説明

コアレス多層配線板及びその製造方法

【課題】平滑な樹脂面であっても回路を形成する金属層との接着力を向上させることが可能で反りの発生が低減されたコアレス多層配線板の製法及びコアレス多層配線板。
【解決手段】コア基板作製工程、コア基板の両接着層X上に、接着層A1と絶縁樹脂層とからなる絶縁フィルムの絶縁樹脂層を貼り合わせ、硬化処理を施し積層する工程、それぞれの面をセミアディティブ法により回路形成する工程、各接着層A1に接着層A2と絶縁樹脂層とからなる絶縁フィルムを貼り合わせ、硬化積層する工程と、各接着層A2にビアホールを形成する工程、各接着層A2上に同時に又は逐次にセミアディティブ法により回路形成する工程、を経た後、コア基板の銅箔を接着層Xから剥離し、剥離後の接着層Xにビアホールを形成するビアホール形成工程、接着層X上にセミアディティブ法により回路形成する工程を含むコアレス多層配線板の製法及びコアレス多層配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコアレス多層配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層配線板は例えば下記のようにして製造される。まず、片面又は両面に内層回路を形成した絶縁基板上に、プリプレグ(ガラス布にエポキシ樹脂を含浸し半硬化状態にした材料)を銅箔と共に重ねて熱プレスにより積層一体化する。その後、ドリルで層間接続用のスルーホールと呼ばれる穴をあけ、スルーホール内壁と銅箔表面に無電解めっきを行う。このとき、必要に応じて更に電解めっきを行って回路導体として必要な厚さとする。そして、不要な銅を除去して多層配線板が製造されるのが一般的であった。
【0003】
ところが、近年、電子機器の小型化、軽量化、多機能化が一段と進み、これに伴い、LSIやチップ部品等の高集積化が進みその形態も多ピン化、小型化へと急速に変化している。このため、多層配線板は、電子部品の実装密度を向上させるために、微細配線化の開発が進められている。これらの要求に合致する多層配線板の製造方法として、ガラスクロスを含まない絶縁樹脂をプリプレグの代わりに絶縁層として用い、必要な部分のみビアホールで接続しながら配線層を形成するビルドアップ方式の製造方法がある。当該方法によれば多層配線板の軽量化や小型化、微細化が可能となるため、今後はこのような製造方法が主流になりつつある。
【0004】
このようなビルドアップ方式の多層配線板の製造方法としては、絶縁樹脂フィルムを内層回路板にラミネートし、加熱により硬化させた後、レーザ加工によるビアホール形成し、アルカリ過マンガン酸処理等によって粗化処理とスミア処理を行って無電解銅めっきして、第二の回路と層間接続可能とするビアホールを形成させて製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。ここで、絶縁樹脂と無電解銅めっきとの接着力は、樹脂表面の粗さ(アンカー効果)により確保されている状況であり、その表面粗さRaは0.5μm以上と大きい状況であった。
【0005】
また、無電解銅めっきと樹脂との接着をこれまでよりも十分に確保することを目的として、無電解銅めっき触媒を含む接着層と、絶縁樹脂層との2層化構造の絶縁フィルムも開示されている(例えば、特許文献4参照)。
さらに、近年は薄型で高密度な回路を安価に製造することを目的に、コア基板を用いずに全層を絶縁フィルムで構成するコアレス構造基板についても種々の方法が検討されている(特許文献5,6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3290296号公報
【特許文献2】特許第3654851号公報
【特許文献3】特許第3785749号公報
【特許文献4】特許第2579960号公報
【特許文献5】特許第3935456号公報
【特許文献6】特許第4126052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ビルドアップ方式の多層配線板においては、近年の半導体パッケージの小型化・高密度化に伴って、さらに回路の微細化が要求されている。このような状況において、従来のような表面を粗化して得られる大きな粗化形状(アンカー効果)を利用して無電解銅めっきとの接着力を確保する方法では、10μm以下の微細な回路はショート不良やオープン不良が発生し、歩留り良く製造することができない。一方で、粗化形状を小さくすると、無電解銅めっきとの接着力が低下しラインが剥離する等の不良が発生してしまう。このため、平滑な表面で無電解銅めっきと高接着力を示す絶縁樹脂フィルムが必要となっていた。
【0008】
また、特許文献4に記載のフィルムは、表面の粗化形状を平滑にすることを目的としておらず、まためっき触媒を含んでいるため、近年の微細化の半導体パッケージ用基板としては絶縁信頼性が不十分であった。
【0009】
このような状況において、本発明は、平滑な樹脂面であっても回路を形成する金属層(無電解銅めっき)との接着力を向上させることが可能で、反りの発生が低減された多層配線板の製造方法及び当該製造方法により得られるコアレス多層配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らはこのような課題を解決するために検討を進めた結果、下記本発明に想到し当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は下記の通りである。
【0011】
