説明

配線板の製造方法

【課題】背合わせ分離面の配線形成まで寸法安定性を維持しながら加工することができ、高い作業効率を確保することのできる配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、2枚の基板を背合わせにして1枚の基板とする工程A、前記1枚の基板の両面に配線形成を行う工程B、前記配線面に2つの支持体をそれぞれ積層する工程C、前記支持体に固定されたまま2枚の基板を分離する工程Dを有することを特徴とする配線板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背合わせによって積層された面の配線形成まで寸法安定性を維持しながら加工することができ、高い作業効率を確保することのできる配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配線板の製造方法は、例えば片面配線板においては配線密度が基板両面で非対称となり、場合によっては製造工程中に大きなそりが発生することがあった。
これを改善するために、基板裏側に補強板を設ける等の対策を施していたが、基材厚みが25μm以下の薄いフレキシブル基板などは補強板の設置時にしわが発生しやすいなどの問題があった。
また、反りの抑制に優れ、基板の寸法安定性、高い作業効率を確保する有用な方法として2枚の基板を貼り合せ、見かけ上厚い1枚の基板として配線を形成する背合わせ工法(特許文献1や2)が有用である。例えば特許文献1に記載されているように、プリプレグやドライフィルムによって2枚の銅箔を挟み込む方法や、特許文献2記載されているように、接着層の両面に離型層を用いた方法である。
しかし、上記に示した背合わせ工法では、積層された面は基板を分離した後に配線を形成する必要があり、分離時に基板内に溜まった応力が解放され、背合わせ分離面の配線形成の際に、先に形成した配線との位置合わせ精度が低下する問題があった。さらに、背合わせ分離後に分離面に熱収縮率の高い配線(光導波路等)を形成すると反りが発生してしまい、製造ラインで流すことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−209150
【特許文献2】特開2006−49660
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、背合わせ分離面の配線形成まで寸法安定性を維持しながら加工することができ、高い作業効率を確保することのできる配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、2枚の基板を背合わせにして1枚の基板とする工程、前記1枚の基板の両面に配線形成を行う工程、前記配線面に2つの支持体をそれぞれ積層する工程、前記支持体に固定されたまま2枚の基板を分離する工程、前記2枚の基板の分離面に配線を形成する工程、前記分離面に配線を形成した後に前記支持体を分離する工程を行うことにより上記の目的を達成することを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)2枚の基板を背合わせにして1枚の基板とする工程A、前記1枚の基板の両面に配線形成を行う工程B、前記配線面に2つの支持体をそれぞれ積層する工程C、前記支持体に固定されたまま2枚の基板を分離する工程Dを有することを特徴とする配線板の製造方法、
(2)前記工程Aの後に、前記2枚の基板の分離面に配線を形成する工程Eを有することを特徴とする(1)に記載の配線板の製造方法、
(3)前記工程Eの後に、前記支持体を分離する工程Fを有することを特徴とする(2)に記載の配線板の製造方法、
(4)前記工程Bの後、前記工程Eの後、前記工程Fの前又は、前記工程Fの後の少なくともいずれかで、前記配線に配線保護用の被覆が施される工程Gを有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の配線板の製造方法、
(5)工程Aにおいて、基板の枠部分のみを接着剤を用いて基板同士の背合わせを行い1枚の基板とする(1)〜(4)のいずれかに記載の配線板の製造方法。
(6)前記配線が、光導波路と電気配線からなる(1)〜(5)のいずれかに記載の配線板の製造方法、
(7)前記配線が一層の電気配線又は、前記電気配線を形成した面に基板を積層した後、前記基板上に電気配線を形成する工程を1回以上繰り返してなる多層の電気配線であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の配線板の製造方法、
(8)前記配線が一層以上の光導波路であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の配線板の製造方法、
(9)前記電気配線が、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法の少なくともいずれかを用いて形成されることを特徴とする(6)又は(7)に記載の配線板の製造方法、
(10)前記光導波路がミラー付きの光導波路であることを特徴とする(6)又は(8)に記載の配線板の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の配線板の製造方法によれば、背合わせによって積層された面の配線形成まで寸法安定性を維持しながら加工することができ、製品完成まで高い作業効率を確保することのできる配線板を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の配線板の製造方法の一実施態様を説明する図である。
【図2】本発明の配線板の製造方法の別の一実施態様を説明する図である。
【図3】本発明の配線板の製造方法の別の一実施態様を説明する図である。
【図4】本発明の配線板の製造方法の別の一実施態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明により製造される配線板は、例えば、図1(l)に示すように、電気配線板7の上に、下部クラッド層6、コアパターン7及び上部クラッド層8が順に積層されてなる光導波路10を積層したものや、その多層板(図2参照)また、図4(d)に示すような、両面に電気配線が形成された基板や、その多層板である。
【0010】
(2枚の基板の背合わせ方法)
2枚の基板の背合わせ方法としては、背合わせされることによって1枚の基板2を形成できれば、その背合わせ方法は特に制限はしないが、例えば、再剥離性の接着剤3を用いて基板1同士を全面貼付したり、図4(a)に示すように、接着剤3又は支持体4の表裏に接着剤を塗布したものの両面に製品ワークより内側に離型シート14を配置してコアつきの接着剤3とし、枠部分で接着剤3を介して2枚の基板1を積層し、基板2としたものや、図1(c)に示すようにワニス状やフィルム状の接着剤3で基板1の枠部分のみに塗布して2枚の基板1を背合わせし、製品中央部分を非接着部分とする方法である。背合わせには、手貼り、プレス、真空プレス、ロールラミネータ、真空ラミネータなどが好ましく、後工程に加熱工程がある場合には、真空プレス又は真空ラミネータを用いることがより好ましい。また、背合わせした基板2をロールのまま配線形成を行う場合にはロールラミネータを用いることが好ましい。
