説明

車両用制御装置

【課題】駆動力または制動力の配分によって車両の走行安定性を高める車両用制御装置において、走行安定性を高める制御が阻害されないようにする。
【解決手段】マイコン10に含まれる目標前輪横力設定部12は、舵角θと車速Vと前輪荷重Ffzとに基づき目標前輪横力Fftを決定し、これに車両の実前輪横力Ffyが一致するようFB制御演算部16は指令値Dcを算出し配分装置駆動回路20に与える。これにより生じる後輪前後力Frxは後輪前後力センサ6により検出され、抑制量演算部38はこの値に基づき抑制量Asを算出し、減算器34は目標転舵角Atからこれを差し引く。転舵比演算部36はこれを転舵比に変換して転舵比可変装置駆動回路40に与える。このことにより車両の転舵が抑制されるので、上記配分により前輪が横滑りしやすくなることがなく、走行安定性を高める制御などが阻害されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の車輪への駆動力配分または制動力を調節することにより、走行中の車両挙動を制御するための車両用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の走行安定性を高めるために、その車両重心を通る鉛直線まわりの車両回転角(ヨー角)の変化率(ヨー角速度)であるヨーレートを予め算出された目標ヨーレートに一致させるよう、各車輪への駆動力配分または各車輪の制動力を調節する車両用制御装置が知られている。
【0003】
また、従来より上記駆動力の配分または制動力の調整によって生じるべき操舵トルクの変化を打ち消すように操舵補助を行う車両のステアリング装置がある(例えば特許文献1を参照)。この装置によれば車両の走行安定性を高めるための制御に基づく操舵トルクの変化を打ち消すことができるので、操舵フィーリングの悪化を防止することができる。
【特許文献1】特開平11−139338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のステアリング装置では、操舵フィーリングの悪化が防止されるにとどまり、車両の走行安定性をさらに高めるための制御が行われるわけではない。例えば、目標ヨーレートと車両の実測ヨーレートとの偏差に基づき制御する車両用制御装置では、駆動力の配分または制動力の調整を行ってから車両に対応するヨーレートが生じるまでに0.1〜0.2秒程度の遅れがあり、このため制御が行き過ぎる、すなわちオーバーシュートすることがある。このことにより、車両の走行安定性を高める制御が阻害される場合がある。また、路面摩擦係数μが低い道路では、車両の走行安定性を高めるために(具体的にはアンダーステア傾向を抑制するために)後輪の左右駆動力差等を発生させると、このことにより生じるヨーモーメントが前輪に対する横力を増加させるため、前輪が横滑りしやすくなることがある。このことにより、車両の走行安定性を高める制御が阻害される場合がある。さらに、上記遅れにより、運転者が操舵操作によるヨーレート変化を体感することも遅れるので、その遅れから運転者がさらに過剰な操舵操作を行うことがある。このことにより、車両の走行安定性を高める制御が阻害される場合がある。
【0005】
そこで本発明は、駆動力の配分または制動力の調整によって車両の走行安定性を高める車両用制御装置において、走行安定性を高める制御が阻害されないようステアリング装置を制御する車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、車両の挙動を示す測定値を目標とすべき数値に一致させるよう、当該車両の車輪に対する制動力および駆動力のうち少なくとも一方の配分を制御する車両用制御装置であって、
前記車両の挙動を検出することにより前記測定値を出力する車両挙動検出手段と、
前記測定値を前記目標値に一致させるよう、前記配分を制御するための操作量を演算する演算手段と、
前記配分により前記車輪の前後方向に加わる力の差に基づき、前記車両の転舵を抑制する転舵抑制手段と
を備えることを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、
前記検出手段は、前記車輪のうち左右前輪に加わる横力を検出し、
前記演算手段は、前記検出手段により検出された横力を目標とすべき横力に一致させるよう、前記車輪のうち左右後輪に対する制動力および駆動力のうち少なくとも一方の配分を制御する操作量を演算することを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記転舵抑制手段は、前記配分により前記車輪の前後方向に加わる力の差に対応して定められる転舵抑制量を、車両操舵のための操作手段による操作に応じて設定される目標とすべき転舵量から差し引くよう、前記車両のステアリング機構を制御することを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第3の発明において、
前記車両のステアリング機構における転舵比を変更する転舵比可変装置に対して転舵比を設定する転舵比演算手段をさらに備え、
前記転舵抑制手段は、
前記演算手段により演算される操作量に基づき、前記転舵抑制量を算出する抑制量算出手段と、
前記操作手段による操作に応じて設定される目標とすべき転舵角から前記転舵抑制量を減算する減算手段と
を含み、
前記転舵比演算手段は、前記減算手段から得られる転舵角に基づき、前記転舵比を変更することを特徴とする。
