説明

カバー装置

【課題】 ハウジング内からの騒音が貫通穴から漏れることを防止するとともに、貫通穴からハウジング内部に異物が侵入しないようなカバー装置を提供する
【解決手段】 ハウジング20の筒状部およびスパイラルケーブルケース41には、貫通穴46を挟んで軸線方向に離間した位置に係合部48,49がそれぞれ設けられ、各係合部48,49には、軸線方向と直角な当接面51,52を全周に渡って形成するとともに、係入溝50,53を刻設し、カバー47は、弾性体で形成され、ハウジング20の筒状部に被せられ軸線方向に弾性的に変形可能な筒状部47aを備え、カバー47の筒状部47aの両端には、一対の係合部48,49の各当接面51,52と係合する一対の係合面54,55を、カバー47が自由状態のとき前記一対の当接面51,52の間隔Lより離れた位置に全周に渡って形成し、各係入溝50,53に係入する一対の係入突起56,57を全周に渡って形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングの内部にモータを収納したモータ駆動装置または、ステアリングハンドルの操舵角に対する転舵輪の転舵角の比を可変制御する伝達比可変機構におけるカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のステアリング機構において、操舵ハンドルの操舵角と転舵輪の転舵角との比率を可変制御する伝達比可変機構が知られている。
【0003】
このような伝達比可変機構は、例えば特許文献1に開示されるように、操舵ハンドルとラックアンドピニオン機構等のギヤ装置の間に配置されている。伝達比可変操舵装置は、特許文献1の図1および図2に示されるように、操舵ハンドル(2)に連結された入力軸(11)と、この入力軸(11)と一体的に回転するハウジング(13)と、ハウジング(13)内部に収納されたモータ(30)と、ハウジング(13)およびモータ(30)の回転数比に応じた減速比の回転を出力軸(12)に出力する波動歯車機構(減速機)(40)とを備えている。この特許文献1に記載される装置は、ステアリング機構の構造を変更することなく伝達比可変機構の装着を可能にできる利点がある。その反面、ハンドルの回転に伴い、伝達比可変機構のハウジング(13)に内蔵されたモータ(30)自体をハンドル軸とともに回転せざるをえないため、モータ(30)に電気信号を供給しつつモータ自体の回転を許容するためのスパイラルケーブル(29)を介して外部の制御装置とモータ(30)とを電気的に結合している。このモータ(30)とスパイラルケーブル(29)との結合は、スパイラルケーブル(29)を収納するケーブルケース(20)とハウジング(13)を組付けた後に行われる。すなわち、モータ(30)、スパイラルケーブル(29)のそれぞれから導出され、ハウジング(13)内に配置されたモータバスバー(31)とケーブルバスバー(21)とをハウジング(13)に形成された窓部(貫通穴)(13e)を通して溶接する。この後、ハウジング(30)に形成された窓部(13e)は、樹脂カバー(16)にて蓋することで外部からの異物の浸入を防止している。
【特許文献1】特開2003−219545号公報(段落番号[0017]、[0027]、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、樹脂カバー(16)は、剛性が高く、窓部(13e)だけを塞ぐ構成であり、窓部(13e)との周縁に微小な隙間ができる。このため、外部から微小な異物や液体が浸入する恐れがあるうえ、モータ(30)の作動音が外部に漏れる恐れがあった。また、この種の伝達比可変機構は、ステアリング機構の途中に設けられる性質上、車両の運転室内に配置されることとなるため、一層の静粛性が求められている。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点を解決するためになされたもので、ハウジング内からの騒音が貫通穴から漏れることを防止するとともに、貫通穴からハウジング内部に微小な異物や液体が侵入しないようなカバー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、騒音源を内蔵するハウジングの筒状部に貫通穴が穿設され、貫通穴をカバーで覆うカバー装置において、ハウジングの筒状部の外周には、貫通穴を挟んで軸線方向に離間した位置に一対の係合部が一体的に設けられ、各係合部には、軸線方向と直角な当接面が全周に渡って形成されるとともに、係入溝が軸線方向または軸線方向と直角な方向に全周に渡って刻設され、前記カバーは、弾性体で形成され、ハウジングの筒状部に被せられ前記軸線方向に弾性的に変形可能な筒状部を備え、カバーの筒状部の両端には、一対の係合部の各当接面と係合する一対の係合面が、カバーが自由状態のとき前記一対の当接面の間隔より離れた位置で全周に渡って形成されるとともに、各係入溝に係入する一対の係入突起が全周に渡って形成されたことである。