【0011】
(支持体の積層方法)
背合わせされた基板の表裏に支持体4を積層する工程Cにおいて、背合わせを分離する2枚の基板1と支持体4の間に剥れが起きなければ、その積層方法には特に制限はしないが、例えば、再剥離性の接着剤3を用いて基板と支持体4を全面貼付したり、図1(i)に示すように基板と支持体4を、製品ワークより内側の一部で接着剤3を介して接着して基板2としたり、(2枚の基板の背合わせ方法)の欄に示したワニス状やフィルム状の接着剤3で基板2と支持体4の少なくともいずれかの板の枠部分のみに塗布して基板2と支持体4を積層することができる。積層方法には、手貼り、プレス、真空プレス、ロールラミネータ、真空ラミネータなどが好ましく、後工程に加熱工程がある場合には、真空プレス又は真空ラミネータを用いることがより好ましい。
【0012】
(2枚の基板間及び支持体と基板間の分離)
2枚の基板1の背合わせ方法で挙げた方法のうち再剥離性の接着剤3を用いて2枚の基板1の背合わせを行い、支持体4の積層にも再剥離性のある接着剤3を用いている場合には、支持体4の積層に用いる接着剤3の接着力を2枚の基板1の背合わせ方法で用いる接着剤3の接着力より強いものを用いると2枚の基板1間及び基板1と支持体4の分離が順次行うことが容易となる。
また、基板1の背合わせ方法で挙げた方法のうち枠部分のみを接着剤3を用いて基板同士の背合わせを行い、支持体4の積層にも枠部分のみの接着材を用いて貼り合わせを行う場合には、2枚の基板1の非接着部分の大きさが、支持体4の積層時の非接着部分の大きさよりサイズの大きいものを用いることが好ましい。これは、背合わせした基板2を分離するときに基板1同士間は非接着部分を、基板2と支持体4間は接着部分を切断することで、支持体4と基板1を積層したまま基板2の分離を容易に行えるためである。
【0013】
以下、配線板の各構成部分について説明する。
〔基板〕
基板1の種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、FR−4基板、ビルドアップ基板、ポリイミド基板、半導体基板、シリコン基板やガラス基板等を用いることができ、それらの片面又は両面に金属箔が設置されている積層板であっても良い。また、可撓性があるフレキシブルな材質でも、非可撓性の固い材質のものであっても良い。
また、基板1としてフィルムを用いることで、基板1や光導波路10に柔軟性及び強靭性を付与させることができる。フィルムの材料としては、特に限定されないが、柔軟性、強靭性を有するとの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルファイド、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどのフィルムが好適に挙げられる。
フィルムの厚さは、目的とする柔軟性により適宜変えてよいが、5〜250μmであることが好ましい。5μm以上であると強靭性が得易いという利点があり、250μm以下であると十分な柔軟性が得られる。
【0014】
〔基板1と積層する支持体〕
支持体4の種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、金属板、FR−4基板、ポリイミド基板、半導体基板、シリコン基板やガラス基板等を用いることができ、それらの片面又は両面に金属層が設置されている積層板であっても、上に列挙した支持体の積層板であっても良い。また、可撓性があるフレキシブルな材質でも、非可撓性の固い材質のものであっても良い。
また、支持体4として剛性のあり厚みのある非可撓性の支持体を用いると寸法安定性が良く、そりやゆがみの少ない基板を形成することができる。支持体4の厚さは、目的とする反り量や製造可能な製品厚により適宜変えてよいが、5μm〜1cmであることが好ましく、50μm〜1mmの厚みであると十分なハンドリング性が得られることからさらに好ましい。
【0015】
〔背合わせ基板のコアとしての支持体〕
2枚の基板1の背合わせ方法において基板1の間に支持体4を用いる場合、支持体4の種類として特に制限されるものではないが、例えば、金属板、FR−4基板、ポリイミド基板、半導体基板、シリコン基板やガラス基板等を用いることができ、それらの片面又は両面に金属層が設置されている積層板であっても、上に列挙した基板の積層板であっても良い。さらには硬化することによって剛性な物質となる接着剤でも良い。硬化によって剛性が現れる接着剤として、プリプレグ、ビルドアップ材、熱硬化性の接着剤などが好適に挙げられる。支持体の厚さは、使用する離型材の厚みや求める寸法安定性によって適宜変えてよいが、5μm〜1cmであることが好ましく、50μm〜1mmの厚みであると十分なハンドリング性が得られることからさらに好ましい。
【0016】
〔接着剤〕
接着剤3には、特に限定されないが、両面テープ、ホットメルト接着剤、UV硬化型接着剤、熱硬化性接着剤、プリプレグ、ビルドアップ材、耐熱性の接着剤などが好適に挙げられる。剛性のある非可撓性の接着剤3を必要とする場合には、支持体4の材料の欄に列挙した基板の表裏に接着剤3を貼り合せ、コアとする支持体4を中心に持つ接着剤3としても良い。
また、真空プレスや真空ラミネートを用いる工程を有する場合には、耐熱性のある接着剤3であることが好ましく、プリプレグ、ビルドアップ材、耐熱性の接着剤などが好適に挙げられる。光導波路10において、光信号が透過する部分の接着には高い透過率の接着剤3が必要であり、接着剤3の材料としては、特に限定されないが、(PCT/JP2008/05465)に記載の接着剤を使用することがより好ましい。接着剤3の厚みは貼り合せた後の工程に影響がない範囲の厚みであればよく、25μm以下であることがより好ましい。
また、基板2をロールのまま配線形成を行う場合には、硬化後も十分な柔軟性を有する接着剤3を用いることが好ましい。
【0017】
〔離型シート〕
離型シート14の種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、プレス用の離型シート、離型性のある樹脂又は接着剤、UV又は熱剥離性の樹脂等を用いることができる。
また、離型シート14としてフィルム状の材料としては、特に限定されないが、銅箔、銀箔、金箔、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルファイド、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどが好適に挙げられる。耐熱性や基板との離型性の観点から、銅箔、ポリイミドフィルム、アラミドフィルムがより好適に挙げられる。
フィルムの厚さは、目的とする平坦性や電気配線5の埋め込み性により適宜変えてよいが、5〜250μmであることが好ましい。
【0018】
〔配線〕
配線とは、金属層などの導体をパターニングした電気配線5、光導波路10などの光配線、それぞれの多層板、それぞれを複合した多層板のことを指す。
具体的には、(i)光導波路と電気配線からなる配線、(ii)一層の電気配線、又は前記電気配線を形成した面に基板を積層した後、前記基板上に電気配線を形成する工程を1回以上繰り返してなる多層の電気配線、(iii)一層以上の光導波路である配線等が挙げられる。