【0010】
第5の発明は、第1の発明において、
前記転舵抑制手段は、
前記操作量に基づき、前記車輪のうち対応する左右の車輪それぞれの前後方向に加わる力の差を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出される力の差に基づき、前記車両操舵のための操作手段によって加えられる操舵トルクに応じて当該車両のステアリング機構に与えられる操舵補助力を減少させ、または前記操作手段に与えられる反力トルクを増加させる操舵抑制手段と
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記第1の発明によれば、車両の車輪に対する制動力および駆動力のうち少なくとも一方の配分により車輪の前後方向に加わる力の差に基づき、転舵抑制手段により車両の転舵が抑制されるので、上記配分により転舵輪が横滑りしやすくなることがなく、また運転者が過剰な操舵操作を行うことを抑制できる。したがって、車両の走行安定性を高める制御などが阻害されないようにすることができる。
【0012】
上記第2の発明によれば、左右前輪に加わる横力を目標横力に一致させるよう、上記配分を制御する操作量が演算されるので、車両の実測ヨーレートが参照されることはなく、その遅れにより制御にオーバーシュートを生じることがない。したがって、車両の走行安定性を高める制御が阻害されないようにすることができる。
【0013】
上記第3の発明によれば、転舵抑制手段によって車輪前後力の差に応じた転舵抑制量が操作に応じて設定される目標とすべき転舵量から差し引かれるよう、車両のステアリング機構が制御される。よって、転舵輪が横滑りしないよう適切な転舵量で自動的にステアリング機構が制御されるので、車両の走行安定性を高める制御が阻害されないようにすることができる。
【0014】
上記第4の発明によれば、車両のステアリング機構における転舵比を変更する転舵比可変装置は、転舵輪が横滑りしないよう適切な転舵比で制御されるので、車両の走行安定性を高める制御が阻害されないようにすることができる。
【0015】
上記第5の発明によれば、操舵抑制手段により、ステアリング機構に与えられる操舵補助力を減少させ、または操作手段に与えられる反力トルクを増加させるので、例えば運転者が車両ヨーモーメントの変化を体感していなくても、運転者が操作手段における操舵操作が重くなることにより過剰な操舵操作を行うことを抑制できるので、車両の走行安定性を高める制御が阻害されないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に詳しく説明するように、本発明では走行安定性を高める制御が阻害されないよう車両の転舵を抑制する転舵抑制手段が使用される構成であり、第1の実施形態では、転舵比の変更が可能なステアリング装置が使用されてその転舵比が制御され、第2の実施形態では、電動パワーステアリング装置などの操舵補助力を付与する装置または操舵反力を付与する装置が使用されてその操舵補助力または操舵反力が制御される構成である。以下、添付図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。
【0017】
<1. 第1の実施形態>
<1.1 全体構成>
図1は、本発明における第1の実施形態に係る車両用制御装置の構成を、それに関連する車両構成と共に示す概略図である。この車両用制御装置は、車両に備えられる左右駆動力配分装置112および転舵比可変装置113を制御するものであって、転舵比可変装置113は、操舵のための操作手段としてのハンドル(ステアリングホイール)100に一端が固着されるステアリングシャフト102の他端に接続され、変更可能に設定される転舵比でその回転角を増減してラックピニオン機構104に伝達するものであり、左右駆動力配分装置112は、車両を駆動するエンジン110から入力される駆動力を左右後輪108rL,108rRに配分するものである。
【0018】
この車両用制御装置は、ハンドル100の回転位置を示す舵角を検出する舵角センサ2と、車速を検出する車速センサ4と、左右後輪108rL,108rRにおける(車両の)前後方向にかかる駆動力または制動力を含む力(以下「後輪前後力」という)を検出する後輪前後力センサ6と、左右前輪108fL,108fRにおける(車両の)鉛直方向にかかる力(以下「前輪荷重」という)を検出する前輪荷重センサ7と、左右前輪108fL,108fRにおける(車両の)左右方向にかかる力(以下「前輪横力」という)を検出する前輪横力センサ8と、転舵比可変装置113の転舵比および左右駆動力配分装置112の駆動力配分比を上記各種センサからのセンサ信号に基づき制御する電子制御ユニット(ECU)5とを備えている。
【0019】
左右駆動力配分装置112は、例えば差動機構部(デファレンシャル装置)と、所定のギヤ比を有する複数の歯車列を含む歯車機構部と、所定の歯車を離接させる複数の油圧多板クラッチを含むクラッチ機構部と、油圧駆動機構とを備えており、右後輪108rRに繋がる右後輪軸111Rに伝達される駆動力と、左後輪108rLに繋がる左後輪軸111Lに伝達される駆動力とを車両の走行安定性が高められるようECU5により定められた配分比で伝達する構成であるが、その構成は周知であるので詳しい説明を省略する。
【0020】
