説明

プリント配線板およびプリント回路装置ならびにプリント回路装置の製造方法

【課題】表面電極層等の剥がれが抑制されるプリント配線板、電子部品を実装したプリント回路装置、プリント回路装置の製造方法を提供する。
【解決手段】プリント配線板51の基材1では、主表面に表面電極層2が形成され、所定の位置にスルーホール5が形成されている。スルーホール5の側壁には、スルーホール電極6が形成されている。基材1の内部には、内部電極層3が形成されている。内部電極層3は、スルーホール5の直径と同じ寸法を半径とする円の面積よりも大きい面積を有する。また、内部電極層3の厚さは、表面電極層2の厚さよりも厚くされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板およびプリント回路装置ならびにプリント回路装置の製造方法に関し、特に、電子部品がはんだ付けされるプリント配線板と、プリント配線板に電子部品がはんだ付けされたプリント回路装置と、そのようなプリント回路装置の製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の一形態に、複数の電極層を備えた多層のプリント配線板がある。この種のプリント配線板では、基材の表面に表面電極が形成され、基材の内部に内部電極層が形成されている。表面電極層と内部電極層は、厚さ18μm〜35μm程度の銅箔をエッチングすることによって形成されている。プリント配線板における所定の位置には、電子部品を実装するためのスルーホールが形成されている。スルーホールの内壁には、無電解銅めっきあるいは電解銅めっきによってスルーホール電極が形成されている。スルーホール電極は、所定の表面電極層あるいは内部電極層に電気的に接続されている。また、表面電極のうち、はんだ付けが行われるランド以外の部分(領域)は、ソルダレジストによって覆われている。
【0003】
近年、環境保護の観点から、電子部品をプリント配線板に実装するはんだとして、鉛を含まない無鉛はんだが使用されるようになった。ところが、自動車業界、電鉄業界あるいは社会インフラ業界等では、熱疲労耐性等の信頼性に問題があることから、無鉛はんだを使用することが見合わされている。
【0004】
一方、部品メーカは、電極端子のめっき材やボール材に無鉛はんだを使用することを積極的に推進している。しかしながら、無鉛はんだを使用した電極にすず鉛共晶はんだを組み合わせると、継手の機械的特性が劣化する問題があることから、今後、上記業界においても、無鉛はんだを使用せざるを得ない場合が生じるとことが想定される。
【0005】
無鉛はんだは、従来のすず鉛共晶はんだと比較すると、はんだとして引っ張り強さが大きく、伸びが少ない。また、無鉛はんだの溶融温度が、すず鉛共晶はんだの溶融温度よりも高いために、はんだ付けの際に、多層プリント配線板とはんだとの間の線膨張係数の差によって生じる歪が大きくなる。そのうえ、はんだ自体の応力緩和が起こりにくいために、プリント配線板が受ける応力が高くなる。その結果、スルーホールの周辺に位置するランドや、スルーホール内のスルーホール電極が基材から剥離してしまう現象が生じやすくなる。
【0006】
このような剥離を防止するために、特許文献1では、ランドの外周端部をソルダレジストで覆う手法や、基材としてガラス転移点の高い基材を用いる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−237674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の手法では次のような問題点があった。プリント配線板の基材としてガラス転移点温度の高い基材を適用する場合には、通常適用されるガラスエポキシ樹脂基材と比較して、価格が高く、生産コストが上昇してしまうという問題がある。
【0009】
また、ランド以外の領域をソルダレジストにて覆う場合には、ランドとしてある程度の領域(径)を確保する必要があり、導体の径が大きくなってしまう。そのため、スルーホールとスルーホールとの間隔(ピッチ)が狭い場合(狭ピッチ)には、この手法を適用することが困難になる。さらに、仮に、ソルダレジストによりランド(表面電極層)の剥離を抑制できたとしても、スルーホール内のスルーホール電極の剥離を防止することは困難である。
【0010】