[1] 積層板の両面に剥離可能な銅箔と接着層Xとをこの順に設けてコア基板を作製するコア基板作製工程と、前記コア基板の両接着層X上に、接着層A1と絶縁樹脂層とからなる絶縁フィルムの絶縁樹脂層を貼り合わせ、硬化処理を施し積層する積層工程と、積層後に、それぞれの面を同時に又は逐次にセミアディティブ法により回路を形成する回路形成工程と、回路形成後のそれぞれの接着層A1に、接着層A2と絶縁樹脂層とからなる絶縁フィルムの絶縁樹脂層を貼り合わせ、硬化処理を施し積層する積層工程と、積層後のそれぞれの接着層A2の所定位置にビアホールを形成するビアホール形成工程と、ビアホール形成後のそれぞれの接着層A2上に同時に又は逐次にセミアディティブ法により回路を形成する回路形成工程と、を経た後、
前記コア基板の銅箔を前記接着層Xから剥離し、剥離後の接着層Xの所定位置にビアホールを形成するビアホール形成工程と、ビアホール形成後の接着層X上にセミアディティブ法により回路を形成する回路形成工程と、を含むコアレス多層配線板の製造方法。
【0012】
[2] 前記接着層X、A1及びA2のそれぞれが、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、又は架橋ゴム粒子、からなる[1]に記載のコアレス多層配線板の製造方法。
[3] 上記[1]又は[2]に記載のコアレス多層配線板の製造方法により製造されてなるコアレス多層配線板。
[4] 少なくとも一方の表面に形成された回路の一部をエッチングにより除去した後の接着層の表面粗さRaが0.3μm以下である[3]に記載のコアレス多層配線板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、平滑な樹脂面であっても回路を形成する金属層(無電解銅めっき)との接着力を向上させることが可能で、反りの発生が低減されたコアレス多層配線板の製造方法及び当該製造方法により得られるコアレス多層配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のコアレス多層配線板の製造方法の一態様のうちの一部を概略的に示す工程断面図である。
【図2】本発明のコアレス多層配線板の製造方法の一態様のうちの一部を概略的に示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のコアレス多層配線板の製造方法は、積層板の両面に剥離可能な銅箔と接着層Xとをこの順に設けてコア基板を作製するコア基板作製工程と、前記コア基板の両接着層X上に、接着層A1と絶縁樹脂層とからなる絶縁フィルムの絶縁樹脂層を貼り合わせ、硬化処理を施し積層する積層工程と、積層後に、それぞれの面を同時に又は逐次にセミアディティブ法により回路を形成する回路形成工程と、回路形成後のそれぞれの接着層A1に、接着層A2と絶縁樹脂層とからなる絶縁フィルムの絶縁樹脂層を貼り合わせ、硬化処理を施し積層する積層工程と、積層後のそれぞれの接着層A2の所定位置にビアホールを形成するビアホール形成工程と、ビアホール形成後のそれぞれの接着層A2上に同時に又は逐次にセミアディティブ法により回路を形成する回路形成工程と、を経た後、前記コア基板の銅箔を前記接着層Xから剥離し、剥離後の接着層Xの所定位置にビアホールを形成するビアホール形成工程と、ビアホール形成後の接着層X上にセミアディティブ法により回路を形成する回路形成工程と、を含むコアレス多層配線板の製造方法である。
以下では、まず部材や各層を構成する材料について説明し、その後、上記各工程を説明する。
【0016】
(コア基板)
コア基板は、積層板の両面に剥離可能な銅箔と接着層Xとをこの順に設けてられてなる。
接着層X1をはじめとした接着層(接着層X1、A1、A2及びその他、これらの接着層と同一の目的で形成される接着層、以下、「接着層」という場合は、これらをまとめて指す)を形成するための接着層用樹脂組成物としては、(A)多官能型エポキシ樹脂(以下、「(A)成分」ということがある)、(B)エポキシ樹脂硬化剤(以下、「(B)成分」ということがある)、(C)ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、又は架橋ゴム粒子(以下、「(C)成分」ということがある)からなることが好ましい。
【0017】
(A)成分である多官能型エポキシ樹脂とは、分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、フェノールノボラック型エポキシ樹脂や、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。特に、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、又はアラルキルノボラック型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明におけるアラルキルノボラック型エポキシ樹脂はビフェニル構造を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂とは、分子中にビフェニル誘導体の芳香族環を含有したアラルキルノボラック型のエポキシ樹脂をいい、例えば、下記式(1)(式中のpは、1≦p≦5(好ましくは1.5≦p≦3)を満たす)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0018】
【化1】

【0019】
