説明

電動パワーステアリング装置

【課題】ロールオーバが発生しないように、電動パワーステアリング装置が通常有するSAT信号を用いてロールオーバ状態を予見し、運転者が早い操舵入力をすることができないようなアンチロールオーバ性を有する機能を具備した高性能な電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】車両のロール運動を含まないSAT値TSAT1と、前記車両のロール運動を含むSAT値TSAT2との差に基づくロール予見量が所定値より大きい場合に、早い操舵入力をできないようにモータアシストを補正する機能を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵系にモータによる操舵補助力を付与するようにした電動パワーステアリング装置に関し、特にアンチロールオーバ制御の機能を有する電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング装置をモータの回転力で補助負荷付勢(アシスト)する電動パワーステアリング装置は、モータの駆動力を、減速機を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に補助負荷付勢するようになっている。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、アシストトルク(操舵補助力)を正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、電流指令値とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデュ−ティ比の調整で行っている。
【0003】
ここで、電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図5に示して説明すると、操向ハンドル1のコラム軸2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4A及び4B、ピニオンラック機構5を経て操向車輪のタイロッド6に連結されている。コラム軸2には、操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10が設けられており、操向ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット30には、バッテリ14から電力が供給されると共に、イグニションキー11からイグニションキー信号が入力され、コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルク値Thと車速センサ12で検出された車速Vとに基づいて、アシストマップ等を用いてアシスト指令の操舵補助指令値Iの演算を行い、演算された操舵補助指令値Iに基づいてモータ20に供給する電流を制御する。
【0004】
コントロールユニット30は主としてCPU(MPU(Micro Processor Unit)やMCU(Micro Controller Unit)も含む)で構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図6のようになる。
【0005】
図6を参照してコントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10で検出された操舵トルク値Th及び車速センサ12で検出された車速Vは、電流指令値Irefを演算する電流指令値演算部31に入力される。電流指令値演算部31は、入力された操舵トルク値Th及び車速Vに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値Irefを決定する。電流指令値Irefは加算部32Aを経て電流制限部33に入力され、最大電流を制限された電流指令値Irefmが減算部32Bに入力され、フィードバックされているモータ電流値Imとの偏差I(Irefm−Im)が演算され、その偏差が操舵動作の特性改善のためのPI制御部35に入力される。PI制御部35で特性改善された電圧指令値VrefがPWM制御部36に入力され、更に駆動部としてのインバータ回路37を介してモータ20がPWM駆動される。モータ20の電流値Imはモータ電流検出器38で検出され、減算部32Bにフィードバックされる。インバータ回路37は駆動素子としてFETが用いられ、FETのブリッジ回路で構成されている。
【0006】
また、加算部32Aには補償部34からの補償信号CMが加算されており、補償信号CMの加算によってシステム系の補償を行い、収れん性や慣性特性等を改善するようようになっている。補償部34は、セルフアライニングトルク(SAT)343と慣性342を加算部344で加算し、その加算結果に更に収れん性341を加算部345で加算し、加算部345の加算結果を補償信号CMとしている。
【0007】
上述のような一般的な電動パワーステアリング装置において、運転者が速い操舵をした場合には過度なヨーレート(横加速度)が発生し、その結果車両に大きなロール角が付く。このロール角はサスペンションのバネを圧縮する力となり、最初に入力した逆の方向に操舵した場合には、バネに貯留したエネルギーが一気に解放され、ロールオーバ(横転)を招く事態となる。