本発明の一つの目的は、上記した問題点を解決するプリント配線板を提供することであり、他の目的は、そのようなプリント配線板に電子部品を実装したプリント回路装置を提供することであり、さらに他の目的は、そのようなプリント回路装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るプリント配線板は、基材と貫通穴電極と第1電極層と第2電極層と内部電極層とを備えている。基材は、対向する第1主表面および第2主表面を有し、第1主表面の側から第2主表面の側へ向かって貫通する貫通穴を有する。貫通穴電極は、貫通穴の側壁に形成されている。第1電極層は、貫通穴における第1主表面側の第1開口端の周囲に形成され、貫通穴電極に接続される。第2電極層は、貫通穴における第2主表面側の第2開口端の周囲に形成され、貫通穴電極に接続されて溶融はんだに浸漬される。内部電極層は、貫通穴を周方向から取り囲むように、第1主表面と第2主表面との間の基材中に形成され、貫通穴の全周において貫通穴電極に接続されている。その内部電極層は、内部電極層の面積が、貫通穴の直径を半径とする円の面積よりも大きく設定されている条件、および、内部電極層の厚みが、第2電極層の厚みよりも厚く設定されている条件の少なくともいずれかの条件を具備するように形成されている。
【0012】
本発明に係るプリント回路装置は、請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板に、電子部品を実装したプリント回路装置であって、電子部品の端子とはんだとを備えている。電子部品の端子は基材の貫通穴に挿通される。はんだは、貫通穴電極と電子部品の端子とを電気的に接続して固定する。そのはんだとして、Sn−Sb系はんだ合金が適用される。
【0013】
本発明に係るプリント回路装置の製造方法は、請求項4または5に記載のプリント回路装置の製造方法であって、以下の工程を備えている。基材の貫通穴に電子部品の端子を挿通する。基材の第2主表面の側を、はんだを溶融した溶融はんだに浸漬し、貫通穴に溶融はんだを充填する。溶融はんだから基材を引き上げて溶融はんだを冷却することにより、電子部品の端子を基材に固定する。溶融はんだを充填する工程では、貫通穴内のうち第2電極層から内部電極が形成されている位置まで溶融はんだが充填される条件のもとで溶融はんだに浸漬される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るプリント配線板によれば、内部電極層の面積が、貫通穴の直径を半径とする円の面積よりも大きく設定されている条件、および、内部電極層の厚みが、第2電極層の厚みよりも厚く設定されている条件の少なくともいずれかの条件を具備するように形成された内部電極層を備えていることで、溶融はんだに浸漬して電子部品をプリント配線板に実装する際に、貫通穴電極を伝導する溶融はんだの熱を内部電極層へ拡散させて、貫通穴の一方の開口端から溶融したはんだが他方の開口端へ向けて上がるのを抑制し、その結果、貫通穴電極等が基材から剥がれるのを効果的に防止することができる。
【0015】
本発明に係るプリント回路装置によれば、溶融はんだが貫通穴を上昇するのが抑制される結果、第1電極層、第2電極層および貫通穴電極が基材から剥がれるのを阻止して、信頼性を確保することできる。
【0016】
本発明に係るプリント回路装置の製造方法によれば、溶融はんだが貫通穴を上昇するのを抑制して、第1電極層、第2電極層および貫通穴電極が基材から剥がれるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係るプリント配線板を示す部分平面図である。
【図2】同実施の形態において、図1に示す断面線II−IIにおける部分断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るプリント回路装置の製造方法の一工程を示す部分断面図である。
【図4】同実施の形態において、図3に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分断面図である。
【図5】同実施の形態において、図4に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分断面図である。
【図6】比較例に係るプリント配線板を示す部分断面図である。
【図7】比較例に係るプリント回路装置の製造方法の一工程を示す部分断面図である。
【図8】図7に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分断面図である。
【図9】比較例に係るプリント回路装置における問題点を説明するための部分断面図である。
【図10】同実施の形態において、電子部品を実装する際の熱の流れを示す部分断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係るプリント配線板を示す部分断面図である。