【0019】
〔電気配線の形成方法〕
電気配線5の形成方法としては、電気配線5を形成する面に金属層を形成し、更にエッチングレジストを形成し、金属層の不要な箇所をエッチングで除去する方法(サブトラクト法)、めっきレジストを形成し、電気配線5を形成する面の必要な箇所にのみめっきにより電気配線5を形成する方法(アディティブ法)、電気配線5を形成する面に薄い金属層(シード層)を形成し、更にめっきレジストを形成し、その後、電気めっきで必要な電気配線5を形成した後、薄い金属層をエッチングで除去する方法(セミアディティブ法)がある。
電気配線5の形成方法はいずれの方法を用いても良いが、(電気配線幅)≦20μmの微細配線を形成するためには、セミアディティブ法がより好ましい。
また、電気配線形成に用いるエッチングレジスト又はめっきレジストは、ポジ型、ネガ型いずれでも可能であるが、ポジ型レジストの方が微細配線形成が容易であり、より好ましい。
【0020】
〔セミアディティブ法におけるシード層の形成〕
セミアディティブ法による電気配線形成の場合、電気配線5を形成する面にシード層を形成する方法は、蒸着またはめっきによる方法と、金属層を貼り合わせる方法がある。
【0021】
〔蒸着またはめっきによるシード層の形成〕
電気配線5を形成する面に蒸着またはめっきによってシード層を形成することができる。
例えば、シード層として、スパッタリングにより下地金属と薄膜銅層を形成する場合、薄膜銅層を形成するために使用されるスパッタリング装置は、2極スパッタ、3極スパッタ、4極スパッタ、マグネトロンスパッタ、ミラートロンスパッタ等を用いることができる。
スパッタに用いるターゲットは、密着を確保するために、例えばCr、Ni、Co、Pd、Zr、Ni/Cr、Ni/Cu等の金属を下地金属として用い、5〜50nmスパッタリングする。
その後、銅をターゲットにして200〜500nmスパッタリングしてシード層を形成できる。
また、電気配線5を形成する面にめっき銅を、0.5〜3μm無電解銅めっきを行い形成することもできる。
【0022】
〔金属箔を貼り合わせる方法〕
電気配線5を形成する面に接着機能がある場合は、金属層をプレスやラミネートによって貼り合わせることによりシード層を形成することもできる。
しかし、薄い金属層を直接貼り合わせるのは非常に困難であるため、厚い金属層を張り合わせた後にエッチング等により薄くする方法や、キャリア付金属層を貼り合わせた後にキャリア層を除去する方法などがある。
例えば前者としてはキャリア銅/ニッケル/薄膜銅の三層銅箔があり、キャリア銅をアルカリエッチング液で、ニッケルをニッケルエッチング液で除去し、後者としてはアルミ、銅、絶縁樹脂などをキャリアとしたピーラブル銅箔などが使用でき、5μm以下のシード層を形成できる。
また、厚み9〜18μmの金属層(例えば銅箔等の金属箔)を貼り付け、5μm以下になるように、エッチングにより均一に薄くし、シード層を形成してもかまわない。
電気めっきの種類については一般的に使用されるものを使用すればよく、特に限定しないが、電気配線5を形成するためには、めっき金属として銅を使用するのが好ましい。
【0023】
〔アディティブ法による電気配線形成〕
アディティブ法による電気配線形成の場合もセミアディティブ法と同様、電気配線5を形成する面の必要な箇所にのみ、めっきを行うことで形成されるが、アディティブ法で使用されるめっきは通常、無電解めっきが使用される。
例えば、電気配線5を形成する面に無電解めっき用触媒を付着させた後、めっきが行われない表面部分にめっきレジストを形成して、無電解めっき液に浸漬し、めっきレジストに覆われていない箇所にのみ、無電解めっきを行い電気配線5を形成する。
【0024】
〔配線保護用の被覆の形成〕
最終製品として得られた配線板の最外面(最外層に位置する配線面)には絶縁被覆を形成することができる。電気配線の場合には、絶縁被覆のパターン形成は、ワニス状の材料であれば印刷で行うことも可能であるが、より精度を確保するためには、感光性のソルダレジスト、カバーレイフィルム、フィルム状レジストを用いるのが好ましい。また、製品内にミラー付きの光導波路がある場合(光配線の場合)は、接着剤付き保護フィルムを用いてミラー部を保護することが好ましい。
材質としては、エポキシ系、ポリイミド系、エポキシアクリレート系、フルオレン系の材料を用いることができる。
【0025】
〔光導波路の形成方法〕
以下、基板2の両面に光導波路10を形成した本発明の配線板の製造方法について詳述する(図1参照)。
まず、図1(d)及び(e)に示すように、基板2のポリイミド面に、下部クラッド層6を設け、その上にコアパターン7を形成する。さらに上部クラッド層8を積層し、ミラー部を形成する(図1(f)、(g)参照)。基板2と下部クラッド層6に接着力がない場合は接着層3を介して貼り付けても良い。さらに上記のような下部クラッド層6、コアパターン7、上部クラッド層8を有する光導波路基板を接着剤3を介して電気配線5上に、直接貼り付ける方法を用いてもできる。
基板2への下部クラッド層6の形成は、特に限定されず公知の方法によれば良く、例えば、下部クラッド層6の形成材料をスピンコート等により下部支持フィルム上に塗布し、プリベイクを行った後、紫外線を照射して薄膜を硬化させることにより形成できる。また、コアパターン7の形成も、特に限定されず、例えば、下部クラッド層6上に、下部クラッド層6より屈折率の高いコア層を形成し、エッチングによりコアパターン7を形成すれば良い。上部クラッド層8の形成方法も特に限定されず、例えば、下部クラッド層6と同様の方法で形成すれば良い。
【0026】
〔下部クラッド層及び上部クラッド層〕
以下、本発明で使用される下部クラッド層6及び上部クラッド層8について説明する。下部クラッド層6及び上部クラッド層8としては、クラッド層形成用樹脂又はクラッド層形成用樹脂フィルムを用いることができる。
【0027】
本発明で用いるクラッド層形成用樹脂としては、コア層より低屈折率で、光又は熱により硬化する樹脂組成物であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂組成物や感光性樹脂組成物を好適に使用することができる。より好適にはクラッド層形成用樹脂が、(A)ベースポリマー、(B)光重合性化合物及び(C)光重合開始剤を含有する樹脂組成物により構成されることが好ましい。なお、クラッド層形成用樹脂に用いる樹脂組成物は、上部クラッド層8と下部クラッド層6において、該樹脂組成物に含有する成分が同一であっても異なっていてもよく、該樹脂組成物の屈折率が同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
