説明

メタルコア基板及びその製造方法並びに電気接続箱

【課題】本発明は回路パターンのレイアウトの自由度、基板の小型化及び軽量化を図ることができるメタルコア基板及びその製造方法並びに電気接続箱を提供する。
【解決手段】本発明のメタルコア基板Mは、金属コア1と、金属コア1の表面及び裏面に積層された第1の絶縁層2と、第1の絶縁層2上に所定の回路パターンとして形成された内部導体層3と、内部導体層3上に積層された第2の絶縁層4と、第2の絶縁層4上に所定の回路パターンとして形成された外部導体層5と、外部導体層5上に積層されたソルダーレジスト層6(第3の絶縁層)とを有する。内部導体層3は厚い金属箔で構成され、外部導体層5は薄い金属箔で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電気接続箱等に用いられるメタルコア基板及びその製造方法並びに電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用電気接続箱の分野においては、製品の小型化、回路数の増加、設計変更の容易化等の要請から、放熱性に優れているメタルコア基板を用いた電気接続箱が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
図7は、従来のメタルコア基板の構造を示す断面図である。
【0004】
図7に示すように、従来のメタルコア基板は、銅やアルミニウム等の金属からなる金属コア50と、金属コア50の表面及び裏面に積層され、樹脂等からなる絶縁層51と、絶縁層51上に所定の回路パターンとして形成された導体層52a、52bと、導体層52a、52b上に積層されたソルダーレジスト層53とから構成されている。
【0005】
金属コア50の厚さは例えば400μm、導体層52a、52bの厚さは例えば70μmに形成されている。
【0006】
また、図7に示す従来のメタルコア基板は、表面側と裏面側にそれぞれ導体層52a、52bが形成された両面板であり、表面側の導体層52aと裏面側の導体層52bとを電気的に接続するためのスルーホール54が所定位置に形成され、基板の回路密度を高めている。
【特許文献1】特開2001−119838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のメタルコア基板には、次のような課題がある。
【0008】
(1)近年の車両用電気接続箱は多機能化され、内部の回路数が増加していく傾向にあるが、従来のメタルコア基板の構成では、回路パターンのレイアウトの自由度が低く、基板の大型化や高重量化を招いているという課題がある。
【0009】
(2)車両用電気接続箱に用いられるメタルコア基板に形成される回路のうち電力系回路が占める割合は全体の約3/4を超えるが、電力系回路の場合、大電流を流すためにパターン幅を広くとる必要があるため、基板がますます大型化してしまうという課題がある。
【0010】
(3)従来の電力系回路のパターンは、信号系回路のパターンと同じ層にレイアウトされていたため、比較的薄い銅箔が使用されていた。そのため、大電流を流す電力系回路では、パターン幅を広げる必要が生じ、これも回路パターンのレイアウトの自由度を低くする要因であった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、回路パターンのレイアウトの自由度、基板の小型化及び軽量化を図ることができるメタルコア基板及びその製造方法並びに電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のメタルコア基板は、金属コアと、前記金属コアの表面及び裏面に積層された第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に所定の回路パターンとして形成された内部導体層と、前記内部導体層上に積層された第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層上に所定の回路パターンとして形成された外部導体層と、前記外部導体層上に積層された第3の絶縁層とを有するメタルコア基板であって、前記内部導体層は前記外部導体層よりも厚い金属材で構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
前記金属コアの厚さは300〜500μmであり、前記内部導体層の厚さは175〜210μmであり、前記外部導体層の厚さは15〜35μmであってもよい。
【0014】
本発明のメタルコア基板の製造方法は、
金属コアの表面及び裏面に第1の絶縁層を積層する工程と、
前記第1の絶縁層上に所定の回路パターンとして厚い金属材からなる内部導体層を形成する工程と、
前記内部導体層上に第2の絶縁層を積層する工程と、
前記第2の絶縁層上に所定の回路パターンとして薄い金属材からなる外部導体層を形成する工程と、
前記外部導体層上に第3の絶縁層を積層する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0015】
前記金属コアの表面及び裏面をメッキ粗化処理する工程と、前記内部導体層の外面をエッチング粗化処理する工程をさらに有してもよい。
【0016】
本発明の電気接続箱は、前記メタルコア基板と、メタルコア基板を収容するケースとを有し、前記メタルコア基板の内部導体層を電力系回路とし、前記外部導体層を信号系回路として配線されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内部導体層は前記外部導体層よりも厚い金属材で構成されているので、種類の異なる回路を別々の層に分けて配置することにより、回路パターン設計の自由度を飛躍的に高めることができる。その結果、基板の小型化及び軽量化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態例に係るメタルコア基板を示す側面断面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施形態例に係るメタルコア基板Mは、金属コア1と、金属コア1の表面及び裏面に積層された第1の絶縁層2と、第1の絶縁層2上に所定の回路パターンとして形成された内部導体層3と、内部導体層3上に積層された第2の絶縁層4と、第2の絶縁層4上に所定の回路パターンとして形成された外部導体層5と、外部導体層5上に積層されたソルダーレジスト層6(第3の絶縁層)とを有する。