式(1)で示されるエポキシ樹脂の市販品としては、日本化薬株式会社製のNC−3000(上記式(1)におけるpが1.7)、NC−3000−H(上記式(1)におけるpが2.8)が挙げられる。(A)成分の配合量は、溶剤を除いた樹脂組成物の全固形分中の割合で20〜60質量%であることが好ましい。(A)成分の配合量を20質量%以上とすることで、はんだ耐熱性の低下を抑制し、60質量%以下とすることで回路導体との接着強度を良好に保つことができる。
【0020】
(B)成分であるエポキシ樹脂硬化剤としては、各種フェノール樹脂類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジット類等が使用できる。フェノール樹脂類としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等を使用することができる。酸無水物類としては、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸等を使用することができる。アミン類としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等を使用することができる。信頼性を向上させるためには、ノボラック型フェノール樹脂であることが好ましく、トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂であると金属箔の引き剥がし強さや化学粗化後の無電解めっきの引き剥がし強さが向上し、さらに好ましい。
【0021】
本発明におけるトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂とは、ノボラック型フェノール樹脂の主鎖にトリアジン環を含むノボラック型フェノール樹脂を示し、トリアジン環を含むクレゾールノボラック型フェノール樹脂でも構わない。窒素含有量は、トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂中、10〜25質量%であることが好ましく、12〜19質量%であることがより好ましい。分子中の窒素含有量がこの範囲であると、接着性や耐熱性が良好となる。トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂は、数平均分子量が500〜600であるものを用いることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0022】
なお、トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂は、フェノールとアルデヒドとトリアジン環含有化合物をpH5〜9の条件下で反応させて得ることができる。フェノールに換えクレゾールを用いるとトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂となる。クレゾールは、o−、m−、p−クレゾールのいずれも使用することができ、トリアジン環含有化合物としてはメラミン、グアナミン及びその誘導体、シアヌル酸及びその誘導体を使用することができる。
市販品としては、DIC株式会社製のトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂フェノライトLA−1356(窒素含有量18質量%)が挙げられる。
【0023】
(B)成分は、エポキシ基に対して0.5〜1.5当量であるのが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤がエポキシ基に対して0.5〜1.5当量とすることで外層銅との接着性、Tgや絶縁性を良好な状態とすることができる。
【0024】
(C)成分であるポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、又は架橋ゴム粒子は特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分と均一に分散し、粗化形状が形成できるものが好ましい。またこれらは、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0025】
(C)成分の配合量は、溶剤を除いた樹脂組成物の全固形分中の割合で10〜40質量%であることが好ましい。10〜40質量%であることで、耐熱性を良好に維持しながら、樹脂の強靭性や伸び率の低下を抑え、さらに緻密な粗化形状が得られやすくなってめっき銅との接着力が低下を防ぐことができる。
【0026】
(C)成分のうち、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びポリエーテルスルホン樹脂は、エポキシ樹脂組成物並びにその溶剤に溶解することが好ましいが、微細な形状で均一に分散していても構わない。
これらの市販品としては、日本化薬株式会社製のゴム変性ポリアミド樹脂:BPAM−154、日立化成工業株式会社製のポリアミドイミド:HPC−9100、HCP−7200、住友化学株式会社製ポリエーテルスルホン樹脂:スミカエクセル5003P、4100P等がある。
【0027】
(C)成分のうち、架橋ゴム粒子の平均一次粒径は1μm以下であることが好ましい。材質としては、アクリロニトリルブタジエンの共重合物として、アクリロニトリルとブタジエンとを共重合した架橋NBR粒子や、アクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸等のカルボン酸とを共重合したもの、ポリブタジエンやNBR、シリコンゴムをコアとしアクリル酸誘導体をシェルとした、いわゆるコア−シェルゴム粒子が使用可能である。
【0028】
