説明

ステアリングシステム

【課題】二基の反力発生装置をより多様に、効率的に運用し、バックラッシュによる歯車のガタつきを防止する。
【解決手段】操舵装置3が、コラムシャフト7と、操舵反力Aを発生可能な反力発生装置8,9と、減速機構11とを備え、減速機構11が、コラムシャフト7に取付けられたプライマリーギヤ12を有し、反力発生装置8,9が、プライマリーギヤ12に対して少なくとも二箇所の噛合部19,20を有するように構成されたステアリングシステム1であって、制御装置5が、反力発生装置8,9に対する出力を配分可能な配分手段が、コラムシャフト7の回転域の全域に対して、反力発生装置8,9を共同で駆動させる共同駆動モードと、コラムシャフト7の回転域を区分けして、反力発生装置8,9を、区分けされた区分回転域にそれぞれ対応させて専用に駆動させる専用駆動モードとの、少なくともどちらか一方となるように配分可能に構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、通常、ステアリングシステムが備えられている。このようなステアリングシステムには、ステアバイワイヤシステムなどと呼ばれるものが存在している(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
このステアバイワイヤシステムは、操舵装置と転舵装置とを、機械的に分離した状態で設けると共に、この操舵装置と転舵装置とを制御装置によって電気的に制御するようにしたものである。
【0004】
上記した操舵装置は、少なくとも、ステアリングホイールを有するコラムシャフトと、操舵反力を発生可能な反力発生装置とを備えている。
【0005】
そして、操舵装置には、コラムシャフトと反力発生装置とを、直結させた直接駆動式のものと、歯車式の減速機構を介して間接的に接続した間接駆動式のものとが存在している。
【0006】
このうち、直接駆動式のものには、(操舵反力を発生させるための)必要トルクを達成するのに、反力発生装置を構成するモータが大型化してしまうという欠点があることが知られている。これに対して、間接駆動式のものは、減速機構によって、反力発生装置のモータを小さくしつつ大きなトルクを達成することができるという利点があることが知られている。
【0007】
そして、間接駆動式のものにおいては、反力発生装置が少なくとも二基設けられ、減速機構が、少なくとも、コラムシャフトに取付けられたプライマリーギヤを有し、少なくとも二基の反力発生装置が、プライマリーギヤに対して少なくとも二箇所の位置で直接又は間接的に噛合うように構成されたものが存在している。
【0008】
このような構成によれば、操舵装置を操作すると、制御装置がこれを検知して転舵装置へ制御信号を送り、転舵装置を転舵させる。同時に、転舵装置が転舵されると、制御装置がこれを検知して操舵装置の反力発生装置へ制御信号を送り、操舵装置のコラムシャフトおよびステアリングホイールに操舵反力を発生させる。この操舵反力により、機械的なステアリングシステムの場合と同様の操舵感を得ることができる。
【0009】
この際、コラムシャフトと反力発生装置とを歯車式の減速機構を介して間接的に接続させることにより、上記したように、反力発生装置のモータを小さくしつつ大きなトルクを達成することができる。
【0010】
なお、歯車式の減速機構を介して間接的に接続した間接駆動式のものにおいては、少なくとも二基の反力発生装置を、適宜使い分けたり、また、何らかの原因で一方の反力発生装置が失陥した場合に他方の反力発生装置で補完させるようにしたりすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−1483
【特許文献2】特開2006−15865
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記したステアリングシステムには、以下のような問題があった。
【0013】
即ち、コラムシャフトと反力発生装置とを歯車式の減速機構を介して間接的に接続した間接駆動式のものの場合、歯車には、通常、バックラッシュが存在するので、このバックラッシュによってガタつき感が生じ、これによって、ステアリングホイールの滑らかな操作フィーリングが阻害されるという問題があった。
【0014】
なお、バックラッシュとは、図42に示すように、歯車a,bどうしが噛み合う時に、噛合部分cに位置する歯d,eの後方など(この場合には、歯dの前方で歯eの後方となっている)にできる隙間fのことである。
【0015】
これに対し、ノーバックラッシュ型の減速機構も存在しているが、ノーバックラッシュ型の減速機構は高価であるため、コストがかかるという問題がある。
【0016】
また、少なくとも二基の反力発生装置を適宜使い分けるようにする場合には、少なくとも二基の反力発生装置に対する効率的な使い分けの仕方が難しいなどの問題があった。
【0017】
なお、上記した以外にも、本発明に至る過程で新たな問題やその他の問題などが発生することも考えられる。このような新たな問題やその他の問題などについては、この欄で記載する代りに本発明の実施例の中で説明するものとする。但し、この欄に記載する必要が生じた場合には、実施例中の当該記載をこの欄にも加えることができるものとする。また、その場合には、この欄の記載として適した表現に修正することができるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、操舵装置と転舵装置とが機械的に分離した状態で設置され、操舵装置と転舵装置とを電気的に制御可能な制御装置が設けられると共に、操舵装置が、少なくとも、ステアリングホイールを有するコラムシャフトと、操舵反力を発生可能な反力発生装置と、両者間に設けられた歯車式の減速機構とを備え、反力発生装置が少なくとも二基設けられ、減速機構が、少なくとも、コラムシャフトに取付けられたプライマリーギヤを有し、少なくとも二基の反力発生装置が、プライマリーギヤに対して少なくとも二箇所の噛合部を有するように構成されたステアリングシステムにおいて、前記制御装置が、少なくとも二基の反力発生装置に対する出力を配分可能な配分手段を備え、該配分手段が、コラムシャフトの回転域の全域に対して、少なくとも二基の反力発生装置を共同で駆動させるようにする共同駆動モードと、コラムシャフトの回転域を区分けして、少なくとも二基の反力発生装置を、区分けされた区分回転域にそれぞれ対応させて専用に駆動させるようにする専用駆動モードとの、少なくともどちらか一方となるように配分可能に構成されたことを特徴としている。
【0019】
請求項2に記載された発明は、上記において、前記制御装置が、各配分出力値を、反力発生装置とプライマリーギヤとの噛合部のバックラッシュによって発生するガタつきを防止するために設定されたガタ防止用ロジックで調整して、それぞれ大きさの異なるガタつき防止用出力値とするガタつき防止手段を備えたことを特徴としている。
【0020】
請求項3に記載された発明は、上記において、前記制御装置が、一基の反力発生装置の出力値が上限値に達して飽和した時に、不足分の出力を、他の反力発生装置の出力値に付替えて不足分付替出力値を生成する不足分付替手段を備えたことを特徴としている。
【0021】
請求項4に記載された発明は、上記において、前記ガタつき防止手段のガタ防止用ロジックが、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%になる時の、総出力値の値を、高出力側へシフトさせて、他の反力発生装置の出力値が相対的に高くなるようにすることにより、噛合部のバックラッシュによるガタつきを軽減し得るようにしたものであることを特徴としている。
【0022】
請求項5に記載された発明は、上記において、前記ガタつき防止手段のガタ防止用ロジックが、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%になる前後の部分で、当該反力発生装置の出力値の変化量を、他の部分の出力値の変化量よりも大きくして、出力値が0%になる部分を短時間で通過されるようにすることにより、噛合部のバックラッシュによるガタつきの影響を少なくし得るようにしたものであることを特徴としている。
【0023】
請求項6に記載された発明は、上記において、前記制御装置が、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%に近付いたことを判別して、直前または直後の値を当該反力発生装置の出力値として出力させる出力判別手段を備えたことを特徴としている。
【0024】
請求項7に記載された発明は、上記において、操舵反力が、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分と、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分とを有し、前記制御装置が、前記高周波反力成分を基にして、噛合部のバックラッシュによるガタつきを防止するための出力の補正値を求める補正値生成手段を備えたことを特徴としている。
【0025】
請求項8に記載された発明は、上記において、操舵反力が、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分と、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分とを有し、前記制御装置が、高周波反力成分を、正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とに分ける高周波反力成分分離手段を備えると共に、正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とを用いて、噛合部のバックラッシュによるガタつきを防止可能なガタつき防止手段を備えたことを特徴としている。
【0026】
請求項9に記載された発明は、上記において、前記ガタつき防止手段が、正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とを、各反力発生装置に対して振分ける高周波反力成分振分手段と、高周波反力成分を、最も出力値の大きい反力発生装置に対して単独で負担させる高周波反力成分集中手段とを備えると共に、各反力発生装置が拮抗状態となった時に、前記高周波反力成分振分手段を作動させ、各反力発生装置が同期状態となった時に、前記高周波反力成分集中手段を作動させる高周波反力切替手段を備えたことを特徴としている。
【0027】
なお、上記は、それぞれ、所要の作用効果を発揮するための必要最小限の構成であり、上記構成の詳細や、上記されていない構成については、それぞれ自由度を有しているのは勿論である。そして、上記構成の記載から読取ることが可能な事項については、特に具体的に記載されていない場合であっても、その範囲内に含まれるのは勿論である。また、上記以外の構成を追加した場合には、追加した構成による作用効果が加わることになるのは勿論である。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、制御装置では、配分手段が、少なくとも二基の反力発生装置のそれぞれに対する出力を配分する。この配分された出力(配分出力)に基づいて、各反力発生装置を制御する。この際、配分手段は、予め設定を行うことにより、コラムシャフトの回転域の全域に対して、少なくとも二基の反力発生装置を共同で駆動させるようにする共同駆動モードと、コラムシャフトの回転域を区分けして、少なくとも二基の反力発生装置を、区分けされた区分回転域にそれぞれ対応させて専用に駆動させるようにする専用駆動モードとの、少なくともどちらか一方となるように配分することができる。これによって、少なくとも二基の反力発生装置を、より多様に、または、より効率的に運用することが可能となる。
【0029】
請求項2の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、制御装置では、ガタつき防止手段が、配分された各出力を、反力発生装置とプライマリーギヤとの噛合部のバックラッシュによって発生するガタつきを防止するために設定されたガタ防止用ロジックで調整して、それぞれ大きさの異なるガタつき防止用出力を求め、このガタつき防止用出力に基づいて、各反力発生装置を制御する。これにより、反力発生装置とプライマリーギヤとの噛合部のバックラッシュによって発生するガタつきを、少なくとも二基の反力発生装置の出力(ガタつき防止用出力)の大きさを異ならせることにより生じる出力差によって防止することができる。