また、転舵比可変装置113は、例えば差動歯車を有する差動機構部と、駆動アクチュエータであるブラシレスモータと、故障時に伝達比を固定するためのロック機構部とを備えており、ブラシレスモータを駆動させることにより差動機構部を作動させ、伝達比を可変制御する構成であるが、その構成は周知であるので詳しい説明を省略する。ここで運転者がハンドル100を回転させるとこの回転運動は転舵比可変装置113により増減されてラックピニオン機構104によりラック軸の往復運動に変換される。このラック軸の両端は連結部材106を介して左右前輪108fL,108fRに連結されており、ラック軸の往復運動に応じて連結部材106を介して車輪108の向きが変わる。なお、このような操舵機構に対してさらに運転者の操舵を補助するための電動パワーステアリング装置が備えられていてもよい。
【0021】
<1.2 制御装置の構成>
図2は、上記車両用制御装置であるECU5の機能的構成を示すブロック図である。このECU5は、左右駆動力の配分比および転舵比を算出するマイクロコンピュータ(以下「マイコン」と略記する)10と、そのマイコン10から出力される配分比指令値Dcに応じた配分比で左右駆動力配分装置112を駆動するための制御信号Scを出力する配分装置駆動回路20と、マイコン10から出力される転舵比指令値Dsに応じた転舵比で転舵比可変装置113を駆動するための制御信号Ssを出力する転舵比可変装置駆動回路40とを備えている。なお、マイコン10は、一般的なコンピュータシステムに備えられるCPUやプログラム格納用および作業用のメモリなどの他、各種センサからのセンサ信号を受け付ける図示されないインタフェース回路を備えている。
【0022】
マイコン10は、その内部のメモリに格納された所定のプログラムを実行することにより、目標前輪横力設定部12と、減算器14,34と、フィードバック制御演算部(以下「FB制御演算部」と略記する)16と、目標転舵角設定部32と、転舵比演算部36と、抑制量演算部38とからなる制御部として機能する。この制御部において、目標前輪横力設定部12は、舵角センサ2から出力される舵角の検出値(以下単に「舵角」という)θと、車速センサ4から出力される車速の検出値(以下単に「車速」という)Vと、前輪荷重センサ7から出力される前輪荷重の検出値(以下単に「前輪荷重」という)Ffzと、所定の目標タイヤ特性マップとに基づき、車両の走行安定性を高めるための目標前輪横力Fftを決定する。目標タイヤ特性マップは、典型的には実際のタイヤ特性とは異なり理想的なタイヤ特性に設定されており、舵角θが大きくなるにつれて(また前輪荷重Ffzが大きくなるにつれて)目標となる前輪横力Fftが大きくなるように、すなわち高いコーナリングフォースが得られるように設定されている。なお、前輪荷重センサ7に代えて左右加速度センサが備えられ、前輪荷重Ffzはこの左右加速度センサにより検出される車両の左右方向の加速度に基づき算出されてもよい。このような目標前輪横力の算出方法(算出式)については多くの例が周知であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0023】
減算器14は、この目標前輪横力Fftと前輪横力センサ8から出力される車両の前輪横力の検出値(以下単に「前輪横力」という)Ffyとの偏差(Fft−Ffy)を算出する。
【0024】
FB制御演算部16は、この偏差(Fft−Ffy)に基づく比例積分制御演算によって、配分装置駆動回路20に与えるべきフィードバック制御のための配分比指令値Dcを生成する。例えば、目標前輪横力設定部12から出力される目標前輪横力Fftに対して、前輪横力センサ8により検出される前輪横力Ffyが小さい場合、前輪の横滑りが過剰であると考えられるので、左右駆動力配分装置112により適切な後輪の左右駆動力差を発生させることにより配分比指令値Dcを生成する。この配分比指令値Dcに従った左右駆動力配分がなされ、後輪前後力差に基づいた転舵比可変制御により転舵角が減少すると、前輪の過剰な横滑りが解消される。また、目標前輪横力と実測した前輪横力との偏差に基づき制御することにより、目標ヨーレートと車両の実測ヨーレートとの偏差に基づき制御する車両用制御装置において発生する前述した0.1〜0.2秒程度の遅れが解消される。よって、車両の走行安定性を高める制御が阻害されることがない。
【0025】
配分装置駆動回路20は、配分比指令値Dcに応じた配分比で左右駆動力配分装置112を駆動するための制御信号Scを出力する。典型的には、左右駆動力配分装置112の油圧駆動機構において油圧を生成する図示されないモータに対して、配分比指令値Dcに応じたデューティ比のパルス信号すなわち配分比指令値Dcに応じてパルス幅の変化するPWM信号である制御信号Scを与える。左右駆動力配分装置112は、この制御信号Scを受け取り、配分比指令値Dcに応じた配分比で左右後輪108rL,108rRを駆動する。
【0026】
また、上記制御部において、目標転舵角設定部32は、舵角センサ2から出力される舵角θと、車速センサ4から出力される車速Vと、所定の目標転舵角マップとに基づき、目標となる前輪108fR,108fLの切れ角である目標転舵角Atを決定する。目標転舵角マップは、典型的には車速Vが低くなるにつれて舵角θに対する目標転舵角At(の比率)が大きくなるように設定されている。このような目標前輪転舵角の算出方法(算出式)については多くの例が周知であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0027】
