を持続させようとするので直ぐには回転方向が切り替わらない。そこで、イナーシャ補償信号演算部210は、電動機4の回転方向の切り替わりが操向ハンドル3の回転方向が切り替わるタイミングに一致するように制御している。このようにして、イナーシャ補償信号演算部210は、ステアリング系の慣性(や粘性)による操舵の応答遅れを改善してすっきりした操舵感を付与している。
また、FF(Front engine Front wheel drive)やFR(Front engine Rear wheel drive)車、RV(Recreation Vehicle)やセダン等の車両特性や車速、路面等の車両状態によって異なる操舵特性に対して、実用上十分な特性が付与される。
【0048】
加算器250の出力信号IMは、電動機4のトルクを規定するQ軸電流の目標信号であり、加算器252は出力信号IMからQ軸電流IQを減算し、偏差信号IEを生成する。Q軸(トルク軸)PI制御部240は、偏差信号IEが減少するように、P(比例)制御及びI(積分)制御を行う。加算器253は、励磁電流生成部285の出力信号からD軸電流IDを減算するものである。D軸(磁極軸)PI制御部245は、加算器253の出力信号が減少するようにPI帰還制御を行う。
【0049】
2軸3相変換部260は、Q軸(トルク軸)PI制御部240の出力信号VQとD軸(磁極軸)PI制御部245の出力信号VDとの2軸信号を3相信号UU,UV,UWに変換する。PWM変換部270は、3相信号UU,UV,UWの大きさに比例したパルス幅のON/OFF信号[PWM(Pulse Width Modulation)信号]であるDUTY信号(DUTY U,DUTY V,DUTY W)を生成する。
なお、2軸3相変換部260、及び、PWM変換部270は、電動機4の角度信号θが入力され、回転子の磁極位置に応じた信号が出力される。
【0050】
(回転終端機構の作用、効果)
次に、図1、図6及び図9を参照しながら本実施形態における回転終端機構6Aの作用、効果について説明する。
ラック軸8とラックハウジング部11Aとの位置関係が、図1において、仮に回転終端機構6Aが無く、更にラックハウジング部11Aの右端のハウジングエンド11aとラック軸8のラックエンド8bとが係合接触、又は逆にラックハウジング部11Aの左端のハウジングエンド11aとラック軸8のラックエンド8bとが係合接触しているときに、更に右、又は左に操向ハンドル3を回動すると、従来の電動パワーステアリング装置では、前輪1L、1Rからの負荷よりも大きな負担がピニオン軸7からラック軸8に加えられる。
これには、次のような理由がある。
【0051】
ラック軸8とラックハウジング部11Aとの位置関係が終端、つまり、左右いずれかに目一杯前輪1L,1Rを切った状態でない場合には、前輪1L,1Rからの負荷トルクをTとすると、操舵トルクTsとアシスト量AとピニオントルクTpとの間には、次式のような関係にある。
Ts+A=Tp=T ・・・・・(3)
【0052】
ラックエンド8bとハウジングエンド11aが当接した瞬間を考える。ここで電動機4の回転角速度をω、回転慣性モーメントをIとすると、電動機4には次式のように運動エネルギEが蓄えられている。
EM=(1/2)・IM・ω ・・・・・(4)
この運動エネルギがウォームギア5a、ウォームホイールギア5b、ピニオンギア7a、ラックギア8a、軸受3e、3f、3gやラックエンド8b、ハウジングエンド11a等の弾性変形により吸収され、そのときの過負荷は、ラックエンド角に至っていない通常負荷の1.5倍程度に高くなる。
【0053】
これら、アシスト量Aと操舵トルクTsや過負荷により、電動機4、ウォームギア5a、ウォームホイールギア5b、ピニオンギア7a、ラックギア8a、軸受3e、3f、3gやラックエンド8b、ラックハウジング部11Aに通常の負荷の約1.5倍の負荷が掛かり、これらの構成部品の耐久性を確保するには、軸受のサイズを大きくしたり、ギアのモジュールを大きくしてサイズを大きくしたり、ラックハウジング部11Aの肉厚を厚くしたり、補強リブを設ける等、構成部品の重さが大きくなる問題があった。
【0054】