【0030】
請求項3の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、制御装置では、不足分付替手段が、一基の反力発生装置の出力値が上限値に達して飽和した時に、不足分の出力を、他の反力発生装置の出力値に付替えて不足分付替出力を生成し、この不足分付替出力に基づいて、各反力発生装置を制御する。これにより、一基の反力発生装置の出力の飽和による総操舵反力の不足を解消することができる。
【0031】
請求項4の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、ガタつき防止手段が、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%になる時の、総出力値の値を、高出力側へシフトさせて、他の反力発生装置の出力値を相対的に高くするように構成されたガタ防止用ロジックに基づいてガタつき防止用出力を生成することにより、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%となった時の、噛合部のバックラッシュによるガタつきを、他の反力発生装置の相対的に高くなった出力値によって軽減することができる。
【0032】
請求項5の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、ガタつき防止手段が、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%になる前後の部分で、当該反力発生装置の出力値の変化量を、他の部分の出力値の変化量よりも大きくして、出力値が0%になる部分を短時間で通過され得るように構成されたガタ防止用ロジックに基づいてガタつき防止用出力を生成することにより、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%となった時の、噛合部のバックラッシュによるガタつきの影響を小さくすることができる。
【0033】
請求項6の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、制御装置では、出力判別手段が、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%に近付いたことを判別して、直前または直後の値を当該反力発生装置の出力値として出力させることにより、反力発生装置の出力が0%になる時の、総出力値の値を、高出力側へとシフトさせる効果や、出力値が0%になる部分を短時間で通過させる効果などが得られるので、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%となった時の、噛合部のバックラッシュによるガタつきを軽減することができる。
【0034】
請求項7の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、操舵反力における、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分は、比較的緩やかに変化するものであり、ガタつき発生に対する影響が小さいという特徴を有している。これに対し、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分は、比較的激しく変化するものであり、ガタつき発生に対する影響が大きいという特徴を有している。そして、制御装置に備えられた補正値生成手段が、ガタつき発生に対する影響の大きい、操舵反力の高周波反力成分を基にガタつきを防止するための出力の補正値を求めるようにする。これにより、補正値を路面状況等に応じた最適なものとすると共に、補正値を逐次変更することができるようになり、以て、噛合部のバックラッシュによるガタつきを有効に防止することが可能となる。また、補正値が随時最適化されて行くことから、補正値を固定値とした場合と比べて無駄がなく、ガタつき防止に要する消費電力を削減することなども可能となる。
【0035】
請求項8の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、操舵反力における、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分は、比較的緩やかに変化するものであり、ガタつき発生に対する影響が小さいという特徴を有している。これに対し、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分は、比較的激しく変化するものであり、ガタつき発生に対する影響が大きいという特徴を有している。そして、制御装置に備えられた高周波反力成分分離手段が、高周波反力成分を、正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とに分ける。また、ガタつき防止手段が、正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とを用いて、噛合部のバックラッシュによるガタつきを防止する。これにより、ガタつき発生に対する影響の大きい、操舵反力の高周波反力成分を取出すと共に、更に、正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とに分けて制御に有効利用することができるようになり、その分、路面状況等に応じたより精度の高い制御を行うことができる。以て、噛合部のバックラッシュによるガタつきをより有効に防止することが可能となる。また、固定の補正値などを用いた場合などと比べてより無駄が少なくなるため、ガタつき防止に要する消費電力を削減することなども可能となる。
【0036】
請求項9の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、高周波反力切替手段は、各反力発生装置が拮抗状態となった時に、高周波反力成分振分手段を作動させて、正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とを、各反力発生装置に対して振分けさせる。即ち、拮抗状態では、各反力発生装置は、逆方向に駆動されているので、正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とを振分けて、各反力発生装置に主に反対向きの細かい動きをさせるようにする。これによって、バックラッシュによるガタ付きを有効に防止することができる。また、高周波反力切替手段は、各反力発生装置が同期状態となった時に、高周波反力成分集中手段を作動させて、高周波反力成分を、最も出力値の大きい反力発生装置に単独で負担させる。即ち、同期状態では、各反力発生装置は、ほぼ同程度の出力値で、同じ方向に同じ動きで駆動されるなどしているので、拮抗状態の場合と同様に、正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とを振り分けて、各反力発生装置に主に同じ向きの細かい動きをさせると、バックラッシュによるガタ付きが発生されてしまうおそれがある。このバックラッシュによるガタ付きは、特に、出力値が小さくなった時に、起こり易い。そこで、上記したように、同期状態の時には、高周波反力成分を、最も出力値の大きい反力発生装置に対して単独で負担させるようにする。これにより、バックラッシュによるガタ付きの発生を効果的に防止することできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1にかかるステアリングシステムの構成図である。
【図2】図1の制御装置の内部構成図である。
【図3】図2の操舵速度演算手段の内部構成図である。
【図4】総出力値と反力発生装置に対する制御指令との関係を示すグラフである。
【図5】図4の表データである。
【図6】拮抗状態の減速機構の様子を示す図である。
【図7】同期状態の減速機構の様子を示す図である。
【図8】目標反力と操舵反力との変化を示すグラフである。
【図9】操舵速度と操舵角度との変化を示すグラフである。
【図10】総出力値と各反力発生装置に対する制御指令との変化を示すグラフである。
【図11】実施例1の変形例にかかる操舵速度演算手段の内部構成図である。
【図12】図11の場合の総出力値と反力発生装置に対する制御指令との関係を示すグラフである。
【図13】図12の表データである。
【図14】飽和部分および付替部分を示す図13の部分データである。
【図15】実施例1の変形例にかかる総出力値と各反力発生装置に対する制御指令との変化を示すグラフである。
【図16】図15の部分拡大図である。
【図17】本発明の実施例2にかかる総出力値と反力発生装置に対する制御指令との関係を示すグラフである。
【図18】図17の表データである。
【図19】実施例2の変形例1にかかる総出力値と反力発生装置に対する制御指令との関係を示すグラフである。
【図20】図19の表データである。
【図21】実施例2の変形例2にかかる操舵速度演算手段の内部構成図である。
【図22】図21の場合の総出力値と反力発生装置に対する制御指令との関係を示すグラフである。
【図23】本発明の実施例3にかかる制御装置の内部構成図である。
【図24】図23の操舵速度演算手段の内部構成図である。
【図25】操舵反力(c)と、その低周波反力成分(a)、および、高周波反力成分(b)の一例を示すグラフである。
【図26】(a)および(b)は、図25の高周波反力成分の振動強度を示す図である。
【図27】(a)および(b)は、図26の振動強度による補正値を図17の制御を行う場合に適用した状態を示す図である。
【図28】図27の表データである。
【図29】図27における総出力値と各反力発生装置に対する制御指令との関係を示すグラフである。
【図30】操舵反力(c)と、その低周波反力成分(a)、および、高周波反力成分(b)の他の一例を示すグラフである。
【図31】図30における各反力発生装置に対する制御指令を示すグラフである。
【図32】本発明の実施例4にかかる操舵速度演算手段の内部構成図である。
【図33】操舵反力(c)と、その低周波反力成分(a)、および、高周波反力成分(b)の一例を示すグラフである。
【図34】図33の高周波反力成分を示すグラフである。
【図35】実施例4の変形例にかかる操舵速度演算手段の内部構成図である。
【図36】操舵反力の低周波反力成分(a)、および、高周波反力成分(b)の一例を示すグラフである。
【図37】図36における各反力発生装置に対する制御指令を示すグラフである。
【図38】実施例4の他の変形例にかかる操舵速度演算手段の内部構成図である。
【図39】操舵反力(c)と、その低周波反力成分(a)、および、高周波反力成分(b)の一例を示すグラフである。
【図40】(a)は低周波反力成分の配分の仕方、(b)は高周波反力成分の配分の仕方を示すグラフである。
【図41】各反力発生装置に対する制御指令の関係を示すグラフである。(a)は高周波反力切替手段を使用しない場合、(b)は高周波反力切替手段を使用した場合を示すものである。
【図42】バックラッシュの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、主に、少なくとも二基の反力発生装置をより多様に、または、より効率的に運用し得るようにすると共に、バックラッシュによる歯車のガタつきを防止し得るようにすることを目的としている。
【0039】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0040】
なお、以下の実施例は、上記した背景技術や発明が解決しようとする課題などと密接な関係があるので、必要が生じた場合には、互いに、記載を流用したり、必要な修正を伴って流用したりすることができるものとする。
【実施例1】
【0041】
図1〜図16は、この発明の実施例1およびその変形例を示すものである。
