説明

入退場管理システム

【課題】蓄電手段の残量減少を報知する手段を識別デバイスに付加することなく、蓄電手段の残量不足により識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなることを回避できる入退場管理システムを提供する。
【解決手段】送信制御部8は、残量検出部7にて検出された蓄電手段6の残量を所定の閾値と比較することにより、当該残量がどの程度減少しているのかを判断する。送信制御部8は、蓄電手段6の残量が少なくなると通信機能部3から受信装置に信号を送信する際の送信電力を段階的に小さくすることで、通信機能部3における受信装置との間の通信可能距離を短くする。そのため、蓄電手段6の残量が減少すると、受信装置が識別デバイス1の識別情報を認証して扉を解錠するときの識別デバイス1から受信装置までの距離が短くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別デバイスから受信装置に識別情報が送信されると、受信装置が識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて前記対象領域への入退場を許可するか否かを決定する入退場管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビル等においてオフィスなどの対象領域の出入口に配置された受信装置と、ユーザが携帯可能な薄型の識別デバイスとを用いた入退場管理システムが普及している。この入退場管理システムでは、識別デバイスから受信装置に識別情報を無線通信にて送信し、受信装置において、識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて対象領域への入退場を許可するか否かを決定することにより、扉の解錠動作、あるいは自動ドア、自動改札機等の開閉動作を制御する。
【0003】
この種の入退場管理システムは、受信装置から送られてきた搬送波の電力を利用して送信する機能を識別デバイスに備えた受動型RFタグ(パッシブタグ)方式を採用することが一般的であるため、通信可能距離が比較的短く、受信装置に識別デバイスをかざす行為が求められる。
【0004】
これに対して、識別デバイス自身に電池を電源として具備し、当該電池からの電力供給を受けてデータ送信する機能を識別デバイスに備えた能動型RFタグ(アクティブタグ)方式を採用することで利便性を向上させることも提案されている。すなわち、自身に電源を備えた識別デバイスでは、受動型RFタグ方式に比べて受信装置との通信距離を長く(たとえば10m)することが可能である。これにより、受信装置に識別デバイスをかざす行為が不要となり、識別デバイスを所持(携帯)しているユーザが受信装置に近づくだけで受信装置−識別デバイス間の通信が可能になる。
【0005】
ところで、識別デバイスに一次電池を具備する場合、定期的に電池交換等のメンテナンスが必要になるという不都合があるので、この種の識別デバイスにおいては、光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池を電源として用いることが考えられる(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
また、識別デバイスに電源として太陽電池を備え、識別デバイスに設けた表示部を太陽電池で生成された電力により駆動して当該表示部に諸情報を表示させるということも考えられている(たとえば特許文献2、3参照)。
【0007】
ただし、太陽電池を用いる場合、太陽電池に光が入射しているときのみ太陽電池からの電力供給が可能であるとすれば、たとえば夜間などで太陽電池への入射光強度が低下する環境下で、識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなることがある。そこで、二次電池やキャパシタ等の蓄電手段を太陽電池と併せて用いることで、太陽電池に対する入射光強度が低下した環境下でも、安定した電力供給を継続的に行う構成とすることが好ましい。つまり、この構成によれば、太陽電池に光が入射していなくても、蓄電手段に蓄えられた電力を活用することで識別デバイスと受信装置との間の通信が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−24551号公報
【特許文献2】特開2002−32728号公報