しかし、本実施形態によれば、位置決め用のラックエンド8bとハウジングエンド11aが当接する前に、回転終端機構6Aにおいてピニオン軸7がそれ以上切り増しできないように、既に突出部41a,43aが当接しており、電動機4の慣性モーメント(運動エネルギ)による衝撃力は、回転終端機構6Aの突出部41a,43aの当接(突出部41aと突出部43aとの当接)によって吸収され、ピニオン軸7を介して、ピニオンギア7aやラックギア8a、ラック軸8、ラックエンド8b、ハウジングエンド11aに伝わることはない。しかも、回転終端機構6Aは、減速機構(補助トルク伝達機構)5Aのトルクセンサ側(上流側)に設けられているので、回転終端機構6Aに電動機4の補助トルクが作用せず、減速機構(補助トルク伝達機構)5Aのラック&ピニオンギア側(下流側)に回転終端機構6Aを設けた場合に比べて回転終端機構6Aを、具体的には、ストッパ40を小さくでき、ストッパ40、回転終端機構6Aさらには電動パワーステアリング装置100Aを小型化することができる。
【0055】
次に、操向ハンドル3をラックエンド角まで大きく切る操作の場合の転舵角及びトルク信号VT3の挙動を図9を参照しながら説明する。
図9(a)は操向ハンドルの操作量の時間推移を示す図であり、図9(b)は電動機の回転角(実線)と、前輪の転舵角(点線)の変化の時間推移を重ねて示す図であり、図9(c)は前輪の転舵力(トルク)の変化の時間推移を示す図である。
【0056】
図9(a)に示すように大きく操向ハンドル3を切って、左右の「ラックエンド」の状態まで操作すると、トーションバー111が捩じれるので、操向ハンドル3の操作量が、時間tにおいてラックエンドに達しても増加し、ラックエンドを越えて収束する。収束するのは回転終端機構6Aの突出部41a,43aが当接しているからである。
そして図9(b)に示すように、電動機4の回転角(実線)と、前輪の転舵角(点線)とは、時間tまでは、操向ハンドル3の操作量の大きな変化により増加を続けるが、時間tにおいて電動機4の回転角と前輪の転舵角とが、ラックエンド角に達するので、回転終端機構6Aの突出部41a,43aが当接する。このため、時間t以降、電動機4の回転角と前輪の転舵角とは、オーバーシュート等の増加はせずに、時間tによらずラックエンド角で一定になる。
【0057】
そして図9(c)に示すように前輪lL,1Rの転舵力(トルク)は、時間tまでは上昇するが、時間t以降は、回転終端機構6Aの突出部41a,43aが当接しているので、時間tにおける転舵力(トルク)を越える転舵力(トルク)が生じることはなく、過負荷の発生を防止することができる。そして、電動機4の慣性モーメントの影響、例えば、衝撃力をラック&ピニオンギアに与えない。
【0058】
本実施形態によれば前記したように、操向ハンドル3のラックエンド角近傍における切り増し操作の際や、ラックエンド角までの大きな切り回し操作において、ピニオンギア7a、ラックギア8a、ラック軸8、ラックエンド8b、ハウジングエンド11a、ラックハウジング部11A、に生じる過負荷が回避できるので、実際にピニオンギア7a、ラックギア8aに伝えられるピニオントルクTpはラックエンド角に至っていない通常時の際のピニオントルクTpと同程度以下に低減できる。
従って、ピニオンギア7a、ラックギア8a、軸受3e、3f、3gやラックエンド8b、ラックハウジング部11A等の設計上想定すべき負荷(過負荷)を低減でき、従来これらの構成部品の耐久性を確保するために、軸受のサイズを大きくしたり、ギアのモジュールを大きくしてサイズを大きくしたり、ラックハウジング部11Aの肉厚を厚くしたり、補強リブを設ける等、構成部品の重さが大きくなる問題が解消され、構成部品を小型、軽量化でき、車両への搭載性、特に小型車両への搭載性が向上する。
【0059】
《回転終端機構の変形例》
本発明における回転終端機構は前記実施形態におけるものに限定されるものではなく、例えば、以下のような種々の変形が可能である。
(第1の変形例)
次に回転終端機構の第1の変形例について図10を参照しながら説明する。図10は本変形例の回転終端機構の模式的な平面断面図である。(a)は操向ハンドルが左右に対してニュートラル位置に有る場合を示し、(b)は、目一杯の左操舵状態(「左ラックエンド」の状態)を示し、(c)は、目一杯の右操舵状態(「右ラックエンド」の状態)を示している。
る。
図10に示すように回転終端機構6Bは、ピニオン軸7の回転終端機構6Bにおける部分名称である内軸51と、その外側に配置された回転ストッパ53と、更にその外側に配置された固定ストッパ54から構成されている。
【0060】