【0042】
<基本部分の構成>まず、基本部分の構成について説明する。
【0043】
図1に示すように、自動車などの車両には、ステアリングシステム1が備えられる。このステアリングシステム1を、ステアバイワイヤシステム2とする。
【0044】
このようなステアバイワイヤシステム2では、操舵装置3と転舵装置4とが、機械的に分離した状態で設けられる。そして、この操舵装置3と転舵装置4とは、制御装置5によって電気的に制御し得るように構成される。
【0045】
上記した操舵装置3には、少なくとも、一端側にステアリングホイール6を有するコラムシャフト7と、操舵反力Aを発生可能な反力発生装置8,9とが備えられている。
【0046】
そして、この操舵装置3は、コラムシャフト7と反力発生装置8,9とが、歯車式の減速機構11を介して間接的に接続された、間接駆動式のものとされている。
【0047】
そして、反力発生装置8,9は、複数基(少なくとも二基)設けられている。また、減速機構11が、少なくとも、コラムシャフト7(の他端側またはその近傍)に取付けられたプライマリーギヤ12を有している。そして、少なくとも二基の反力発生装置8,9が、プライマリーギヤ12に対して少なくとも二箇所の位置で直接又は間接的に噛合うように構成されている。
【0048】
この場合には、少なくとも二基の反力発生装置8,9が、反力発生用モータ13,14などの駆動装置とされる。そして、この反力発生用モータ13,14の出力軸には、減速機構11を構成するモータピニオンギヤ15,16がそれぞれ取付けられている。そして、このモータピニオンギヤ15,16が、セカンダリーギヤ17,18を介してそれぞれプライマリーギヤ12に間接的に噛合わされている(噛合部19,20(図1参照。以下同様))。この場合、セカンダリーギヤ17,18は、モータピニオンギヤ15,16に対して噛合う大径ギヤ部と、プライマリーギヤ12に対して噛合う小径ギヤ部とを同軸上に二段に有する二段ギヤなどとされている。また、減速機構11は、噛合部19,20を有するものであれば、ウォーム式減速機などの、上記と同等の機能を有するものに替えることができる。なお、二基の反力発生装置8,9とプライマリーギヤ12との間の減速比は、同じに設定されているものとする。
【0049】
一方、転舵装置4は、特に詳細には説明しないが、転舵モータ21によって、軸線方向22(ほぼ車幅方向)へ移動可能とされたステアリングラック23と、このステアリングラック23の両端にボールジョイント24を介して連結された一対のタイロッド25と、このタイロッド25の両端に図示しないボールジョイントを介して連結された一対の転舵輪27などとが備えられている。
【0050】
そして、制御装置5は、主にコントロール装置31によって構成されている。このコントロール装置31は、コラムシャフト7などに取付けられたトルクセンサ32からのトルク検出信号33(操舵トルク)および角度センサ34からの角度検出信号35(操舵角度)、外部の車体情報検出手段36からの車体情報37(車速や図示しないヨーレートセンサなどからの信号)、ステアリングラック23などに取付けられた転舵角センサ38からの転舵角検出信号39(転舵角度)などを入力して、最終的に反力発生装置8,9(反力発生用モータ13,14)へ出力信号または出力指令(モータ制御(駆動)指令値、または、個別モータ出力値41,42)を送って、操舵装置3に操舵反力Aを発生させるなどする操舵装置制御部を有すると共に、転舵モータ21へ制御指令44を送って、転舵装置4を転舵させるなどする転舵装置制御部を有するように構成されている。
【0051】
より具体的には、図2に示すように、制御装置5(の操舵装置制御部)は、自動車情報検出手段51(上記した車体情報検出手段36や転舵角センサ38など)からの自動車情報52(上記した車体情報37や転舵角検出信号39など)や、操舵情報検出手段53(トルクセンサ32や角度センサ34など)からの操舵情報54(トルク検出信号33(操舵トルク)や角度検出信号35(操舵角度)など)に基づいて、目標操舵反力55を演算する目標反力演算手段56を備えている。
【0052】
また、制御装置5は、操舵情報検出手段53からの操舵情報54(操舵角度など)に基づいて操舵速度57を演算する操舵速度演算手段58を備えている。これら、目標反力演算手段56と操舵速度演算手段58とによって、目標反力等生成部が構成されている。この目標反力等生成部は、要するに、自動車情報52と操舵情報54とを入力して、目標操舵反力55と操舵速度57とを出力するものである。
【0053】
そして、制御装置5は、目標反力演算手段56からの目標操舵反力55と、操舵速度演算手段58からの操舵速度57とに基づいて、上記した個別モータ出力値41,42を求める出力演算手段59とを備えている。
【0054】
更に、図3に示すように、上記した出力演算手段59は、上記した目標操舵反力55に基づいて目標モータトルク61を演算するトルク演算手段62と、目標モータトルク61に基づいて目標モータ印加電圧63を演算する印加電圧演算手段64とを備えている。
【0055】
また、出力演算手段59は、上記した操舵速度57に基づいてモータ回転速度65を演算する回転速度演算手段66と、モータ回転速度65に基づいてモータ逆起電圧67を演算する逆起電圧演算手段68とを備えている。
【0056】
更に、出力演算手段59は、印加電圧演算手段64からの目標モータ印加電圧63と、逆起電圧演算手段68からのモータ逆起電圧67とに基づいて、基本出力値71(または総出力値71)を演算する出力演算手段72とを備えている。そして、この基本出力値71に基づいて、上記した個別モータ出力値41,42が求められる。これら、トルク演算手段62と、印加電圧演算手段64と、回転速度演算手段66と、逆起電圧演算手段68と、出力演算手段72とにより、基本制御部が構成されている。この基本制御部は、要するに、目標操舵反力55と操舵速度57とを入力して、基本出力値71を出力するものである。この場合、基本出力値71は、目標操舵反力55を得るのに必要な総出力となっている。
【0057】
<基本部分の作用>次に、上記した基本部分の作用について説明する。
【0058】
主に、図1に示すように、操舵装置3を操作すると、制御装置5がこれを検知して転舵装置4へ制御指令44を送り、転舵装置4を転舵させる。
【0059】
この際、制御装置5は、コラムシャフト7などに取付けられたトルクセンサ32からのトルク検出信号33および角度センサ34からの角度検出信号35などを入力することによって操舵装置3の操作を検知する。
【0060】
そして、制御装置5は、転舵モータ21へ制御指令44を送って、ステアリングラック23を軸線方向22へ移動させることにより、ボールジョイント24、タイロッド25を介して転舵輪27を転舵させる。
【0061】
同時に、転舵装置4が転舵されると、制御装置5がこれを検知して操舵装置3の反力発生装置8,9へ個別モータ出力値41,42を送り、操舵装置3のコラムシャフト7およびステアリングホイール6に操舵反力Aを発生させる。この操舵反力Aにより、機械的なステアリングシステムの場合と同様の操舵感を得ることができる。
【0062】
この際、制御装置5は、ステアリングラック23などに取付けられた転舵角センサ38からの転舵角検出信号39などを入力することによって転舵装置4の転舵を検知する。併せて、制御装置5は、外部の車体情報検出手段36からの車体情報37(車速や図示しないヨーレートセンサなどからの信号)を入力することによって、この時の車体の状況などを判断する。
【0063】
そして、制御装置5は、操舵装置3の反力発生装置8,9(反力発生用モータ13,14)へ個別モータ出力値41,42を送り、モータピニオンギヤ15,16、セカンダリーギヤ17,18、プライマリーギヤ12を介して、操舵装置3のコラムシャフト7およびステアリングホイール6に操舵反力Aを発生させる。
【0064】
この際、コラムシャフト7と反力発生装置8,9とを、歯車式の減速機構11を介して間接的に接続させることにより、反力発生装置8,9の各反力発生用モータ13,14を小さくしつつ、全体として大きなトルクを達成することができる。
【0065】
なお、歯車式の減速機構11を介して間接的に接続した間接駆動式のものにおいては、少なくとも二基の反力発生装置8,9を、コラムシャフト7に取付けられたプライマリーギヤ12に対し少なくとも二箇所の位置で直接又は間接的に噛合わされている(噛合部19,20)。
【0066】
そして、図2に示すように、上記した制御装置5では、目標反力演算手段56が、自動車情報検出手段51からの自動車情報52(車速、路面状態(タイヤに入力される路面からの反力)、ヨーなど)と、操舵情報検出手段53からの操舵情報54(操舵角度や操舵トルクなど)とに基づいて目標操舵反力55を演算する。
【0067】
即ち、目標反力演算手段56は、車速、路面状態、操舵角度などの自動車情報52および反力発生装置8,9のイナーシャや各抵抗トルク分(摩擦)を考慮して、ステアリングホイール6にかかる目標操舵反力55を演算する。例えば、操舵角度に比例した目標操舵反力55を生成する。
【0068】
一方、操舵速度演算手段58が、操舵情報検出手段53からの操舵情報54(操舵角度など)に基づいて操舵速度57を演算する。
【0069】
そして、出力演算手段59が目標反力演算手段56からの目標操舵反力55と、操舵速度演算手段58からの操舵速度57とを入力して、最終的に上記した個別モータ出力値41,42を求めるようにする。
【0070】
即ち、図3に示すように、上記した出力演算手段59は、トルク演算手段62が、上記した目標操舵反力55に基づいて目標モータトルク61を演算する。例えば、減速機構11のギヤ比などによって決定されるモータトルクに対する反力のゲインをG1とした場合に、目標操舵反力55をゲインG1で割ることにより、目標モータトルク61を演算する(目標モータトルク61=目標操舵反力55/ゲインG1)。
【0071】
そして、印加電圧演算手段64が、目標モータトルク61に基づいて目標モータ印加電圧63を演算する。例えば、目標モータトルク61を、モータのトルク定数とモータ巻線抵抗値とで割ることにより、目標モータ印加電圧63を演算する(目標モータ印加電圧63=目標モータトルク61/(モータのトルク定数×モータ巻線抵抗値))。
【0072】
一方、回転速度演算手段66が、上記した操舵速度57に基づいてモータ回転速度65を演算する。例えば、減速機構11のギヤ比などによって決定されるモータ回転速度65に対するステアリングホイール6の操舵速度57のゲインをG2とした場合に、操舵速度57を、ゲインG2で割ることにより、モータ回転速度65を演算する(モータ回転速度65=操舵速度57/ゲインG2)。
【0073】
そして、逆起電圧演算手段68が、モータ回転速度65に基づいてモータ逆起電圧67を演算する。例えば、モータ回転速度65に逆起電圧定数(トルク定数と同じ値)を掛けることにより、逆起電圧を演算する(モータ逆起電圧67=モータ回転速度65×逆起電圧定数)。
【0074】
そして、出力演算手段72が、印加電圧演算手段64からの目標モータ印加電圧63と、逆起電圧演算手段68からのモータ逆起電圧67とに基づいて、基本出力値71を演算する。例えば、目標モータ印加電圧63にモータ逆起電圧67を加算することにより、基本出力値71を演算する(基本出力値71=目標モータ印加電圧63+モータ逆起電圧67)。
【0075】
このようにして求められた基本出力値71に基づき、最終的に上記した個別モータ出力値41,42が発生されることになる。
【0076】
<この実施例の構成>そして、上記した基本部分に対し、この実施例は、以下のような構成を備えている。
【0077】
即ち、図3に示すように、制御装置5は(出力演算手段59に)、出力演算手段72からの基本出力値71を加工または調整(修正)して、後述するような個別モータ出力値41,42を生成する出力加工調整手段73を備えるようにする。この実施例では、出力加工調整手段73は、以下のように基本出力値71を加工または調整し得るようになっている。
【0078】