【特許文献3】特開平10−240873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述したように太陽電池と蓄電手段とを併用した識別デバイスであっても、識別デバイスが薄暗い屋内(室内)で使用される場合など、長時間に亘って太陽電池に十分な光が入射しない状態で識別デバイスが使用される場合、蓄電手段の残量は徐々に減少する。蓄電手段の残量が不足すると、識別デバイスと受信装置との間の通信が成立せず、入退場管理システムが正常に機能しなくなる(ユーザが入退場できなくなる)おそれがある。この場合、太陽電池を一定時間光に晒すことで蓄電手段を充電すれば、蓄電手段の残量不足により識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなることは回避できる。
【0010】
そこで、蓄電手段の残量が減少するとその旨を光や音で報知する手段を設け、ユーザに蓄電手段の残量減少を知らせて蓄電手段の充電行為(太陽電池を光に晒す行為)を促すことが望ましい。しかし、このような報知手段を識別デバイスに付加するとなると、識別デバイスを構成する部品点数が増加し、識別デバイスが大型化してユーザが携帯するのに適さないサイズになったり、識別デバイスの低コスト化が難しくなったりするという問題がある。
【0011】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであって、蓄電手段の残量減少を報知する手段を識別デバイスに付加することなく、蓄電手段の残量不足により識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなることを回避できる入退場管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、対象領域の出入口に配置された受信装置と、ユーザに所持され受信装置と無線通信可能な識別デバイスとを備え、識別デバイスから受信装置に識別情報が送信されると、受信装置が識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて前記対象領域への入退場を許可するか否かを決定する入退場管理システムであって、識別デバイスが、識別情報を電気情報として担持する情報保持部と、受信装置と無線通信を行うことにより識別情報を受信装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池および太陽電池の生成した電力を蓄電する蓄電手段を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部と、蓄電手段の残量を検出する残量検出部と、残量検出部で検出される残量を所定の閾値と比較し当該残量が閾値を下回ると通信機能部における識別情報送信時の送信電力を段階的に小さくすることで、受信装置との通信可能距離を短くする送信制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、識別デバイスが、残量検出部で検出される残量が所定の閾値を下回ると通信機能部の送信電力を段階的に小さくする送信制御部を有するので、ユーザにおいては、識別デバイスと受信装置との通信可能距離が短くなったことをもって、蓄電手段の残量減少を知ることができる。すなわち、ユーザは、識別デバイスの使用感が変化することから蓄電手段の残量減少を知ることができるので、蓄電手段の残量減少を音や光で報知する手段を識別デバイスに付加することなく、蓄電手段の残量減少をユーザに知らせることができる。したがって、蓄電手段の残量が減少するとユーザに蓄電手段の充電行為を促すことができ、結果的に、蓄電手段の残量不足により識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなることを回避できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1の識別デバイスを示す概略ブロック図である。
【図2】同上の入退場管理システムの適用例を示す概略図である。
【図3】同上の識別デバイスの動作を示すフローチャートである。
【図4】同上の入退場管理システムを示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
本実施形態の入退場管理システムは、図2に示すように対象空間としての部屋Rへの入退室管理に用いられるものであって、部屋Rの出入口の扉D付近の壁に設置された受信装置100と、ユーザHに携帯され当該受信装置100と無線通信する薄型(ここではカード型)の識別デバイス1とを構成要素として備えている。
【0016】
この入退場管理システムにおいては、識別デバイス1と受信装置100との間で電磁波を媒体とした無線通信を行うことにより、識別デバイス1を所有する各個人の認証を行うのであって、当該認証結果に応じて部屋への入退場を許可するか否かを決定する。
【0017】