【0007】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、操舵ハンドルの回転力を伝達する入力軸と一体回転する筒状のハウジングにモータを収納し、前記モータおよびハウジングの回転を出力軸に減速して伝達する減速機構を設け、前記モータに電力を供給するスパイラルケーブルを収納するスパイラルケーブルケースを前記ハウジングの一方に固定し、スパイラルケーブルとモータの接続作業を行う貫通穴をハウジングの筒状部に穿設し、貫通穴をカバーで覆うようにした伝達比可変機構におけるカバー装置において、ハウジングの筒状部およびスパイラルケーブルケースには、貫通穴を挟んで軸線方向に離間した位置に係合部がそれぞれ設けられ、各係合部には、軸線方向と直角な当接面が全周に渡って形成されるとともに、係入溝が軸線方向または軸線方向と直角な方向に全周に渡って刻設され、前記カバーは、弾性体で形成され、ハウジングの筒状部に被せられ前記軸線方向に弾性的に変形可能な筒状部を備え、カバーの筒状部の両端には、一対の係合部の各当接面と係合する一対の係合面が、カバーが自由状態のとき前記一対の当接面の間隔より離れた位置で全周に渡って形成されるとともに、各係入溝に係入する一対の係入突起が全周に渡って形成されたことである。
【0008】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1また請求項2において、カバーをハウジングの筒状部に嵌挿させるとともに、係入突起を係入溝に係入させるための冶具が当接する環状肩部をカバーの筒状部の外周面に形成したことである。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した請求項1の発明によれば、カバーをハウジングの外周に挿入して貫通穴を覆う場合に、一対の当接面が各係合面に当接し、係入突起が係入溝に係入される。このとき、カバーの筒状部の両端に形成される一対の係合面は、一対の当接面の間隔より離れた位置関係に形成されているので、係合面と当接面とは、カバーの筒状部の弾性力で当接され密着する。この結果、ハウジングに形成された貫通穴は、カバーの筒状部に覆われ、貫通穴の両側において、一対の当接面が各係合面に当接し、カバーの円筒部両端に形成された係入突起が係合部に形成された係入溝に係入されるので、外部と完全に遮蔽され、貫通穴からハウジング内部の騒音が外部に漏れなくなるとともに、外部から異物がハウジング内部に浸入することを防止することができる。
【0010】
上記のように構成した請求項2の発明によれば、カバーをハウジングの外周に挿入して貫通穴を覆う場合に、一対の当接面が各係合面に当接し、係入突起が係入溝に係入される。このとき、カバーの筒状部の両端に形成される一対の係合面は、一対の当接面の間隔より離れた位置関係に形成されているので、係合面と当接面とは、カバーの筒状部の弾性力で当接され密着する。この結果、ハウジングに形成された貫通穴は、カバーの筒状部に覆われ、貫通穴の両側において、一対の当接面が各係合面に当接し、カバーの円筒部両端に形成された係入突起が係合部に形成された係入溝に係入されるので、外部と完全に遮蔽され、貫通穴からハウジング内部の騒音が外部に漏れなくなるとともに、外部から異物がハウジング内部に浸入することを防止され、伝達比可変機構の静粛性および防塵性を向上することができる。
【0011】
上記のように構成した請求項3の発明によれば、カバーをハウジングの筒状部に被せるとき、環状肩部に冶具を係合させてカバーを貫通穴が形成された位置まで力のロスなく押し込むことができることから、カバーの装着作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、本実施の形態の電動パワーステアリング装置10は、主として、ステアリングギヤボックス11と、伝達比可変機構12と、センサ機構13とによって構成されている。
【0013】
ステアリングギヤボックス11の入力シャフト14には、ステアリングホイール15に連結されたステアリングシャフト16から伝達比可変機構12を介して操舵力が伝達される。電動パワーステアリング装置10の出力シャフトには、ステアリングギヤボックス11内においてラックシャフト17が噛合されている。ラックシャフト17の両端にはそれぞれタイロッド18の一端が接続され、各タイロッド18の他端は図略のナックルアームを介して転舵輪19に接続されている。
【0014】
