説明

電子回路基板とその製造方法及び電子回路基板を用いた表示装置

【課題】繰り返し折り曲げても断線不良の起きない、接続信頼性が高いフレキシブル基板及びその製造方法、さらにその基板を用いた表示装置を提供する。
【解決手段】フレキシブル性を有するデバイスであって、基板に形成される金属配線12の少なくとも一部が導電性高分子により覆われている。具体的には、基板11上に金属の配線12を形成し、その配線上を覆うように導電性高分子の配線13を形成し、金属配線12と導電性高分子配線13とを多層構造にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路基板及びその製造方法、さらにそれらを用いた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無機半導体に代わる半導体として有機半導体の開発が活発に行われている。代表的な応用例としてシートディスプレイやIDタグが挙げられる。これらの大きな特徴は、有機材料を用いることによって非常に安いコストによって製造可能であるということと、無機材料と違って自由に曲げることができるフレキシブル性である。
【0003】
製造費の低コスト化については、蒸着やスパッタのように設備費の高い真空装置を用いるプロセスからインクジェットのような大気中で製造ができ、設備費の安いプロセスへの革新を目指して開発が進められている。
【0004】
一方、デバイスがフレキシブルになることにより生じる課題として、曲げ応力により配線が断線し、電子機器の機能に障害をきたすことが考えられる。この解決手段として、基板材料と配線材料の伸び率を揃えるといった方法や、配線材料に導電性高分子を用いる方法がある。また、異なる2種類の金属配線を組み合わせる方法もある。(特許文献1、2)
さらに、基板上に形成した導電性高分子配線を電極として用いて、導電性高分子配線上に金属配線をめっきにより形成する方法も開示されている(特許文献3、4)。この方法により、金属配線を蒸着装置のような真空設備を用いることなく形成でき、また、レジストを用いるようなエネルギーロスの高い工法を避けることができる。
【特許文献1】特開2000−305104号公報
【特許文献2】特開2003−100750号公報
【特許文献3】特開平05−335718号公報
【特許文献4】特開2004−031392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスプレイやRFタグに応用する場合、高周波で使用されるため高速で電気を流す低抵抗な配線材料が求められる。しかし、導電性高分子は金属材料に比べ電気抵抗が大きく、高周波デバイスに応用が難しいという課題が生じる。また、配線材料として金属を用いた場合、繰り返し曲げていると金属疲労によりクラックが生じて断線してしまうという課題が生じる。
【0006】
また、導電性高分子を電極として金属をめっきしたものでは、めっき処理をする際に導電性高分子が劣化し導電性が大きく低下しているものと推察され、やはり上記課題が生じる。なお、使用可能な金属材料としては酸性浴でめっき可能な金属材料に限定されてしまう。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、金属配線にクラックが生じても導電性高分子を電気が流れ、接続信頼性を向上させた電子回路基板とその製造方法及び電子回路基板を用いた表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子回路基板は、基板に形成される金属配線上に導電率0.1S/cm以上の導電性高分子が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電子回路基板は、基板に形成される金属配線の折り曲げられる部分が導電率0.1S/cm以上の導電性高分子との多層構造を有していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電子回路基板の配線形成方法は、基板上に金属配線及び導電性高分子配線を形成する際、塗布法により導電性高分子配線を形成することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の電子回路基板の配線形成方法は、基板上に配線を形成する際、基板上に形成した金属配線上にモノマーと電解質と溶媒からなる電解液を塗布し、金属配線に電圧をかけることにより、導電性高分子を金属配線上に電解重合させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の別の電子回路基板の配線形成方法は、基板上に配線を形成する際、モノマーと電解質と溶媒からなる電解液中に金属配線が形成された基板を浸し、電極に電圧をかけることにより導電性高分子を金属配線上に重合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属配線の少なくとも一部を導電性高分子で覆うことにより、デバイスを繰り返し折り曲げても配線が断線することなく、安定した接続を果たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