すなわち、識別デバイス1には、各個人(識別デバイス1の所有者)を識別するための識別情報(ID)が電気情報として格納された情報保持部2(図1参照)が搭載されており、受信装置100との通信時に当該識別情報を受信装置100に送信する。そして、受信装置100は、受け取った識別情報を予め登録されているデータ(正規の識別情報)と照合し、認証に成功すれば扉Dを解錠し、認証に失敗すれば扉Dの施錠状態を維持するように扉Dの解錠動作を制御する。そのため、上記入退場管理システムを用いれば、ユーザHに識別デバイス1を所持させておくだけで当該ユーザHの入退室管理等が可能となる。
【0018】
識別デバイス1は、図1に示すように識別情報を記憶するメモリからなる情報保持部2と、受信装置100との間で無線通信を行う通信機能部3と、通信機能部3に対して電力供給を行う電源部4とを備えている。この識別デバイス1は、少なくとも情報保持部2に記憶した識別情報を、通信機能部3を介して受信装置100に発信する機能を有する。さらに、識別デバイス1には、後述する残量検出部7および送信制御部8が設けられている。なお、情報保持部2はメモリに限らず、たとえばディップスイッチの接点の開閉状態によって表される識別情報を担持するものであってもよい。
【0019】
電源部4は、受信装置100との通信に必要な電力を供給するものであって、外部から照射する光エネルギを電気エネルギに変換する光電変換素子である太陽電池5を有している。したがって、太陽電池5に対して十分な光量の光が照射する環境を確保することで、電池交換や充電等のメンテナンスを行うことなく、長期間に亘って安定した電力供給を実現することができる。ここでは、識別デバイス1の通常の使用形態において太陽電池5に光を照射できるように、識別デバイス1をたとえば名札のように周囲の人に視認されやすい形態でユーザHに所持されるものとする。
【0020】
また、電源部4においては、二次電池やキャパシタ等の蓄電手段6を太陽電池5と併せて用いることで、太陽電池5に対して光が照射しない環境下においても、通信機能部3に対して安定した電力供給を継続的に行う構成としてある。この構成によれば、太陽電池5に光が入射していなくても、蓄電手段6に蓄えられた電力を活用することで、識別デバイス1と受信装置100との間の通信が可能となる。そのため、太陽電池5の発電効率が高い日中に太陽電池5の出力で蓄電手段6を充電し、太陽電池5の発電効率が低下する夜間には蓄電手段6に蓄えた電力を活用することで、太陽電池5の出力を有効に利用できる。
【0021】
ここで、本実施形態の識別デバイス1は、太陽光が照射する屋外のみならず、太陽光に比べて低照度となる屋内(室内)においても太陽電池5で十分な電力を生成可能とするため、太陽電池5として、増感作用を持つ物質と電荷を輸送する電子輸送部および正孔輸送部とを有したものを用いている。増感作用を持つ物質は、光を吸収することにより電子(負の電荷)と正孔(正の電荷)とを別々の物質に振り分ける機能を持ち、このことが光電変換効果の発現の要因となる。ここで、増感作用を持つ物質より電子を受け取る材料部が電子輸送部であり、増感作用を持つ物質より正孔を受け取る材料部が正孔輸送部である。
【0022】
増感作用を持つ物質と電荷輸送部(電子輸送部および正孔輸送部)とを有した太陽電池5としては、色素増感太陽電池、量子ドット増感太陽電池、色素増感有機太陽電池等が知られているが、本実施形態では色素増感太陽電池を太陽電池5として採用することとする。色素増感型の太陽電池5は、基板を透明材料から形成することで全体として透過性を有した構成とすることができ、さらに、基板を可撓性のある樹脂フィルム等で形成すれば全体として可撓性を有した構成とすることが可能である。
【0023】
ところで、本実施形態のように太陽電池5と蓄電手段6とを併用した識別デバイス1であっても、識別デバイス1が薄暗い屋内(室内)で使用される場合など、長時間に亘って太陽電池5に十分な光が入射しない状態で識別デバイス1が使用される場合、蓄電手段6の残量は徐々に減少する。蓄電手段6の残量が不足すると、太陽電池5に光が照射しない状態で通信機能部3に十分な電力が供給されなくなるため、識別デバイス1と受信装置100との間の通信が成立せず、入退場管理システムが正常に機能しなくなる(ユーザHが入退室できなくなる)おそれがある。
【0024】
そこで、本実施形態では、以下に説明する構成を識別デバイス1に採用することで、ユーザHに蓄電手段6の残量減少を知らせて蓄電手段6の充電行為(太陽電池5を光に晒す行為)を促すようにし、蓄電手段6の残量不足により識別デバイス1と受信装置100との間の通信が成立しなくなることを回避可能としている。
【0025】