【0020】
ここで金属コア1は300〜500μmの厚さ(例えば400μm)、第1の絶縁層2は200 μmの厚さ、内部導体層3は175〜210μmの厚さ(175μm)、第2の絶縁層4は200〜400μmの厚さ、外部導体層5は15〜35μmの厚さ(例えば18μm)で形成されている。
【0021】
金属コア1、内部導体層3及び外部導体層5は、例えば銅やアルミもしくはそれらを主成分とする合金等の熱伝導性の良好な金属で作られている板材である。また、内部導体層3は厚い金属箔で構成され、外部導体層5は薄い金属箔で構成されている。
【0022】
第1の絶縁層2、第2の絶縁層4はエポキシ系の樹脂で作られている。
【0023】
金属コア1の両面にはメッキによる粗化処理を施してあり、内部導体層3の外面にはエッチングによる粗化処理を施してある。
【0024】
なお、図1中、符号7は、両面の内部導体層3同士を、ビア9aを介して接続するために形成された第1のメッキ部であり、符号8は、両面の外部導体層5同士を、スルーホール11を介して接続するために形成された第2のメッキ部である。
【0025】
次に、本発明の実施形態例に係るメタルコア基板Mの製造方法を説明する。図2(A)〜図2(E)、図3(A)〜図3(F)、図4(A)〜図4(E)は本発明の実施形態例に係るメタルコア基板Mの製造方法の各工程を説明するための側面断面図である。
【0026】
図2(A)に示すように、まず、図1(A)に示す金属コア1を準備し、図2(B)に示すように、金属コア1の表面と裏面とを貫通する貫通孔1aをエッチング、パンチング等により形成する。また、金属コア1の表面にメッキ粗化処理を施す(図2(C)参照)。このメッキ粗化処理を施すことにより、金属コア1の表面に金属の粒をつけることで、第1の絶縁層2のアンカー効果を高くすることができる(アンカー効果はエッチングによる粗化よりも高い)。
【0027】
次いで、図2(D)に示すように、第1の絶縁層2となるプリプレグ(ガラスクロス等のクロスにエポキシ樹脂を含浸させたもの)と、内部導体層3となる厚い金属箔(例えば銅箔)とを積み重ね、図2(E)に示すように、加熱状態かつ真空状態にてプレス加工を施し、一体化する。以下、これを第1の回路基板体9という。
【0028】
次いで、図3(A)に示すように、第1の回路基板体9において、金属コア1に形成した貫通孔1a(図1(B)参照)の部分にビア9aを形成し、図3(B)に示すように、さらにその部分に第1のメッキ部7を形成して両面の内部導体層3同士を接続する。
【0029】
次いで、図3(C)に示すように、内部導体層3をエッチングして回路パターンを形成し、図3(D)に示すように、表面にエッチングによる粗化処理を施す。ここではメッキによる粗化は行えないので、多少アンカー効果は劣るもののエッチングによる処理を選んでいる。
【0030】
次いで、図3(E)に示すように、第2の絶縁層4となるプリプレグと、外部導体層5となる薄い金属箔(例えば銅箔)を積み重ね、図3(F)に示すように、加熱状態かつ真空状態にてプレス加工を施し、一体化する。以下、これを第2の回路基板体10という。
【0031】
次いで、図4(A)に示すように、第2の回路基板体10に表面と裏面とを貫通するスルーホール11を形成し、図4(B)に示すように、さらにその部分に第2のメッキ部8を形成して、両面の外部導体層5同士を接続する。
【0032】
次いで、図4(C)に示すように、外部導体層5をエッチングして回路パターンを形成する。
【0033】
次いで、図4(D)に示すように、外部導体層5上にソルダーレジスト層6を形成し、さらにシルク印刷、製品形状加工を経て、図4(E)に示すように、金属箔コーティングやプリフラックス工程が行われ、メタルコア基板Mとして完成される。
【0034】
図5は、本発明の実施形態例に係る電気接続箱の内部を概略的に示す説明図である。
【0035】
図5に示すように、本発明の実施形態例に係る電気接続箱Eは、本発明の実施形態例に係るメタルコア基板Mと、そのメタルコア基板Mを収容するケース12とを有する。
【0036】
メタルコア基板Mにはリレー13、ヒューズ14に接続するためのヒューズ端子15及びワイヤハーネスWのコネクタ16に接続するためのコネクタ端子17等の電子部品が実装されている。
【0037】
また、メタルコア基板Mの内部導体層3を電力系回路とし、外部導体層5を信号系回路として他の電気配線と経路配線して構成されている。
【0038】
このように電力系回路と信号系回路を別々の層に分けて配置することにより、回路パターン設計の自由度を飛躍的に高めることができる。
【0039】
しかも電力系回路は大電流を流すため、従来の両面板の場合にはパターン幅を広くとる必要があったが、上述のような厚さのある内部導体層3を電力系回路とすることにより、熱的に有利となり、パターン幅を狭くすることができる。
【0040】
また、内部導体層3で発生した熱は第1の絶縁層2を介して金属コア1に速やかに伝達されるので、外部導体層5を電力系回路に使用するよりも熱的に有利であり、この観点でもパターン幅を狭くすることができる。
【0041】
以上のように、本発明の実施形態例に係るメタルコア基板Mによれば、回路パターンの設計の自由度が増し、パターン幅を狭くすることができるので、基板の小型化を図ることができる。
【0042】
具体的には、自動車等の車両用電気接続箱の軽量化のために、実装部品を含まない一枚辺りについて、基板の重さを50g以下、8.5×103mm以下とすることができる。