本発明の電子回路基板は、基板に形成される金属配線上に導電率0.1S/cm以上の導電性高分子が形成されている。ここで金属配線と導電性高分子の構造の例を図1A−Dに示す。図1Aは、基板11上に金属の配線12が形成されており、その配線上に導電性高分子の配線13が金属配線をすべて覆うように形成されている。また、図1B及び図1Cは、基板11上の金属配線12上の一部を導電性高分子配線13が覆っている構造である。また、図1Dは、金属配線12と導電性高分子配線13が多層になっている構造である。これらのように、導電率0.1S/cm以上の導電性高分子配線が基板に形成される金属配線の少なくとも一部に形成されていれば、金属配線が断線しても導電性高分子配線を伝って電気が流れるため、接続不良を防ぐことができる。また、金属配線と導電性高分子配線の配線構造は、図1A−Dに示した構造以外でも良い。
【0015】
(実施の形態2)
本実施形態の電子回路基板は、基板に形成される金属配線の折り曲げられる部分が導電率0.1S/cm以上の導電性高分子との多層構造を有しているように構成されている。ここで金属配線と導電性高分子の構造の例を図2A−Dに示す。図2Aは、基板21上に導電性高分子23の配線が形成されており、その配線上に金属の配線22が導電性高分子配線23の一部を覆っている構造である。図2Bは、基板21上に形成された導電性高分子配線23をすべて覆うように金属配線22が形成されている構造である。また、図2Cは、金属配線22の上下、側面ともに導電性高分子配線23により覆っている構造である。また、図2Dは、導電性高分子配線23と金属配線22が多層になっている構造である。これらのように、導電率0.1S/cm以上の導電性高分子配線が基板に形成される金属配線の折り曲げられる部分に形成されていれば、金属配線が断線しても導電性高分子配線を伝って電気が流れるため、接続不良を防ぐことができる。
【0016】
実施の形態1及び2で記述したような電子回路基板は、たとえば、液晶表示装置や、エレクトロルミネッセンス型表示装置、エレクトロルミネッセンス素子、可変抵抗、スイッチ素子、光センサー素子、メモリー素子、RFタグなど様々な装置に利用可能であり、伝送速度が高速かつ接続信頼性の高い電子回路基板を実現可能である。
【0017】
さらに、この電子回路基板を用いた表示装置において、ディスプレイの折りたたみ部がディスプレイを等分するように形成されていることが好ましい。図3に折りたたみ部の例を示す。たとえば、図3Aの実線31で示したようなディスプレイの場合、ディスプレイの縦方向と横方向の中央にそれぞれ折りたたみ部を形成することにより、ディスプレイをa1〜a4の4つの同じ大きさに分割することができる。また、図3Bのように、ディスプレイの縦方向32に2本、ディスプレイの横幅を3等分する箇所に折りたたみ部を形成することにより、ディスプレイをb1〜b3の3つの同じ大きさに分割することができる。このように、ディスプレイを等分するように折りたたみ部を形成することで、ディスプレイを折りたたむ際に、きれいに折りたたむことができる。また、4つのディスプレイを張り合わせることで図3Aのような一つのディスプレイを形成する場合、a1と同じサイズのディスプレイを作ればよいため、異なるサイズのディスプレイを製造しなくて済み、製造コストを安くすることができる。
【0018】
さらに、折りたたみ部により分割されたディスプレイが独立して機能することが好ましい。たとえば、図3Aのような4分割されるディスプレイにおいて、実線31で示したディスプレイが一つのディスプレイとして機能するだけでなく、分割されたa1〜a4のディスプレイもそれぞれ一つのディスプレイとして機能する。これにより、折りたたんだ状態においてもディスプレイとして使用することができる。また、ディスプレイは、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、電気泳動表示装置でも良い。
【0019】
このように表示部分に折りたたみ部があるため、大きなディスプレイも小さく収納することができ、省スペース、携帯性に優れ、かつ、接続信頼性の高いディスプレイを実現することができると同時に、一つのディスプレイを複数のディスプレイとして機能させることが可能な表示装置を実現できる。
【0020】
(実施の形態3)
次に、本発明の電子回路基板の製造方法について説明する。本発明における電子回路基板の製造方法は、基板上に金属配線及び導電性高分子配線を形成する工程において、塗布法により導電性高分子配線を形成することを備える。ここで金属配線と導電性高分子の構造は図1A−D及び図2A−Dに示すような構造でも良く、さらに、それ以外の構造でも良い。このように金属配線に接するように導電性高分子配線を形成することにより、曲げにより金属配線にクラックが生じても導電性高分子で繋がっているため、接続信頼性の高いデバイスを実現することができる。