例えば、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子の市販品としては、日本合成ゴム株式会社製のXER−91が挙げられ、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子はロームアンドハース電子材料株式会社製のパラロイドEXL2655やガンツ化成工業株式会社製のAC−3832が挙げられる。
【0029】
また接着層には、(D)成分としてヒュームドシリカを添加してもよい。ヒュームドシリカはどのようなものでも良いが、絶縁信頼性、耐熱性を考慮すれば、エポキシ樹脂中での分散性が良好なものが好ましく、表面を疎水性化処理した例えば日本アエロジル株式会社製のAEROSIL R972(商品名)や同社製AEROSIL R202等が使用できる。その含有量は、接着層用樹脂組成物の固形分中で3〜20質量%の範囲になるようにするのがレーザ加工性を良好にするために好ましい。
【0030】
ヒュームドシリカの配合量は、溶剤を除いた樹脂組成物の全固形分中の割合で、3〜20質量%であることが好ましい。ヒュームドシリカの含有量が3質量%以上であることでレーザ加工性の低下を防いで接着層の残存を抑制することができる。また、20質量%以下とすることで接着強度を良好なものとすることができる。
【0031】
本発明における接着層の樹脂組成物は、既述の(A)〜(C)成分と、必要に応じて添加される(D)成分等を配合して得られる他、通常の樹脂組成物に使用される硬化促進剤、チキソ性付与剤、界面活性剤、カップリング剤等の各種添加剤を適宜配合できる。これらを充分に撹拌した後、泡がなくなるまで静置して樹脂組成物を得ることができる。
【0032】
硬化促進剤としては,潜在性の熱硬化剤である各種イミダゾール類やBF3アミン錯体を使用することができる。なかでも、絶縁樹脂組成物の保存安定性やBステージ状(半硬化状)の絶縁樹脂組成物の取り扱い性及びはんだ耐熱性の点から、2−フェニルイミダゾールや2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましく、その配合量は(A)成分100質量部に対して0.2〜2.0質量部が好ましい。0.2質量部以上であることで、はんだ耐熱性を十分なものとすることができる。また、2.0質量部以下であることで、樹脂組成物の保存安定性やBステージ状の樹脂組成物の取り扱い性を良好なものとすることができる。
【0033】
接着層を形成するに際しての樹脂組成物は、溶剤中で混合して希釈又は分散させてワニスの形態とするのが作業性の点で好ましい。この溶剤には、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチルエトキシプロピオネート、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド等を使用できる。これらの溶剤は、単独あるいは混合系でもよい。この溶剤の樹脂組成物に対する割合は従来適用されている割合でよく、樹脂組成物の塗膜形成の設備にあわせてその使用量を調整する。接着層の樹脂組成物をコンマコータでキャリアフィルム(支持体)に塗工する場合は、溶剤を除く樹脂組成物の固形分がワニス中10〜40質量%となるように溶剤の使用量を調節することが好ましい。
【0034】
剥離可能な銅箔上に接着層を設けるには、上記で作製したワニスを銅箔上にコンマコータ等で乾燥後に1〜10μm厚になるように塗布する。厚さが1〜10μmであることで、近年要求されている配線板の薄型化に十分対応することができる。
乾燥温度及び乾燥時間は特に限定されないが、乾燥効率及び接着層の接着力等の特性を考慮して、100〜250℃で1〜15分間とすることが好ましい。
また、使用する銅箔は、厚さが10〜100μmの銅箔を用いることができ、粗化処理されていない銅箔が好ましい。銅箔の厚みを10μm以上とすることで取り扱いが良好となり、例えば、セミアディティブ工法中でのエッチング処理でも不具合が生じることがない。また、銅箔の厚みを100μm以下とすることで、工程における取扱い性が良好となり、最後のエッチング除去工程で要する時間が短縮され、かつ銅箔にかかるコストも下げることができる。さらに、銅箔の表面に粗化処理が施されていないことで、例えば、最外層のセミアディティブ工法での回路形成をスムーズに行なうことができる。
【0035】
(絶縁フィルム)
本発明に係る絶縁フィルムは、接着層A1又はA2と絶縁樹脂層とからなる。当該フィルムを得るためには、接着層をまずキャリアフィルムに塗布することが好ましい。この2層構造の絶縁フィルムは、ラミネート後にキャリアフィルムを剥離して、乾燥機で硬化するため、銅箔よりもポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやアルミ箔、又は離型処理されたPETフィルムやアルミ箔を用いることが好ましい。ここでもワニスをキャリアフィルム上にコンマコータ等で乾燥後に1〜10μm厚になるように塗布する。乾燥温度及び乾燥時間は特に限定されないが、乾燥効率及び接着層の接着力等の特性を考慮して、100〜250℃で1〜15分間とすることが好ましい。
【0036】
絶縁樹脂層を形成する絶縁樹脂組成物としては、(i)多官能型エポキシ樹脂(以下、「(i)成分」ということがある)、(ii)エポキシ樹脂硬化剤(以下、「(ii)成分」ということがある)、(iii)無機フィラー(以下、「(iii)成分」ということがある)を含有することが好ましい。さらに、(iv)リン系難燃剤(以下、「(iv)成分」ということがある)を含むことがより好ましい。