すなわち、識別デバイス1は、蓄電手段6の残量を検出する残量検出部7と、残量検出部7にて検出される蓄電手段6の残量が少なくなると受信装置100との間の通信状態を変化させる送信制御部8とを有している。
【0026】
残量検出部7は、通信機能部3が受信装置100との通信を開始する際(後述の起動信号を受信装置100から受信した際)に、蓄電手段6の残量を検出する。ここでは、蓄電手段6の出力電圧を監視することにより蓄電手段6の残量を検出するものとするが、その他の周知方法によって残量を検出するようにしてもよい。
【0027】
送信制御部8は、検出された蓄電手段6の残量を所定の閾値と比較することにより、当該残量がどの程度減少しているのかを判断する。ここでは、第1の閾値と第1の閾値よりも小さい第2の閾値とが設定されており、蓄電手段6の残量が第1の閾値以上の場合(以下、Aレベルという)と、第1の閾値未満且つ第2の閾値以上の場合(以下、Bレベルという)と、第2の閾値未満の場合(以下、Cレベルという)との3段階に分けて蓄電手段6の残量を判断するものとする。
【0028】
ここにおいて、送信制御部8は、蓄電手段6の残量が少なくなると通信機能部3から受信装置100に信号を送信する際にアンテナ(後述のRFアンテナ34)に供給する電力(送信電力)を小さくすることで、通信機能部3における受信装置100との間の通信可能距離を短くする。具体的に説明すると、送信制御部8は、蓄電手段6の残量がAレベル、Bレベル、Cレベルと低下するに連れて受信装置100との間の通信可能距離が段階的に短くなるように、送信電力を3段階で切り替える制御を行う。これにより、蓄電手段6の残量が十分にある状態(Aレベルの状態)では、識別デバイス1は受信装置100とは比較的離れた場所から識別情報を受信装置100に送信できるのに対し、蓄電手段6の残量がある程度減少した状態(BレベルやCレベルの状態)では、識別デバイス1から受信装置100に識別情報を送信できる距離が短くなる。
【0029】
このときの識別デバイス1の動作について図3のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
残量検出部7にて蓄電手段6の残量が検出されると(S1)、送信制御部8は、当該残量を第1および第2の各閾値と比較する。そして、検出された残量が第1の閾値以上であれば(S2:Yes)、蓄電手段6の残量はAレベルと判断し、受信装置100との通信可能距離が最大(ここでは数m)となるように送信電力Pt1を選択する(S4)。一方、残量が第1の閾値未満、第2の閾値以上であれば(S3:Yes)、蓄電手段6の残量はBレベルと判断し、送信電力Pt1より小さい送信電力Pt2を選択することで(S5)、受信装置100との通信可能距離を最大よりも短くする。また、残量が第2の閾値未満であれば(S3:No)、蓄電手段6の残量はCレベルと判断し、送信電力Pt2より小さい送信電力Pt3を選択することで(S6)、受信装置100との通信可能距離を最小(ここでは数cm)とする。
【0031】
その結果、識別デバイス1を所持するユーザHが部屋Rの出入口に近づいた際に、受信装置100が識別デバイス1の識別情報を認証して扉Dを解錠するときのユーザHから受信装置100までの距離が、蓄電手段6の残量が減少するに従って短くなる。したがって、ユーザHにおいては、通常(Aレベル)ならば扉Dの数歩手前で扉Dが解錠されるところで、扉Dの直近にまで近寄らなければ扉Dが解錠されない事態(Bレベル)、あるいは受信装置100に識別デバイス1をかざさなければ扉Dが解錠されない事態(Cレベル)が生じたときに、識別デバイス1の蓄電手段6の残量の減少を知ることができる。このようにして蓄電手段6の残量の減少を知ったユーザHは、太陽電池5をしばらくの間光に晒すことで蓄電手段6を充電して残量不足を解消し、蓄電手段6の残量不足により識別デバイス1と受信装置100との間の通信が成立しなくなることを回避できる。
【0032】
以上説明した構成によれば、ユーザHは識別デバイス1を所持して部屋Rへ出入りするという入退場管理システムの通常の使用形態の中で、その使用感の変化(つまり、扉Dが解錠されたときの識別デバイス1−受信装置100間の距離の段階的な変化)をもって蓄電手段6の残量が少なくなったことを直感的に知ることができる。すなわち、蓄電手段6の残量が少なくなったことを音や光で報知するための手段(LEDやブザー等)を識別デバイス1に付加しなくても、当該残量が少なくなればそのことをユーザHに報知して蓄電手段6の充電行為(太陽電池5を光に晒す行為)を促すことができる。したがって、音や光で報知するための報知手段の追加によって識別デバイス1を構成する部品点数が増加し、識別デバイス1が大型化してユーザHが携帯するのに適さないサイズになったり、識別デバイス1の低コスト化が難しくなったりすることを回避できる。