ここで用いる(A)ベースポリマーはクラッド層を形成し、該クラッド層の強度を確保するためのものであり、該目的を達成し得るものであれば特に限定されず、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン等、あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。これらのベースポリマーは1種単独でも、また2種以上を混合して用いてもよい。上記で例示したベースポリマーのうち、耐熱性が高いとの観点から、主鎖に芳香族骨格を有することが好ましく、特にフェノキシ樹脂が好ましい。また、3次元架橋し、耐熱性を向上できるとの観点からは、エポキシ樹脂、特に室温で固形のエポキシ樹脂が好ましい。さらに、後に詳述する(B)光重合性化合物との相溶性が、クラッド層形成用樹脂の透明性を確保するために重要であるが、この点からは上記フェノキシ樹脂及び(メタ)アクリル樹脂が好ましい。なお、ここで(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂を意味するものである。
【0029】
フェノキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物ビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を共重合成分として用いるフェノキシ樹脂が、耐熱性、密着性及び溶解性に優れるため好ましい。ビスフェノールA又はビスフェノールA型エポキシ化合物の誘導体としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ化合物等が好適に挙げられる。また、ビスフェノールF又はビスフェノールF型エポキシ化合物の誘導体としては、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールF型エポキシ化合物等が好適に挙げられる。ビスフェノールA/ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂の具体例としては、東都化成(株)製「フェノトートYP−70」(商品名)が挙げられる。
【0030】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、室温で固形のエポキシ樹脂としては、例えば、東都化学(株)製「エポトートYD−7020、エポトートYD−7019、エポトートYD−7017」(いずれも商品名)、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1010、エピコート1009、エピコート1008」(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0031】
次に、(B)光重合性化合物としては、紫外線等の光の照射によって重合するものであれば特に限定されず、分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物や分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物などが挙げられる。
分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルピリジン、ビニルフェノール等が挙げられるが、これらの中で、透明性と耐熱性の観点から、(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリレートとしては、1官能性のもの、2官能性のもの、3官能性以上の多官能性のもののいずれをも用いることができる。なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを示す。アクリレートとはアクリロイル基を有する化合物を意味し、メタクリレートとはメタクリロイル基を有する化合物を意味する。また、ここでいう1官能性とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基のいずれかを1つ有することを意味する。
分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の2官能又は多官能芳香族グリシジルエーテル、ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂等の2官能又は多官能脂肪族グリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の2官能脂環式グリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル等の2官能芳香族グリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の2官能脂環式グリシジルエステル、N,N−ジグリシジルアニリン等の2官能又は多官能芳香族グリシジルアミン、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート等の2官能脂環式エポキシ樹脂、2官能複素環式エポキシ樹脂、多官能複素環式エポキシ樹脂、2官能又は多官能ケイ素含有エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの(B)光重合性化合物は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
次に(C)成分の光重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば(B)成分にエポキシ化合物を用いる場合の開始剤として、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリルセレノニウム塩、ジアルキルフェナジルスルホニウム塩、ジアルキル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム塩、スルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0033】
また、(B)成分に分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物を用いる場合の開始剤としては、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2−メルカプトベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類、9−フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。なお、コア層及びクラッド層の透明性を向上させる観点からは、上記化合物のうち、芳香族ケトン及びフォスフィンオキサイド類が好ましい。
これらの(C)光重合開始剤は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
(A)ベースポリマーの配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、5〜80質量%とすることが好ましい。また、(B)光重合性化合物の配合量は、(A)及び(B)成分の総量に対して、95〜20質量%とすることが好ましい。
この(A)成分及び(B)成分の配合量として、(A)成分が5質量%以上であり、(B)成分が95質量%以下であると、樹脂組成物を容易にフィルム化することができる。一方、(A)成分が80質量%以下あり、(B)成分が20質量%以上であると、(A)ベースポリマーを絡み込んで硬化させることが容易にでき、光導波路を形成する際に、パターン形成性が向上し、かつ光硬化反応が十分に進行する。以上の観点から、この(A)成分及び(B)成分の配合量として、(A)成分10〜85質量%、(B)成分90〜15質量%がより好ましく、(A)成分20〜70質量%、(B)成分80〜30質量%がさらに好ましい。