(a)制御装置5(の出力加工調整手段73)は、少なくとも二基の反力発生装置8,9に対する出力などを配分可能な配分手段76を備えるようにする。そして、この配分手段76が、コラムシャフト7の回転域の全域に対して、少なくとも二基の反力発生装置8,9を共同で駆動させるようにする共同駆動モード(合力制御または合力運転)と、コラムシャフト7の回転域を区分けして、少なくとも二基の反力発生装置8,9を、区分けされた区分回転域にそれぞれ対応させて専用に駆動させるようにする専用駆動モード(単独切換制御または単独切換運転)との、少なくともどちらか一方となるように配分可能に構成されるようにする(共同駆動モードについては、図4(一点鎖線)、図5参照)。
【0079】
ここで、配分手段76は、ソフトウェア的なものとすることも、ハードウェア的なものとすることもできる。配分手段76をソフトウェア的なものとした場合には、プログラム設定によって、容易に、共同駆動モードと専用駆動モードとを選択的に切替え得るものとすることができる。また、共同駆動モードの配分を任意に変更し得るようにすることもできる。また、配分手段76をハードウェア的なものとした場合にも、上記したソフトウェア的なものと同様に構成することが考えられる。
【0080】
この場合、配分手段76は、基本出力値71を配分出力74,75に配分するものとしている。但し、配分手段76の設置位置は、これに限るものではなく、より上流側に設けることなども可能である。また、配分手段76の下流側は、基本的に複数系統化されることになる。なお、また、以下は、主に、共同駆動モードを例として説明する。
【0081】
この場合には、配分手段76は、例えば、二基の反力発生装置8,9に対し、基本出力値71を、5対5に均等配分させるものとして構成している。但し、配分手段76は、基本出力値71を均等配分するものにのみ限るものではなく、上記した共同駆動モード(合力制御または合力運転)の範囲内で後述するように不均等配分させるようにすることもできる。
【0082】
なお、上記した専用駆動モード(単独切換制御または単独切換運転)の場合、配分手段76は、コラムシャフト7の回転域を、例えば、正転域と逆転域とに分けると共に、基本出力値71を、正転域側では10対0に配分し、逆転域側では0対10に配分させるようにする。
【0083】
そして、出力加工調整手段73により、この配分出力74,75(を加工調整しない)そのもの、または、この配分出力74,75を更に加工調整したものを、個別モータ出力値41,42として出力し得るように構成する。
【0084】
(b)制御装置5(の出力加工調整手段73)は、更に、配分された各出力74,75を、反力発生装置8,9とプライマリーギヤ12との噛合部19,20のバックラッシュによって発生するガタつきを防止するために(内部に)設定されたガタ防止用ロジックで調整して、それぞれ大きさの異なるガタつき防止用出力77,78を求めるガタつき防止手段79を備えるようにする。
【0085】
なお、大きさの異なるガタつき防止用出力77,78は、共同駆動モードで合力制御(または合力運転)を行う場合には、(ガタつきより少なくするために)、それぞれの出力値が可能な限り0%にならないような配分とすることが必要である。
【0086】
即ち、例えば、上記したように、二基の反力発生装置8,9に対し、配分手段76で、基本出力値71を5対5に均等配分した各配分出力74,75などに対し、例えば、ガタつき防止手段79は、ガタ防止用ロジックとして、補正値を使用したものとすることができる。この場合には、ガタ防止用ロジックとして、予め設定された一定の補正値(例えば、±10%の出力値)を(全域に亘って)加算(または減算)するようにしたものを採用する(図4(実線)、図5参照)。
【0087】
但し、ガタつき防止手段79は、後述するようにガタ防止用ロジックを一定の補正値(固定値)とするもののみに限るものではない。また、一定の補正値は、ここでは、出力値の±10%としているが、これに限るものではない。但し、補正値を小さくし過ぎると、ガタつきを抑制しにくくなり、反対に、補正値を大きくし過ぎると、エネルギー効率が低下して消費電力が大きくなってしまうので、適正な値または範囲を選定または設定する必要がある。
【0088】
また、上記した専用駆動モード(単独切換制御または単独切換運転)の場合には、上記した一定の補正値は、例えば、基本出力値71の配分が0とされた側に、配分が10とされた側とは、正負(の符号)が逆となるように、加算(または減算)するように構成する。このように補正値を加えることにより、少なくとも二基反力発生装置8,9の間に拮抗状態が生じて、完全な専用駆動モードではなくなってしまうが、このような場合も含めて便宜的に専用駆動モードと言うものとする。
【0089】
<作用>次に、この実施例の作用について説明する。
(a)図3に示すように、制御装置5(の出力加工調整手段73)では、配分手段76が、少なくとも二基の反力発生装置8,9のそれぞれに対する出力(この場合には、配分出力74,75)を配分生成する。この配分出力74,75に基づいて、各反力発生装置8,9を制御する。この際、配分手段76は、予め行われた設定などに基づいて、コラムシャフト7の回転域の全域に対して、少なくとも二基の反力発生装置8,9を共同で駆動させるようにする共同駆動モードと、コラムシャフト7の回転域を区分けして、少なくとも二基の反力発生装置8,9を、区分けされた区分回転域にそれぞれ対応させて専用に駆動させるようにする専用駆動モードとの、少なくともどちらか一方となるように配分することができる。これによって、少なくとも二基の反力発生装置8,9を、より多様に、または、より効率的に運用することが可能となる。
【0090】
これにより、操舵装置3に必要な操舵反力Aを、少なくとも二基の反力発生装置8,9の出力(配分された各出力74,75)の合力によって発生させる共同駆動モードとすることなどが可能となる(合力制御または合力運転)。また、少なくとも二基の反力発生装置8,9を、コラムシャフト7の回転域の半域(正転域または逆転域)ずつ分担するように作動可能な専用駆動モードとすることなども可能となる(単独切換制御または単独切換運転)。例えば、一方の反力発生装置8を正転域専用(右回転または左回転)のものとし、他方の反力発生装置9を逆転域専用(左回転または右回転)のものとして、それぞれを単独で運用させるようにすることができる。これによって、少なくとも二基の反力発生装置8,9を、より多様に、または、より効率的に運用することが可能となる。なお、共同駆動モード(合力制御または合力運転)の場合には、専用駆動モード(単独切換制御または単独切換運転)の場合と比べて、反力発生装置8,9を小型化することができるという利点がある。これに対し、専用駆動モード(単独切換制御または単独切換運転)の場合には、共同駆動モード(合力制御または合力運転)の場合と比べて、反力発生装置8,9の一方が失陥した時の対処が容易であるという利点がある。
【0091】
より具体的には、共同駆動モード
の場合、配分手段76が、基本出力値71を、例えば、5対5に均等配分して、二基の反力発生装置8,9に対する配分出力74,75を生成し、これをそのまま個別モータ出力値41,42とする。これにより、配分出力74,75および個別モータ出力値41,42は、図4に一点鎖線で示すようなものとなる。その結果、反力発生装置8,9を、基本出力値71のほぼ半分の出力を有するものにまで小型化することが可能となる。なお、反力発生装置8,9が二基の場合、基本出力値71を、5対5に均等配分すると、反力発生装置8,9を最も小型化することができる。
【0092】
(b)更に、図3に示すように、制御装置5(の出力加工調整手段73)では、ガタつき防止手段79が、(配分手段76によって配分された)配分された各出力74,75を、反力発生装置8,9とプライマリーギヤ12との噛合部19,20のバックラッシュによって発生するガタつきを防止するために(内部に)設定されたガタ防止用ロジックで調整して、それぞれ大きさの異なるガタつき防止用出力77,78を求め、このガタつき防止用出力77,78を個別モータ出力値41,42とすることにより、各反力発生装置8,9を制御させるようにすることもできる。
【0093】
これにより、反力発生装置8,9とプライマリーギヤ12との噛合部19,20のバックラッシュによって発生するガタつきを、少なくとも二基の反力発生装置8,9の個別モータ出力値41,42(ガタつき防止用出力77,78)の大きさを異ならせることにより生じる出力差(差分出力B、図6、図7参照)によって防止することができる。
【0094】
より具体的には、二基の反力発生装置8,9に対し、配分手段76で、基本出力値71を5対5に均等配分した配分された各出力74,75(図4の一点鎖線)に対し、ガタ防止用ロジックとして、一定の補正値(例えば、±10%の出力値)を(全域に亘って)加算(または減算)させるようにする。これにより、ガタつき防止用出力77,78は、図4に実線で示すようなものとなる。なお、図5は、図4を数値化した表である。また、図4、図5中、モータ制御指令値は、基本出力値71に相当する。配分指令値は、配分出力74,75に相当する。各モータ駆動指令値(モータ1駆動指令値およびモータ2駆動指令値)は、個別モータ出力値41,42に相当する。上記読み替えは、以下においても同様である。
【0095】
この場合、基本出力値71が0%に近い領域(低出力領域など)では、図6、図7に減速機構11の状態として示すように、二基の反力発生装置8,9が互いに逆方向に回転されて、完全に拮抗する状態(図6)または不完全に拮抗する状態(図7)となる(拮抗領域81、図4参照)。これにより、操舵反力Aや、上記したガタつき防止のための出力差(差分出力B、逆方向のもの(仮に与圧という))などを同時に得ることが可能となる。
【0096】
また、基本出力値71が上記よりも高い領域(中出力領域および高出力領域など)では、二基の反力発生装置8,9が互いに同方向に、同じまたは互いに異なる出力で回転されて、完全または不完全な同期状態となる(同期領域83、図4参照)。これにより、操舵反力Aや、上記したガタつき防止のための出力差(差分出力B、同方向のもの(仮に補圧という))などを同時に得ることが可能となる。なお、上記した(a)では、完全な同期状態となっており、この(b)では不完全な同期状態となっている。
【0097】
そして、拮抗領域81と同期領域83との境界は、どれか一基の反力発生装置8,9の出力(個別モータ出力値41,42の値)が0%となる点(反転ポイント85,86、図4参照)となる。図4では、反転ポイント85,86は、各個別モータ出力値41,42につき1箇所発生されている。また、拮抗領域81と同期領域83とは、基本出力値71の正転域(図4の右半分)と、逆転域(図4の左半分)とで、対称に発生されるようにしている。
【0098】
これをグラフで示すと、ステアリングホイール6を、中立状態から正転させ、その後、中立状態に戻し、更に逆転させるように操作する場合、目標操舵反力55は、図8に示すようなものとなる。
【0099】
この時の操舵速度57と、操舵角度(角度検出信号35)とは、それぞれ、図9に示すようなものとなる。
【0100】
そして、基本出力値71と、各ガタつき防止用出力77,78(個別モータ出力値41,42)とは、それぞれ、図10に示すようなものとなる。
【0101】
更に、実際に得られる操舵反力A(実操舵反力)は、図8に示すようなものとなる。これにより、目標操舵反力55にほぼ近似した操舵反力Aを得ることが可能となっている。
【0102】
<変形例> 図11〜図16は上記の変形例である。
【0103】
(c)図11に示すように、制御装置5(の出力加工調整手段73)が、どれか一基の反力発生装置8,9の出力値(個別モータ出力値41,42。配分出力74,75またはガタつき防止用出力77,78であっても良い。以下同様)が上限値に達して飽和した時(飽和部分87、図12、図14(または図13)、図16(または図15)など参照)に、不足分の出力を、他の反力発生装置8,9の出力値に付替えて(この場合には、個別モータ出力値41,42となるガタつき防止用出力77,78に付替えるようにしている、付替部分88、図12、図14(または図13)、図16(または図15)など参照)不足分付替出力91,92を生成する不足分付替手段93を備えるようにしても良い。
【0104】