【図12】同実施の形態において、図11に示すプリント配線板を用いたプリント回路装置の製造方法の一工程を示す部分断面図である。
【図13】同実施の形態において、図12に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分断面図である。
【図14】同実施の形態において、図13に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1
本発明の実施の形態1に係るプリント配線板について説明する。図1および図2に示すように、プリント配線板51では、互いに対向する主表面を有する基材1のそれぞれの主表面に表面電極2が形成されている。基材1は、たとえば、ガラスエポキシ樹脂から形成されている。表面電極2は、銅箔による電極パターンとされる。基材1には、所定の位置に一方の主表面の側から他方の主表面の側へ向かって貫通したスルーホール5が形成されている。スルーホール5の直径は、たとえば1mmとされる。スルーホール5の側壁には、スルーホール電極6が形成されている。スルーホール電極6は、無電解めっきまたは電解めっきによって、基材1を貫通する開口部1aの側壁面を覆うように形成されている。
【0019】
基材1の内部には、内部電極層3,3a,3bが形成されている。内部電極層3a,3bのそれぞれは、スルーホール5の直径と同じ寸法を半径とする円の面積よりも大きい面積を有し、スルーホール5の全周においてスルーホール電極6に接続されている。また、内部電極層3a,3bのそれぞれは、たとえば、表面電極層2の厚さ(T1:約35μm)よりも厚い約105μmの厚さ(T2)の銅箔から形成されて、その半径は1mmとされる。
【0020】
図1に示すように、溶融はんだに浸漬される側の表面電極層2のうち、はんだ付けが行われるランド4では、スルーホール5を周方向から断続的に取り囲む態様で表面電極層2の部分を除去した切欠き13が設けられている。ランド4以外の領域では、表面電極層2を覆うようにソルダレジスト7が形成されている。
【0021】
図2に示すように、この切欠き13は、ソルダレジスト7によって覆われていない円形領域内に位置する表面電極層2の部分の外周部と、ランド4よりも外側に位置してソルダレジスト7によって覆われている表面電極層2の部分Aの内周部とが繋がっている長さが、たとえば、この円形領域の全周の約20%になるように形成されている。なお、表面電極2のうち、溶融はんだに浸漬される側は下端電極層14となり、その反対側は上端電極層15となる。
【0022】
上述したプリント配線板51では、基材1中に形成される内部電極層3が、スルーホール5の直径に基づく所定の面積を有するとともに、表面電極層2よりも厚い厚みを有し、スルーホール電極6とはスルーホール5の全周において接続されている。これにより、後で詳しく説明するように、溶融はんだに浸漬して電子部品をプリント配線基板51に実装する際に、スルーホール電極6を伝導する溶融はんだの熱を十分な熱容量を有する内部電極層3へ拡散させることができる。その結果、溶融はんだに浸漬されたスルーホール5の一方の開口端から溶融したはんだが他方の開口端へ向けて上がるのが抑制されて、スルーホール電極6等が基材1から剥がれるを効果的に防止することができる。
【0023】
また、溶融はんだに浸漬される側の表面電極層2では、スルーホール5を周方向から断続的に取り囲むように、表面電極層2の部分を除去した切欠き13が設けられている。これにより、溶融はんだに浸漬する際に、表面電極2からスルーホール電極6に向かって伝導する溶融はんだの熱(量)が制限されて、一方の開口端から溶融したはんだが他方の開口端へ向けて上がるのを効果的に抑制することができる。
【0024】
なお、上述したプリント配線板51として、2層(下端電極層と上端電極層)の表面電極層2と2層の内部電極層3の合計4層の電極層の場合を例に挙げて説明した。プリント配線板としては、4層の電極層を備えたものに限られず、2層(下端電極層と上端電極層)の表面電極層と1層の内部電極層の少なくとも3層の電極層を備えたプリント配線板であれば、スルーホール電極を伝導する溶融はんだの熱を内部電極層へ拡散させることができる。
【0025】
また、内部電極層3の大きさとして、外周が半径約1mmの円となる環状の内部電極層3を例に挙げて説明した。内部電極層3の大きさとしてはこのサイズに限られるものではなく、スルーホール5の直径と同じ寸法の半径をの円の面積より大きい面積を有する内部電極層であれば、スルーホール電極6を伝導する溶融はんだの熱を内部電極層3へ拡散させることができる。