(C)光重合開始剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましい。この配合量が0.1質量部以上であると、光感度が十分であり、一方10質量部以下であると、露光時に感光性樹脂組成物の表層での吸収が増大することがなく、内部の光硬化が十分となる。さらに、光導波路として使用する際には、重合開始剤自身の光吸収の影響により伝搬損失が増大することもなく好適である。以上の観点から、(C)光重合開始剤の配合量は、0.2〜5質量部とすることがより好ましい。
また、このほかに必要に応じて、クラッド層形成用樹脂中には、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、安定剤、充填剤などのいわゆる添加剤を本発明の効果に悪影響を与えない割合で添加してもよい。
【0035】
本発明においては、クラッド層の形成方法は特に限定されず、例えば、クラッド層形成用樹脂の塗布又はクラッド層形成用樹脂フィルムのラミネートにより形成すれば良い。
塗布による場合には、その方法は限定されず、例えば、前記(A)〜(C)成分を含有する樹脂組成物を常法により塗布すれば良い。
また、ラミネートに用いるクラッド層形成用樹脂フィルムは、例えば、前記樹脂組成物を溶媒に溶解して、支持フィルムに塗布し、溶媒を除去することにより容易に製造することができる。
【0036】
クラッド層形成用樹脂フィルムの製造過程で用いられる支持フィルムは、その材料については特に限定されず、種々のものを用いることができる。支持フィルムとしての柔軟性及び強靭性の観点から、上記した、基板のフィルム材料として例示したものが同様に挙げられる。
支持フィルムの厚さは、目的とする柔軟性により適宜変えてよいが、5〜250μmであることが好ましい。5μm以上であると強靭性が得易いという利点があり、250μm以下であると十分な柔軟性が得られる。
ここで用いる溶媒としては、該樹脂組成物溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることができる。樹脂溶液中の固形分濃度は30〜80質量%程度であることが好ましい。
【0037】
下部クラッド層6及び上部クラッド層8(以下、クラッド層6,8と略す)の厚さに関しては、乾燥後の厚さで、5〜500μmの範囲が好ましい。5μm以上であると、光の閉じ込めに必要なクラッド厚さが確保でき、500μm以下であると、膜厚を均一に制御することが容易である。以上の観点から、クラッド層6、8の厚さは、さらに10〜100μmの範囲であることがより好ましい。
【0038】
また、クラッド層6,8の厚さは、最初に形成される下部クラッド層6と、コアパターン7を埋め込むための上部クラッド層8において、同一であっても異なってもよいが、コアパターン7を埋め込むために、上部クラッド層8の厚さは、コア層の厚さよりも厚くすることが好ましい。
【0039】
〔コア層形成用樹脂及びコア層形成用樹脂フィルム〕
本発明においては、コアパターン7を形成するために、下部クラッド層6に積層するコア層の形成方法は特に限定されず、例えば、コア層形成用樹脂の塗布又はコア層形成用樹脂フィルムのラミネートにより形成すれば良い。
コア層形成用樹脂としては、コアパターン7がクラッド層6,8より高屈折率であるように設計され、活性光線によりコアパターン7を形成し得る樹脂組成物を用いることができ、感光性樹脂組成物が好適である。具体的には、前記クラッド層形成用樹脂で用いたのと同様の樹脂組成物を用いることが好ましい。
塗布による場合には、方法は限定されず、前記樹脂組成物を常法により塗布すれば良い。
【0040】
以下、ラミネートに用いるコア層形成用樹脂フィルムについて詳述する。
コア層形成用樹脂フィルムは、前記樹脂組成物を溶媒に溶解して下部クラッド層6に塗布し、溶媒を除去することにより容易に製造することができる。ここで用いる溶媒としては、該樹脂組成物を溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることができる。樹脂溶液中の固形分濃度は、通常30〜80質量%であることが好ましい。
【0041】
コア層形成用樹脂フィルムの厚さについては特に限定されず、乾燥後のコア層の厚さが、通常は10〜100μmとなるように調整される。該フィルムの厚さが10μm以上であると、光導波路形成後の受発光素子又は光ファイバーとの結合において位置合わせトレランスが拡大できるという利点があり、100μm以下であると、光導波路形成後の受発光素子又は光ファイバーとの結合において、結合効率が向上するという利点がある。以上の観点から、該フィルムの厚さは、さらに30〜70μmの範囲であることが好ましい。
【0042】
コア層形成用樹脂の製造過程で用いる支持フィルムは、コア層形成用樹脂を支持する支持フィルムであって、その材料については特に限定されないが、後にコア層形成用樹脂を剥離することが容易であり、かつ、耐熱性及び耐溶剤性を有するとの観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが好適に挙げられる。
支持フィルムの厚さは、5〜50μmであることが好ましい。5μm以上であると、支持フィルムとしての強度が得やすいという利点があり、50μm以下であると、パターン形成時のマスクとのギャップが小さくなり、より微細なパターンが形成できるという利点がある。以上の観点から、支持フィルムの厚さは10〜40μmの範囲であることがより好ましく、15〜30μmであることが特に好ましい。
【0043】
本発明において用いられる光導波路10は、コアパターン7及びクラッド層を有する高分子層を複数積層した多層光導波路であってもよい。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0045】
〔接着剤の作製〕
PCT/JP2008/05465に記載の接着剤を作製した。すなわち、(a)エポキシ樹脂としてYDCN−703(東都化成株式会社製商品名、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210)55質量部、(b)硬化剤としてミレックスXLC−LL(三井化学株式会社製商品名、フェノール樹脂、水酸基当量175、吸水率1.8質量%、350℃における加熱重量減少率4%)45質量部、シランカップリング剤としてNUC A−189(日本ユニカー株式会社製商品名、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)1.7質量部とNUC A−1160(日本ユニカー株式会社製商品名、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン)3.2質量部、(d)フィラーとしてアエロジルR972(シリカ表面にジメチルジクロロシランを被覆し、400℃の反応器中で加水分解させた、メチル基などの有機基を表面に有するフィラー、日本アエロジル株式会社製商品名、シリカ、平均粒径0.016μm)32質量部からなる組成物に、シクロヘキサノンを加えて攪拌混合し、更にビーズミルを用いて90分混練した。