【0021】
(実施の形態4)
次に、本発明の別の電子回路基板の製造方法について説明する。本発明における電子回路基板の製造方法は、基板上に配線を形成する工程において、基板上に形成した金属配線上にモノマーと電解質と溶媒からなる電解液を塗布し、金属配線に電圧をかけることにより、導電性高分子を金属配線上に電解重合させることを備える。ここで金属配線と導電性高分子の構造は図1に示すような構造でも良く、金属配線上又は側面に導電性高分子配線が形成される構造ならばそれ以外でも良い。また、電解液の塗布方法は、インクジェットやスピンコートなどを用いることができる。これにより、溶解しにくく塗布プロセスでは形成困難であった導電性高分子も金属配線上で重合することができるようになり、また、金属配線がパターン化されているため導電性高分子のパターン化を省略することができる。
【0022】
(実施の形態5)
次に、本発明の別の電子回路基板の製造方法について説明する。本発明における電子回路基板の製造方法は、基板上に配線を形成する工程において、モノマーと電解質と溶媒からなる電解液中に金属配線が形成された基板を浸し、電極に電圧をかけることにより導電性高分子を金属配線上に重合することを備える。ここで金属配線と導電性高分子の構造は図1に示すような構造でも良く、金属配線上又は側面に導電性高分子配線が形成される構造ならばそれ以外でも良い。金属配線上又は側面に導電性高分子配線が形成される構造ならばそれ以外でも良い。
【0023】
実施の形態3、4及び5で記述した本発明の電子回路基板の製造方法において、前記導電性高分子の導電度は、特に限定するものではないが、たとえば、0.1S/cm以上、好ましくは1S/cm以上、さらに好ましくは、1×10S/cm以上である。このような製造方法によれば、前述したような繰り返し折り曲げても配線が断線することなく、安定した接続を果たすことができる電子回路基板を製造することが可能である。
【0024】
前記記載の電子回路基板に用いる基板材料として、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などのフレキシブルなプラスチック基板やガラス、布、紙などを用いることができる。ただし、防湿のためプラスチック基板内に金属箔が入っていても、基板表面にSiO2やAl2O3などの酸化膜が形成されていても良い。金属配線材料には、AlやCu、Au、Agなどの低抵抗金属を用いる。その他にも、Ni、Ti、ITO、Cr、Wやそれらの合金を用いても良い。形成方法は、蒸着、スパッタ、インクジェットなどが用いられる。
【0025】
導電性高分子材料にはポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリピリジノピリジン、ポリアニリン及びそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一つを用いる。形成方法は、スピンコートやインクジェットなどが用いられる。
【0026】
以下、本発明を実施例を用いてさらに具体的に説明する。
【0027】
(実施例1)
本実施例においては、導電性高分子配線上に金属配線を形成した電子回路基板について説明する。図4A−Bは、本実施例で作製した電子回路基板の断面及び投影図である。図4Aに示すように、基板41上に導電性高分子配線パターン43を形成し、その上に金属配線42を形成した。また、図4Bのように、金属配線42は導電性高分子配線43上の一部に形成されており、この多層化された配線の中央部分を折り曲げ部44とした。
【0028】
基板41には厚み50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いた。このフィルム上に、インクジェット法によりPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン0.01mol%/L)とPSS(ポリスチレンサルファネート0.02mol%/L)を含有する水溶液を滴下して乾燥させることにより、導電性高分子配線43を形成した。つぎに、導電性高分子配線43上に金をマスク蒸着し、金属配線パターン42を形成した。このとき、導電性高分子配線43は厚み1μm、金配線42は厚み0.2μmとした。
【0029】
この電子回路基板の金属配線の導通試験を、基板を折り曲げる前後で行った。比較のため、電子回路基板上に導電性高分子配線を形成しない、金属配線のみの基板を作製し、同様に導通試験を行った。その結果、導電性高分子を形成しなかった基板は、繰り返し折り曲げているうちに導通が取れなくなったのに対し、導電性高分子を形成した基板は、何度折り曲げても導通が確認された。
【0030】
(実施例2)