【0026】
さらに、内部電極層3の厚さとして105μmの内部電極層3を例に挙げて説明したが、溶融したはんだがスルーホール5内を上がるのを抑制できる熱容量を有し、スルーホール電極6との十分な接触面積を確保することができる厚みであれば、上述した厚みに限られるものではない。
【0027】
また、切欠き13として、ソルダレジスト7によって覆われていない円形領域の全周の約20%となるように形成する場合を例に挙げて説明したが、スルーホール5の周辺からスルーホール5に向かって熱が伝導するのを抑制することができれば、このような切欠き13に限られず、たとえば、三角形状や菱形形状の切欠きでもよい。さらに、表面電極層2の厚さとして35μmを例に挙げ、また、スルーホール5の開口径として1mmを例に挙げたが、表面電極層3の厚さおよびスルーホール5の開口径としては、これらに限られるものではない。
【0028】
実施の形態2
ここでは、前述したプリント配線板に電子部品を実装したプリント回路装置の製造方法について説明する。電子部品は、無鉛はんだによるフローはんだ付けによって、プリント配線板へ実装される。
【0029】
まず、図3に示すように、スルーホール5に電子部品の電極端子8を挿入した後、溶融はんだとして、たとえば、Sn−Sb系組成を有する所定温度の溶融はんだ(Sn−Sb系はんだ合金)9にプリント配線板51を所定時間だけ接触させて、電極端子8をスルーホール5にはんだ付けする。
【0030】
このとき、溶融はんだ9はスルーホール5中を上昇して内部電極層3が位置する高さに到達すると、溶融はんだ9の熱が熱容量の大きい内部電極層3へ熱拡散(熱伝導)する。これにより、溶融はんだ9の温度は下がり、はんだの凝固が始まる。また、このとき、表面電極層(下端電極14)からスルーホール5へ向かって伝導する溶融はんだの熱は、切り欠き13によってその伝導が制限されることになる。
【0031】
次に、図4に示すように、プリント配線板を溶融はんだから引き上げた直後では、溶融はんだの熱による温度上昇によって、基材1に熱膨張が生じている。時間が経過して、プリント配線板51の温度が室温にまで冷却されると、基材1とスルーホール5に充填されたはんだ10が収縮をする。このとき、図5に示すように、スルーホール5の全体にはんだ10が充填されていないために、基材1は比較的自由に収縮することができ、ランド4とスルーホール電極6を引き剥がす応力は小さくなる。こうして、電子部品がはんだ付けによりプリント配線板に実装されたプリント回路装置61が完成する。
【0032】
上述したプリント回路装置の製造方法では、前述したプリント配線板を適用することで、ランドの剥離、あるいは、スルーホール電極の剥離を防止することができる。このことについて、比較例との関係で説明する。
【0033】
まず、比較例に係るプリント配線板151では、図6に示すように、基材101の表面に表面電極102が形成され、基材101の内部に内部電極層103.103a,103bが形成されている。表面電極層102と内部電極層103は、厚さ18μm〜35μm程度の銅箔をエッチングすることによって形成されている。プリント配線板151に形成されたスルーホール105の内壁には、スルーホール電極106が形成されている。スルーホール電極106は、所定の表面電極層102あるいは内部電極層103に電気的に接続されている。また、表面電極102のうち、はんだ付けが行われるランド104以外の部分は、ソルダレジスト107によって覆われている。
【0034】
まず、図7に示すように、スルーホール105に電子部品の電極端子108を挿入した後、所定温度の溶融はんだ109にプリント配線板151を接触させて、電極端子108をスルーホール105にはんだ付けする。次に、図8に示すように、プリント配線板151を溶融はんだ109から引き上げた直後では、溶融はんだ109の熱による温度上昇によって、基材101に熱膨張が生じている。
【0035】
たとえば、ガラスエポキシ樹脂からなる基材101の厚さ方向での線膨張係数は、ガラス転移点温度(たとえば140℃)以下では通常50〜70ppm/℃であり、ガラス転移点温度以上では200〜350ppm/℃である。このため、室温20℃、無鉛はんだの溶融温度を220℃とすると、厚さ1.6mmの基材の場合では、基材は熱膨張により厚み方向に35〜60μm膨張することになる。
【0036】
一方、はんだの線膨張係数は20〜25ppm/℃である。このため、上記同じ条件(室温20℃、溶融温度220℃)のもとでは、はんだは、はんだフィレット厚を1mmとすると、熱膨張により4〜5μm膨張することになる。