前記ステアリングホイール15の操舵角は、ステアリングシャフト16に設けたセンサ機構13によって検出されるようになっている。センサ機構13は、例えば、特開2004−117328号公報に記載されているような、ツインレゾルバ式のセンサにて構成され、ステアリングホイール15に加えられる操舵角および操舵トルクが検出される。転舵輪19の転舵角は、ステアリングギヤボックス11に内蔵された図略のアシスト用電動モータの回転角センサによって検出されるようになっている。これらステアリングホイール15の操舵角および転舵輪19の転舵角はECU86に入力される。ECU86には、また、車両速度を検出する車速センサ87から出力される車両速度も入力される。ECU86は、これら操舵角、転舵角ならびに車両速度に基づいて、伝達比可変機構12を制御するための制御信号を出力するようになっている。
【0015】
前記伝達比可変機構12は、車速に応じてステアリングホイール15の操舵角に対する転舵輪19の転舵角の比(伝達比)を可変にする機能を有する。
【0016】
伝達比可変機構12は、図2に示すように、筒状のハウジング20を備える。当該ハウジング20は、フロントハウジング21とリアハウジング22から構成されている。フロントハウジング21は、有底筒状を成し、リアハウジング22は両端の開口した筒状を成している。フロントハウジング21の開口端の内周には、リアハウジング22の一方の開口端の外周が嵌合されている。フロントハウジング21の有底端には、凹部21aが形成され、この凹部21aの底面には、連結穴21bが形成されている。連結穴21bには、ステアリングシャフト16に連結された自在継手23の一端が嵌合されている。フロントハウジング21の外周には、長穴状の貫通穴46が穿設されている。
【0017】
リアハウジング22の他方の開口端には、円錐状の蓋部材24が嵌合し、この蓋部材24には前記ステアリングギヤボックス11の入力シャフト14に連結された出力軸25が回転可能に軸承されている。 フロントハウジング21とリアハウジング22のつなぎ目には、係合部48が配置されている。この係合部48は、フロントハウジング21の開口側の外周縁に全周に渡って刻設された係入溝50と、リアハウジングの外周に軸線方向と直角に形成された当接面51とから構成されている。
【0018】
前記ハウジング20内には、前記出力軸25に結合されたアダプタ部26、減速機(差動機構)27、モータ(DCブラシレスモータ)28、およびロック機構(一部図示省略)29が収容されている。減速機27は、一例として、波動歯車機構からなり、後に詳細に述べるように、ドリブンギヤ30と、ステータギヤ31と、波動発生装置32と、フレキシブルギヤ33とから構成されている。
【0019】
前記アダプタ部26には、凸部26aが形成され、この凸部26aの外周には、ドリブンギヤ30が圧入結合されている。ドリブンギヤ30と軸線方向に対向する位置には、ステータギヤ31が配置され、ステータギヤ31は、リアハウジング22の内周面に圧入結合されている。
【0020】
ドリブンギヤ30およびステータギヤ31の内周面には、それぞれ異なる歯数(ドリブンギヤ30の歯数<ステータギヤ31の歯数)のギヤが形成されている。ドリブンギヤ30およびステータギヤ31の内側には、それぞれのギヤに同時に噛合するフレキシブルギヤ33が設けられている。すなわち、フレキシブルギヤ33の外側に形成された歯(歯数は、ステータギヤ31の歯数と同じ)に、ドリブンギヤ30およびステータギヤ31の内側に形成された歯が噛合している。フレキシブルギヤ33の内側は、波動発生装置32の外輪上に嵌合されている。
【0021】
前記リアハウジング22の内周には、モータ28のケース34が固定されている。モータ28は、モータシャフト35を有し、モータシャフト35はケース34にベアリング36、37を介して回転可能に支持され、波動発生装置32のカムに接続されている。
【0022】
ケース34は略円筒形状をなし、その内周には電磁コイルであるステータ38が固定されている。ステータ38の内周には、ロータ39がモータシャフト35の外周に一体に取り付けられている。また、モータ28のステータ38からは、フロントハウジング21側にモータバスバー40が延設されている。
【0023】
この構成では、モータ28のモータシャフト35が回転すると、波動発生装置32のカムが回転してフレキシブルギヤ33が回転される。この際、フレキシブルギヤ33は、楕円形に変形した状態でステータギヤ31内を回転し、同軸上のドリブンギヤ30を回転させる。すなわち、ドリブンギヤ30の歯数がステータギヤ31の歯数より少ないため、波動発生装置32が1回転した際、ドリブンギヤ30は、波動発生装置32の回転方向と同方向に歯数の差分だけ回転する(すなわち、アクチュエータ作動角=モータ28の回転角×減速比(減速比=歯数差/ドリブンギヤ30の歯数)。一方、ステアリングホイール15の回転によりステータギヤ30が回転すると、アクチュエータ作動角が付加されて出力軸25に伝達される。