これに(c)高分子化合物としてグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート3質量%を含むアクリルゴムHTR−860P−3(ナガセケムテックス株式会社製商品名、重量平均分子量80万)を280質量部、及び(e)硬化促進剤としてキュアゾール2PZ−CN(四国化成工業株式会社製商品名、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)を0.5質量部加え、攪拌混合、真空脱気した。この接着剤ワニスを厚さ75μmの離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ピューレックスA31)上に塗布し、140℃で5分間加熱乾燥して、次いで第2の保護フィルムとして25μmの離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ピューレックスA31)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、接着剤3を得た。
以下、上記接着剤使用時は使用直前に第2の保護フィルムを剥離した直後の状態であることを前提に記述する。
【0046】
実施例1
(1)2枚の基板の貼り合せ
片面銅箔付きポリイミドの基板1(商品名:ユピセルN、宇部日東化成工業株式会社製、銅箔厚さ:5μm、ポリイミド厚さ12.5μm)の銅箔面に製品サイズ(150mm角)よりも各辺10mmずつ小さい離型シート14(商品名:アフレックス、旭硝子株式会社製、厚さ:30μm)を設置し、その上から上記接着剤の作製で得た接着剤3を、平板型ラミネータとして真空加圧式ラミネータ(株式会社名機製作所製、MVLP−500)を用い、500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度50℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着した。
その後、紫外線露光機(株式会社オーク製作所製、EXM−1172)にて接着剤3に紫外線(波長365nm)を1J/cm2照射し、接着剤3の保護フィルムである離型PETフィルム(ピューレックスA31)を剥離した(図1(a)参照)。その後、離型シート14に貼りついた接着剤3を離型シート14ごと剥がして、枠部分のみ接着剤3が付いた基板1を得た(図1(b)参照)。
次に、上記で得られた基板1の接着剤3貼り合せ面に、上記の真空加圧式ラミネータを用いて上記の片面銅箔付きポリイミド(150mm角)の銅箔面を上記の条件で加熱圧着して、180℃で1時間加熱硬化することによって、基板1が製品枠部分で貼り付けられた基板2を得た(図1(c)参照)。
【0047】
(2)光導波路の作製
〔クラッド層形成用樹脂フィルムの作製〕
(A)ベースポリマーとして、フェノキシ樹脂(商品名:フェノトートYP−70、東都化成株式会社製)48質量部、(B)光重合性化合物として、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート(商品名:KRM−2110、分子量:252、旭電化工業株式会社製)50質量部、(C)光重合開始剤として、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩(商品名:SP−170、旭電化工業株式会社製)2質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を広口のポリ瓶に秤量し、メカニカルスターラ、シャフト及びプロペラを用いて、温度25℃、回転数400rpmの条件で、6時間撹拌し、クラッド層形成用樹脂ワニスAを調合した。その後、孔径2μmのポリフロンフィルタ(商品名:PF020、アドバンテック東洋株式会社製)を用いて、温度25℃、圧力0.4MPaの条件で加圧濾過し、さらに真空ポンプ及びベルジャーを用いて減圧度50mmHgの条件で15分間減圧脱泡した。
上記で得られたクラッド層形成用樹脂ワニスAを、離型PETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社、厚さ:25μm)に塗工機(マルチコーターTM−MC、株式会社ヒラノテクシード製)を用いて塗布し、80℃、10分、その後100℃、10分乾燥し、次いで保護フィルムとして離型PETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社、厚さ:25μm)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、クラッド層形成用樹脂フィルムを得た。このとき樹脂層の厚さは、塗工機のギャップを調節することで、任意に調整可能であり、本実施例では硬化後の膜厚が、下部クラッド層25μm、上部クラッド層70μmとなるように調節した。
【0048】
〔コア層形成用樹脂フィルムの作製〕
(A)ベースポリマーとして、フェノキシ樹脂(商品名:フェノトートYP−70、東都化成株式会社製)26質量部、(B)光重合性化合物として、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(商品名:A−BPEF、新中村化学工業株式会社製)36質量部、及びビスフェノールA型エポキシアクリレート(商品名:EA−1020、新中村化学工業株式会社製)36質量部、(C)光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名:イルガキュア2959、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を用いたこと以外は上記製造例と同様の方法及び条件でコア層形成用樹脂ワニスBを調合した。その後、上記製造例と同様の方法及び条件で加圧濾過さらに減圧脱泡した。
上記で得られたコア層形成用樹脂ワニスBを、PETフィルム(商品名:コスモシャインA1517、東洋紡績株式会社製、厚さ:16μm)の非処理面上に、上記製造例と同様な方法で塗布乾燥し、次いで保護フィルムとして離型PETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社、厚さ:25μm)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、コア層形成用樹脂フィルムを得た。本実施例では硬化後の膜厚が50μmとなるよう、塗工機のギャップを調整した。
【0049】
(3)光電気複合部材(光導波路と複合してなる配線板)の作製
光電気複合部材の作製方法について、以下、図1を参照しつつ説明する。
上記で得られた基板2の両面に、上記に記載の接着剤3の接着剤面をロールラミネータ(日立化成テクノプラント株式会社製、HLM−1500)を用い圧力0.4MPa、温度50℃、ラミネート速度0.2m/minの条件で、ラミネートした。