【0037】
このように、フローはんだ付けによって電子部品をプリント配線板に実装する際に生じる熱膨張においては、プリント配線板151の基材101の熱膨張がはんだ110の熱膨張よりも1桁程度大きい。このため、熱膨張したプリント配線板151の基材101とはんだ110が室温(20℃)程度にまで冷却される際には、プリント配線板151の基材101がはんだ110よりもより大きく収縮することになる。
【0038】
プリント配線板151の基材101は、加熱前の状態に戻ろうとして収縮しようとするが、スルーホール105内に充填されたはんだ110によって拘束されてしまい、自由に収縮することができなくなる。このため、図9に示すように、ランド104とプリント配線板151の基材101との界面にランド104を引き剥がす方向の応力が発生し、ランド104が基材101から剥離してしまうことがある。また、スルーホール電極106がスルーホール105の側壁から剥がれてしまう場合もある。
【0039】
さらに、ランド104が基材101から剥離して熱ストレスを受けると、剥離したランド104に接続されている配線パターン(図示せず)も基材101から剥離することがある。また、スルーホール電極106が剥離して熱ストレスを受けると、スルーホール電極106と内部電極層103との接続部分(図示せず)が断裂することがある。
【0040】
これに対して、本実施の形態に係るプリント回路装置の製造方法では、まず、プリント配線板として前述したプリント配線板51を用いる。プリント配線板51では、内部電極層3がスルーホール5の直径に基づく所定の面積を有するとともに、表面電極層2よりも厚い厚みを有し、スルーホール電極6とはスルーホール5の全周において接続されている。これにより、図10に示すように、溶融はんだ9に浸漬して電子部品をプリント配線基板51に実装する際に、スルーホール電極6を伝導する溶融はんだ9の熱を十分な熱容量を有する内部電極層3へ拡散させることができる(矢印73と矢印74を参照)。
【0041】
また、溶融はんだ9に浸漬される側の表面電極層2では、スルーホール5を周方向から断続的に取り囲むように、表面電極層2の部分を除去した切欠き13(図1参照)が設けられている。これにより、溶融はんだ9に浸漬する際に、表面電極2からスルーホール電極6に向かって伝導する溶融はんだ9の熱(量)を制限することができる(矢印71と矢印72を参照)。
【0042】
しかも、はんだ付け条件として、溶融はんだ9が内部電極層3が位置する高さに到達した時点で、溶融はんだ9が凝固するように、溶融はんだ9との接触時間等の条件があらかじめ設定されている。これにより、はんだ10をスルーホール5内の全体にわたって充填させることなく、スルーホール5内の一部に部分的に充填した状態をより確実に実現して、電子部品をプリント配線板51に実装することができる。
【0043】
このため、プリント配線板51等が室温にまで冷却される際に、プリント配線板51の基材1は、比較例の場合と比べて、スルーホール5内に充填されたはんだ10によって拘束されることが抑制されて、より自由に収縮することができる。その結果、ランド4およびスルーホール電極6を引き剥がす応力が小さくなって、ランド4やスルーホール電極6等が基材1から剥がれるを効果的に防止することができる。
【0044】
また、上述したプリント回路装置の製造方法では、はんだとして、Sn−Sb系はんだ合金を用いた場合について説明した。Sn−Sb系はんだ合金の場合には、スルーホール5内の一部に部分的に充填して電子部品を実装した場合であっても、スルーホールの全体にわたってSn−Ag−Cu系合金を充填して電子部品を実装した場合に比べて、電子部品の電極端子が接続されている部分の信頼性は高いことが発明者らによって確認された。
【0045】
実施の形態3
ここでは、基材を貫通させない非貫通スルーホールを備えたプリント配線板と、それを用いたプリント回路装置の製造方法について説明する。
【0046】
図11に示すように、プリント配線板52では、溶融はんだに浸漬されない側の表面から内部電極層3bを貫通して内部電極層3aに達する、基材1を貫通させない非貫通スルーホール16が形成されている。非貫通スルーホール16の側壁には、銅などの熱伝導性の高い膜が形成されている。内部電極層3と表面電極層(上端電極層15)2とを、非貫通スルーホール16の側壁に形成された熱伝導性の高い膜によって接続することで、内部電極層3の熱容量がより大きくなる。なお、これ以外に構成については、図2に示すプリント配線板51と同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を繰り返さない。