【0033】
また、蓄電手段6の残量が少なくなったときに識別デバイス1が音や光でその旨を報知する構成では、蓄電手段6の残量減少時に、前記報知手段を駆動するための電力が消費されることで通常時(蓄電手段6残量がAレベルのとき)に比べて蓄電手段6に蓄積された電力の消費が増えることになるが、本実施形態ではこのような消費電力の増加もない。それどころか、蓄電手段6の残量が少なくなると送信電力を小さくして送信可能距離を短くするので、蓄電手段6に蓄積された電力の消費を、蓄電手段6の残量減少時に通常時に比べて小さく抑えることができるという利点がある。
【0034】
さらに、本実施形態では、蓄電手段6の残量を3段階に分けて判断しており、当該残量が減少するに従って識別デバイス1における受信装置100との通信可能距離が段階的に短くなる。そのため、ユーザHは、識別デバイス1における受信装置100との通信可能距離から、蓄電手段6の残量が少なくなっているという情報だけでなく、蓄電手段6の残量がどの程度減少しているかという情報も知ることができ、残量の緊急度に応じて適切な措置(蓄電手段6をすぐに充電する等の措置)をとることができる。
【0035】
なお、蓄電手段6の残量を4段階以上に分けて判断するようにしてもよく、この場合、識別デバイス1における受信装置100との通信可能距離も4段階以上で細かく切り替わることになる。同様に、蓄電手段6の残量判断を正常と異常との2段階で行うようにしてもよく、この場合、送信電力も2段階で切り替えられ、通信可能距離も2段階で切り替わることとなる。
【0036】
以下、上記実施形態の入退場管理システムの具体例について、図4を参照して説明する。
【0037】
部屋Rの出入口に設置された受信装置100は、LF帯(長波帯:30〜300kHz)の第1の通信方式にて識別デバイス1と通信するためのLF帯送信部101およびLFアンテナ102と、UHF帯(極超短波帯:300MHz〜3GHz)の第2の通信方式にて識別デバイス1と通信するためのRF送受信部103およびRFアンテナ104と、LF帯送信部101およびRF送受信部103を制御する制御部105と、制御部105に接続された液晶ディスプレイ等からなる表示部106およびブザー107とを具備する。さらに、受信装置100は、識別情報の認証用のデータ(正規の識別情報)が格納された記憶部108を有する。
【0038】
ユーザに所持される識別デバイス1は、上記第1の通信方式にて受信装置100と通信するためのLF帯受信部31およびLFアンテナ32と、上記第2の通信方式にて受信装置100と通信するためのRF送受信部33およびRFアンテナ34と、LF帯受信部31およびRF送受信部33を制御する制御部35とを通信機能部3に備えている。ここで、LFアンテナ32はたとえば通信機能部3の基板(図示せず)上に形成されたループアンテナからなり、RFアンテナ33は前記基板上に形成されたパッチアンテナからなる。
【0039】
次に、上述した入退場管理システムの動作例を示す。
【0040】
受信装置100は、制御部105で生成した起動信号を、LF帯送信部101において誘導磁界の信号成分に重畳し、増幅してLFアンテナ102から第1の通信方式(LF)にて、一定周期で間欠的に発信する。これにより、受信装置100の周囲(部屋Rの出入口付近)には前記起動信号が届く範囲内で認証エリア9が形成される。
【0041】
識別デバイス1を所持したユーザHが上記認証エリア9内に入ると、識別デバイス1は、受信装置100からの起動信号をLFアンテナ32で受信した後に、LF帯受信部31が制御部35を起動し、制御部35にて情報保持部2内の識別情報を含む応答信号を生成し、RF送受信部33からRFアンテナ34を介して第2の通信方式(UHF)にて応答信号を受信装置100に返信する。ここにおいて、識別デバイス1は、起動信号を受信するまでは、通信機能部3のうちLF帯受信部31のみに電源部4から電力供給を行いLF帯受信部31以外の各部(RF送受信部33、制御部35)への電力供給を行わない低消費電力モードで動作しており、起動信号を受信することで初めてLF帯受信部31以外の各部にも電力供給が行われる通常モードで動作する。
【0042】
受信装置100は、応答信号をRFアンテナ104を介してRF送受信部103で受信し、当該応答信号に含まれる識別情報と記憶部108内のデータとの照合を行う。そして、当該識別情報が正規の識別情報であると判断されて認証が正常に完了した場合には、受信装置100の制御部105は、認証完了した識別情報を含む確認信号(ACK信号)をRF送受信部103からRFアンテナ104を介して識別デバイス1に送信する。また、受信装置100の制御部105は、識別情報の認証が正常に完了すれば表示部106やブザー107によってその旨を報知するとともに、部屋Rの出入口の扉Dを解錠するための制御を行なう一方で、識別情報の認証に失敗した場合には、表示部106やブザー107によって警告を行うとともに、部屋Rの出入口の扉Dの施錠を維持するための制御を行う。なお、受信装置100の機能の一部を受信装置100に接続される他装置に持たせ、応答信号を受信装置100から前記他装置に転送するようにし、識別情報の照合を前記他装置にて行う構成としてもよい。