【0043】
図6(A)は回路数と基板面積との関係をガラエポ基板(従来)、メタルコア両面基板(従来)、多層メタルコア基板M(本発明)で比較したグラフである。図6(A)に示すように、回路数174(電流値:69.5A)で比較すると、多層メタルコア基板M(本発明)は、メタルコア両面基板(従来)に対し、1/3(≒6970/20440)の大きさで174回路は配線することができる。
【0044】
また、図6(B)は基板サイズと重量との関係をメタルコア両面基板(従来)、多層メタルコア基板M(本発明)で比較したグラフである。図6(B)に示すように、メタルコア両面基板(従来)の面積が20440mm2のときの1枚当たりの重量は約110g/枚であり、多層メタルコア基板M(本発明)の面積が6970mm2のときの1枚当たりの重量は約48g/枚であるので、多層メタルコア基板M(本発明)の基板重量は、メタルコア両面基板(従来)に対し、1/2(≒48/110)となる。
【0045】
以上から、本発明の実施形態例に係るメタルコア基板Mを用いることにより、基板サイズが従来よりも1/3になるので、1m2当たりの基板取り数で考えると、従来のメタルコア基板Mの両面板で40枚/mm2だったのに対し、本発明の実施形態例に係るメタルコア基板Mでは100枚/mm2となる。
【0046】
このような種々のコスト検討を重ねたところ、本発明の実施形態例に係るメタルコア基板Mは、従来のメタルコア基板の両面板と比較すると、部品コストとしては約1/2にコスト低減を達成することが可能となる。
【0047】
本発明は、上記実施の形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内において、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば車両用電気接続箱等に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態例に係るメタルコア基板を示す側面断面図である。
【図2】(A)〜(E)は、本発明の実施形態例に係るメタルコア基板の製造方法の各工程を説明するための側面断面図である。
【図3】(A)〜(F)は、本発明の実施形態例に係るメタルコア基板の製造方法の各工程を説明するための側面断面図である。
【図4】(A)〜(E)は、本発明の実施形態例に係るメタルコア基板の製造方法の各工程を説明するための側面断面図である。
【図5】本発明の実施形態例に係る電気接続箱の内部を概略的に示す説明図である。
【図6】(A)は回路数と基板面積との関係をガラエポ基板(従来)、メタルコア両面基板(従来)、多層メタルコア基板(本発明)で比較したグラフを示し、(B)は基板サイズと重量との関係をメタルコア両面基板(従来)、多層メタルコア基板(本発明)で比較したグラフである。
【図7】従来のメタルコア基板の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
M:メタルコア基板
E:電気接続箱
W:ワイヤハーネス
1:金属コア
2:第1の絶縁層
3:内部導体層
4:第2の絶縁層
5:外部導体層
6:ソルダーレジスト層
7:第1のメッキ部
8:第2のメッキ部
9:第1の回路基板体
9a:ビア
10:第2の回路基板体
11:スルーホール
12:ケース
13:リレー
14:ヒューズ
15:ヒューズ端子
16:コネクタ
17:コネクタ端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コアと、
前記金属コアの表面及び裏面に積層された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に所定の回路パターンとして形成された内部導体層と、
前記内部導体層上に積層された第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層上に所定の回路パターンとして形成された外部導体層と、
前記外部導体層上に積層された第3の絶縁層と、
を有するメタルコア基板であって、
前記内部導体層は前記外部導体層よりも厚い金属材で構成されていることを特徴とするメタルコア基板。
【請求項2】
前記金属コアの厚さは300〜500μmであり、前記内部導体層の厚さは175〜210μmであり、前記外部導体層の厚さは15〜35μmであることを特徴とする請求項1に記載のメタルコア基板。
【請求項3】
金属コアの表面及び裏面に第1の絶縁層を積層する工程と、
前記第1の絶縁層上に所定の回路パターンとして厚い金属材からなる内部導体層を形成する工程と、
前記内部導体層上に第2の絶縁層を積層する工程と、
前記第2の絶縁層上に所定の回路パターンとして薄い金属材からなる外部導体層を形成する工程と、
前記外部導体層上に第3の絶縁層を積層する工程と、
を有することを特徴とするメタルコア基板の製造方法。
【請求項4】
前記金属コアの表面及び裏面をメッキ粗化処理する工程と、前記内部導体層の外面をエッチング粗化処理する工程をさらに有することを特徴とする請求項3に記載のメタルコア基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のメタルコア基板と、前記メタルコア基板を収容するケースとを有し、
前記メタルコア基板の内部導体層を電力系回路とし、前記外部導体層を信号系回路として配線されていることを特徴とする電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−128929(P2007−128929A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317791(P2005−317791)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】