本実施例においては、金属配線の上に導電性高分子配線を電解重合により形成した電子回路基板について説明する。図5A−Bは、本実施例で作製した電子回路基板の断面及び投影図である。図5Aに示すように、基板51上に金属パターン52を形成し、その上に導電性高分子配線53を形成した。また、図5Bのように、導電性高分子配線53は金属配線をすべて覆うように接続されており、この多層化された配線の中央部分を折り曲げ部54とした。
【0031】
基板51には厚み50μmのPETフィルムを用いた。このフィルム上に、金をマスク蒸着により形成した。つぎに、金配線52上にチオフェンモノマー0.2mol%/Lとアセトニトリルとテトラアルキルアンモニウム塩1mol%/Lからなる電解液をインクジェットにより塗布し、金属配線に20Vの電圧をかけた。これにより、金属配線上にポリチオフェン配線が形成された。このとき導電性高分子配線は厚み1μm、金配線は厚み0.5μmであった。
【0032】
この電子回路基板の金属配線の導通試験を、実施例1と同様に基板を折り曲げる前後で行った。比較のため、電子回路基板上に、導電性高分子配線を形成しない、金属配線のみの基板を作製し、同様に導通試験を行った。その結果、導電性高分子を形成しなかった基板は、繰り返し折り曲げているうちに導通が取れなくなったのに対し、導電性高分子を形成した基板は、何度折り曲げても導通が確認された。
【0033】
(実施例3)
本実施例においては、金属配線の上に導電性高分子配線を実施例2とは異なる電解重合法により形成した電子回路基板について説明する。配線構造は実施例2と同様、図5A−Bに示すような構造を用いた。
【0034】
基板には厚み50μmのPETフィルムを用いた。このフィルム上に、金をマスク蒸着により形成した。つぎに、金属配線を形成した基板をピロールモノマー0.3mol%/Lとナフタレンスルホン酸ナトリウム0.15mol%/Lからなる電解液中に浸し、金属配線に5Vの電圧をかけた。これにより、金属配線上にポリピロール配線が形成された。このとき導電性高分子配線は厚み1μm、金配線は厚み0.5μmであった。
【0035】
この電子回路基板の金属配線の導通試験を、実施例1と同様に基板を折り曲げる前後で行った。比較のため、電子回路基板上に、導電性高分子配線を形成しない、金属配線のみの基板を作製し、同様に導通試験を行った。その結果、導電性高分子を形成しなかった基板は、繰り返し折り曲げているうちに導通が取れなくなったのに対し、導電性高分子を形成した基板は、何度折り曲げても導通が確認された。
【0036】
(実施例4)
本実施例においては、金属配線の一部に導電性高分子配線を形成した電子回路基板を用いた折りたたみ可能なディスプレイについて説明する。図6は、本実施例で作製したアクティブマトリックス型ディスプレイの構成を模式的に示す斜視図である。図6に示すように、本実例に係るアクティブマトリックス型ディスプレイは、基板61上に画素電極に接続されたトランジスタ駆動回路(TFT駆動回路部70)がアレイ状に配置されており、そのトランジスタ駆動回路上に有機EL層62と保護フィルム64とが配設されている。なお、有機EL層62の上面には、透明電極63が設けられている。ここで、有機EL層は、電子輸送層、発光層、正孔輸送層などの各層が積層され構成されている。そして、各々のトランジスタ駆動回路の所定の電極から延長されたソース電極線とゲート電極線とは、各々ここでは図示しない制御回路へ接続されている。65はゲート走査ライン、66はソース走査ラインである。
【0037】
基板上に形成したトランジスタ駆動回路の拡大図を図7に示す。図7において、71はゲート電極、72はゲート絶縁膜、73は半導体、74はソース電極、75はドレイン電極、76は絶縁膜、77はゲート走査ライン、78はソース走査ライン、79は画素電極である。ゲート走査ライン77とソース走査ライン78の配線の構造は、実施例1に示した配線構造と同様である。
【0038】
このように、基板上の配線を導電性高分子と金属配線から形成することにより、折りたたんでも接続不良を起こさない、安定したディスプレイを実現することができた。
【0039】
尚、本実施の形態では、表示部に有機ELを用いた場合について説明したが、本発明の効果はこの構成を有するアクティブマトリックス型ディスプレイに限定されるものではない。つまり、トランジスタ駆動回路を必要とするアクティブマトリックス型ディスプレイであれば、その効果は同様に発揮される。また、画素を駆動する駆動回路部の構成は、本実施の形態で示した構成に限定されるものではない。つまり、例えば、一つの画素を駆動するために電流駆動用のトランジスタとそれを制御するためのスイッチング用トランジスタを組合わせた構成としても良い。また、さらに複数個のトランジスタを組合わせた回路構成とすることも可能である。
【0040】
(実施例5)