内軸51には外歯ギア51aが設けられ、その外歯ギア51aと噛み合う内歯ギア53aを内周面に有する略筒状体の回転ストッパ(リングギア)53が、内軸51と偏心して設けられている。外歯ギア51aと内歯ギア53aの歯数は略1:3である。
回転ストッパ53の外周面には径方向外方側に外周面の一部を突出させた突出部(第1の突出部)53bが設けられている。また、リッド部13Aの内周面に固定され、径方向内方側に内周面の一部を突出させた突出部(第2の突出部)54aを有する、回転ストッパ53と同軸の略筒状体の固定ストッパ54が設けられ、回転ストッパ53と固定ストッパ54とでストッパ50を構成されている。
【0061】
外歯ギア51aと内歯ギア53aとは減速機構55を構成しており、操向ハンドル3をニュートラル状態から左右にそれぞれ約540°回転すると、回転ストッパ53が左右にそれぞれ略180°回動して、突出部53aが突出部54aに周方向から当接するようになっている。
なお、図示省略したが、回転ストッパ53の上下端部の外周面は全周が円筒周面となっており、その部分と、固定ストッパ54の上下端に設けた、内周面全周が円筒周面になっている径の小さい部分とで、滑り軸受けを構成し、それにによって回転ストッパ53の回転が可能となっている。
【0062】
図10(a)に示すように、操向ハンドル3がニュートラル位置の場合、突出部54aに対して突出部53aが180°反対方向に位置している。
ラック軸8が目一杯の左操舵によりラックエンド8bとハウジングエンド11aが当接した「左ラックエンド」の状態においては、図10(b)に示すように、突出部54aに突出部53aが周方向に逆時計回りに当接し、操向ハンドル3をこれ以上左に回らない。逆にラック軸8が目一杯の右操舵によりラックエンド8bとハウジングエンド11aが当接した「右ラックエンド」の状態においては、図10(c)に示すように、突出部54aに突出部53aが周方向に時計回りに当接し、操向ハンドル3をこれ以上右に回らない。
【0063】
本変形例の回転終端機構6Bによれば、第1の実施形態における回転終端機構6Aよりも操向ハンドル3のラックエンド角までの許容操作量範囲(許容回転操作範囲)が左右に540°となるので、通常の車両における操向ハンドル3の操作量とすることができ、都合が良い。更に、回転ストッパ(リングギア)53を歯数を変えたものに交換することにより、例えば、許容操作量範囲を450°や600°の範囲に設定できる。つまり、ラックエンド角に対応する操向ハンドルの操作量を変更でき、さまざまな車種に対応できる。
【0064】
本変形例においても、第1の実施形態と同様に、既にラック軸8がラックエンドの状態から運転者が更に操向ハンドル3を切り増し操作しても、回転終端機構6Bの突出部53b,54aが当接して、回転が阻止される。
【0065】
従って、ピニオンギア7a、ラックギア8a、軸受3e、3f、3gやラックエンド8b、ラックハウジング部11Aの設計上想定すべき負荷(過負荷)を低減でき、従来これらの構成部品の耐久性を確保するために、軸受のサイズを大きくしたり、ギアのモジュールを大きくしてサイズを大きくしたり、ラックハウジング部11Aの肉厚を厚くしたり、補強リブを設ける等、構成部品の重さが大きくなる問題が解消され、構成部品を小型、軽量化でき、車両への搭載性、特に小型車両への搭載性が向上する。
【0066】
(第2の変形例)
なお、操向ハンドル3の左右略540°の操作量を回転ストッパ53の左右略180°の回転角に減速する減速機構としては第1の変形例における外歯ギア51aと内歯ギア53aの組み合わせた減速機構55に限定されるものではない。
次に、図11を参照しながら第2の変形例の回転終端機構について説明する。図11は遊星歯車減速ユニットを用いた第2の変形例の回転終端機構の模式的な斜視図である。
図11に示すように太陽ギア56、太陽ギア56に噛み合い太陽ギア56の周囲を公転する遊星ギア57、遊星ギア57に噛み合う内歯を有する外輪ギア58、遊星ギア57の軸を連結する遊星キャリア57aからなる遊星歯車減速機ユニット59を用いても良い。
【0067】