【0037】
(i)成分である多官能エポキシ樹脂としては、既述の(A)成分と同一の樹脂を挙げることができる。(i)成分の配合量は、溶剤を除いた絶縁樹脂組成物の全固形分中の割合で20〜50質量%であることが好ましい。(i)成分の配合量が、20質量%以上とすることではんだ耐熱性が低下を防ぎ、50質量%以下とすることで回路導体との接着強度を良好な状態にすることができる。また、液状エポキシ樹脂を併用すると、樹脂の流動性が向上するため好ましい。
【0038】
(ii)成分であるエポキシ樹脂硬化剤としては、既述の(A)成分と同一の樹脂を挙げることができる。
(ii)成分は、エポキシ基に対して0.5〜1.5当量であるのが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤がエポキシ基に対して0.5当量以上であることで外層銅との接着性を良好な状態とし、1.5当量以下であることでTgや絶縁性の低下を抑制することができる。
【0039】
なお、硬化剤の他に、必要に応じて反応促進剤を使用することができる。反応促進剤としては、既述の「硬化促進剤」と同一である。
【0040】
(iii)成分である無機フィラーは、例えばシリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、エーロジル、炭酸カルシウムの中から選ばれるものが使用可能であり、これらは単独でもあるいは混合して用いてもよい。
なお、難燃性や低熱膨張の点から水酸化アルミニウムとシリカとを単独あるいは混合して用いることが好ましい。また(iii)成分の配合量は、溶剤を除く絶縁樹脂組成物全体の固形分中で10〜70質量%とすることが好ましく、30〜60質量%とすることがより好ましい。10〜70質量%とすることで、低熱膨脹効果を高め、流動性やレーザ加工性を良好なものとすることができる。
【0041】
(iv)成分であるリン系難燃剤はリンを含んだ化合物であれば特に限定されないが、絶縁信頼性、耐熱性を考慮すれば、エポキシ樹脂と反応性を有するものが好ましい。例えば三光株式会社製のHCA−HQやダウケミカル製のXZ92741等が使用できる。(iv)成分の含有量は、リン含有%が無機フィラーを除く絶縁樹脂組成物の固形分中で0.7〜3質量%の範囲になるようにするのが難燃性の発現と良好なはんだ耐熱性の点から好ましい。
【0042】
絶縁樹脂組成物は、既述の(i)〜(iv)成分等を配合して得られる他、通常の樹脂組成物に使用されるチキソ性付与剤、界面活性剤、カップリング剤等の各種添加剤を適宜配合できる。これらを充分に撹拌した後、泡がなくなるまで静置して絶縁樹脂組成物を得ることができる。
【0043】
当該絶縁樹脂組成物も溶剤中で混合して希釈又は分散させてワニスの形態とするのが作業性の点で好ましい。溶剤やその使用量は、接着層用樹脂組成物の場合と同じである。
なお、絶縁樹脂組成物をコンマコータで予め接着層を設けたキャリアフィルムに塗工する場合は、溶剤を除く樹脂組成物の固形分がワニス中30〜60質量%となるように溶剤の使用量を調節することが好ましい。
【0044】
本発明に係る絶縁フィルムは、例えば、絶縁樹脂組成物の半硬化状態のフィルムとして、使用に供される。よって、絶縁フィルムを製造するには、例えば、絶縁樹脂組成物のワニスを既述のように作製し、このワニスを接着層付き支持体(支持体としては例えばキャリアフィルムが挙げられる)上に塗布し、乾燥する方法が挙げられる。また、ワニスを接着層付き支持体上に塗布する場合はコンマコータ、バーコータ、キスコータ、ロールコーター等が利用でき、絶縁フィルム(配線板用絶縁樹脂材料の一形態例)の厚みによって適宜使用される。塗布厚、塗布後の乾燥条件等は使用目的に合わせて適宜選択されるため特に制限するものではないが、一般にワニスに使用した溶剤が80質量%以上揮発していることが好ましい。
【0045】
(コアレス多層配線板の製造方法)
まず図1及び図2を参照して、本発明における各工程を説明する。なお、図1(b)〜(d)及び図2(a)〜(d)においては、コア基板10の一方の側に対する工程のみを示すが他方の面も同時進行的に各工程における各処理が施されている。
【0046】
まず、積層板12の両面に剥離可能な銅箔14と接着層Xとをこの順に設けてコア基板10を作製する(コア基板作製工程)。
剥離可能な銅箔は、150〜200℃での加熱処理後も剥離できれば、どのようなものでもよく、一般に銅張り積層板にも使用されているものを用いることが好ましい。一般に、2〜5μmの極薄銅箔は取扱いが困難なため、剥離可能なキャリア箔と2層構造になっているが、本発明ではキャリア箔側を積層板のプリプレグに重ね、プレス成形したものが好ましい。キャリア箔側の表面は平滑ではないため、銅箔剥離後に、セミアディティブ法で回路を形成する際に、表面粗さが大きく、微細な回路形成に不向きとなる。市販品としては、三井金属鉱業株式会社製MicroThin箔やMicroThin−EX箔、日本電解株式会社製YSNAP箔等がある。
【0047】
図1(a)に示すように、コア基板10の両面にあるそれぞれの接着層X1上に、接着層A1と絶縁樹脂層22とからなる絶縁フィルム20の絶縁樹脂層22を、ラミネーター等を用いて貼り合わせる。なお、絶縁フィルム20の接着層A1上には、取り扱い性を考慮してキャリアフィルム24を設けておくことが好ましい。
【0048】