このような構成によれば、制御装置5(の出力加工調整手段73)では、不足分付替手段93が、一基の反力発生装置8,9の出力値(この場合には、個別モータ出力値41,42またはガタつき防止用出力77,78)が上限値に達して飽和した時に、不足分の出力を、他の反力発生装置8,9のガタつき防止用出力77,78に付替えて不足分付替出力91,92を生成し、このガタつき防止用出力77,78を個別モータ出力値41,42とすることにより、各反力発生装置8,9を制御させるようにする。
【0105】
これにより、一基の反力発生装置8,9の出力の飽和による操舵反力Aの不足を解消することができる。
【0106】
より具体的には、例えば、図12、図13の場合、図14〜図16に示すように、正転域と逆転域の両方に対し、(同期領域83の)高出力領域で、一方の反力発生装置8,9の出力(例えば、ガタつき防止用出力77,78)が上限値に達して飽和しているので(飽和部分87(図14の括弧内が本来の値))、不足分の出力を、他方の反力発生装置8,9のガタつき防止用出力77,78に付替えることで不足分付替出力91,92としている(付替部分88(図14の括弧内が本来の値))。これにより、反力発生装置8,9の出力の飽和による全体の出力不足を解消することができる。
【0107】
なお、以上が、以下の各実施例においても共通に採用することができる構成である。但し、必ず採用する必要はない。
【実施例2】
【0108】
図17〜図22は、この発明の第2の実施例(図17〜図18)、および、その変形例(図19〜図20、図21〜図22)を示すものである。
【0109】
なお、この実施例は、基本的に、上記した実施例1の全ての構成を前提とすることができる。よって、実施例1に記載された内容については、記載を省略し、以下は、主に実施例1との相違点についてのみ記載するものとする。但し、必要な場合には、実施例1の記載をこの実施例の記載として参照し、または、追加することができる。
【0110】
<構成> まず、構成について説明する。
【0111】
図17、図18に示すように、この実施例では、どれか一基の反力発生装置8,9の出力が0%となる時(反転ポイント85,86)における、反力発生装置8,9とプライマリーギヤ12との噛合部19,20のバックラッシュによって発生するガタつきを、軽減し得る構成を備えるようにする。
【0112】
なお、この実施例およびその変形例では、例えば、上記した不足分付替手段93は、特に、使用されていないが、不足分付替手段93を使用することも可能である。このことは、以下の各実施例についても同様である。
【0113】
(d)そして、図3または図11に示すような、ガタつき防止手段79の(ガタつき防止用出力77,78を生成する)ガタ防止用ロジックを、以下のようにしている。即ち、図17、図18に示すように、どれか一基の反力発生装置8,9の出力値が0%になる時の、基本出力値71の値を、高出力側へシフトさせて(シフト量95)、他の反力発生装置8,9の出力値が相対的に高くなるようにすることにより(出力増加量96)、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきを軽減し得るように構成する。
【0114】
<作用> 次にこの実施例の作用について説明する。
【0115】
(d)このような構成によれば、どれか一基の反力発生装置8,9の出力値が0%となった時の、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきを、他の反力発生装置8,9の相対的に高くなった出力値によって、軽減することができる。
【0116】
より具体的には、例えば、二基の反力発生装置8,9に対し、上記した配分手段76(図3、図11参照。以下同様)で、基本出力値71を5対5に均等配分した配分された各出力74,75(図4の一点鎖線参照。以下同様)を生成する。そして、これを基に、ガタつき防止手段79が、この実施例のガタ防止用ロジックを用いて、ガタつき防止用出力77,78(77a,78b)を生成するようにしている。
【0117】
即ち、先ず、基本出力値71が0%の時に、上記した配分された各出力74,75に一定の補正値(例えば、±10%の出力値)を加算(または減算)すると共に、基本出力値71が0%以外の時に、最大出力値へ向かって比例的に減少する補正値を加算(または減算)して、図17中、折れ線状の第一次修正出力97,98を生成する。
【0118】
更に、この折れ線状の第一次修正出力97,98のうち、反転ポイント85,86を通る側の斜線部分(一定傾斜部分)を、最大出力(各モータ駆動指令値(個別モータ出力値41,42)が±100%)となる位置を中心にその傾きを大きくして行くことによって、反転ポイント85,86を、基本出力値71の高出力側へとシフトさせて行く(シフト量95)。この際、基本出力値71の反転ポイント85,86よりも低出力側では、図17に示すように、反転ポイント85,86を越えた部分の上限(または下限)が上記した一定の補正値となるようにするために、一定の補正値の値に達したら、一定の補正値にてほぼ保たせるようにする(一定値部分)。これにより、この実施例のガタつき防止用出力77,78が求められる。
【0119】
一方、他の反力発生装置8,9の出力値については、基本出力値71との差分となるようにする(差分出力値99)。
【0120】
以上により、拮抗領域81の範囲が拡張されることになる。
【0121】
なお、反転ポイント85,86の高出力側へのシフト量95については、図4または図12の場合を基準として、それよりも高出力側になるようにする。但し、反転ポイント85,86を余り大きく高出力側へシフトさせてしまうと、拮抗領域81が広く成り過ぎて、全体のエネルギー効率が低下してしまうので、ガタつき感が少なく感じる最低限度に留めておくようにするのが好ましい。この場合には、基本出力値71が54.55%となる位置まで高出力側へシフトさせるようにしている。
【0122】
<変形例1>
図19、図20は、この実施例の変形例1を示すものである。
【0123】
(e)この変形例では、図3または図11に示すような、ガタつき防止手段79の(ガタつき防止用出力77,78を生成する)ガタ防止用ロジックを、以下のようにしている。即ち、図19、図20に示すように、どれか一基の反力発生装置8,9の出力値(個別モータ出力値41,42。以下同様)が0%になる点(反転ポイント85,86)の前後の部分で、当該反力発生装置8,9の出力値の変化量を、他の部分の出力値の変化量よりも大きくして(即ち、通常変化領域101に対し、反転ポイント85,86の前後に部分的な急変化領域102を設けて)、出力値が0%になる部分(反転ポイント85,86および急変化領域102)を短時間で通過されるようにすることにより、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきの影響を少なくし得るようなものとしている。
【0124】
このような構成によれば、短時間で通過されることによって、どれか一基の反力発生装置8,9の出力値が0%となった時の、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきの影響を少なくすることができる。
【0125】
より具体的には、例えば、二基の反力発生装置8,9に対し、配分手段76(図3、図11参照)で、基本出力値71を5対5に均等配分した配分された各出力74,75(図4の一点鎖線参照)を生成する。そして、この配分された各出力74,75を、通常変化領域101の基準とする。そして、これを基に、ガタつき防止手段79が、ガタ防止用ロジックを用いて、通常変化領域101と、急変化領域102とを含むガタつき防止用出力77,78を生成する。
【0126】
即ち、先ず、基本出力値71が0%の時に、配分された各出力74,75に一定の補正値(例えば、±10%の出力値)を加算(または減算)する。そして、この補正値を加算(または減算)した(基本出力値71が0%の)点から、傾きが一定の急変化部103を有して、反転ポイント85,86を跨ぎ、且つ、逆回転側の通常変化領域101の部分に繋げるようにすることにより、急変化領域102を設定する。この急変化部103は、可能な限り傾きを大きくするのが好ましいが、通常変化領域101よりも変化量が急になっていれば良い。
【0127】
一方、他の反力発生装置8,9の急変化領域102の出力値については、基本出力値71との差分となるようにする(差分出力値104)。
【0128】
<変形例2>
図21、図22は、この実施例の変形例2を示すものである。
【0129】
(f)この変形例2では、制御装置5(の出力加工調整手段73)が、どれか一基の反力発生装置8,9の出力値が0%に近付いたことを判別して(出力値が0%に近付いた時に)、直前または直後の値を当該反力発生装置8,9の出力値として出力させる出力判別手段105を備えるようにしている。
【0130】
例えば、出力判別手段105は、ガタつき防止手段79に対して、前後値出力指令106(フィードバック指令またはフィードフォワード指令、以下同様)を出力するように構成される。そして、ガタつき防止手段79は、前後値出力指令106により、直前または直後の値を出力することとなる。
【0131】
なお、前後値出力指令106によって、直前または直後の値が出力されている部分(前後値出力部107)の、他方の反力発生装置8,9の出力値は、基本出力値71との差分となるようにする(差分出力値108)。
【0132】
このような構成によれば、制御装置5(の出力演算手段72)では、出力判別手段105が、どれか一基の反力発生装置8,9の出力値が0%に近付いたことを判別して(出力値が0%に近付いた時に)、直前または直後の値を当該反力発生装置8,9の出力値として出力させることにより、上記と同様の、反力発生装置8,9の出力が0%になる時の基本出力値71の値を、高出力側へシフトさせる効果や、出力値が0%になる部分を短時間で通過させる効果などが得られるので、どれか一基の反力発生装置8,9の出力値が0%となった時の、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきを軽減することができる。
【0133】
このような、直前または直後の値は(前後値出力部107)、出力判別手段105が、ガタつき防止手段79に対し、前後値出力指令106を出力することによって、得ることができる。
【0134】
より具体的には、例えば、二基の反力発生装置8,9に対し、配分手段76(図3、図11参照)で、基本出力値71を5対5に均等配分して配分された各出力74,75を生成する(図4の一点鎖線参照)。
【0135】
そして、ガタつき防止手段79で、配分された各出力74,75に一定の補正値(例えば、±10%の出力値)を(全域に亘って)加算(または減算)して、ガタつき防止用出力77,78を生成する(図4の実線参照)。
【0136】
そして、このようなガタつき防止用出力77,78に対し、図22に示すように、出力判別手段105が前後値出力指令106を出力することによって前後値出力部107や、差分出力値108が得られることとなる。
【0137】
この場合には、例えば、基本出力値71が低出力側から高出力側へと向かう側では、出力判別手段105が反転ポイント85,86に近付いたことを判別すると、出力判別手段105はガタつき防止手段79へ前後値出力指令106(フィードバック指令)を出力して、ガタつき防止手段79に上記した補正値(基本出力値71が0%の時の出力値)を出力させるようにする(前後値出力部107)。
【0138】
そして、本来の反転ポイント85,86の位置で、出力判別手段105がガタつき防止手段79へ前後値出力指令106を出力するのを停止することにより、ガタつき防止用出力77,78を経過部分109を有して本来の出力値に復帰させるようにする。そして、ガタつき防止用出力77,78に復帰するまでの間の短い経過部分109で、反転ポイント85,86を跨ぐことになる。この経過部分109は、図19と同様の急変化領域102として機能することになる。
【0139】