その場合、ピニオン軸7が太陽ギア56を駆動する形となり、遊星キャリア57aが回転ストッパ53に相当し、例えば、径方向外方側に突出する突出部(第1の突出部)57bを有し、外輪ギア58が固定ストッパ54に相当しリッド部13Aに固定され、遊星ギア57と干渉しないように、例えば、外輪ギア58の端面縁部58aの外縁側を軸方向に突出させて突出部(第2の突出部)58bを形成し、突出部57bと係合するようにしている。太陽ギアの歯数aと外輪ギアの歯数cを1:2に選べば、太陽ギア56の回転角に対して遊星キャリア57aの回転角を1/3に減速でき、第1の実施形態の第1の変形例と同様に操向ハンドル3の許容操作量範囲(許容回転操作範囲)左右略540°に対し、遊星キャリア57a(回転ストッパ53)の回転角を左右略180°にすることができる。
【0068】
なお、図11に示した例では、遊星キャリア57aから径方向外方側に突出部57bを設けたが、それに限定されることは無く、軸方向側(図11では上方側)に突出させて突出部57bを設け、外輪ギア58の端面縁部58aから径方向内方側に突出させて突出部58bを設けても良い。
また、突出部58bを突出部57bと係合するようにリッド部13Aの内周面から径方向内方側に突出させて設けても良い。
減速機構55として遊星歯車減速機ユニットを用いることにより、回転終端機構6B’がリッド部13Aの中心軸と同軸にでき、回転終端機構6B’の径方向が小さくできる。更に、突出部57bが突出部58bに当接したときに突出部57bに掛かる荷重は、遊星キャリア57aにより個々の遊星ギア57において分担されるので、第2の変形例の回転終端機構6Bの場合よりも大きな荷重に耐えることができる。その分、回転終端機構6B’を小型化できる。
【0069】
(第3の変形例)
次に回転終端機構の第3の変形例について図12、図13を参照しながら説明する。図12は本変形例の回転終端機構の模式的な平面断面図である。図12(a)は操向ハンドルが左右に対してニュートラル位置に有る場合を示し、図12(b)は、目一杯の左操舵状態(「左ラックエンド」の状態)を示し、図12(c)は、目一杯の右操舵状態(「右ラックエンド」の状態)を示している。図13は第3の変形例の回転終端機構を構成する要素を個別に示した斜視図であり、図13(a)は上ストッパの外形斜視図、図13(b)はネジ部に固定された回転ストッパの外形斜視図、図13(c)は下ストッパの外形斜視図、図13(d)はガイド部材の外形斜視図である。
図13に示すように回転終端機構6Cは、ピニオン軸7の外周に雄ネジ61aが切られたネジ部61と、ネジ部61の軸方向中央に溶接固定された略筒状体の回転ストッパ(第1のストッパ)62と、回転ストッパ62の上下に配置された上ストッパ(第2のストッパ)63、下ストッパ(第3のストッパ)65、ガイド部材67から構成されている。
【0070】
回転ストッパ62は、図13(b)に示すように略筒状体をしており、径方向外方側に外周面の一部を突出させた突出部(第1の突出部)62aを有している。
ちなみに、突出部62aの径方向最外方端はガイド部材67の内周面の径より小さくできている。
上ストッパ63、下ストッパ65は、図13(a),(c)に示すように略筒状体をしており、内周側に雄ネジ61aと適合する雌ネジ63aを有し、180°対向して径方向外方側に外周面の一部を突出させたガイド片63bと突出部(第2の突出部)63cを有している。このガイド片63bと突出部63cは、ガイド部材67の後記する軸方向に延びるガイド穴67bと係合し、ネジ部61の左右の回転により上ストッパ63はガイド穴67bに誘導されて軸方向上下に移動する。
ガイド片63bは、上ストッパ63の筒状の本体部と同じ軸方向厚さで面一であるが、突出部63cは、図13(a)に示すように軸方向下側に突出している。
下ストッパ65は、ものとしては上ストッパ63と同じものであり、ただ上下を逆にしただけであり、上ストッパ63と同じ構成である。下ストッパ65の突出部65cが請求項に記載の第3の突出部に対応する。
回転ストッパ62、上ストッパ63及び下ストッパ65でストッパ60を構成する。
【0071】
ガイド部材67は、筒状体を軸方向に半分に分割した部材67A,67Bを組み合わせたものであり、それぞれの部材67A,67Bが外周面には軸方向に延びるセレーション67aと、周方向中央において軸方向に延びるガイド穴67bとを有している。セレーション67aは、リッド部13Aの内周面に設けた図示しないセレーションと噛み合って、ガイド部材67がリッド部13A内で周方向に動かないように固定するためのものである。
【0072】