減算器34は、この目標転舵角Atと後述する抑制量演算部38から出力される抑制量Asを減算した値を算出し転舵比演算部36に与える。この転舵比演算部36は、抑制量Asが減算された目標転舵角Atを実現するための転舵比を算出し、転舵比指令値Dsを生成する。
【0028】
転舵比可変装置駆動回路40は、転舵比指令値Dsに応じた転舵比で転舵比可変装置113を駆動するための制御信号Ssを出力する。典型的には、転舵比可変装置113のアクチュエータであるブラシレスモータに対して、転舵比指令値Dsに応じたデューティ比のパルス信号すなわち転舵比指令値Dsに応じてパルス幅の変化するPWM信号である制御信号Ssを与える。転舵比可変装置113は、この制御信号Ssを受け取り、その差動機構部を転舵比指令値Dsに応じた転舵比に設定し、運転者によるハンドル100の回転に対して、設定された転舵比で前輪108fL,108fRの転舵角を変更する。次に、抑制量演算部38の動作について詳しく説明する。
【0029】
<1.3 抑制量演算部の動作>
抑制量演算部38は、後輪前後力センサ6から出力される後輪前後力の検出値(以下単に「後輪前後力」という)Frxに基づき、目標転舵角Atに対して減算されるべき抑制量Asを算出する。このように抑制量Asを減算するのは、以下の理由による。
【0030】
すなわち、前述したように本実施形態では目標前輪横力設定部12から出力される目標前輪横力Fftに対して、前輪横力センサ8により検出される前輪横力Ffyが小さい場合、前輪の横滑りが過剰であると考えられるので、左右駆動力配分装置112により適切な後輪の左右駆動力差を発生させることにより結果的にこれを解消する構成である。しかし、滑りやすい(路面摩擦μが低い)路面を走行中に、後輪の左右駆動差を発生させることによりアンダーステア傾向を抑制しようとすると、前輪に対する横力がさらに増加するので横滑りしやすくなる。そこで、後輪の左右駆動差によって生じた車両ヨーモーメントに応じて、前輪転舵角を減少させるように制御すれば、前輪横力を減少させることができる。また、実測ヨーレートを参照しないので、前述した遅れによるオーバーシュートの発生も防止することができる。ここで、さらに後輪駆動力差と転舵角とヨーレートとの関係について説明し、抑制量Asの算出方法について説明する。
【0031】
図3は、車速に応じて対応関係が変化する後輪駆動力差とヨーレートとの関係を示す図であり、図4は、車速に応じて対応関係が変化する転舵角とヨーレートとの関係を示す図であり、図5は、後輪駆動力差に対するヨーレートの割合と、転舵角に対するヨーレートの割合との関係を示す図である。
【0032】
図3を参照すればわかるように、後輪駆動力差とヨーレートとは比例関係にあり、車速が大きくなるほど後輪駆動力差に対するヨーレートの比は大きくなる。また同様に、図4を参照すればわかるように、転舵角とヨーレートとは比例関係にあり、車速が大きくなるほど転舵角に対するヨーレートの比は大きくなる。しかし、このような車速の影響はヨーレートに対して生じているので、後輪駆動力差に対するヨーレートの割合と、転舵角に対するヨーレートの割合との関係は、車速とはほぼ無関係に比例関係となる。したがって、この傾きを示す値(図では2506.4)は定数となるので、この定数を後輪駆動力差に対して除算すれば、対応する転舵角を算出することができる。
【0033】
もっとも、このように除算して得られた値を抑制量Asとして目標転舵角Atから単純に減算すると、後輪の左右駆動差によって生じた車両ヨーモーメントを転舵角の変更により全て解消させる過剰な制御が行われる結果となるので、1より小さい適宜に定められた所定のゲインを上記定数に乗算し、得られた値を後輪駆動力差に対して除算する。なお、このゲインは、転舵角の変更による車両挙動の応答の方が左右駆動力配分による応答よりも早いことを勘案し、転舵角の変化を或る程度小さく抑えるよう適宜に決定される。このように乗算した値を抑制量Asとして目標転舵角Atから減算することにより前輪転舵角の変化を或る程度減少させるように制御すれば、前輪横力を或る程度減少させることができる。したがって、前輪が横滑りすることを防止することができる。
【0034】
<1.4 第1の実施形態の効果>
以上のように上記第1の実施形態によれば、車両の実測ヨーレートを参照することがないので、その遅れによる前述したオーバーシュートを生じることがなく、前輪転舵角の変化を減少させるように制御することにより、前輪が横滑りしやすくなることがなく、また運転者が過剰な操舵操作を行うこともない。したがって、車両の走行安定性を高める制御が阻害されないようにすることができる。
【0035】
<1.5 第1の実施形態の変形例>
上記第1の実施形態では、抑制量演算部38は、後輪前後力センサ6から出力される後輪前後力Frxに基づき、目標転舵角Atに対して減算されるべき抑制量Asを算出するが、この構成に代えて、後輪前後力センサ6を省略し、抑制量演算部38は、FB制御演算部16から出力される配分比指令値Dcに基づき左右駆動力配分装置112により左右後輪108rL,108rRに生じるべき(目標となる)後輪前後力Frxを算出し、これに基づき抑制量Asを算出する構成であってもよい。ただし、この場合も転舵角の変更による車両挙動の応答の方が左右駆動力配分による応答よりも早いことを勘案する必要があることは前述したとおりである。