そしてキャリアフィルム24を剥離した後、乾燥機中で硬化処理を施して積層する(積層工程)。このときの硬化温度は後のめっき処理や銅のアニール処理等を考慮した温度や時間で行う。すなわち、あまり硬化を進めると後のめっき処理時に銅との接着性が低下したり、反面、硬化が足りないとめっき処理時のアルカリ処理液に浸食されめっき液に溶解するような現象が生じたりする。これらのことを考慮すると、150〜190℃で30〜90分間の熱処理を与えて硬化処理をすることが好ましい。
なお、加圧しながら、加熱硬化を行なってもよい。この場合の加圧積層条件は、通常0.5〜20MPaが好ましい。
【0049】
次に、以下に説明するようなセミアディティブ法により両側にある接着層A1上に図1(b)に示すような回路26(回路層)を順次又は両面同時に形成する(回路形成工程)。
回路を形成するに際しては、まず、接着層A1を粗化処理することが好ましい。粗化液としては、クロム/硫酸粗化液、アルカリ過マンガン酸粗化液、フッ化ナトリウム/クロム/硫酸粗化液、ホウフッ酸粗化液等の酸化性粗化液を用いることができる。粗化処理としては、例えば、先ず膨潤液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルとNaOHとの水溶液を70℃に加温して5分間浸漬処理する。次に、粗化液として、KMnO4とNaOHとの水溶液を80℃に加温して10分間浸漬処理する。引き続き、中和液、例えば塩化第一錫(SnCl2)の塩酸水溶液に室温で5分間浸漬処理して中和する。
【0050】
粗化処理後、パラジウムを付着させるめっき触媒付与処理を行う。めっき触媒処理は、塩化パラジウム系のめっき触媒液に浸漬して行われる。次に、無電解めっき液に浸漬して接着層A1の表面全面(ビアホールを形成した場合はビアホール内面を含む)に厚さが0.3〜1.5μmの無電解めっき層(導体層)を析出させる。必要により、さらに電気めっきを行って必要な厚さとする。無電解めっきに使用する無電解めっき液は、公知の無電解めっき液を使用することが可能で特に制限はない。また、電気めっきについても公知の方法によることが可能で特に制限はない。これらのめっきは銅めっきであることが好ましい。
【0051】
無電解めっき層を形成した後、レジスト層を形成して所定パターンに露光しエッチングを行なうことで回路26が形成される。レジスト、露光、エッチング等は公知の条件を採用することができる。
【0052】
図1(c)に示すように、回路が形成されたそれぞれの接着層A1上に、接着層A2と絶縁樹脂層22とからなる絶縁フィルム20の絶縁樹脂層22を貼り合わせる。そして、硬化処理を施して積層する(積層工程)。貼り合わせや硬化処理等は上記と同様である。
【0053】
次に、図1(d)に示すように、接着層A2の所定位置から回路16に向かって公知の方法(例えば、レーザ加工)によりビアホールHを形成する(ビアホール形成工程)。ビアホールHを形成した後は、図2(a)に示すように、セミアディティブ法により接着層A2上に回路26(回路層)を形成する(回路形成工程)。
【0054】
その後、図2(a)に示すように、回路が形成されたそれぞれの接着層A2上に、接着層A3と絶縁樹脂層22とからなる絶縁フィルム20の絶縁樹脂層22を貼り合わせる。そして、硬化処理を施して積層する(積層工程)。貼り合わせや硬化処理等は上記と同様である。
【0055】
その後は、ビアホール形成工程、回路形成工程を順次経て所望の層数とすればよい。例えば、回路26を有する接着層A3上にさらにもう1層の回路層を形成する場合は、図2(b)に示すようにして、まず、コア基板10の銅箔14を接着層Xから剥離する。図2(c)に示すようにして、剥離後の接着層Xの所定位置から接着層A1から回路16へ向けてにビアホールHを形成する(ビアホール形成工程)。また、接着層A3の所定位置から接着層A2から回路16へ向けてビアホールHを形成する(ビアホール形成工程)。これら両工程によるビア形成はいずれを先に行なってもよい。
【0056】
ビアホールHを形成後に接着層X1上及び接着層A3上に、両面同時に又は逐次にセミアディティブ法により回路を形成する(回路形成工程)。このようにして、本発明のコアレス多層配線板が製造される。
【0057】
なお、回路26が形成された接着層X1上に、接着層A2と絶縁樹脂層とからなる絶縁フィルムの絶縁樹脂層を貼り合わせ、硬化処理を施して積層する積層工程と、接着層A2の所定位置にビアホールHを形成するビアホール形成工程と、接着層A2上にセミアディティブ法により回路を形成する回路形成工程と、を順次含む一連の工程をさらに設けることで、図面上の下層側を所望の層数とすることができる。
また、ビアホールHを形成した後のセミアディティブ法においては、両面同時にめっきしたり露光したりしてもよく、又は、一方の面をめっき及び/又は露光した後で他方の面をめっき及び/又は露光してもよい。
【0058】
以上のようにして製造された本発明のコアレス多層配線板は、平滑な樹脂面(接着層表面)に対しても回路を形成する金属層との接着性が高いものとなる。例えば、少なくとも一方の表面に形成された回路の一部をエッチングにより除去した後の接着剤層の表面粗さRaが0.3μm以下となっているにも関わらず、金属層との接着性が良好に保たれている。
また、複数の接着層を有することで、当該接着層が応力緩和層として機能し、反りの発生が抑制される。
【実施例】
【0059】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)接着層用組成物:
多官能エポキシ樹脂(NC−3000H:商品名、日本化薬株式会社製)100質量部、エポキシ樹脂硬化剤(LA−1356:商品名、DIC株式会社製,固形分50質量%)20質量部、硬化促進剤(2−フェニルイミダゾール、四国化成株式会社製)0.2質量部、架橋ゴム粒子(パラロイドEXL−2655:商品名、ロームアンドハース電子材料株式会社製)15質量部、ヒュームドシリカ(R−972:商品名、日本アエロジル株式会社製)15質量部、溶剤(2−ブタノン)250質量部、シクロヘキサノン200質量部を攪拌棒で混ぜ、分散機(ナノマイザー、商品名、吉田機械興業株式会社製)を用いて、均一なワニスAを得た。
【0060】
(2)銅箔フィルムの作製:
このワニスAをポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(PET−38X:商品名,リンテック株式会社製)の離型処理面に、乾燥後8μmになるように塗布し、140℃で10分間乾燥させたて銅箔フィルムを得た。
(3)絶縁樹脂組成物:
多官能エポキシ樹脂(NC−3000H:商品名、日本化薬株式会社製)100質量部、エポキシ樹脂硬化剤(LA−3018:商品名、DIC株式会社製、固形分50質量%)40質量部、リン系難燃剤(HCA−HQ:商品名、三光株式会社製)40質量部、無機フィラー(球状シリカ)(SO−C2:商品名、株式会社アドマテックス製)100質量部、反応促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール、四国化成工業株式会社製)0.5質量部、溶剤(2−ブタノン)150質量部を均一に混ぜ、分散機(ナノマイザー、商品名、吉田機械興業株式会社製)を用いて、均一なワニスBを得た。
【0061】
(4)接着層付きPETフィルム及び絶縁樹脂フィルムの作製:
2層構造の絶縁フィルムのために、まず、上記ワニスAを離型処理PETフィルム(PET−38X、商品名、リンテック株式会社製)の離型処理面に、乾燥後5μmになるように塗布し、140℃で10分間乾燥させて接着層付きPETフィルムを得た。
次に、上記ワニスBを上記の接着層付きPETフィルムの接着層側に、乾燥後35μmになるように塗布し、100℃で5分間乾燥させ、接着層と絶縁樹脂層とからなる絶縁フィルムを得た。
【0062】
(5)コアレス多層配線板の作製:
ピーラブル銅箔(MicroThin−3:商品名、三井金属鉱業株式会社製)を設けた銅張り積層板(E−679F−3DX:商品名、日立化成工業株式会社製)上に前記PET付接着層を接着層がピーラブル銅箔と接する面側にしてバッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500(株式会社名機製作所製、商品名)を用いて両側に貼り合わせた。
【0063】
次に、PETフィルムを剥がした後、180℃で60分間の硬化条件で硬化して第一接着層−ピーラブル銅箔−積層板−ピーラブル銅箔−第一接着層のコア基板を得た。
【0064】
次に第一接着層側に2層構造のアディティブ工法用絶縁フィルムの絶縁樹脂側を重ね、2層構造のバッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500(株式会社名機製作所製、商品名)を用いて両側に積層した。
【0065】
次に、PETフィルムを剥がした後、180℃で60分間の硬化条件で前記絶縁樹脂層を硬化して第2接着層−第1絶縁層−第1接着層−ピーラブル銅箔−積層板−ピーラブル銅箔−第1接着層−第1絶縁層−第2接着層の基板を得た。
以下、積層板の片側だけ記載するが、本実施例では他方の面側にも同様にして回路が形成される。
【0066】
第2接着層を化学粗化するために、膨潤液としてジエチレングリコールモノブチルエーテル:200ml/L、NaOH:5g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温して3分間浸漬処理した。次に、粗化液として、KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温して5分間浸漬処理した。引き続き、中和液(SnCl2:30g/L、HCl:300ml/L)の水溶液に室温(25℃)で5分間浸漬処理して中和した。
【0067】
第2接着層表面に第2の回路層を形成するために、まず、PdCl2を含む無電解めっき用触媒液(HS−202B:商品名、日立化成工業株式会社製)に、室温(25℃)−10分間浸漬処理し、水洗し、無電解銅めっき用であるめっき液(CUST−201:商品名、日立化成工業株式会社製)に室温で15分間浸漬して、無電解めっきを施した。
【0068】
さらに、厚さ15μmのめっきレジスト(RD−1215:商品名,日立化成工業株式会社製)をラミネートし、ネガマスクと405nmの光源を用いて120mJ/cm2の条件で露光し、1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像し、硫酸銅電解めっきで8μm厚のめっきをした。その後、3%水酸化ナトリウム水溶液を用いてレジストを剥離、硫酸−過酸化水素水溶液を用いて不要な給電層(無電解めっき層)のエッチング除去、上記過マンガン酸粗化液を用いて、不要なパラジウムを除去して、第2回路層の回路形成を行った。
【0069】
さらに、多層化するために、第2回路導体表面を、亜塩素酸ナトリウム:50g/l、NaOH:20g/l、リン酸三ナトリウム:10g/lの水溶液に85℃で20分間浸漬し、水洗して、80℃で20分間乾燥して第二の回路導体表面上に酸化銅の凹凸を形成した。
【0070】
前記の工程を2回繰り返して、積層板−ピーラブル銅箔−第1接着層−第1絶縁樹脂層−第2接着層−第2回路層−第2絶縁樹脂層−第3接着層−第3回路層−第3絶縁樹脂層−第4接着層(積層板の反対面も同様であるが説明は省略する)の基板を得た。