本実施例においては、金属配線上に導電性高分子配線を電解重合により形成した電子回路基板を用いた無線IDタグについて説明する。図8は、本実施例で作製した無線IDタグの構成を模式的に示した斜視図である。図8に示すように、無線IDタグ80は、フィルム状のプラスチック基板81を基材として用いている。この基板81上には、アンテナ部82とメモリーIC部83とが設けられている。ここで、アンテナ部82とメモリーIC部83は、実施の形態において説明したような配線基板を使用することが可能である。本実施例では、実施例1と同様の基板を用いてアンテナ部82を作製した。そして、この無線IDタグ80は、裏面にも接着効果を持たせることで、菓子袋やドリンク缶のような平坦でないものにも貼り付けて使用することが可能である。尚、無線IDタグ80の表面には、必要に応じて保護膜が設けられる。
【0041】
このように、本発明の配線基板を用いて無線IDタグを構成することにより、様々な形状、又は素材へ貼り付けることが可能な無線IDタグを具現化することが可能になる。又、メモリー構成要素であるトランジスタのキャリア移動度が改善されることにより、反応速度(処理速度)が速く、通信周波数の高い無線IDタグを提供することが可能になる。
【0042】
尚、本発明の効果は、図8に示した無線IDタグの構成に限定されるものではない。したがって、アンテナ部、メモリーIC部の配置や構成方法は、任意に設定可能である。例えば、倫理回路部を無線IDタグに組み込むことも可能である。
【0043】
(実施例6)
本実施例においては、金属配線上に導電性高分子配線を電解重合により形成した電子回路基板を用いた携行用機器について説明する。図9〜図11は、本実施例で作製したいくつかの携行用機器の構成を模式的に示した斜視図である。
【0044】
図9は携帯テレビである。携帯テレビ90は、表示装置91、受信装置92、側面スイッチ93、前面スイッチ94、音声出力部95、入出力装置96、記録メディア挿入部97を備えている。本発明の配線基板が、前記携帯テレビ90を構成する演算素子や記録素子やスイッチング素子等に適宜使用される。本実施例では、実施例4と同様の基板を用いて表示装置91を作製した。
【0045】
図10は、通信端末である。通信端末100は、表示装置101、送受信装置102、音声出力部103、カメラ部104、折畳み用可動部105、操作スイッチ106、音声入力部107、を備えている。本発明の配線基板が、前記通信端末100を構成する演算素子や記憶装置やスイッチング素子等に適宜使用される。本実施例では、実施例4と同様の基板を用いて表示装置101を作製した。
【0046】
図11は、携帯用医療機器である。携帯用医療機器110は、表示装置111、操作スイッチ112、医療的処置部113、経皮コンタクト部114を備えている。携帯用医療機器110は例えば、腕115などに巻きつけられて携行される。医療的処置部113は、経皮コンタクト部114より得られる生態情報を処理し、それに応じて経皮コンタクト部114を通じて薬物投与を行うなどの医療的処置を行う部分である。本発明の配線基板が、前記携帯用医療機器110を構成する演算素子や記憶装置やスイッチング素子等に適宜使用される。本実施例では、実施例4と同様の基板を用いて表示装置111を作製した。
【0047】
尚、以上説明した実施の形態における実施例と比較例の比較から明らかのように、本発明の効果は、各構成要素の材料に起因するのではなく、ゲート電極をどのように配置するかという構成によって生じるものである。したがって、各構成要素を形成する材料は本実施例の形態で示した材料に限定されない。
【0048】
例えば、本発明の電界効果トランジスタを作製するための基板としては、素体にPETフィルムではなくポリエチレンフタレートやポリイミドなどの別のポリマーフィルムを用いて良いし、バリア層としてAl膜やニッケル、クロム、銅などの金属又はそれらの合金や、無機酸化物や無機窒化物などの絶縁体の膜を用いても良い。
【0049】
また、電極材料としては、実施例では金を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、白金、銀、銅、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケルなどや、これらの合金、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ITOなどの無機材料が望ましい。これらの導電材は、蒸着法、スパッタ法などにより膜厚50から500nm程度に成膜され、通常のフォトリソグラフィ工程、及びエッチング工程により、所望の形状に加工される。
【0050】
また、導電性高分子材料としては、ポリチオフェン及びポリピロールを用いたが、これらに限定されるものではない。ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリピリジノピリジン、ポリアニリン及びそれらの誘導体を用いても良い。これら導電性高分子は、スピンコート法、キャスト法、インクジェットなどにより膜厚50nmから1000nm程度に成膜される。
【0051】
なお、本発明の電子回路基板を備えるものとして表示装置について説明したが、本発明の電子回路基板を用いたIDタグやセンサ、その他のデバイスにおいても同様の効果が得られることは明らかである。