その後、紫外線露光機(株式会社オーク製作所製、EXM−1172)にて接着剤3に紫外線(波長365nm)を1J/cm2照射し、上記に記載の接着剤3の保護フィルムである離型PETフィルム(ピューレックスA31)を剥離した。
次に上記で得られた下部クラッド層形成用樹脂フィルムの保護フィルムである離型PETフィルム(ピューレックスA31)を剥離し、上記で得られた基板2の両面の接着剤3面に、上記と同様なラミネート条件で貼り付け、紫外線露光機(株式会社オーク製作所製、EXM−1172)にて樹脂側から紫外線(波長365nm)を1.5J/cm2照射し、次いで80℃で10分間加熱処理することにより、下部クラッド層6を形成した(図1(d)参照)。
次に、両面の下部クラッド層6上に、上記と同様なラミネート条件で、上記コア層形成用樹脂フィルムをラミネートし、コア層を形成した。
【0050】
次に、幅50μmのネガ型フォトマスクを介し、上記紫外線露光機にて紫外線(波長365nm)を0.8J/cm2照射し、次いで80℃で5分間露光後加熱を行った。その後、支持フィルムであるPETフィルムを剥離し、現像液(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/N,N−ジメチルアセトアミド=7/3、質量比)を用いて、コアパターン7を現像した。続いて、洗浄液(イソプロパノール)を用いて洗浄し、100℃で10分間加熱乾燥した(図1(e)参照)。
【0051】
次いで平板型ラミネータとして真空加圧式ラミネータ(株式会社名機製作所製、MVLP−500)を用い、上部クラッド層8として上記クラッド層形成用樹脂フィルムを、500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度50℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着した。
さらに、紫外線(波長365nm)を3J/cm2照射後、180℃で1時間加熱処理することによって、上部クラッド層8を硬化させ光導波路10を作製した(図1(f)参照)。
得られた光導波路10の上部クラッド層8側からダイシングソー(DAC552、株式会社ディスコ社製)を用いて45°のミラー部12を形成した(図1(g)参照)。
【0052】
ミラー保護のための接着剤3付き保護フィルムとして、上記に記載の接着剤3を上記の条件でポリイミドフィルム(厚さ:12.5μm)に貼り付けたものを用いた。真空加圧式ラミネータ(株式会社名機製作所製、MVLP−500)を用い、上記の条件でミラー形成部に接着剤3付き保護フィルムを貼り付け、180℃で1時間加熱処理することによって接着剤3を硬化し、ミラー部12に配線保護用の被覆9を設けた(図1(h)参照)。
【0053】
〔支持体の貼り付け〕
130mm角の離型シート14(商品名:アフレックス、旭硝子株式会社製、厚さ:30μm)上部クラッド形成面の中央に設置し、その上から上記の真空加圧式ラミネータを用いてビルドアップ材(商品名:AS−ZII、日立化成工業株式会社製、厚さ:40μm)を500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度110℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着して、次いで支持体4として銅箔を除去した150mm角のFR−4(商品名:MCL−E−679FB、日立化成工業株式会社製、厚さ:0.6mm)を上記の真空加圧式ラミネート条件でビルドアップ材面にラミネートして貼り付け、180℃で1時間加熱処理することによってビルドアップ材を硬化させ、光導波路10に支持体5を貼り付けた(図1(i)参照)。
【0054】
〔背合わせ基板の分離〕
製品ワーク外周より1.5cmずつ小さい135mmで製品を切断し、背合わせした面で基板2を分離した。これにより2枚の支持体2に積層された基板1を得た(図1(j)参照)。
【0055】
〔サブトラクティブ法による回路形成〕
その後、基板1の背合わせ分離面である片面銅箔付きポリイミドの銅箔面に感光性ドライフィルムレジスト(商品名:フォテック、日立化成工業株式会製、厚さ:25μm)をロールラミネータ(日立化成テクノプラント株式会社製、HLM−1500)を用い圧力0.4MPa、温度110℃、ラミネート速度0.4m/minの条件で貼り、次いで紫外線露光機(株式会社オーク製作所製、EXM−1172)にて感光性ドライフィルムレジスト側から幅50μmのネガ型フォトマスクを介し、紫外線(波長365nm)を120mJ/cm2照射し、未露光部分の感光性ドライフィルムレジストを35℃の0.1〜5重量%炭酸ナトリウムの希薄溶液で除去した。その後、塩化第二鉄溶液を用いて、感光性ドライフィルムレジストが除去され、むき出しになった部分の銅箔をエッチングにより除去し、35℃の1〜10重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、露光部分の感光性ドライフィルムレジストを除去し、電気配線5を形成した。次いで、カバーレイフィルム(商品名:ニカフレックスCISG、ニッカン工業株式会社製、基材厚さ:12.5μm、接着剤厚さ:15μm)を圧力4.0MPa、温度160℃、加圧時間90分の条件で真空プレスし、配線保護用の被覆9を設けた。これにより支持体に固定された電気配線5と光導波路10が形成された配線板を得た。(図1(k)参照)
【0056】
〔支持体の分離〕
製品ワーク外周より1.0cmずつ小さい125mm角で製品を切断し、支持体と基板を分離した。これにより2枚の電気配線5と光導波路10が形成された配線板を得た(図1(l)参照)。
得られた配線板について、光導波路に生じる歪みを、設計値に対する光導波路10のコア位置のズレ量で評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
(ズレ量の測定方法)
測定は、表裏の配線の125mm角中に配置した30ヵ所のアライメントマーカのX座標とY座標を測定し、4隅のアライメントマーカを用いて、対角線にあるマーカ同士を結んだ交点をスケーリングファクタ原点(以下、S/F原点と略す)、4つのアライメントマーカ間の距離を設計値で割った平均値をスケーリングファクタ(以下、S/Fと略す)として決定した。例えば、設計値の4隅のアライメントマーカをA、B、C、Dとし、実測した4隅のアライメントマーカをA’、B’、C’、D’とし、A(又はA’)とC(又はC’)、B(又はB’)とD(又はD’)が対角線上に位置する場合、AとCを結んだ直線と、BとDを結んだ直線との交点が設計値のS/F原点であり、A’とC’を結んだ直線と、B’とD’を結んだ直線との交点が実測値のS/F原点である。また、A’−B’間距離/A−B間距離、B’−C’間距離/B−C間距離、C’−D’間距離/C−D間距離、及びD’−A’間距離/D−A間距離の平均値がS/Fである。その後、測定したX座標およびY座標を、実測値のS/F原点を設計値のS/F原点の位置に補正し、さらに設計値にS/Fを乗じて、それによって得られた設計値のX座標およびY座標とのズレ量を算出した。これらにより表裏の配線位置ズレを測定した。測定結果を表1に示す。
表1において、Xは横方向のズレ量、Yは縦方向のズレ量、XYはズレの距離を示す。表1の結果より、ズレ量は最大で39.7μmであった。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例2