【0047】
次に、上述したプリント配線板52に電子部品を実装したプリント回路装置の製造方法について説明する。まず、図12に示すように、スルーホール5に電子部品の電極端子8を挿入した後、たとえば、Sn−Sb系組成を有する所定温度の溶融はんだ(Sn−Sb系はんだ合金)9にプリント配線板52を所定時間だけ接触させて、電極端子8をスルーホール5にはんだ付けする。
【0048】
このとき、溶融はんだ9はスルーホール5中を上昇して内部電極層3が位置する高さに到達すると、溶融はんだ9の熱が熱容量の大きい内部電極層3へ熱拡散(熱伝導)する。内部電極層3へ伝導した熱は、さらに、非貫通スルーホールの側壁に形成された熱伝導性の高い膜を伝導して表面電極層(上端電極層15)2に達し、外気に放熱されることになる。
【0049】
これにより、溶融はんだ9の温度はより速く下がり、はんだの凝固が速められる。また、前述したように、内部電極層(下端電極14)からスルーホール5へ向かって伝導する溶融はんだの熱は、切り欠き(図示せず)によってその伝導が制限されることになる。
【0050】
次に、図13に示すように、プリント配線板52を溶融はんだ9から引き上げた直後では、溶融はんだ9の熱による温度上昇によって、基材1に熱膨張が生じている。時間が経過して、プリント配線板52の温度が室温にまで冷却されると、基材1とスルーホール5に充填されたはんだ10が収縮をする。このとき、図14に示すように、スルーホール5の全体にはんだ10が充填されていないために、基材1は比較的自由に収縮することができ、ランド4とスルーホール電極6を引き剥がす応力は小さくなる。こうして、電子部品がはんだ付けによりプリント配線板52に実装されたプリント回路装置61が完成する。
【0051】
上述したプリント回路装置の製造方法では、まず、前述したプリント配線板51と同様に、表面電極2からスルーホール電極6に向かって伝導する溶融はんだ9の熱(量)を制限することができ、また、溶融はんだ9が内部電極層3が位置する高さに到達した時点で、溶融はんだ9が凝固するように、溶融はんだ9との接触時間等の条件があらかじめ設定されている。
【0052】
しかも、プリント配線板として、非貫通スルーホール16が形成されたプリント配線板52を用いることで、プリント配線板の熱容量をより大きくすることができるとともに、スルーホール電極6から内部電極層3に伝導した熱を、非貫通スルーホール16を経て表面電極層(上端電極層15)2から大気中へ放出(放熱)させることができる。
【0053】
これにより、はんだ10をスルーホール5内の全体にわたって充填させることなく、スルーホール5内の一部に部分的に充填した状態を確実に実現して、電子部品をプリント配線板52に実装することができる。
【0054】
なお、上述した各実施の形態において説明したプリント配線板51,52では、内部電極層3の面積が、スルーホール5の直径を半径とする円の面積よりも大きく設定されている条件(条件A)と、内部電極層3の厚みが、表面電極層2の厚みよりも厚く設定されている条件(条件B)の双方の条件を備えたプリント配線板を例に挙げて説明した。
【0055】
プリント配線板としては、必ずしも条件Aと条件Bの双方の条件を備えたプリント配線板に限られず、溶融はんだが、スルーホールの全体にわたって充填されず、内部電極が形成されている位置まで溶融はんだを上昇させて凝固させることができれば、いずれか一方の条件だけを備えたプリント配線板でもよい。
【0056】
また、上述したプリント回路装置の製造方法では、プリント配線板52として、2層(下端電極層と上端電極層)の表面電極層2と2層の内部電極層3の合計4層の電極層の場合を例に挙げて説明したが、前述したプリント配線板51の場合と同様に、少なくとも3層の電極層を備えたプリント配線板であれば、スルーホール電極6を伝導する溶融はんだの熱を内部電極層3へ拡散させることができる。
【0057】