【0036】
上記第1の実施形態では、左右の駆動力配分について説明したが、左右の制動力配分についても同様に適用可能である。すなわち、上記第1の実施形態では車両の前輪横力を目標前輪横力に一致させるために左右後輪108rL,108rRの駆動力配分を左右駆動力配分装置112により適宜の配分比で設定した。しかし、このような駆動力配分に代えて、例えば左右後輪108rL,108rRに対する制動力配分をディスクブレーキなどを含む周知の制動力配分機構によって適宜に配分することにより、駆動力を配分する場合と同様に制御することができる。
【0037】
また、上記第1の実施形態では、後輪のみで駆動する車両を例に説明したが四輪全てで駆動する車両であっても同様に駆動力を配分することにより、さらに前後輪間の制駆動力配分を併せて適宜に設定することにより、車両の前輪横力が目標前輪横力に一致するよう制御することができる。
【0038】
<2. 第2の実施形態>
<2.1 全体構成>
図6は、本発明における第2の実施形態に係る車両用制御装置の構成を、それに関連する車両構成と共に示す概略図である。この車両用制御装置は、第1の実施形態の場合と同一の左右駆動力配分装置112と、第1の実施形態における転舵比可変装置113に代えて新たに設けられるアシストモータ11を制御するものである。このアシストモータ11は、ハンドル操作による運転者の負荷を軽減するための操舵補助力を発生するブラシ付きモータであって、そのモータ11の発生する操舵補助力はステアリングシャフト102に連結された減速ギヤ13を介してステアリングシャフト102に加えられることにより、操舵操作による運転者の負荷が軽減される。すなわち、ハンドル操作によって加えられる操舵トルクと、モータ11の発生する操舵補助力によるトルクとの和が出力トルクとして、ステアリングシャフト102を介してラックピニオン機構104に与えられる。これによりピニオン軸が回転すると、その回転がラックピニオン機構104によってラック軸の往復運動に変換される。ラック軸の両端はタイロッドおよびナックルアームから成る連結部材106を介して左右前輪108fR,108fLに連結されており、ラック軸の往復運動に応じて左右前輪108fR,108fLの向きが変わる。
【0039】
この車両用制御装置は、第1の実施形態と同一の舵角センサ2および後輪前後力センサ6と、左右後輪108rR,108rLそれぞれの速度を検出する後輪速センサ41と、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ9と、ハンドル100の操作によってステアリングシャフト102に加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ3と、アシストモータ11のトルクおよび左右駆動力配分装置112の駆動力配分比を上記各種センサからのセンサ信号に基づき制御する電子制御ユニット(ECU)5とを備えている。なお、このアシストモータ11により運転者の操舵を補助するための装置は電動パワーステアリング装置とも呼ばれる。
【0040】
<2.2 制御装置の構成>
図7は、上記車両用制御装置であるECU5の機能的構成を示すブロック図である。このECU5は、左右駆動力の配分比および操舵補助のためのトルクを算出するマイクロコンピュータ(以下「マイコン」と略記する)10と、そのマイコン10から出力される配分比指令値Dcに応じた配分比で左右駆動力配分装置112を駆動するための制御信号Scを出力する配分装置駆動回路20と、マイコン10から出力されるアシスト電流指令値Diに応じてアシストモータ11を駆動するための制御信号Siを出力するアシストモータ駆動回路60およびアシストモータ11に流れる電流を検出する電流検出器62とを備えている。
【0041】
マイコン10は、その内部のメモリに格納された所定のプログラムを実行することにより、目標ヨーレート設定部42と、減算器44,54と、ヨーレート用フィードバック制御演算部(以下「ヨーレートFB制御演算部」と略記する)46と、リミテッド・スリップ・デファレンシャル制御演算部(以下「LSD制御演算部」と略記する)47と、加算器48,58と、追加トルク演算部49と、目標アシスト電流設定部52と、アシスト電流用フィードバック制御演算部(以下「アシスト電流FB制御演算部」と略記する)56とからなる制御部として機能する。
【0042】
この制御部において、目標ヨーレート設定部42は、舵角センサ2から出力される舵角の検出値(以下単に「舵角」という)θと、後輪速センサ41から出力される後輪速の検出値(以下単に「後輪速」または「車速」という)Vと、当該車両に固有の定数であるホイールベース、ステアリングギヤ比、および車速の関数であるスタビリティファクタとに基づき、車両の走行安定性を高めるための目標ヨーレートYtを決定する。また、目標ヨーレート設定部42は、図示されない加速度センサから出力される車両の前後方向および左右方向の加速度の検出値を使用して目標ヨーレートYtを決定してもよい。このような目標ヨーレートの算出方法(算出式)については多くの例が周知であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0043】
減算器44は、この目標ヨーレートYtとヨーレートセンサ9から出力される車両のヨーレートの検出値(以下「実ヨーレート」という)Ysとの偏差(Yt−Ys)を算出する。
【0044】