実施例1において、支持体4を固定する時に離型シート14を用いずFR−4と光導波路の上部クラッド側を全面で貼付し、支持体4を分離しなかった以外は同様にして、2枚の電気配線5と光導波路10が形成された配線板を得た(図2参照)。
得られた配線板について、実施例1と同様に表裏の配線位置ズレを測定した。測定結果を表2に示す。表2の結果より、ズレ量は最大で29.2μmであった。
【0060】
【表2】

【0061】
実施例3
実施例1において基板1の片面銅箔ポリイミド基板の表裏を逆にし、光導波路10を形成する代わりに、上記のサブトラクティブ法を用いて電気配線5の形成を行い、カバーレイフィルムを接着した(図3(a)参照)。その後、実施例1と同様にして支持体4の積層と背合わせされた基板の分離を行い、背合わせ分離面へ実施例1と同様の光導波路10の形成方法を用いて上部クラッド層8の露光まで行った(図3(b)参照)。さらにコアパターン7及び上部クラッド層8を形成し、2層の光導波路10を形成し、ミラー部12の形成を2層同時に行った(図3(c)参照)。ミラー部12の保護は実施例1と同様に行い、電気配線5と2層の光導波路10が形成された配線板を得た(図3(d)参照)。
得られた配線板について、実施例1と同様に表裏の配線位置ズレを測定した。測定結果を表3に示す。表3の結果より、ズレ量は最大で36.4μmであった。
【0062】
【表3】

【0063】
実施例4
150mm角のプリプレグ(商品名:GEA−679FG、日立化成工業株式会社製、厚さ:40μm)の両面に140mm角の銅箔(商品名:3EC−VLP、三井金属鉱業株式会社製、厚さ:18μm)を中央に設置し、その上から150mm角の銅箔(商品名:3EC−VLP、三井金属鉱業株式会社製、厚さ:18μm)、150mm角のプリプレグ(商品名:GEA−679FG、日立化成工業株式会社製、厚さ:40μm)および150mm角の銅箔(商品名:3EC−VLP、三井金属鉱業株式会社製、厚さ:18μm)を順次構成し、4kPa以下に真空引きした後、圧力2.5MPa、温度180℃、加圧時間1時間の条件にて加熱積層して、背合わせした2枚の基板を得た(図4(a)参照)。その後、実施例1と同様の方法で基板の両面にサブトラクティブ法を用いて電気配線5の形成を行った(図4(b)参照)。次いで、150mm角のプリプレグ(商品名:GEA−679FG、日立化成工業株式会社製、厚さ:40μm)、150mm角の銅箔(商品名:3EC−VLP、三井金属鉱業株式会社製、厚さ:18μm)、を順次構成し、上記と同様の条件で加熱積層した(図4(c)参照)。次に基板の両面の銅箔に上記電気配線の形成と同様の方法で基板の両面をサブトラクティブ法を用いて電気配線5の形成を行った(図4(d)参照)。支持体4の積層以降の工程は実施例1と同様にして行い、3層の電気配線を有する配線板を得た(図4(e)参照)。
得られた配線板について、実施例1と同様に表裏の配線位置ズレを測定した。測定結果を表4に示す。表4の結果より、ズレ量は最大で9.7μmであった。
【0064】
【表4】

【0065】
比較例1
実施例3において、支持体4を用いず、光導波路10を一層にした以外は同様にして
電気配線5と1層の光導波路10が形成された配線板を得た。
得られた配線板について、実施例1と同様に表裏の配線位置ズレを測定した。表5の結果より、ズレ量は最大で91.5μmであった。
【0066】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の配線板の製造方法によれば、背合わせによって積層された面の配線形成まで寸法安定性を維持しながら加工することができ、高い作業効率を確保することができる。また、2枚の基板を重ねて製造できることから、ある程度の厚みある基板として取り扱うことで極薄の配線板の製造にも対応可能となる。また、銅張り積層板やビルドアップ形成する基板の両方に対応可能であるため、半導体パッケージ基板、フレキシブル基板、光電気複合部材等の幅広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1;基板
2;基板(背合わせ後)
3;接着剤
4;支持体
5;電気配線
6;下部クラッド層
7;コアパターン
8;上部クラッド層
9;配線保護用の被覆
10;光導波路
11;金属層
12;ミラー部
13;剥離面
14;離型シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の基板を背合わせにして1枚の基板とする工程A、前記1枚の基板の両面に配線形成を行う工程B、前記配線面に2つの支持体をそれぞれ積層する工程C、前記支持体に固定されたまま2枚の基板を分離する工程Dを有することを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項2】
前記工程Aの後に、前記2枚の基板の分離面に配線を形成する工程Eを有することを特徴とする請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項3】
前記工程Eの後に、前記支持体を分離する工程Fを有することを特徴とする請求項2に記載の配線板の製造方法。
【請求項4】
前記工程Bの後、前記工程Eの後、前記工程Fの前又は、前記工程Fの後の少なくともいずれかで、前記配線に配線保護用の被覆が施される工程Gを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配線板の製造方法。
【請求項5】
工程Aにおいて、基板の枠部分のみを接着剤を用いて基板同士の背合わせを行い1枚の基板とする請求項1〜4のいずれかに記載の配線板の製造方法。
【請求項6】
前記配線が、光導波路と電気配線からなる請求項1〜5のいずれかに記載の配線板の製造方法。
【請求項7】
前記配線が、一層の電気配線又は、前記電気配線を形成した面に基板を積層した後、前記基板上に電気配線を形成する工程を1回以上繰り返してなる多層の電気配線であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の配線板の製造方法。
【請求項8】
前記配線が、一層以上の光導波路であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の配線板の製造方法。
【請求項9】
前記電気配線が、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法の少なくともいずれかを用いて形成されることを特徴とする請求項6又は7に記載の配線板の製造方法。
【請求項10】
前記光導波路がミラー付きの光導波路であることを特徴とする請求項6又は8に記載の配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−29410(P2011−29410A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173606(P2009−173606)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】