反対に、基本出力値71が高出力側から低出力側へと向かう側では、出力判別手段105が反転ポイント85,86に近付いたことを判別すると、出力判別手段105はガタつき防止手段79へ前後値出力指令106(フィードフォワード指令)を出力して、ガタつき防止手段79に上記した補正値(基本出力値71が0%の時の出力値)を出力させるようにする。これにより、補正値となるまでの間の短い経過部分109を有して、上記した補正値になる。そして、経過部分109で、反転ポイント85,86を跨ぐことになる。この経過部分109は、図19と同様の急変化領域102として機能することになる。
【0140】
このように、この変形例では、反力発生装置8,9の出力値が0%に近付く方向によって、若干対応が違うものとなっている。
【0141】
なお、経過部分109についても、他方の反力発生装置8,9の出力値は、基本出力値71との差分となるようにする(差分出力値110)。また、前後値出力指令106を出す範囲や、出力させる値の設定の仕方によっては、前後値出力部107および差分出力値108や、経過部分109および差分出力値110は、図22とは異なるものにすることができる。
【実施例3】
【0142】
図23〜図24、図25〜図29、図30〜図31は、この発明の第3の実施例、および、その変形例(適用例)を示すものである。
【0143】
なお、この実施例は、基本的に、上記した実施例1および実施例2の全ての構成を前提とすることができる。よって、各実施例に記載された内容については、記載を省略し、以下は、主に各実施例との相違点についてのみ記載するものとする。但し、必要な場合には、上記した各実施例の記載をこの実施例の記載として参照し、または、追加することができる。
【0144】
<構成> まず、構成について説明する。
【0145】
上記した各実施例では、操舵反力を全体として(1つのものとして)取扱うように構成しているのに対し、この実施例では、例えば、図25(または、図30)に示すような、操舵反力121を、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122と、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123とに分けて取扱い得るように構成する。
【0146】
なお、操舵反力121には、上記転舵装置4で実際に発生される発生段階のものや、自動車情報検出手段51および操舵情報検出手段53などによって検出されている自動車情報52または操舵情報54などの検出段階のものや、制御装置5の内部で生成されている目標操舵反力55などの制御段階のものや、操舵装置3に付与される操舵反力Aなどの駆動段階のものなどの各種のものがあるが、そのいずれかを使用することができるものとする。
【0147】
また、路面状況等には、路面の凹凸や、タイヤの状態や、天候などによる影響などが含まれる。
【0148】
そして、図23、図24に示すような、制御装置5が、上記した高周波反力成分123を、上記した操舵装置3の制御に利用し得るように構成する。特に、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきを防止するための制御(ガタつき防止制御)に利用し得るように構成する。
【0149】
(g)この実施例では、上記した高周波反力成分123を、(出力演算手段59の)ガタつき防止用出力生成手段79で使用する補正値124を求めるのに利用するようにしている。即ち、制御装置5が、高周波反力成分123を基にして、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきを防止するための出力の補正値124を求める補正値生成手段125を備えるようにする。
【0150】
より具体的には、制御装置5に、自動車情報検出手段51からの自動車情報52を入力して、自動車情報52に応じた補正値124を求める補正値生成手段125を設けるようにする。
【0151】
ここで、自動車情報52は、目標反力演算手段56で目標操舵反力55を演算するための入力の一つであり、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123を示すものとなっている。なお、操舵情報検出手段53からの操舵情報54は、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122を示すものとなっている。即ち、低周波反力成分122と高周波反力成分123とは、それぞれ操舵情報54および自動車情報52として、ほぼ分離された状態となっている。
【0152】
そして、補正値生成手段125で求められた補正値124は、出力演算手段59のガタつき防止用出力生成手段79へ入力されて、ガタつき防止用出力生成手段79でガタ防止用ロジックを実行するのに使われるよう構成される。
【0153】
なお、上記は、制御装置5の内部に、新たに補正値生成手段125を設ける(追設する)場合であるが、以下のように変更することも可能である。
【0154】
(変形例)例えば、図24に示すように、ガタつき防止用出力生成手段79の内部に補正値生成手段125の機能を持たせるようにする。この場合には、ガタつき防止用出力生成手段79に対し、自動車情報検出手段51からの自動車情報52を、高周波反力成分123として直接入力させるように構成する。
【0155】
(他の変形例)或いは、図23に示すように、目標反力演算手段56で得られた目標操舵反力55から、周波数分離手段126を用いて、高周波反力成分123を分離し、分離した高周波反力成分123を、補正値生成手段125(または、ガタつき防止用出力生成手段79内部の補正値生成手段125)へ入力するように構成する。この場合には、同時に、上記目標操舵反力55から、周波数分離手段126を用いて、低周波反力成分122を分離し、分離された低周波反力成分122を、出力演算手段59へ入力する。
【0156】
なお、この実施例およびその変形例では、例えば、上記した不足分付替手段93は、特に、使用されていないが、不足分付替手段93を使用することも可能である。このことは、以下の各実施例についても同様である。
【0157】
<作用>このような構成によれば、操舵反力121を、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122と、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123とに分けて取扱うように構成すると共に、上記した高周波反力成分123を制御(特に、ガタつき防止制御)に利用し得るように構成することにより、一層、上記した反力発生装置8,9を効率的に運用しつつ、バックラッシュによる噛合部19,20のガタつきの少ない制御を行うことが可能となる。
【0158】
(g)ここで、操舵反力121における、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122は、比較的緩やかに変化するものであり、ガタつき発生に対する影響が小さいという特徴を有している。これに対し、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123は、比較的激しく変化するものであり、ガタつき発生に対する影響が大きいという特徴を有している。
【0159】
そして、制御装置5に備えられた補正値生成手段125が、ガタつき発生に対する影響の大きい、操舵反力121の高周波反力成分123を基にガタつきを防止するための出力の補正値124を求めるようにする。これにより、補正値124を路面状況等に応じた最適なものとすると共に、補正値124を逐次変更する(変動補正値)ことができるようになり、以て、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきを有効に防止することが可能となる。また、補正値124が随時最適化されて行くことから、補正値124を固定値とした場合と比べて無駄がなく、ガタつき防止に要する消費電力を削減することなども可能となる。
【0160】
具体的には、補正値生成手段125は、自動車情報52を入力し、自動車情報52が低周波反力成分122の一部を含んでいるような場合には、低周波反力成分122と、高周波反力成分123とに分離(周波数分離)して、高周波反力成分123のみを取出すようにする。なお、必要な場合には、補正値生成手段125は、その内部に、周波数分離手段126の機能を持たせるようにする。そして、補正値生成手段125は、例えば、高周波反力成分123の振動強度によって、補正値124を求めるようにする。
【0161】
例えば、1つの閾値と、大きさの異なる2つの補正値124(124a,124b、図26、図27、図31など参照)とを予め設定しておき、振動強度が閾値よりも小さい場合には、小さな補正値124aを出力し、振動強度が閾値よりも大きい場合には、大きな補正値124bを出力するようにする。なお、補正値124の求め方は、上記したように、補正値124を2段階に変化させるようにする場合に限るものではなく、複数の閾値と、大きさの異なる多数の補正値124とを予め設定しておいて、複数の閾値によって補正値124を多段階に変化させるようにすることや、補正値124を無段階に変化させるようにすることなどが可能である。
【0162】
なお、この補正値生成手段125が補正値124を求める処理は、常時行うようにしても良いが、例えば、予め定めたサンプリング時間ごとに行わせるようにすることもできる。
【0163】
そして、補正値生成手段125で求められた補正値124は、出力演算手段59のガタつき防止用出力生成手段79へ入力されて、ガタつき防止用出力生成手段79でガタ防止用ロジックを実行するのに使われることとなる。
【0164】
<変形例1>
例えば、上記を図17のものに適用した場合には、図25〜図29に示すようなものとなる。
【0165】
即ち、上記したコラムシャフト7を、交互に、正転および逆転するように操作した場合に、例えば、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122は、図25(a)に示すようなものとなり、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123は、図25(b)に示すようなものとなり、これらを合せた操舵反力121は、図25(c)に示すようなものとなったとする。
【0166】
そして、図25(b)に示すように、高周波反力成分123の振動強度が、交互に、小さくなったり(小強度部131)、大きくなったり(大強度部132)した場合、図23の制御装置5に設けられた補正値生成手段125は、自動車情報検出手段51からの自動車情報52を入力して、予め設定されたサンプリング時間ごとに、図26に示すように、先ず、自動車情報52を、低周波反力成分122と、高周波反力成分123とに分離(周波数分離、分離周波数133)する。なお、周波数分離を行う場合には、補正値生成手段125は、内部に周波数分離手段126などを備えるようにする。但し、自動車情報52に、実質的に影響を与えるような低周波反力成分122が含まれていないような場合には、この処理は必要ない。
【0167】
次に、補正値生成手段125は、分離した高周波反力成分123の振動強度を調べて、振動強度に応じた補正値124を求める。そして、図26(a)に示す小強度部131のように振動強度が小さい場合には、補正値124が小さくなるようにする(小さな補正値124a、図27(a)など参照)。反対に、図26(b)に示すように振動強度が大きい場合(大強度部132)には、補正値124が大きくなるようにする(大きな補正値124b、図27(b)など参照)。
【0168】
そして、小強度部131では、図27(a)のグラフ、図28(a)の表に示すように、補正値124が小さくなるようにする(小さな補正値124a、例えば、10%など)。反対に、大強度部132では、図27(b)、図28(b)に示すように、補正値124が大きくなるようにする(大きな補正値124b、例えば、30%など)。
【0169】
その結果、基本出力値71と、各ガタつき防止用出力77,78(個別モータ出力値41,42)とは、それぞれ、図29に示すようなものとなる。
【0170】
<変形例2>
或いは、上記を、コラムシャフト7の回転域を区分けして、少なくとも二基の反力発生装置8,9を、区分けされた区分回転域にそれぞれ対応させて専用に駆動させるようにする専用駆動モードとした場合には、図30、図31(および、図26など)に示すようなものとなる。なお、この場合、コラムシャフト7の回転域を正転域と逆転域とに区分けし、少なくとも二基の反力発生装置8,9を、基本制御について正転専用および逆転専用となるようにしている。
