説明

多層基板

【課題】高性能な高周波伝送特性を実現したうえで、ビルドアップ接続の簡単化を図ることができる。
【解決手段】第1及び第2の誘電体層10,11の層面側の中心位置の周囲に所定位置ずらして放射状に配置した4個のビルドアップ接続部18を設けた接続用導体パターン17を有する高周波線路16を形成して、この第1及び第2の誘電体層10,11間に該第1及び第2の誘電体層10,11のビルドアップ接続部18がビルドアップ接続される4個のビルドアップ接続部18を所定角度ずらせて放射状に配置した接続用導体パターン17を有した第1乃至第3の中間誘電体層12〜14を積層配置してビルドアップ接続するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えばビルドアップ接続を用いて高周波回路が形成される多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器には、複数の層がビルドアップ接続された多層基板が収容されている。このような多層基板は、異なる層上に高周波回路が形成され、層間がビルドアップ接続を用いて配線接続されている。
【0003】
ところで、このような多層基板は、そのビルドアップ接続部に穴埋め及び金属メッキを施すことにより、異なる層をビルドアップ接続することで、同軸線路として動作する接続回路が形成されている。
【0004】
このため、上記多層基板では、ビルドアップ接続により多層化を図るのに、穴埋め及び金属メッキ工程等の多数の製作工程を必要としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−355990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、従来の多層基板では、異なる複数の層をビルドアップ接続して接続回路を形成するのに複数の製作工程が必要とするために、その製作作業が面倒であるという課題を有する。
【0007】
そこで、高性能な高周波伝送特性を実現したうえで、ビルドアップ接続の簡単化を図り得るようにした多層基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態によれば、多層基板は、第1及び第2の誘電体層と、この第1及び第2の誘電体層間に積層される複数の中間誘電体層で形成される。
【0009】
第1及び第2の誘電体層は、中心位置の周囲に所定位置ずらして放射状に配置した複数のビルドアップ接続部が設けられた接続用導体パターンを有した高周波線路が一方面に設けられる。
【0010】
複数の中間誘電体層は、第1及び第2の誘電体層の接続用導体パターンと同心状に設けられ、該第1及び第2の誘電体層の複数のビルドアップ接続部がビルドアップ接続される複数のビルドアップ接続部を所定角度ずらせて放射状に配置した接続用導体パターンが設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施の形態に係る多層基板の要部を断面して示した図である。
【図2】図1のA―Aをスライスした面を示した図である。
【図3】図1のB―Bをスライスした面を示した図である。
【図4】図1のC―Cをスライスした面を示した図である。
【図5】図1のD―Dをスライスした面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る多層基板を示すもので、例えば第1及び第2の誘電体層10,11の間に配線層を構成する第1乃至第3の中間誘電体層12〜14が積層されて形成される。
【0014】
第1及び第2の誘電体層10,11には、その外面にグランド(GND)層15が形成され、その第1及び第3の中間誘電体層12,14との層面には、高周波線路16がそれぞれ形成される(図2及び図5参照)。この高周波線路16の端部には、同軸線路を構成する、例えば円形状の接続用導体パターン17が対向してそれぞれ形成される。
【0015】
このうち第1の誘電体層10の層面側の接続用導体パターン17には、複数、例えば4個のビルドアップ接続部18がそれぞれ導体パターン17の中心の周囲に放射状に所定の間隔を有して設けられる。この複数のビルドアップ接続部18の間隔としては、高周波線路に伝送する周波数の波長に対して1/8波長以下の小さな間隔に設定することにより、高品質な高周波伝送特性を有する同軸線路を構成することができる。
【0016】
そして、上記第1の中間誘電体層12と上記第2の中間誘電体層13との層面には、図3に示すように接続用導体パターン17が第1の誘電体層10の接続用導体パターン17に対応して形成される。そして、この接続用導体パターン17には、同様に4個のビルドアップ接続部18が上記第1の誘電体層10の接続用導体パターン17のビルドアップ接続部18に対して45度の角度間隔をずらせて設けられる。
【0017】