ヨーレートFB制御演算部46は、この偏差(Yt−Ys)に基づく比例積分制御演算によって、配分装置駆動回路20に与えるべきフィードバック制御のための(配分比指令値Dcに対して下記のLSD制御のためのLSD指令値Dlsが加算されていない)配分比指令値Dc’を生成する。
【0045】
LSD制御演算部47は、後輪速センサ41からの左右後輪108rR,108rLの後輪速差(左右後輪の回転速度差)に基づき、空転している後輪を減速するよう、配分比指令値Dc’に対して加算することにより左右駆動力の配分比を変更するLSD指令値Dlsを生成する。このようなLSD制御は、無負荷状態の車輪の空転を防ぐことにより、悪路や滑りやすい路面状況でも車輪へ確実に駆動力を伝えるためのものであり、多くの制御方法が周知であるので、ここでは詳しい説明を省略する。なお、このLSD制御演算部47および加算器48は省略されてもよい。また第1の実施形態においてもこのLSD制御演算部47が備えられていてもよい。
【0046】
加算器48は、ヨーレートFB制御演算部46により生成される配分比指令値Dc’と、LSD制御演算部47によるLSD指令値Dlsとを加算することにより得られる配分比指令値Dcを配分装置駆動回路20および追加トルク演算部49に与える。
【0047】
配分装置駆動回路20は、第1の実施形態と同一の構成および動作を行うものであって、配分比指令値Dcに基づき、左右駆動力配分装置112を制御し、左右駆動力配分装置112は、この配分比指令値Dcに応じた配分比で左右後輪108rL,108rRを駆動する。
【0048】
追加トルク演算部49は、配分比指令値Dcに基づき左右後輪108rL,108rRのトルク差によって生じるべき予想される車両ヨーモーメントに対応する追加トルク指令値Dtを出力する。この追加トルク指令値Dtは、後述するアシスト電流指令値Di’に対して加算されるべき指令値であって、前述した遅れにより未だ発生していない車両ヨーモーメントをハンドル100の操舵操作を重くすることにより運転者に知覚させるためのものである。すなわち、上記遅れにより運転者が操舵操作によるヨーレート変化等を体感することが遅れるため、その遅れから運転者がさらに過剰な操舵操作を行うことがあり、このことによって車両の走行安定性を高める制御が阻害される場合がある。そこで、予想される車両ヨーモーメントに対応して予め定められた追加トルク指令値Dtを操舵補助力から減算するように(またはマイナスの操舵補助力が加わるように)アシスト電流指令値Di’に対して加算すれば、ハンドル100の操舵操作が重くなるので、運転者は車両ヨーモーメントの変化を体感していなくても、過剰な操舵操作を行うことを抑制できる。
【0049】
次に、上記制御部において、目標アシスト電流設定部52は、トルクセンサ3から出力される操舵トルクの検出値T(以下、単に「操舵トルクT」という)と、後輪速センサ41から出力される後輪速に基づく車速(具体的には後輪速の平均値から算出される車速)Vとに基づき、アシストモータ11に流すべき電流の目標値It、すなわちハンドル操作を容易にする操舵補助力を発生させるためにアシストモータ11に流すべき電流の値を生成する。具体的には、適切な操舵補助力を発生させるためにアシストモータ11に供給すべきアシスト電流の値と操舵トルクの値との関係を車速に応じて示すマップ(「アシストマップ」と呼ばれる)が目標アシスト電流設定部52内に予め保持されており、目標アシスト電流設定部52は、このアシストマップを参照して、上記操舵トルクTおよび車速Vに対応する電流の目標値を求め、これを電流目標値Itとして出力する。このアシストマップは、車速が小さいほど、また操舵トルクが大きいほど電流目標値Itを大きくするように設定されている。これにより、ハンドル100が重いときほど操舵補助力が大きくなり、ハンドル操作が容易になる。
【0050】
減算器54は、この目標アシスト電流設定部52から出力される電流目標値Itと電流検出器62から出力されるモータ電流の検出値Isとの偏差(It−Is)を算出する。アシスト電流FB制御演算部56は、この偏差(It−Is)に基づく比例積分制御演算によって、アシストモータ駆動回路60に与えるべきフィードバック制御のための(アシスト電流指令値Diに対して上述した追加トルク指令値Dtが加算されていない)アシスト電流指令値Di’を生成する。
【0051】
加算器58は、このアシスト電流FB制御演算部56から出力されるアシスト電流指令値Di’と、追加トルク演算部49から出力される追加トルク指令値Dtとを加算し、得られるアシスト電流指令値Diをアシストモータ駆動回路60に与える。
【0052】
アシストモータ駆動回路60は、このアシスト電流指令値Diに基づき、アシストモータ11を駆動する。具体的には、このアシスト電流指令値Diは、これにに応じてパルス幅の変化する指令値Diに応じたデューティ比のPWMパルス信号に変換され、アシストモータ駆動回路60は、内蔵するスイッチング素子としての複数のパワートランジスタをこのPWM信号によってオン/オフさせることにより、そのPWM信号のパルス幅(デューティ比)に応じた電圧をアシストモータ11に印加する。アシストモータ11は、その電圧印加によって流れる電流に応じた大きさおよび方向の操舵補助力となるトルクを発生する。なお、このアシストモータ11はブラシ付きの一般的な直流モータであるものとして説明したが、例えば3相ブラシレスモータであってもよい。
【0053】