【0024】
フロントハウジング21内には、ロック機構29が収納されている。このロック機構29は、電源オフ時やシステム欠陥時に、モータシャフト35をハウジング20に対して固定(ロック)する。これによって、ロック状態においても、ステアリングホイール15の回転を転舵輪19に確実に伝達するものであるが、既に公知の技術であるので、説明を省略する。
【0025】
フロントハウジング21の有底部の外周には、合成樹脂等で作られたスパイラルケーブルケース41が挿入されている。スパイラルケーブルケース41は、インナケース42およびアウタケース43とから構成されている。インナケース42は前記フロントハウジング21の有底部の外周面に嵌合する円筒部42aが形成され、アウタケース43はインナケース42の円筒部42aと対向して円筒部43aが形成されている。円筒部42aの両端からは、円板状のフランジ部42b、42cがアウタケース43の円筒部43aの両端に当接するように延設され、これら円筒部42a、43aおよびフランジ部42b、42cによって区画される空間にスパイラルケーブル44が収納されている。このスパイラルケーブル44の一端はスパイラルケーブルバスバー45により、スパイラルケーブルケース41のフロントハウジング側端面より導出され、フロントハウジング21に設けられた貫通穴46を通じてフロントハウジング21内に伸び、このスパイラルケーブルバスバー45は、前記モータバスバー40と溶接接合されている。一方、スパイラルケーブル44の他端は、前記ECU86に接続されている。
【0026】
インナケース42のフランジ部42bには、フロントハウジング21の外周に嵌合する係合部49が形成されている。この係合部49は円筒状に形成され、先端にはフロントハウジング21の軸線と直角な当接面52が形成され、この当接面52とフロントハウジング21との間には、係入溝53が全周に渡って軸線方向に刻設されている。
【0027】
フロントハウジング21の外周は、カバー47に包囲されている。このカバー47は弾性体、例えばEPDM等を材料にして製造される硬質ゴムから形成されている。カバー47は、円筒状を成し、貫通穴46を覆うようにフロントハウジング21の円筒部に被せられる軸線方向に弾性変形可能な円筒部(筒状部)47aが備えられている。カバー47の円筒部47aの両端には、前記スパイラルケーブルケース41の係合部49およびハウジング20の係合部48に形成された各当接面51、52と係合する一対の係合面54、55が形成されている。係合面55には、係合部49に形成された係入溝53に係入する係入突起56が軸線方向に向かって突設され、係合面54の内周側には、係入溝50に係入する係入突起57が軸線方向と直角な方向に向かって突設されている。なお、カバー47の円筒部47aの両端に形成される一対の係合面54、55は、カバー47の円筒部47aが自由状態にあるとき前記一対の当接面51、52の間隔Lより離れた位置関係となるように形成されている。また、カバー47の円筒部47a外周には、環状肩部47dが形成されており、環状肩部47dに環状の冶具を押し当てることによって係入突起56が係入溝53に係入される。
【0028】
次に、上記した構成における伝達比可変機構12の組付け手順について説明する。まず、予めモータ28を組み付け、完成したモータ28のケース34およびモータシャフト35にロック機構29を設置する。次に、出力軸25が連結された減速機27のステータギヤ31をリアハウジング22に圧入し、前記のロック機構29が取り付けられたモータ28を、フロントハウジング21に固定する。そして、減速機27とモータ28のモータシャフト35を連結するとともに、フロントハウジング21とリアハウジング22を組み付ける。さらに、フロントハウジング21の連結穴21bに自在継手23を連結し、凹部21a外周に沿って、スパイラルケーブル44を収納したスパイラルケーブルケース41を挿入する。このとき、フロントハウジング21の貫通穴46よりスパイラルケーブルバスバー45をフロントハウジング21内に導入する。これにより、スパイラルケーブルバスバー45とモータバスバー40の回転方向の相対位置を一致させる。そして、貫通穴46からスパイラルケーブルバスバー45とモータバスバー40を溶接する。
【0029】