さらに、実施の形態2,3では、電子部品をプリント配線板に実装するはんだとしては、Sn−Sb系はんだ合金を例に挙げて説明した。はんだとしては、Sn−Sb系はんだ合金の他に、Sn−Ag−Sb系はんだ合金、Sn−Cu−Sb系はんだ合金、Sn−Ag−Cu−Sb系はんだ合金、Sn−In系はんだ合金、Sn−Ag−In系はんだ合金、Sn−Cu−In系はんだ合金、Sn−Ag−Cu−In系はんだ合金、Sn−Bi系はんだ合金、Sn−Ag−Bi系はんだ合金、Sn−Cu−Bi系はんだ合金、あるいは、Sn−Ag−Cu−Bi系はんだ合金でもよい。また、Sb、InおよびBiのうちのいずれか2つ以上の金属を添加したSn系はんだ合金でもよい。これらのはんだの場合にも、Sn−Sb系はんだ合金の場合と同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、上述した各プリント回路装置の製造方法では、フローはんだ付けにより電子部品をプリント配線板に実装する場合について説明した。電子部品をプリント配線板に実装する手法としては、フローはんだ付けによる他に、たとえば、はんだをコテにより溶融させてはんだ付けする方法でもよい。
【0059】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、プリント配線板を用いた機器の製造に有効に利用される。
【符号の説明】
【0061】
1 基材、1a 開口部、2 表面電極層、3,3a,3b 内部電極層、4 ランド、5 スルーホール、6 スルーホール電極、7 ソルダレジスト、8 電子部品の電極端子、9 溶融はんだ、10 はんだ、13 切り欠き、14 下端電極層、15 上端電極層、16 非貫通スルーホール、51 プリント配線板、52 プリント配線板、61 プリント回路装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1主表面および第2主表面を有し、前記第1主表面の側から前記第2主表面の側へ向かって貫通する貫通穴を有する基材と、
前記貫通穴の側壁に形成された貫通穴電極と、
前記貫通穴における前記第1主表面側の第1開口端の周囲に形成され、前記貫通穴電極に接続される第1電極層と、
前記貫通穴における前記第2主表面側の第2開口端の周囲に形成され、前記貫通穴電極に接続されて溶融はんだに浸漬される第2電極層と、
前記貫通穴を周方向から取り囲むように、前記第1主表面と前記第2主表面との間の前記基材中に形成され、前記貫通穴の全周において前記貫通穴電極に接続された内部電極層と
を有し、
前記内部電極層は、前記内部電極層の面積が、前記貫通穴の直径を半径とする円の面積よりも大きく設定されている条件、および、前記内部電極層の厚みが、前記第2電極層の厚みよりも厚く設定されている条件の少なくともいずれかの条件を具備するように形成された、プリント配線板。
【請求項2】
前記第2主表面では、前記第2開口端を断続的に取り囲む態様で、前記第2電極層の部分が除去された切欠き部が形成された、請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記基材を貫通させない態様で、前記第1電極層を貫通して前記内部電極層に達するように前記基材に形成された非貫通穴と、
前記非貫通穴の側壁に形成され、前記第1電極層および前記内部電極層と接続される非貫通穴電極と
を備えた、請求項1または2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板に、電子部品を実装したプリント回路装置であって、
前記基材の前記貫通穴に挿通された電子部品の端子と、
前記貫通穴電極と前記電子部品の端子とを電気的に接続して固定するはんだと
を備え、
前記はんだとしてSn−Sb系はんだ合金を適用した、プリント回路装置。
【請求項5】
前記はんだは、前記貫通穴内のうち前記第2電極層から前記内部電極が形成されている位置まで充填された、請求項4記載のプリント回路装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のプリント回路装置の製造方法であって、
前記基材の前記貫通穴に電子部品の端子を挿通する工程と、
前記基材の前記第2主表面の側を、前記はんだを溶融した溶融はんだに浸漬し、前記貫通穴に前記溶融はんだを充填する工程と、
前記溶融はんだから前記基材を引き上げて前記溶融はんだを冷却することにより、前記電子部品の前記端子を前記基材に固定する工程と、
を備え、
前記溶融はんだを充填する工程では、前記貫通穴内のうち前記第2電極層から前記内部電極が形成されている位置まで前記溶融はんだが充填される条件のもとで前記溶融はんだに浸漬される、プリント回路装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−222625(P2011−222625A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87851(P2010−87851)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】