【0071】
180℃で硬化させた後、ピーラブル銅箔を剥離して、積層板から剥がし、エッチング除去し、その後、この第1接着層−第1絶縁樹脂層並びに、第3絶縁樹脂層−第4接着層に層間接続用のビアホールを日立ビアメカニクス製CO2レーザ加工機(LCO−1B21型)を使用し、ビーム径60μm、周波数500Hzでパルス幅5μsec、ショット数4の条件で加工して作製した。その後、化学粗化、無電解めっき、レジスト作製、電気めっき、剥離、ソフトエッチングを経て、4層のコアレス多層配線板を得た。
【0072】
(実施例2)
実施例1の接着層において、架橋有機フィラーのパラロイドEXL2655の代わりに日本化薬株式会社製カヤフレックスBPAM−155を20質量部とし、接着層の厚みを5μmとした以外、実施例1と同様にして4層のコアレス多層配線板を作製した。
【0073】
(実施例3)
実施例1の接着層において、架橋有機フィラーのパラロイドEXL2655の代わり日立化成工業株式会社製HPC−5010S,固形分30質量%を60質量部とし、接着層の厚みを4μmとした以外、実施例1と同様にして4層のコアレス多層配線板を作製した。
【0074】
(比較例1)
実施例1において、接着層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして4層のコアレス多層配線板を作製した。
【0075】
以上のようにして作製したコアレス多層配線板について、下記の通り、外層回路との接着強度、表面の表面粗さ、及び40x40mmサイズでの反りを測定した。結果を下記表1に示す。
【0076】
[外層回路との接着強度]
各実施例及び比較例で得たコアレス多層配線板のL1回路層(第3回路層)の一部に銅のエッチング処理によって、幅5mm、長さ100mmの部分を形成し、この一端を回路層/樹脂界面で剥がしてつかみ具でつかみ、垂直方向に引張り速度約50mm/分で,室温中で引き剥がした時の荷重を測定した。結果を下記表1に示す。
【0077】
[絶縁層の表面粗さ]
各実施例及び比較例で得たコアレス多層配線板のL1回路層(第3回路層)の一部の銅をエッチング処理し、露出した絶縁層(接着補助層)表面を、菱化システム社製マイクロマップMN5000型を用い、表面粗さRaを測定した。結果を下記表1に示す。
【0078】
[反り測定]
各実施例及び比較例で作製したコアレス多層配線板を40mmx40mmサイズに切断し、レーザ3次元測定器を用いて、反り量を測定した。結果を下記表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1から、実施例1〜3では、平滑な樹脂表面上において無電解銅めっきと高接着力を示し、また反り量が低下して良好な結果を示した。
一方、比較例1に示すコアレス多層配線板は、表面粗さが大きく、さらに反り量も大きかった。
以上から、本発明によれば、平滑な樹脂表面でも無電解めっきとの高接着力を示し、また、反り量の小さいコアレス多層配線板を提供できる。
【符号の説明】
【0081】
10・・・コア基板
12・・・積層板
14・・・銅箔
20・・・絶縁フィルム
22・・・絶縁樹脂層
24・・・キャリアフィルム
26・・・回路
1,A2,A3・・・接着層
1・・・接着層
H・・・ビアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層板の両面に剥離可能な銅箔と接着層Xとをこの順に設けてコア基板を作製するコア基板作製工程と、
前記コア基板の両接着層X上に、接着層A1と絶縁樹脂層とからなる絶縁フィルムの絶縁樹脂層を貼り合わせ、硬化処理を施し積層する積層工程と、
積層後に、それぞれの面を同時に又は逐次にセミアディティブ法により回路を形成する回路形成工程と、
回路形成後のそれぞれの接着層A1に、接着層A2と絶縁樹脂層とからなる絶縁フィルムの絶縁樹脂層を貼り合わせ、硬化処理を施し積層する積層工程と、
積層後のそれぞれの接着層A2の所定位置にビアホールを形成するビアホール形成工程と、
ビアホール形成後のそれぞれの接着層A2上に同時に又は逐次にセミアディティブ法により回路を形成する回路形成工程と、を経た後、
前記コア基板の銅箔を前記接着層Xから剥離し、剥離後の接着層Xの所定位置にビアホールを形成するビアホール形成工程と、
ビアホール形成後の接着層X上にセミアディティブ法により回路を形成する回路形成工程と、を含むコアレス多層配線板の製造方法。
【請求項2】
前記接着層X、A1及びA2のそれぞれが、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、又は架橋ゴム粒子、からなる請求項1に記載のコアレス多層配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコアレス多層配線板の製造方法により製造されてなるコアレス多層配線板。
【請求項4】
少なくとも一方の表面に形成された回路の一部をエッチングにより除去した後の接着層の表面粗さRaが0.3μm以下である請求項3に記載のコアレス多層配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−45825(P2013−45825A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181344(P2011−181344)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】