このようにガイド部材67が分割構造にしてあるので、ネジ部61の軸方向両側の外径を、上ストッパ63及び下ストッパ65の雌ネジ63a,65bの山の内径よりも小さくしておいて、ネジ部61に上下方向から組み合わせ、その後にガイド片63b,65b及び突出部63c,65cをそれぞれの部材67A,67Bのガイド穴67bに嵌めて、一体のガイド部材67に組み立てることができる。その後、リッド部13Aの内周面にガイド部材67を圧入して固定する。
【0073】
雄ネジ61a、雌ネジ63a及び雌ネジ65aは減速機構を構成しており、操向ハンドル3をニュートラル状態から左右にそれぞれ約540°回転すると、回転ストッパ62が左右にそれぞれ略540°回動し、上ストッパ63及び下ストッパ65がそれぞれ同一量だけ軸方向に移動し、例えば、左転舵のときは上方向に、右転舵のときは下方向に移動する。そして、回転ストッパ62が左右にそれぞれ略540°回動したときに左転舵のときは突出部62aが突出部65cと、右転舵のときは突出部62aが突出部63cと周方向から当接するようになっている。
つまり、第1の実施形態の第1の変形例と同様に操向ハンドル3の許容操作量範囲(許容回転操作範囲)左右略540°を確保することができる。更に、回転終端機構6Cの外形を増大させること無く、例えば、許容操作量範囲を左右にそれぞれ2回転(720°)にも設定でき、自動車以外の車両にも適用できる。
【0074】
図12(a)では操向ハンドル3がニュートラル位置の場合、突出部63c、65cに対して突出部62aが軸方向中央に位置していることを示している。図12(b)ではラック軸8が目一杯の左操舵によりラックエンド8bとハウジングエンド11aが当接した「左ラックエンド」の状態において、突出部65cに突出部62aが周方向に上から見て逆時計回りに当接し、操向ハンドル3をこれ以上左に回らない。図12(c)では逆にラック軸8が目一杯の右操舵によりラックエンド8bとハウジングエンド11aが当接した「右ラックエンド」の状態において、突出部63cに突出部62aが周方向に上から見て時計回りに当接し、操向ハンドル3をこれ以上右に回らない。
【0075】
本変形例においても、第1の実施形態と同様に、既にラック軸8がラックエンドの状態から運転者が更に操向ハンドル3を切り増し操作しても、回転終端機構6Cに回転操作が阻止される。
【0076】
その結果、第1の実施の形態と同様に、ピニオンギア7a、ラックギア8a、軸受3e、3f、3gやラックエンド8b、ラックハウジング部11Aの設計上想定すべき負荷(過負荷)を低減でき、従来これらの構成部品の耐久性を確保するために、軸受のサイズを大きくしたり、ギアのモジュールを大きくしてサイズを大きくしたり、ラックハウジング部11Aの肉厚を厚くしたり、補強リブを設ける等、構成部品の重さが大きくなる問題が解消され、構成部品を小型、軽量化でき、車両への搭載性、特に小型車両への搭載性が向上する。
【0077】
第1の実施形態における電動パワーステアリング装置100Aは、トルクセンサとして、トーションバー111の捩じれ角をスライダ115の上下変位量に変換して、その変位量を検出コイル114A,114Bで検出してトルク信号VT3を出力するものであったがそれに限定されるものではない。
【0078】
《第2の実施形態》
次に図14を参照しながら本発明の第2の実施形態に係わる電動パワーステアリング装置について説明する。
図14は本発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成図である。本実施形態の電動パワーステアリング装置100Cは、電動機4によりウォームギア5a、ウォームホイールギア5bを介してハンドル軸3aをアシスト駆動するタイプである。
第1の実施形態とは、電動機4がピニオン軸7をウォームギア5a及びウォームホイールギア5bを介して駆動する代わりに、本実施形態においては、電動機4がウォームギア5aとウォームホイールギア5bで構成された減速機構(補助トルク伝達機構)5Aを介して、ハンドル軸3aを駆動するところが異なっている。
また、第1の実施形態におけるトルクセンサ110の代わりに、本実施形態では磁歪膜を使用したトルクセンサ120としているところが異なる。
【0079】
電動パワーステアリング装置100Cは、図15に示すように操向ハンドル3のハンドル軸3aを収容するコラムハウジング15と、ステアリングギアボックス10Cのリッド部13Cの上部に突き出ているピニオン軸7との間を、シャフト3cと2つの自在継ぎ手3bによって連結した構成である。