<2.3 第2の実施形態の効果>
以上のように上記第2の実施形態によれば、予想される車両ヨーモーメントに対応して予め定められた追加トルク指令値Dtを操舵補助力から減算するように(またはマイナスの操舵補助力が加わるように)アシスト電流指令値Di’に対して加算される。よって、運転者は車両ヨーモーメントの変化を体感していなくても、ハンドル100の操舵操作が重くなることにより過剰な操舵操作を抑制できるので、車両の走行安定性を高める制御が阻害されないようにすることができる。
【0054】
<2.4 第2の実施形態の変形例>
上記第2の実施形態では、電動パワーステアリング装置の一部として機能するアシストモータ11を制御することによりハンドル100が重くなるような操舵補助力を発生させる構成であるが、このような電動パワーステアリング装置に代えて、第1の実施形態における転舵比可変装置113に併せて備えられることがあり、また周知のステア・バイ・ワイヤシステムに必ず備えられる反力トルク装置を設けてもよい。この反力トルク装置は、初期的な転舵比と同様の操舵フィーリングを異なる転舵比においても実現するために、またステアリング機構とハンドルとが機械的に接続されているかのような操舵フィーリングを実現するために設けられる周知の装置である。このような反力トルク装置に上記のようにハンドル100が重くなるような操舵操作に対する反力トルクを発生させる構成であってもよい。
【0055】
上記第2の実施形態でも、第1の実施形態における変形例と同様、左右の制動力配分についても同様に適用可能であり、また四輪全てで駆動する車両であっても同様に駆動力を配分することにより、さらに前後輪間の制駆動力配分を併せて適宜に設定することにより制御することができる。
【0056】
<3. 第3の実施形態>
<3.1 構成および動作>
本第3の実施形態では、第2の実施形態のように操舵補助力または操舵反力を発生させることにより、過剰な操舵操作を直接的に抑制するのではなく、わかりやすい警告を運転者に与えることにより、過剰な操舵操作などの走行安定性を害する行為を止めさせ、このことにより間接的に車両の走行安定性を高める制御が阻害されないようにする。以下、このことを実現する第3の実施形態に係る警報装置について説明する。
【0057】
図8は、このような第3の実施形態に係る警報装置の構成および動作の一例を説明するための図であり、図9はこの他例を説明するための図である。図8および図9に示される車両には左右前輪108fL,108fRおよび左右後輪108rL,108rRが備えられており、これらの車輪のすべり量がグラフTsfL,TsfR,TsrL,TsrRにより示されている。このグラフが高くなるほどすべり量が大きいことを意味する。なお、このすべり量は、各車輪のすべり状態を検出するために各車輪に対応して設けられる図示されない周知のセンサにより検出される。また、この車両の室内には各車輪に対応する位置近傍に4つのスピーカ300fL,300fR,300rL,300rRが設けられている。これらのスピーカは典型的には4チャンネル以上のサラウンド型スピーカであって、図示されない音声信号生成部および音声信号増幅部により与えられる音をサラウンド再生モードで出力する。図ではその音が波線で示されている。なお、これらのスピーカは一般的な車両に音楽再生などの用途で搭載されていることが多いので、本警報装置にこれらを流用することが可能である。
【0058】
ここで、図8および図9を参照するとわかるように、各スピーカは対応する車輪のすべり量に応じた音量の音を再生するので、運転者はその音量からどの車輪がどの程度すべっている状態にあるかを直感的に把握することができる。また、音量や位相等を適宜に制御するサラウンド再生モードを利用することにより、音像位置Psを最も滑っている車輪の近傍に定位させることができるので、このことにより、さらに運転者に車輪のすべり状態を直感的に把握させることができる。
【0059】
例えば、図8に示される場合では車輪のすべり量が全体的に小さいので、各スピーカにより再生される音量は大きくなくまた周波数も低いが、図9に示される場合では車輪のすべり量が全体的に大きいので、各スピーカにより再生される音量は大きくまた周波数も高くなる。さらに音像位置Psも左前輪108fLにより近くなっている。したがって、運転者Uは危険(ここでは全体的に車輪が滑っており特に左前輪108fLのすべり量が大きいこと)を直感的に察知することができる。また、音量や周波数を変化させる他、音色を変化させたり音声による警告を併せて行ってもよい。
【0060】
なお、スピーカの数は4つに限定されるわけではなくそれより多い場合であっても、音像を適宜の位置に定位させることにより、運転者はどの車輪がどの程度すべっている状態にあるかを直感的に把握することができる。また、スピーカの数が2つ程度(例えばステレオ型ヘッドフォン)であっても音像の定位感は落ちるが、擬似的なサラウンド再生を行うことは可能であるので、運転者にどの車輪がどの程度すべっている状態にあるかを把握させることはできる。
【0061】
<3.2 第3の実施形態の効果>