【0171】
即ち、上記したコラムシャフト7を、交互に、正転および逆転するように操作した場合に、例えば、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122は、例えば、図30(a)に示すようなものとなり、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123は、図30(b)に示すようなものとなり、これらを合せた操舵反力121は、図30(c)に示すようなものとなったとする。
【0172】
そして、図30(b)に示すように、高周波反力成分123の振動強度が、交互に、大きくなったり(大強度部132)、小さくなったり(小強度部131)した場合、制御装置5に設けられた補正値生成手段125(図23,図24参照)は、自動車情報検出手段51からの自動車情報52を入力して、予め設定されたサンプリング時間ごとに、図26に示すように、先ず、自動車情報52を低周波反力成分122と、高周波反力成分123とに分離(周波数分離、分離周波数133)する。なお、周波数分離を行う場合には、補正値生成手段125は、内部に周波数分離手段126などを備えるようにする。但し、自動車情報52に、実質的に影響を与えるような低周波反力成分122が含まれていないような場合には、この処理は必要ない。
【0173】
次に、補正値生成手段125は、分離した高周波反力成分123の振動強度を調べて、振動強度に応じた補正値124を求める。そして、図26(b)のように振動強度が大きい場合(大強度部132)には、補正値124が大きくなるようにする(大きな補正値124b、図31参照)。反対に、図26(a)のように振動強度が小さい場合(小強度部131)には、補正値124が小さくなるようにする(小さな補正値124a、図31参照)。
【0174】
そして、図31に示すように、大強度部132では、補正値124が大きくなるようにする(大きな補正値124b、例えば、30%など)。反対に、小強度部131では、補正値124が小さくなるようにする(小さな補正値124a、例えば、10%など)。
【0175】
その結果、各ガタつき防止用出力77,78(個別モータ出力値41,42)とは、それぞれ、図31に示すようなものとなる。
【実施例4】
【0176】
図32〜図34、図35〜図37は、この発明の第4の実施例、および、その変形例を示すものである。
【0177】
なお、この実施例は、基本的に、上記した実施例1乃至実施例3の全ての構成を前提とすることができる。よって、各実施例に記載された内容については、記載を省略し、以下は、主に各実施例との相違点についてのみ記載するものとする。但し、必要な場合には、上記した各実施例の記載をこの実施例の記載として参照し、または、追加することができる。
【0178】
<構成> まず、構成について説明する。
【0179】
上記した実施例1、実施例2では、操舵反力121を全体として1つのものとして取扱うように構成しているのに対し、この実施例では、上記した実施例3と同様に、例えば、図33に示すような、操舵反力121を、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122と、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123とに分けて取扱い得るように構成する。
【0180】
なお、操舵反力121には、上記転舵装置4で実際に発生される発生段階のものや、自動車情報検出手段51および操舵情報検出手段53などによって検出されている自動車情報52または操舵情報54などの検出段階のものや、制御装置5の内部で生成されている目標操舵反力55などの制御段階のものや、操舵装置3に付与される操舵反力Aなどの駆動段階のものなどの各種のものがあるが、そのいずれかを使用することができるものとする。ここでは、操舵反力121として、目標操舵反力55を用いるようにしている。
【0181】
また、路面状況等には、路面の凹凸や、タイヤの状態や、天候などによる影響などが含まれる。
【0182】
(h)そして、図32に示すような、制御装置5が、上記した高周波反力成分123を、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とに分ける高周波反力成分分離手段140(周波数分離手段143,144)を備えるようにする。そして、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを用いて、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきを防止可能なガタつき防止手段145を備えるようにする。
【0183】
より具体的には、制御装置5(の出力演算手段59)に、目標反力演算手段56からの目標操舵反力55を入力して、目標操舵反力55を、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122と、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123とに分ける周波数分離手段126を設けるようにする。
【0184】
そして、周波数分離手段126で分離された低周波反力成分122については、トルク演算手段62へ入力することにより、上記した各実施例と同様にして、少なくとも二基の反力発生装置8,9に対する個別モータ出力値41,42を求め得るように構成する。
【0185】
一方、周波数分離手段126で分離された高周波反力成分123については、更に、高周波反力成分分離手段140にて、内部に設けられたフィルタなどの周波数分離手段143,144によって、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とに分け得るように構成する(図34参照)。
【0186】
そして、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とをガタつき防止手段145へ入力して、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきを防止し得るようにする。この場合、ガタつき防止手段145は、上記したガタ防止用ロジックを備えたガタつき防止手段79を利用すると共に、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを、ガタつき防止手段79の補正値として利用し得るようにしている。但し、ガタつき防止手段145は、ガタつき防止手段79とは別に設けるようにしても良い。また、ガタつき防止手段145を設けた場合には、ガタつき防止手段79は設けないようにしても良い。
【0187】
これに対し、特に図示しないが、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを、それぞれトルク演算手段62と同様の図示しないトルク演算手段や、印加電圧演算手段64と同様の図示しない印加電圧演算手段に通すことにより、ガタ付き防止用の補助出力値として、直接、個別モータ出力値41,42に加算し得るように構成することなども可能である。
【0188】
なお、この実施例およびその変形例では、例えば、上記した不足分付替手段93は、特に、使用されていないが、不足分付替手段93を使用することも可能である。このことは、特に記載していなくても、以下に実施例や変形例などがある場合には、同様である。
【0189】
<作用>このような構成によれば、操舵反力121を、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122と、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123とに分けて取扱うように構成すると共に、上記した高周波反力成分123を制御に利用し得るように構成することにより、一層、上記した反力発生装置8,9を効率的に運用しつつ、バックラッシュによる噛合部19,20のガタつきの少ない制御を行うことが可能となる。
【0190】
(h)ここで、操舵反力121における、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122は、比較的緩やかに変化するものであり、ガタつき発生に対する影響が小さいという特徴を有している。これに対し、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123は、比較的激しく変化するものであり、ガタつき発生に対する影響が大きいという特徴を有している。
【0191】
そして、制御装置5に備えられた高周波反力成分分離手段140(周波数分離手段143,144)が、高周波反力成分123を、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とに分ける。また、ガタつき防止手段145が、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを用いて、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきを防止する。これにより、ガタつき発生に対する影響の大きい、操舵反力121の高周波反力成分123を取出すと共に、更に、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とに分けて制御に有効利用することができるようになり、その分、路面状況等に応じたより精度の高い制御を行うことができる。以て、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきをより有効に防止することが可能となる。また、固定の補正値などを用いた場合などと比べてより無駄が少ないため、ガタつき防止に要する消費電力を削減することなども可能となる。
【0192】
より具体的には、制御装置5(の出力演算手段59)は、周波数分離手段126が、目標反力演算手段56からの目標操舵反力55を入力して、目標操舵反力55を、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122と、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123とに分ける。
【0193】
そして、周波数分離手段126で分離された低周波反力成分122は、トルク演算手段62へ入力されることにより、上記した各実施例と同様にして、少なくとも二基の反力発生装置8,9に対する個別モータ出力値41,42を求めるのに使用される(基本制御)。
【0194】
一方、周波数分離手段126で分離された高周波反力成分123は、更に、高周波反力成分分離手段140で、フィルタなどの周波数分離手段143,144によって、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とに分けられる(図34参照)。
【0195】
そして、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とは、ガタつき防止手段145へ入力されて、噛合部19,20のバックラッシュによるガタつきを防止するのに利用される。この場合、ガタつき防止手段145は、上記したガタつき防止手段79とされると共に、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とは、ガタつき防止手段79にて、各ガタつき防止用出力77,78(個別モータ出力値41,42)に対する補正値としてそれぞれ利用される(ガタつき防止用制御)。但し、ガタつき防止手段145は、ガタつき防止手段79とは別に設けるようにしても良い。また、ガタつき防止手段145を設けた場合には、ガタつき防止手段79は設けないようにしても良い。
【0196】