【0080】
コラムハウジング15は、その上端に設けたシール3hの下に軸受3eを配置して収容し、その下方にトルクセンサ120、回転終端機構6、軸受3i、ウォームホイールギア5b、軸受3jの順に配置して収容し、コラムハウジング15の下端から下方に延びるハンドル軸3aの下端である出力軸3kが自在継ぎ手3bに連結している。ピニオン軸7の下端部に設けられたピニオンギア7aは、車幅方向に往復運動可能なラック軸8のラックギア8aに噛合し、ラック軸8の両端には、タイロッド9、9を介して左右の前輪1L、1Rが連結されている。
第1の実施形態と同じ構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
なお、減速機構(補助トルク伝達機構)5Aの配置が第1の実施形態と異なるので、本実施形態のステアリングギアボックス10Cのラックハウジング部11C及びリッド部13Cは、第1の実施形態と形状が異なるが機能は略同じである。ただし、リッド部13Cには回転終端機構6は配置されておらず、第1の実施形態におけるような回転終端機構6の保持機能は不要である。
【0081】
また、本実施形態におけるトルクセンサ120はコラムハウジング15内に収容され、ハンドル軸3aの外周面上に第1及び第2磁歪膜121A,121Bを形成し、その第1及び第2磁歪膜121A,121Bに微小の空隙を介して図示しない励磁コイル、第1及び第2検出コイル124A,124Bを配置した。
【0082】
トルクセンサ120は、特開2006−322952号公報の図1、図2に記載されたものと同じ構成であり、ハンドル軸3aの外周面に、例えば、Fe−Ni系やFe−Cr系等正の磁歪定数を示す磁歪材がメッキや蒸着等により、所定の膜厚、例えば、30ミクロン以下で、周方向全周に亘って、所定の軸方向間隔を設けて軸方向に2ヶ所形成され、第1磁歪膜121Aと第2磁歪膜121Bを構成している。しかも、それぞれ逆方向の磁気異方性が得られるように、入力軸3dに所定のトルクを印加した状態で高周波加熱により加熱し室温に戻し、トルクを取り去ることにより付与している。これにより、磁歪膜121A,121Bに捩りトルクが印加されていない場合においても、常に引っ張り応力がかかっており、引っ張りの歪が加わっているため、逆磁歪特性でのヒステリシスが小さくなっている。また、前記第1の実施形態におけるトルクセンサ110と異なって、トーションバー111を有せずその捩じれが発生しないので、操向ハンドル3の操舵角と前輪1L,1Rの転舵角とが、捩じれ差が無く対応することになる。その結果、回転終端機構6の決める許容操作量範囲に対して対応する転舵角の範囲も実質的に広くなる。
【0083】
そして、トルクセンサ120における図示しない励磁コイルが第1及び第2磁歪膜121A,121Bに共通に微小の空隙を介して配置され、励磁コイルと周方向に90°離れた周方向位置に微小の空隙を介して、第1磁歪膜121Aに対しては第1検出コイル124Aが、第2磁歪膜121Bに対しては第2検出コイル124Bが、配置されている。
トルクセンサ120において、ハンドル軸3aにトルクが作用したとき、第1及び第2磁歪膜121A,121Bにもトルクが作用し、このトルクに応じて第1及び第2磁歪膜121A,121Bに逆磁歪効果が生じる。図示しない励磁電圧供給源から前記した励磁コイルに高周波の交流電圧(励磁電圧)を供給すると、第1及び第2磁歪膜121A,121Bに掛かっているトルクにもとづく逆磁歪効果による磁界の変化を、第1及び第2検出コイル124A,124Bによりインピーダンスあるいは誘導電圧の変化としてそれぞれ検出することができる。このとき、入力軸3dの捩りトルク以外にも常に引っ張り応力が第1及び第2磁歪膜121A,121Bに印加された状態となっているため、ヒステリシスが小さい特性が得られ、このインピーダンスあるいは誘導電圧の変化からハンドル軸3aに加えられたトルクを検出することができる。
第1及び第2検出コイル124A、124Bそれぞれから出力される信号電圧VT1,VT2は差動増幅回路21に入力され増幅されてトルク信号VT3として操舵制御ECU200に入力される。
【0084】
本実施形態においても、回転終端装置6がハンドル軸3aの軸方向位置において、トルクセンサ120とウォームホイールギア5b(減速機構(補助トルク伝達機構)5A)との間に配置される。