【0008】
このロールオーバを防止するため、車両安定化制御(VDC(Vehicle Dynamics Control(登録商標)、ESP(Electronic Stability Program(登録商標)、VSC(Vehicle Stability Control(登録商標)等を含む)によってブレーキを用いてロールオーバを抑制するように制御する機能を搭載した車両も増加して来ているが、ブレーキによる制御は車両運動に対して遅れがあると共に、人間の感覚として違和感を感じることが多く、車両の商品性が損なわれる可能性もある。
【0009】
ロールオーバを抑制する制御として、特開2004−9812号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1の装置は、コントローラがロール角により車両の横転傾向を判断し、横転傾向にあると判断したとき、電動パワーステアリングにより横転を抑制する方向の操舵力を操向車輪に付加することで、素早くヨーレートを減じてロールオーバを抑制するようにしている。
【0010】
また、特開2004−203084号公報(特許文献2)に開示の車両の運動制御装置もロールオーバの抑制を制御しているが、別途設けたロールオーバ検出手段の検出によって制御している。
【特許文献1】特開2004−9812号公報
【特許文献2】特開2004−203084号公報
【特許文献3】特開2000−95132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1の装置ではヨーが発生し、その結果生じたロール角に基づいて制御しているため、車両安定化制御等で制御を実施したのと同様に不自然であり、ロールオーバの予防効果は小さい。また、特許文献2に記載の装置は種々の制御装置によるステア特性制御を実施してアンチロールオーバ性を実現しているが、目標操舵角を決定して行っている。そして、上記特許文献1及び2に記載の装置はいずれも、ロールオーバの制御はロールオーバ検出手段によるものである。
【0012】
ここにおいて、車両運動の時間的な経路を考えると、図7に示すように運転者の操舵は先ずトルクに現われ、以下順次舵角、SAT、ヨー、横加速度、ロール角の順に遅れを生じる。つまり、車両運動は運転者の意思である舵角入力によりタイヤがコーナリングパワーを発生し、そのコーナリングパワーの作用によって車両運動であるヨー、続いてロールが発生する。コーナリングパワーは、発生と同時にサスペンションのキングピン回りに働くモーメント、即ちSATを発生し、これが運転者への反力となり、ヨーの発生より早いタイミングとなっている。電動パワーステアリングの制御対象はトルクであるため、ロールオーバ状態の検出をロール角若しくはロール角速度で行うと大きな遅れを含むものとなり、確度の高い制御ができない問題がある。
【0013】
また、SUV(Sport Utility Vehicle)クラスの車両は一般の乗用車に比べ車高が高く、重心も高いのでアンチロールオーバ性が低い特性となっており、ロールオーバを生じ易い。特に近年SUVクラスの車両数が増加していることから、その横転事故も増えており、Jターンやフィッシュフックターン時においても、ロールオーバのない制御が強く望まれている。
【0014】
更に特開2000−95132号公報(特許文献3)はヨーレート微分値を推定し、ヨーレートにダンピングを与えているが、アンチロールオーバ性を制御するものではない。
【0015】
また、ヨーレート信号の変化等をロールオーバの判定条件にする場合には、ヨーレート信号を検知する手段が必要であり、電動パワーステアリング装置がヨーレートセンサ若しくはヨーレート推定回路を具備するか、或いは外部に同様なヨーレートセンサが存在することが前提であるという問題がある。
【0016】
本発明は上述のような事情からなされたものであり、本発明の目的は、ロールオーバが発生しないように、電動パワーステアリング装置が通常有するSAT信号を用いてロールオーバ状態を予見し、運転者が早い操舵入力をすることができないようなアンチロールオーバ性を有する機能を具備した高性能な電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は電動パワーステアリング装置に関し、本発明の上記目的は、車両のロール運動を含まないSAT値TSAT1と、前記車両のロール運動を含むSAT値TSAT2との差に基づくロール予見量が所定値より大きい場合に、早い操舵入力をできないようにモータアシストを補正する機能を設けることにより達成され、前記ロール予見量が、前記SAT値TSAT1と前記SAT値TSAT2の差と、前記差の微分値に係数を乗算した値との和であることにより、或いは前記ロール予見量が前記所定値より大きい場合に、車速をゲイン倍した信号をリミッタで制限した信号を電流指令値若しくは操舵補助指令値から減算することにより、より効果的に達成される。
【0018】