以上のように、各車輪108fL、108fR,108rL,108rRに対応させた4つのスピーカ300fL,300fR,300rL,300rRにより、各車輪のすべり量に応じた音量および周波数で車輪のすべり状態を運転者Uに知らせるので、ディスプレイ表示のように視点を移動させる必要がある警報装置よりも安全かつ直ちに車輪の状態を把握することができ、またブザーなどの単一音源からの警告のように車輪がすべっている事実しか報知しない構成とは異なって、運転者にどの車輪がどの程度すべっている状態にあるかを直感的に把握させることができる。このことにより車両の走行安定性および安全性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用制御装置の構成を、それに関連する車両構成と共に示す概略図である。
【図2】上記実施形態に係る車両用制御装置であるECUの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】上記実施形態において、車速に応じて対応関係が変化する後輪駆動力差とヨーレートとの関係を示す図である。
【図4】上記実施形態において、車速に応じて対応関係が変化する転舵角とヨーレートとの関係を示す図である。
【図5】上記実施形態において、後輪駆動力差に対するヨーレートの割合と、転舵角に対するヨーレートの割合との関係を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る車両用制御装置の構成を、それに関連する車両構成と共に示す概略図である。
【図7】上記実施形態に係る車両用制御装置であるECUの機能的構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る警報装置の構成および動作の一例を説明するための図である。
【図9】上記実施形態における警報装置の構成および動作の他例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
5…電子制御ユニット(ECU)、14,34,44,54…減算器、16…フィードバック制御演算部(FB制御演算部)、46…ヨーレートフィードバック制御演算部(ヨーレートFB制御演算部)、47…リミテッド・スリップ・ディファレンシャル制御演算部(LSD制御演算部)、56…アシスト電流フィードバック制御演算部(アシスト電流FB制御演算部)、Fft…目標前輪横力、Ffy…実測前輪横力、At…目標転舵角、As…抑制量、Yt…目標ヨーレート、Ys…実ヨーレート、V…車速、θ…舵角、T…トルク、Ffz…前輪荷重、It…電流目標値、Is…モータ電流検出値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の挙動を示す測定値を目標とすべき数値に一致させるよう、当該車両の車輪に対する制動力および駆動力のうち少なくとも一方の配分を制御する車両用制御装置であって、
前記車両の挙動を検出することにより前記測定値を出力する車両挙動検出手段と、
前記測定値を前記目標値に一致させるよう、前記配分を制御するための操作量を演算する演算手段と、
前記配分により前記車輪の前後方向に加わる力の差に基づき、前記車両の転舵を抑制する転舵抑制手段と
を備えることを特徴とする、車両用制御装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記車輪のうち左右前輪に加わる横力を検出し、
前記演算手段は、前記検出手段により検出された横力を目標とすべき横力に一致させるよう、前記車輪のうち左右後輪に対する制動力および駆動力のうち少なくとも一方の配分を制御する操作量を演算することを特徴とする、請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記転舵抑制手段は、前記配分により前記車輪の前後方向に加わる力の差に対応して定められる転舵抑制量を、車両操舵のための操作手段による操作に応じて設定される目標とすべき転舵量から差し引くよう、前記車両のステアリング機構を制御することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記車両のステアリング機構における転舵比を変更する転舵比可変装置に対して転舵比を設定する転舵比演算手段をさらに備え、
前記転舵抑制手段は、
前記演算手段により演算される操作量に基づき、前記転舵抑制量を算出する抑制量算出手段と、
前記操作手段による操作に応じて設定される目標とすべき転舵角から前記転舵抑制量を減算する減算手段と
を含み、
前記転舵比演算手段は、前記減算手段から得られる転舵角に基づき、前記転舵比を変更することを特徴とする、請求項3に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記転舵抑制手段は、
前記操作量に基づき、前記車輪のうち対応する左右の車輪それぞれの前後方向に加わる力の差を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出される力の差に基づき、前記車両操舵のための操作手段によって加えられる操舵トルクに応じて当該車両のステアリング機構に与えられる操舵補助力を減少させ、または前記操作手段に与えられる反力トルクを増加させる操舵抑制手段と
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−90842(P2009−90842A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264141(P2007−264141)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】