なお、図14において回転終端機構6は、前記した回転終端機構6A,6B,6Cを代表して表示したものであり、いずれの回転終端機構6A,6B,6Cを組み合わせても良い。
【0085】
本実施形態によれば、第1の実施形態及びその変形例と同様に、既にラック軸8がラックエンドの状態から運転者が更に操向ハンドル3を切り増し操作しても、回転終端機構6に回転操作が阻止される。
また、操向ハンドル3の手元に回転終端機構6が設けられるので、操向ハンドル3のハンドル軸3aのセンタと回転終端機構6のセンタ合わせの調整をし易い。
【0086】
従って、ピニオンギア7a、ラックギア8a、軸受3e、3f、3gやラックエンド8b、ラックハウジング部11Aの設計上想定すべき負荷(過負荷)を低減でき、従来これらの構成部品の耐久性を確保するために、軸受のサイズを大きくしたり、ギアのモジュールを大きくしてサイズを大きくしたり、ラックハウジング部11Aの肉厚を厚くしたり、補強リブを設ける等、構成部品の重さが大きくなる問題が解消され、構成部品を小型、軽量化でき、車両への搭載性、特に小型車両への搭載性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成図である。
【図2】図1におけるステアリングギアボックスのトルクセンサ及びピニオンギア近傍の側面図である。
【図3】トルクセンサの詳細な構成図であり、図2におけるA−A矢視断面図である。
【図4】操舵トルクが加わった状態における上部遊動部、下部遊動部及びスライダの変位を説明する図であり、(a)はニュートラル状態を示し、(b)は左操舵トルクが掛かっている状態を示し、(c)は右操舵トルクが掛かっている状態を示す図である。
【図5】トルクセンサからの電圧出力信号VT1,VT2と、差動増幅回路で増幅されたトルク検出電圧(トルク信号)VT3を説明する図である。
【図6】本実施形態における回転終端機構の模式的な平面断面図であり、(a)は操向ハンドルが左右に対してニュートラル位置に有る場合を示す図であり、(b)は、目一杯の左操舵状態(「左ラックエンド」の状態)を示す図であり、(c)は、目一杯の右操舵状態(「右ラックエンド」の状態)を示す図である。
【図7】操舵制御ECUの機能ブロック図である。
【図8】(a)はベース信号演算部における入力であるトルク信号に対して出力するベース信号の関係を示すデータテーブルであり、(b)はダンパ補償信号演算部における入力である電動機の回転速度に対して出力する補償信号の関係を示すデータテーブルである。
【図9】(a)は操向ハンドルの操作量の時間推移を示す図であり、(b)は電動機の回転角と、前輪の転舵角の変化の時間推移を重ねて示す図であり、(c)は前輪の転舵力(トルク)の変化の時間推移を示す図である。
【図10】第1の変形例の回転終端機構の模式的な平面断面図であり、(a)は操向ハンドルが左右に対してニュートラル位置に有る場合を示鈴であり、(b)は、目一杯の左操舵状態(「左ラックエンド」の状態)を示す図であり、(c)は、目一杯の右操舵状態(「右ラックエンド」の状態)を示す図である。
【図11】遊星歯車減速ユニットを用いた第2の変形例の回転終端機構の模式的な斜視図である。
【図12】第3の変形例の回転終端機構の模式的な平面断面図であり、(a)は操向ハンドルが左右に対してニュートラル位置に有る場合を示鈴であり、(b)は、目一杯の左操舵状態(「左ラックエンド」の状態)を示鈴であり、(c)は、目一杯の右操舵状態(「右ラックエンド」の状態)を示す図である。
【図13】第3の変形例の回転終端機構を構成する要素を個別に示した斜視図であり、(a)は上ストッパの外形斜視図、(b)はネジ部に固定された回転ストッパの外形斜視図、(c)は下ストッパの外形斜視図、(d)はガイド部材の外形斜視図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成図である。
【符号の説明】
【0088】
1L、1R 前輪
3 操向ハンドル(操作子)
3a ハンドル軸
3d 入力軸
4 電動機
5A、5B 減速機構
5a ウォームギア
5b ウォームホイールギア
6A,6B,6B’,6C 回転終端機構
7 ピニオン軸
7a ピニオンギア
8 ラック軸
8a ラックギア
8b ラックエンド
9 タイロッド
10A、10B,10C ステアリングギアボックス
11A,11B,11C ラックハウジング部
11a ハウジングエンド