【0052】
[産業上の利用可能性]
本発明における電子回路基板は、デバイスを繰り返し折り曲げても配線が断線することなく、優れた接続信頼性を実現するという効果を有し、この基板を用いシートライクディスプレイや無線IDタグ等への応用において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1A−Dは本発明の一実施形態における電子回路基板の概略断面図。
【図2】図2A−Dは本発明の別の実施形態における電子回路基板の概略断面図。
【図3】図3A−Bは本発明のさらに別の実施形態における電子回路基板を用いた折りたたみディスプレイの概略平面図。
【図4】図4Aは本発明の実施例1における電子回路基板の概略断面図、図4Bは同平面図。
【図5】図5Aは本発明の実施例2及び3における電子回路基板の概略断面図、図5Bは同平面図。
【図6】図6は本発明の実施例4におけるディスプレイの構成を模式的に示す斜視分解図。
【図7】図7は本発明の実施例4におけるディスプレイにおけるトランジスタ駆動回路の拡大図。
【図8】図8は本発明の実施例5における無線IDタグの構成を模式的に示す斜視図。
【図9】図9は本発明の実施例6における携帯テレビの一例の構成を模式的に示す斜視図。
【図10】図10は本発明の実施例6における通信端末の一例の構成を模式的に示す斜視図。
【図11】図11は本発明の実施例6における携帯用医療機器の一例の構成を模式的に示す斜視図。
【符号の説明】
【0054】
11,21,41,51,61,71 基板
12,22,42,52 金属配線
13,23,43,53 導電性高分子配線
31 ディスプレイ
32 折りたたみ部
62 有機EL層
63 透明電極
64 保護フィルム
65,77 ゲート走査ライン
66,78 ソース走査ライン
70 TFT駆動回路部
71 ゲート電極
72 ゲート絶縁膜
73 半導体
74 ソース電極
75 ドレイン電極
76 絶縁膜
79 画素電極
80 無線IDタグ
81 基板
82 アンテナ部
83 メモリー部
90 携帯テレビ
91 表示装置
92 送受信装置
93 音声出力部
94 前面スイッチ
95 音声出力部
96 入出力装置
97 記録メディア挿入部
100 携帯端末
101 表示装置
102 送受信装置
103 音声出力部
104 カメラ部
105 折たたみ用可動部
106 操作スイッチ
107 音声入力部
110 携帯用医療機器
111 表示装置
112 操作スイッチ
113 医療的処置部
114 経皮コンタクト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成される金属配線上に導電率0.1S/cm以上の導電性高分子が形成されていることを特徴とする電子回路基板。
【請求項2】
基板は折り曲げ可能であり、前記基板に形成される金属配線の折り曲げられる部分は、前記金属配線と導電率0.1S/cm以上の導電性高分子との多層構造であることを特徴とする電子回路基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子回路基板を用いた表示装置。
【請求項4】
前記表示装置には折りたたみ部があり、前記折りたたみ部はディスプレイを等分するように形成されている請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記折りたたみ部により分割されたディスプレイが独立して機能する請求項4に記載のディスプレイ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の電子回路基板を用いたIDタグ。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の電子回路基板を用いた携行用機器。
【請求項8】
基板上に金属配線及び導電性高分子配線を形成する際に、塗布法により導電性高分子配線を形成することを特徴とする電子回路基板の製造方法。
【請求項9】
基板上に配線を形成する際に、基板上に形成した金属配線上にモノマーと電解質と溶媒からなる電解液を塗布し、金属配線に電圧をかけることにより、導電性高分子を金属配線上に電解重合させることを特徴とする電子回路基板の製造方法。
【請求項10】
基板上に配線を形成する際に、モノマーと電解質と溶媒からなる電解液中に金属配線が形成された基板を浸し、電極に電圧をかけることにより導電性高分子を金属配線上に重合することを特徴とする電子回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−165341(P2006−165341A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355815(P2004−355815)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】