また、本発明は、操舵トルク値及び車速に基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算部と、前記電流指令値に基づいてステアリング機構に操舵補助力を付与するモータを制御するモータ駆動制御部とを具備した電動パワーステアリング装置に関し、本発明の上記目的は、前記操舵トルク値、前記車速、前記モータのモータ電流及び回転角度に基づいてロール予見量を演算し、前記ロール予見量が所定値より大きくなった場合にアンチロールオーバ制御信号を出力してモータアシストを補正するアンチロールオーバ制御部を設けることにより達成される。
【0019】
本発明の上記目的は、前記アンチロールオーバ制御部を、前記車速及び前記回転角度に基づいて車両のロール運動を含まないSAT値TSAT1を演算するSAT演算部と、前記操舵トルク値、前記モータのモータ電流及び角速度に基づいて車両のロール運動を含むSAT値TSAT2を演算するSAT検出部と、前記SAT値TSAT1及び前記SAT値TSAT2の差を求める減算部と、前記差よりロール予見量を演算するロール予見量演算部と、前記ロール予見量を所定値と判定して切替信号を出力するロールオーバ判定部と、前記車速に基づいて補正用車速を求めるゲイン/リミッタ部と、前記切替信号により前記補正用車速と固定値とを切替えて前記アンチロールオーバ制御信号として出力する切替部とで構成することにより、或いは前記ロール予見量演算部を、前記差を微分して係数を乗算する手段と、前記乗算した値と前記差を加算する手段で構成することにより、或いは前記ロールオーバ判定部が、前記ロール予見量が所定値より大きくなったときに前記切替信号を出力するようになっていることにより、或いは前記切替部が、前記切替信号が入力されたときに前記補正用車速を出力するようになっていることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、特別なセンサを設けることなく、トルクやモータトルクでSATを検出ないしは演算しているので、簡易な構成でアンチロールオーバ制御を実現できる。また、アンチロールオーバ制御は予見抑制制御であるので、ロールオーバが発生するまでの条件が早期に判定できればできるほど効果的に防止できるが、本発明では車両運動でヨーよりも時間的に早く現われるSATに基づいてロールオーバを予測するようにしているので、効果的な制御が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は車両の運動力学(XYZ軸)を説明するための図であり、運転者の操舵により車両は自らの運動力学に従い、図示矢印のように横方向の運動(Y軸方向)、鉛直軸回りのヨーイング運動(Z軸回りのモーメント)、これに伴ったローリング運動(X軸回りのモーメント)を行う。これらの車両運動は、運転者のトルク入力に対してヨーイング運動はローリング運動よりも遅れが小さく、SATは更に遅れが小さく、ヨーイング運動よりも時間的に僅かに早く発生するので、本発明ではSATに基づいてロールオーバを予測するようにしている。アンチロールオーバ制御は予見抑制制御であるので、ロールオーバが発生するまでの条件が早期に判定できればできるほど効果的に防止できる。つまり、VSCなどに使われるロール状態を判定するよりも早く、また、ヨーレートを使用した場合よりも効果的にロールオーバを抑制することができる。
【0022】
一般的にロール運動を含まないという前提で車両運動は二輪モデルで表すことができ、ここから求められるタイヤ横滑り角からタイヤキングピン回りに動くSATを求めることができる。即ち、車両運動の二輪モデルは下記数1で表せる。
【0023】
【数1】

上記数1から横滑り角βを求め、ロールによる操舵特性を含んでいないSAT値TSAT1を下記数2によって求める
【0024】
【数2】

上記数2で求められるSAT値TSAT1はロール運動を全く考慮していない値である。
【0025】
次に電動パワーステアリング装置の運動系では、検出可能な運転者が入力する手入力トルク、つまり操舵トルク値Thと、モータが発生するアシストトルクTmと、設計的に決まる機械摩擦Tfrcとの合算値がSATと常にバランスするという条件から、ロールによる操舵特性を含んだSAT値TSAT2を下記数3で求めることができる。
【0026】
(数3)
SAT2=Th+Tm+Tfrc
数3で求められるSAT値TSAT2はロール運動を含む値である。数2及び数3で求められた2つのSAT値TSAT1及びTSAT2の差は、ロール運動を含むか含まないかの差であり、時間tにおけるSAT値TSAT1及びTSAT2の差から求められるロール量R(t)は、下記数4で求められる。
【0027】
(数4)
R(t)=TSAT1−TSAT2
そして、ロール量R(t)は図1の実線のような特性となり、ロールオーバ閾値(所定値)をRsとして、下記数5が成立した場合にはロールオーバに至ると判断する。なお、kは係数である。
【0028】
【数5】

数5の左辺は、図2の時点t1における接線の傾きから時間t2のロール量がどうなるかを予測し、ロール量R(t)を減らす制御様式にするものであり、図1の破線の特性となる。以下では、数5の左辺、つまり図1の破線特性を「ロール予見量f(R(t))」とする。ロール予見量f(R(t))は、時間t1時点での接線の傾きで予測される将来のロール量変遷となり、図1の破線で示すようにロール量R(t)を含んだ将来のSAT値の軌跡となる。
【0029】