また、上記第2の中間誘電体層13と上記第3の中間誘電体層14との層面には、図4に示すように接続用導体パターン17が第1の誘電体層10の接続用導体パターン17に対応して形成される。この接続用導体パターン17には、例えば4個のビルドアップ接続部18が上記第1の誘電体層10の接続用導体パターン17のビルドアップ接続部18に対して45度の間隔をずらせて設けられる。
【0018】
上記ビルドアップ接続部18は、同様に例えば筒状をした断面截頭円錐体形状に形成され、その大径側が開口部181として構成される。そして、ビルドアップ接続部の小径側は、接続部182として構成されて隣接する第2及び第3の中間誘電体層13,14、第2の誘電体層11の接続用導体パターン17のビルドアップ接続部18の開口部181間に位置されてビルドアップ接続される。
【0019】
ここで、第1乃至第3の中間誘導体層12〜14の接続用導体パターン17は、各ビルドアップ接続部18が、その接続部182の積層方向に隣接する層におけるビルドアップ接続の位置が重なることなくビルドアップされて、第1及び第2の誘電体層10,11の高周波線路16の接続用導体パターン17に対して高周波伝送特性の優れた同軸線路を形成する。
【0020】
このように、上記多層基板は、第1及び第2の誘電体層10,11の層面側の中心位置の周囲に所定位置ずらして放射状に配置した4個のビルドアップ接続部18を設けた接続用導体パターン17を有する高周波線路16を形成して、この第1及び第2の誘電体層10,11間に該第1及び第2の誘電体層10,11のビルドアップ接続部18がビルドアップ接続される4個のビルドアップ接続部18を所定角度ずらせて放射状に配置した接続用導体パターン17を有した第1乃至第3の中間誘電体層12〜14を積層配置してビルドアップ接続するように構成した。
【0021】
上記構成によれば、積層方向の隣接する層間におけるビルドアップ接続の位置が重ならないことにより、従来の如く穴埋め及び金属メッキ処理工程を行うことなく、第1及び第2の誘電体層10,11の高周波線路16をビルドアップ接続することが可能となることにより、その作業工程を削減することができるため、製作作業性の向上を図ることができる。
【0022】
上記実施形態では、第1及び第2の誘電体層10,11間に第1乃至第3の中間誘電体層12〜14の3層を積層配置したビルドアップ接続に適用した場合について説明したが、この層数に限ることなく、構成可能であり、同様の効果が期待される。
【0023】
また、上記実施形態では、接続用導体パターン17に対して4個のビルドアップ接続部18を設けてビルドアップ接続するように構成した場合について説明したが、この数に限ることなく、構成可能であり、同様の効果が期待される。
【0024】
よって、この発明は、上記実施形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0025】
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0026】
10,11…第1及び第2の誘電体層、12〜14…第1乃至第3の中間誘電体層、15…グランド層、16…高周波線路、17…接続用導体パターン、18…ビルドアップ接続部、181…開口部、182…接続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心位置の周囲に所定位置ずらして放射状に配置した複数のビルドアップ接続部が設けられた接続用導体パターンを有した高周波線路が一方面に設けられた第1及び第2の誘電体層と、
この第1及び第2の誘電体層間に積層され、該第1及び第2の誘電体層の接続用導体パターンと同心状に設けられ、該第1及び第2の誘電体層の複数のビルドアップ接続部がビルドアップ接続される複数のビルドアップ接続部を所定角度ずらせて放射状に配置した接続用導体パターンが設けられる複数の中間誘電体層と、
を具備することを特徴とする多層基板。
【請求項2】
前記第1及び第2の誘電体層、複数の中間誘電体層の各複数のビルドアップ接続部の間隔は、伝送する周波数の波長に対して1/8波長以下に設定されることを特徴とする請求項1記載の多層基板。
【請求項3】
前記第1及び第2の誘電体層、複数の中間誘電体層の各複数のビルドアップ接続部は、断面截頭円錐体形状の筒状を有することを請求項1又は2記載の多層基板。
【請求項4】
前記第1及び第2の誘電体層、複数の中間誘電体層の各接続用導体パターンは、円形状に形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の多層基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110247(P2013−110247A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253640(P2011−253640)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】