【0043】
識別デバイス1は、前記確認信号をRF送受信部33で受信すると、応答信号の送信を終了する。なお、受信装置100からの確認信号の送信に代えて、認証完了した識別情報を次回の起動信号に含むようにしてもよく、この場合、識別デバイス1は自己の識別情報を含む起動信号をLF帯受信部31にて受信することで、応答信号の送信を終了する。
【0044】
このように、識別デバイス1がLF帯の起動信号で起動し、UHF帯の応答信号を返信させることにより、前記認証エリア9をたとえば1.5〜2mの範囲に正確に規定することができる。ここにおいて、識別デバイス1の送信制御部8は、RF送受信部33からRFアンテナ34を介して送信される応答信号の送信電力を、蓄電手段6の残量に応じて切り替える構成とする。これにより識別デバイス1にて応答信号が届く範囲(認証エリア9)が切り替わると、識別デバイス1における受信装置100との通信可能距離が切り替わることとなる。
【0045】
また、UHF帯の無線通信を行うRF送受信部33においては、消費電力が10〜20mAと大きいのに対して、LF帯の無線通信を行うLF帯受信部31においては、数μA程度の微弱な電力で起動するので、待機状態にてRF送受信部33への電力供給を行わない低消費電力モードを採用することによって、識別デバイス1の待機電力を低く抑えることが可能である。
【0046】
なお、上述の例では受信装置100が識別情報の認証結果に応じて扉Dの解錠動作を制御する構成を示したが、この例に限らず、受信装置100が自動ドア、自動改札機等の開閉動作を制御する構成としてもよい。また、無線通信は基本的に電磁波を媒体とする通信を意味するが、識別デバイス1は電磁誘導を利用して受信装置100と通信(無線通信)を行うものであってもよい。
【0047】
ところで、以上説明した構成の入退場管理システムを用いれば、たとえば不特定多数の来訪者のある管理領域への出入口に受信装置100を設置し、正規の(アポイントのある)来訪者には識別デバイス1を予め渡しておくことで、面識の有無に関わらず正規の来訪者を識別して前記管理領域への入場を許可することが可能となる。さらに、保育施設や介護施設等で集団行動が必要となる状況下において、各個人に識別デバイス1を携帯させることにより、点呼に代えて各個人の存在確認のために活用することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 識別デバイス
2 情報保持部
3 通信機能部
4 電源部
5 太陽電池
6 蓄電手段
7 残量検出部
8 送信制御部
100 受信装置
H ユーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域の出入口に配置された受信装置と、ユーザに所持され受信装置と無線通信可能な識別デバイスとを備え、識別デバイスから受信装置に識別情報が送信されると、受信装置が識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて前記対象領域への入退場を許可するか否かを決定する入退場管理システムであって、識別デバイスは、識別情報を電気情報として担持する情報保持部と、受信装置と無線通信を行うことにより識別情報を受信装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池および太陽電池の生成した電力を蓄電する蓄電手段を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部と、蓄電手段の残量を検出する残量検出部と、残量検出部で検出される残量を所定の閾値と比較し当該残量が閾値を下回ると通信機能部における識別情報送信時の送信電力を段階的に小さくすることで、受信装置との通信可能距離を短くする送信制御部とを有することを特徴とする入退場管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−165312(P2010−165312A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9190(P2009−9190)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】