よって、ロール予見量f(R(t))がロールオーバ閾値Rsより大きくなって、数5が成立した場合にはロールオーバに至ったと判断し、運転者がロールオーバに至るような早い操舵をこれ以上できないように電流指令値(若しくは操舵補助指令値)を出力することにより、つまり電流指令値(若しくは操舵補助指令値)を減じることによりロールオーバを防止することができる。
【0030】
以下に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0031】
図3は本発明の構成例を図5に対応させて示しており、アンチロールオーバ制御部100を設け、アンチロールオーバ制御部100で算出されたアンチロールオーバ制御信号ARSを減算部32Cで電流指令値Iref1から減算して補正するようになっている。
【0032】
また、モータ20の回転角度θを検出するための回転センサ21(例えばレゾルバ)が取り付けられており、検出された回転角度θはSAT演算部(車両二輪モデル)120に入力されると共に角速度算出部101に入力され、角速度算出部101で算出された角速度ωはSAT検出部110に入力される。更に、SAT検出部110には操舵トルク値Th及びモータ電流Imが入力され、SAT演算部120には車速Vが入力されている。SAT検出部110は、ロールによる操舵特性を含んでいるSAT値TSAT2を検出して減算部105に減算入力し、SAT演算部120は、ロールによる操舵特性を含んでいないSAT値TSAT1を演算して減算部105に加算入力する。
【0033】
車速Vは操舵系のダンピングゲインを付与するゲイン部102に入力され、ゲインGを付与された車速G・Vが上限値を制限するリミッタ103を経て、補正用車速Vaとして切替部106の接点aに入力されている。また、切替部106の接点bには、固定値部104から“0”の信号が入力されており、接点a,bは切替信号SWによって切替えられる。なお、切替信号SWが入力されていないとき、接点は“b”に接続され、固定値“0”がアンチロールオーバ制御信号ARSとして出力される。
【0034】
一方、減算部105で求められたロール量R(t)(=TSAT1−TSAT2)はロール予見量演算部130に入力され、数5の左辺に相当するロール予見量f(R(t))を求め、ロールオーバ判定部140は上記数5に基づいてロール予見量f(R(t))がロールオーバ閾値Rsより大きくなっているか否かを判定し、数5が成立したときに切替信号SWを出力して切替部106の接点を切替える。そして、切替信号SWによって切替えられた切替部106の出力が、アンチロールオーバ制御信号ARSとして減算部32Cに減算入力されている。
【0035】
このような構成において、その動作例を図4のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
先ず動作がスタートすると、切替信号SWによって切替部106の接点が“b”にされ(ステップS10)、固定値部104の“0”の信号が切替部106を経てアンチロールオーバ制御信号ARSとして減算部32Cに減算入力される。つまり、電流指令値Iref1に対して何らの補正を行わない。これにより、図6の場合と同じモータ駆動制御を実行する。即ち、電流指令値演算部31はトルクセンサより操舵トルク値Th及び車速センサより車速Vを入力し(ステップS11)、電流指令値演算部31は操舵トルク値Th及び車速Vに基づいて電流指令値Iref1を演算し(ステップS12)、演算された電流指令値Iref1に基づいてPI制御部35、PWM制御部36及びインバータ回路37を経てモータ20を駆動する(ステップS13)。
【0037】
そして、アンチロールオーバ制御部100は、電流検出器38で検出されたモータ電流Im、回転センサ21で検出された回転角度θを入力し(ステップS14)、SAT演算部120は前記数2に従ってSAT値TSAT1を演算し、SAT検出部110は前記数3に従ってSAT値TSAT2を検出する(ステップS15)。なお、SAT値TSAT1及びSAT値TSAT2の演算順序は任意である。減算部105は前記数4に従ってロール量R(t)=TSAT1−TSAT2を求め、求めたロール量R(t)をロール予見量演算部130に入力する(ステップS16)。ロール予見量演算部130は、ロール量R(t)に基づいて前記数5の左辺に相当するロール予見量f(R(t))を演算する(ステップS17)。ロールオーバ判定部140は、演算されたロール予見量f(R(t))がロールオーバ閾値Rsより大きいか否かを判定し(ステップS20)、ロール予見量f(R(t))がロールオーバ閾値Rs以下の場合には、上記動作を繰り返すために上記ステップS10にリターンする。
【0038】
また、上記ステップS20において、ロール予見量f(R(t))がロールオーバ閾値Rsより大きいと判定されると、ロールオーバ判定部140は切替信号SWを出力する。これにより、或いは上記動作と並行して車速Vはゲイン部102に入力され、リミッタ103を経た補正用車速Vaが切替部106の接点aに入力される(ステップS21)。その後、切替部106の接点を“b”から“a”に切替え(ステップS22)、これにより補正用車速Vaがアンチロールオーバ制御信号ARSとして減算部32Cに減算入力され、減算部32Cで補正された電流指令値Iref2が得られ、上記ステップS13にリターンする(ステップS23)。