13A、13B,13C リッド部
21 差動増幅回路
23 電動機駆動回路
40 ストッパ
41 回転ストッパ
41a,43a 突出部
43 固定ストッパ
51 内軸(入力軸)
51a 外歯ギア
53 回転ストッパ(リングギア)
53a 内歯ギア
53b 突出部(第1の突出部)
54 固定ストッパ
54a 突出部(第2の突出部)
55 減速機構
56 太陽ギア
57 遊星ギア
57a 遊星キャリア
57b 突出部(第1の突出部)
58 外輪ギア
58b 突出部(第2の突出部)
59 遊星歯車減速機ユニット(減速機構)
61 ネジ部
62 回転ストッパ(第1のストッパ)
62a 突出部(第1の突出部)
63 上ストッパ(第2のストッパ)
63c 突出部(第2の突出部)
65 下ストッパ(第3のストッパ)
65c 突出部(第3の突出部)
100A,100C 電動パワーステアリング装置
110,120 トルクセンサ
111 トーションバー
200 操舵制御ECU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、操作子からの入力により生じる操舵トルクに応じて、電動機が補助トルクを発生し、該補助トルクを前輪のステアリング系に伝達する電動パワーステアリング装置において、
前記操舵トルクを検出するトルクセンサと前記前輪のステアリング系に前記補助トルクを伝達する補助トルク伝達機構との間に、前記操作子の動作終端を形成する回転終端機構を設けたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記回転終端機構は、減速機構を有し、前記動作終端によって規制される前記操作子の許容回転操作範囲を変更することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記回転終端機構は、
前記操作子の回転軸からの回転が伝達される、外歯ギアを有する入力軸と、
前記内軸の外歯ギアと噛み合う内歯ギアを有する、外周側に第1の突出部を設けたリングギアと、
前記リングギアを囲む環状の固定部と、
からなり、
前記内軸の外歯ギアと前記リングギアの内歯ギアが前記減速機構を構成し、
前記固定部の内周側には、前記第1の突出部に当接して前記第1の突出部の回動を規制する第2の突出部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記回転終端機構は、
前記減速機構としての遊星歯車減速機ユニットと、
前記遊星歯車減速機ユニットの外輪ギアを固定する固定部と、からなり、
前記遊星歯車減速機ユニットの遊星キャリアに前記第1の突出部を設け、
前記遊星歯車減速機ユニットの太陽ギアに前記操作子の回転軸からの回転が伝達され、
前記固定部又は前記外輪ギアには、前記第1の突出部に当接して前記第1の突出部の回動を規制する第2の突出部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記回転終端機構は、
前記操作子の回転軸からの回転が伝達される、雄ネジを有するネジ部と、
前記ネジ部に固定され、外周側に第1の突出部を設けた環状の第1のストッパと、
前記ネジ部と噛み合う雌ネジを有して、前記第1のストッパの上方に配置され、その下面側に前記第1の突出部に当接する第2の突出部を設けた第2のストッパと、
前記ネジ部と噛み合う雌ネジを有して、前記第1のストッパの下方に配置され、その上面側に前記第1の突出部に当接する第3の突出部を設けた第3のストッパと、
前記第1及び第2のストッパの回転を阻止して、前記ネジ部の軸方向に沿って前記第2及び第3のストッパを移動させるガイド部材と、
から構成され、
前記ネジ部、前記第2のストッパ、前記第3のストッパ及び前記ガイド部材が前記減速機構を構成することを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記トルクセンサは、磁歪式トルクセンサであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−52628(P2010−52628A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221214(P2008−221214)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】