この後、カバー47を出力軸25側からフロントハウジング21の外周に挿入し、環状段部47dに環状の冶具を押し当てつつ貫通穴46を覆う位置までカバー47を移動する。そして、一対の当接面51、52が各係合面51、54に当接し、係入突起56、57が係入溝50、53に係入する。このとき、カバー47の円筒部47aの両端に形成される一対の係合面54、55は、前記一対の当接面51、52の間隔Lより離れた位置関係となるように形成されていることから、カバー47の円筒部47aは、両端から押圧されて外周に膨らみを持った樽状に弾性変形する。そして、円筒部47aはこの樽状に弾性変形した状態から弾性力によって元の形状に戻ろうと、両端からの押圧力に反発して係合面54、55を離間する方向に押し戻す。このため、一対の係合面54,55は、各当接面51,52にさらに密着させられる。この結果、フロントハウジング21に形成された貫通穴46は、カバー47の円筒部47aに覆われ、貫通穴46の両側において、一対の当接面51、52が各係合面54、55に当接し、係入突起56、57が係入溝50、53に係入されるので、外部と完全に遮蔽され、貫通穴46からハウジング20内部のモータ28の作動音が外部に漏れなくなるとともに、外部から異物がハウジング内部に浸入することが防止される。
【0030】
さらに、各当接面51、52と係入溝50、53とを隣接して形成することにより、ハウジング20の外部から内部に貫通穴46を通って異物が浸入しようとした場合、係合面54、55と当接面51、52の間、および係入溝50、53と係入突起56、57の間を連続して通過しなければならないことになり、微小な異物や液体も浸入できなくしている。
【0031】
上記した構成の電動パワーステアリング装置10によれば、運転手がステアリングホイール15を操舵すると、ステアリングホイール15に加えられた操舵トルクがセンサ機構13によって検出され、検出された操舵トルクに応じて、アシスト用電動モータが制御される。
【0032】
また、上記した構成の電動パワーステアリング装置10によれば、ロック機構29がアンロックされている状態において、運転手がステアリングホイール15を操舵すると、ステアリングホイール15の操舵角がセンサ機構13によって検出される。ECU86は、センサ機構13からの操舵角を入力するとともに、車速センサ87より車両速度を入力する。そして、ECU86は車両速度および操舵角に基づき目標舵角の演算を行う。この目標舵角に基づいて、モータ28を制御する制御信号がECU86より出力される。
【0033】
ECU86より出力された制御信号は、伝達比可変機構12のモータ28に送られ、この制御信号に基づいてモータ28が回転駆動される。モータ28が回転されると、モータシャフト35を介して波動発生装置32のカムが回転され、フレキシブルギヤ33が回転される。フレキシブルギヤ33は、楕円形に変形した状態でステータギヤ31内を回転し、同軸上のドリブンギヤ30を回転させる。この際、ドリブンギヤ30の歯数がステータギヤ31の歯数より少ないため、波動発生装置32が1回転した際、ドリブンギヤ30は、波動発生装置32の回転方向と逆方向に歯数の差分だけ回転する。
【0034】
ドリブンギヤ30の回転は、ステアリングギヤボックス11に内蔵されたピニオンシャフトに伝達され、ラックシャフト17を軸動させる。これにより、ステアリングホイール15の操舵角と転舵輪19の転舵角との比を変化させることができる。そして、ステアリングギヤボックス11に内蔵された図略のアシスト用電動モータの回転角センサにより検出された転舵輪19の転舵角がECU86にフィードバックされ、確実に目標舵角に対応した転舵角を転舵輪19に与えることができるようにしている。
【0035】
上記の実施の形態においては、伝達比可変機構12の減速機27を、波動歯車機構からなる減速機を例に説明したが、減速機27はこれに限定されるものではなく、例えば、サンギヤ、インターナルギヤ、およびプラネタリギヤ等からなる遊星歯車機構であってもよい。
【0036】
また、上記の実施の形態においては、センサ機構13を、ツインレゾルバ式で説明したが、センサ機構13はこれに限定されるものではなく、例えば、インダクタンス可変式トルクセンサ等、ステアリングホイール15に加えられた操舵トルクを検出する機能を有するあらゆる方式のものを適用可能である。
【0037】