【0039】
なお、操舵トルク値Th及び車速Vの入力後に切替部106の接点を“b”にしても良く、固定値部104の固定値は“0”でなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の原理を説明するための図である。
【図2】本発明の原理を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例を示すブロック構成図である。
【図4】本発明の動作例を示すフローチャートである。
【図5】一般的な電動パワーステアリング装置の構成例を示す図である。
【図6】コントロールユニットの一例を示すブロック構成図である。
【図7】車両運動を説明するための図である。
【符号の説明】
【0041】
1 操向ハンドル
2 コラム軸
3 減速ギア
10 トルクセンサ
11 イグニションキー
12 車速センサ
14 バッテリ
20 モータ
21 回転センサ
30 コントロールユニット
31 電流指令値演算部
33 電流制限部
34 補償部
35 PI制御部
36 PWM制御部
37 インバータ回路
100 アンチロールオーバ制御部
101 角速度算出部
102 ゲイン部
103 リミッタ部
104 固定値部
105 減算部
106 切替部
110 SAT検出部
120 SAT推定演算部(車両二輪モデル)
130 ロール予見量演算部
140 ロールオーバ判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のロール運動を含まないSAT値TSAT1と、前記車両のロール運動を含むSAT値TSAT2との差に基づくロール予見量が所定値より大きい場合に、早い操舵入力をできないようにモータアシストを補正する機能を具備したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記ロール予見量が、前記SAT値TSAT1と前記SAT値TSAT2の差と、前記差の微分値に係数を乗算した値との和である請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記ロール予見量が前記所定値より大きい場合に、車速をゲイン倍した信号をリミッタで制限した信号を電流指令値若しくは操舵補助指令値から減算するようになっている請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
操舵トルク値及び車速に基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算部と、前記電流指令値に基づいてステアリング機構に操舵補助力を付与するモータを制御するモータ駆動制御部とを具備した電動パワーステアリング装置において、前記操舵トルク値、前記車速、前記モータのモータ電流及び回転角度に基づいてロール予見量を演算し、前記ロール予見量が所定値より大きくなった場合にアンチロールオーバ制御信号を出力してモータアシストを補正するアンチロールオーバ制御部を具備したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記アンチロールオーバ制御部が、前記車速及び前記回転角度に基づいて車両のロール運動を含まないSAT値TSAT1を演算するSAT演算部と、前記操舵トルク値、前記モータのモータ電流及び角速度に基づいて車両のロール運動を含むSAT値TSAT2を演算するSAT検出部と、前記SAT値TSAT1及び前記SAT値TSAT2の差を求める減算部と、前記差よりロール予見量を演算するロール予見量演算部と、前記ロール予見量を所定値と判定して切替信号を出力するロールオーバ判定部と、前記車速に基づいて補正用車速を求めるゲイン/リミッタ部と、前記切替信号により前記補正用車速と固定値とを切替えて前記アンチロールオーバ制御信号として出力する切替部とで構成されている請求項4に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記ロール予見量演算部が、前記差を微分して係数を乗算する手段と、前記乗算した値と前記差を加算する手段で構成されている請求項5に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記ロールオーバ判定部は、前記ロール予見量が所定値より大きくなったときに前記切替信号を出力するようになっている請求項5又は6に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記切替部は、前記切替信号が入力されたときに前記補正用車速を出力するようになっている請求項5乃至7のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−149887(P2008−149887A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339788(P2006−339788)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】