また、上記の実施の形態においては、カバー47を、伝達比可変機構12のハウジング20に形成した貫通穴46を塞ぐ構成を例に説明したが、カバー装置は、これに限定されるものではなく、ハウジング内部にモータを備え、一部に貫通穴が形成されるような構成の装置に適用可能である。さらに、スパイラルケーブルケース41をハウジング20に固定し、これらスパイラルケーブルケース41とハウジング20にそれぞれ係合部48,49を形成する例を説明したが、スパイラルケーブルケース41を有しないハウジング20のみの装置にも適用可能である。この場合、例えば、図3に示すように、ハウジング20の円筒部に穿設される貫通穴46を挟んで、係合部48、49をハウジング20の円筒部に形成し、これら係合部48、49に当接面51、52と係入溝50、53を形成するようにすればよい。また、図3に示すように、一対の係入溝50、53は両者とも軸線方向と直角な方向に刻設してもよい。また、上記実施の形態では、騒音源としてモータ28を例として挙げたが、騒音源としては、油圧ピストン等のアクチュエータや電気リレーであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る伝達比可変機構を備えたステアリング装置の全体構成図である。
【図2】本発明に係る伝達比可変機構の断面図である。
【図3】本発明に係る他の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
10…電動パワーステアリング装置、11…ステアリングギヤボックス、12…伝達比可変機構、13…センサ機構、14…入力シャフト、15…ステアリングホイール、17…ラックシャフト、19…転舵輪、20…ハウジング、21…フロントハウジング、22…リアハウジング、27…減速機、28…モータ、29…ロック機構、40…モータバスバー、41…スパイラルケーブルケース、42…インナケース、42a,43a…円筒部、42b,42c…フランジ部、43…アウタケース、44…スパイラルケーブル、45…スパイラルケーブルバスバー、46…貫通穴、47…カバー、47a…円筒部(筒状部)、48,49…係合部、50,53…係入溝、51,52…当接面、54,55…係合面、56,57…係入突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音源を内蔵するハウジングの筒状部に貫通穴が穿設され、該貫通穴をカバーで覆うカバー装置において、
前記ハウジングの筒状部の外周には、前記貫通穴を挟んで軸線方向に離間した位置に一対の係合部が一体的に設けられ、
前記各係合部には、前記軸線方向と直角な当接面が全周に渡って形成されるとともに、係入溝が前記軸線方向または軸線方向と直角な方向に全周に渡って刻設され、
前記カバーは、弾性体で形成され、前記ハウジングの筒状部に被せられ前記軸線方向に弾性的に変形可能な筒状部を備え、
前記カバーの筒状部の両端には、前記一対の係合部の各当接面と係合する一対の係合面が、前記カバーが自由状態のとき前記一対の当接面の間隔より離れた位置で全周に渡って形成されるとともに、前記各係入溝に係入する一対の係入突起が全周に渡って形成されたことを特徴とするカバー装置。
【請求項2】
操舵ハンドルの回転力を伝達する入力軸と一体回転する筒状のハウジングにモータを収納し、前記モータおよびハウジングの回転を出力軸に減速して伝達する減速機構を設け、前記モータに電力を供給するスパイラルケーブルを収納するスパイラルケーブルケースを前記ハウジングの一方に固定し、スパイラルケーブルと前記モータの接続作業を行う貫通穴を前記ハウジングの筒状部に穿設し、該貫通穴をカバーで覆うようにした伝達比可変機構におけるカバー装置において、
前記ハウジングの筒状部および前記スパイラルケーブルケースには、前記貫通穴を挟んで軸線方向に離間した位置に係合部がそれぞれ設けられ、
前記各係合部には、前記軸線方向と直角な当接面が全周に渡って形成されるとともに、係入溝が前記軸線方向または軸線方向と直角な方向に全周に渡って刻設され、
前記カバーは、弾性体で形成され、前記ハウジングの筒状部に被せられ前記軸線方向に弾性的に変形可能な筒状部を備え、
前記カバーの筒状部の両端には、前記一対の係合部の各当接面と係合する一対の係合面が、前記カバーが自由状態のとき前記一対の当接面の間隔より離れた位置で全周に渡って形成されるとともに、前記各係入溝に係入する一対の係入突起が全周に渡って形成されたことを特徴とするカバー装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記カバーを前記ハウジングの筒状部に嵌挿させるとともに、前記係入突起を係入溝に係入させるための冶具が当接する環状肩部を前記カバーの筒状部の外周面に形成したことを特徴とするカバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−56284(P2006−56284A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237400(P2004−237400)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【出願人】(000001247)光洋精工株式会社 (7,053)
【Fターム(参考)】