これに対し、特に図示しないが、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを、それぞれトルク演算手段62と同様の図示しないトルク演算手段や、印加電圧演算手段64と同様の図示しない印加電圧演算手段に通すことにより、ガタ付き防止用の補助出力値にして、個別モータ出力値41,42に直接加算するようにしても良い。この場合には、個別モータ出力値41,42と補助出力値とを加算可能な加算器を設けて、この加算器をガタつき防止手段145とすることになる。
【0197】
そして、上記したコラムシャフト7を、交互に、正転および逆転するように操作した場合、例えば、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122は、図33(a)に示すようなものとなり、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123は、図33(b)に示すようなものとなり、これらを合せた操舵反力121は、図33(c)に示すようなものとなったとする。
【0198】
この場合、仮に、低周波反力成分122と高周波反力成分123とを合せた操舵反力121を基にして、上記した基本制御を、コラムシャフト7の回転域の全域に対して、少なくとも二基の反力発生装置8,9を共同で駆動させるようにする共同駆動モードで、個別モータ出力値41,42が均等配分されるように行った場合、例えば、高周波反力成分123の正転域側のピーク値も逆転域側のピーク値も半減されてしまうことになる。これに対し、この実施例にように、高周波反力成分123を取り出すと共に、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とに分けて、これらから各個別モータ出力値41,42に対する補正値を作ったり、補助出力値を求めて各個別モータ出力値41,42のそれぞれに対して加算したりすることにより、上記した高周波反力成分123の正転域側のピーク値や逆転域側のピーク値を、半減させることなくそのまま活かして利用することができる。よって、上記したように、より高いガタつき防止効果を得ることができる。以て、ガタつき防止手段79における、上記各実施例に記載したような補正値は、なくしたり、小さくしたりすることが期待できると共に、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを、個別モータ出力値41,42に対するガタ付き防止用の補助出力値とした場合には、上記各実施例に記載したようなガタつき防止手段79をなくすことも期待できるようになる。
【0199】
<変形例1>
また、上記の変形例として、図35〜図37に示すような構成とすることも考えられる。即ち、図32の制御装置5(の出力演算手段59)において、図35に示すように、配分手段76を、トルク演算手段62の前段に設けると共に、トルク演算手段62以降を複数系統化する(この場合には2系統化されている)。これにより、配分手段76は、低周波反力成分122を配分することになる。
【0200】
そして、配分手段76と、トルク演算手段62との間に、(正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを用いる)ガタつき防止手段145を介在させるようにする。そして、高周波反力成分分離手段140の周波数分離手段143,144によって分離された、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを、ガタつき防止手段145に入力させるようにする。
【0201】
ここで、配分手段76は、コラムシャフト7の回転域の全域に対して、少なくとも二基の反力発生装置8,9を共同で駆動させるようにする共同駆動モードと、コラムシャフト7の回転域を区分けして、少なくとも二基の反力発生装置8,9を、区分けされた区分回転域にそれぞれ対応させて専用に駆動させるようにする専用駆動モードとの、少なくともどちらか一方となるように配分可能に構成されたものとする。
【0202】
ここでは、専用駆動モードを行うものとし、配分手段76は、低周波反力成分122を、出力0を切片として、正転域側低周波反力成分151と、逆転域側低周波反力成分152とに配分するフィルタなどの周波数分離手段153,154の機能を有するもの(低周波分離手段)としている。そして、ガタつき防止手段145は、それぞれ、正転域側低周波反力成分151と正転域側高周波反力成分141とを加算すると共に、逆転域側低周波反力成分152と逆転域側高周波反力成分142とを加算する加算器155,156の機能を有するものなどとしている。即ち、ガタつき防止手段145は、少なくとも二基の反力発生装置8,9に対して、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを振分ける高周波反力成分振分手段158とされている。
【0203】
そして、上記したコラムシャフト7を、交互に、正転および逆転するように操作した場合、例えば、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122は、図36(a)に示すようなものとなり、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123は、図36(b)に示すようなものとなったとする。
【0204】
この場合に、低周波反力成分122と高周波反力成分123とを合せた操舵反力121(目標操舵反力55)を基にして、上記した基本制御を、少なくとも二基の反力発生装置8,9を、単に、コラムシャフト7の正転域と、逆転域とに区分けしてそれぞれ専用に駆動させる、専用駆動モードで、ガタつき防止手段79により単純に一定の補正値を加算して全域が拮抗領域81となるようにして、制御を行った場合、図37(b)に示すように、高周波反力成分123に、比較的強度の大きな振動部分157が生じた場合に、この振動部分157を反力発生装置8,9のうちの一方のみで振動部分157を再現することになるため、反力発生装置8,9の他方の側の噛合部19,20にギヤ離れが生じ、バックラッシュによるガタつきが発生するおそれがある。
【0205】
これに対し、この実施例のように、周波数分離手段126で低周波反力成分122と高周波反力成分123とを分離すると共に、高周波反力成分分離手段140で高周波反力成分123を正転域側高周波反力成分141と逆転域側高周波反力成分142とに分離して、それぞれを、配分手段76(低周波分離手段)で分離された正転域側低周波反力成分151と逆転域側低周波反力成分152とに加算するようにして、上記とほぼ同様の専用駆動モード(で、ガタつき防止手段79により単純に一定の補正値を加算して全域が拮抗領域81となるようにして、)制御を行った場合、図37(b)に示すように、高周波反力成分123に、比較的強度の大きな振動部分157が生じた場合でも、両方の反力発生装置8,9で振動部分157を再現することになるため、反力発生装置8,9の噛合部19,20にギヤ離れが生じ難くなり、バックラッシュによるガタつきの発生を抑えることができるようになる。
【0206】
<変形例2>
また、上記の変形例として、図38〜図41に示すような構成とすることも考えられる。即ち、図35の制御装置5(の出力演算手段59)において、図38に示すように、トルク演算手段62の前段に設けられた配分手段76を、コラムシャフト7の回転域の全域に対して、少なくとも二基の反力発生装置8,9を共同で駆動させる共同駆動モードとなるように配分可能なものとすることができる。
【0207】
ここでは、共同駆動モードを行わせるために、配分手段76を、低周波反力成分122の信号レベルを反力発生装置8,9の個数(n)に応じて減衰(1/n)可能な信号減衰器161とする。そして、この信号減衰器161で減衰された減衰値162を、反力発生装置8,9の個数に応じて複数系統化されたトルク演算手段62以下にそれぞれ入力し得るようにする(この場合には、反力発生装置8,9が二基とされているので、低周波反力成分122は、信号減衰器161(この場合には、信号半減器とされている)で半分に減衰されて、トルク演算手段62以下が2系統化されている)。
【0208】
そして、配分手段76と、トルク演算手段62との間に、上記した(ガタ防止ロジックを用いた)ガタつき防止手段79と、(正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを用いた)ガタつき防止手段145とを、それぞれ介在させるようにする。この場合、ガタつき防止手段79は、上記した各減衰値162に対し、全域に亘って一定の補正値を加算または減算し、減衰補正値163,164とするものなどとする(図40(a)参照)。なお、ガタつき防止手段79は、最も下流側にも設けられているが、これについては省略しても良い。
【0209】
また、ガタつき防止手段145は、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを、各反力発生装置8,9に対して振分ける高周波反力成分振分手段158を有するものとする。
【0210】
即ち、高周波反力成分分離手段140の周波数分離手段143,144によって分離された、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを、ガタつき防止手段145に入力させるように構成する。そして、ガタつき防止手段145の高周波反力成分振分手段158は、それぞれ、減衰補正値163と正転域側高周波反力成分141とを加算すると共に、減衰補正値164と逆転域側高周波反力成分142とを加算する加算器155,156の機能を有するものなどとしている(図41(a)参照)。
【0211】
ここまでの構成により、図32のものとほぼ等しい、共同駆動モードの機能を有するものとなる。
【0212】
(i)更に、この変形例では、上記に加えて、ガタつき防止手段145が、高周波反力成分123を、最も出力値の大きい反力発生装置に対して単独で負担させる高周波反力成分集中手段166を備えるようにする。
【0213】
また、上記した共同駆動モードで、各反力発生装置8,9が拮抗状態となった時には、上記した高周波反力成分振分手段158を作動させ、各反力発生装置8,9が同期状態となった時には、上記した高周波反力成分集中手段166を作動させる高周波反力切替手段167を備えるようにする。
【0214】
そして、より具体的に、上記したコラムシャフト7を、間に中立保持状態を介在させつつ交互に、正転および逆転するように操作した場合、例えば、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分122は、図39(a)に示すようなものとなり、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分123は、図39(b)に示すようなものとなり、低周波反力成分122と高周波反力成分123とを合せた操舵反力121(目標操舵反力55)は、図39(c)に示すようなものとなったとする。
【0215】
この場合に、この変形例では、まず、周波数分離手段126によって低周波反力成分122と高周波反力成分123とが分離される。
【0216】
そして、このうちの低周波反力成分122は、配分手段76により、各反力発生装置8,9に対して配分される。この場合、配分手段76を、信号減衰器161として、この信号減衰器161により、低周波反力成分122の信号レベルを反力発生装置8,9の個数(n)に応じて減衰(1/n)することにより、減衰値162を得るようにしている。より具体的には、反力発生装置8,9が二基となっているため、信号減衰器161を信号半減器として、低周波反力成分122を、半分に減衰している。更に、上記した各減衰値162に対し、ガタつき防止手段79は、全域に亘って一定の補正値を加算または減算し、減衰補正値163,164とする。これにより、各反力発生装置8,9は、共同駆動モードとなる(図40(a)参照)。
【0217】
一方、高周波反力成分123は、高周波反力切替手段167によって、各反力発生装置8,9が拮抗状態となった時には、高周波反力成分振分手段158が作動され、各反力発生装置8,9が同期状態となった時には、高周波反力成分集中手段166が作動されるように切替えられる。
【0218】
即ち、まず、拮抗状態(拮抗領域81、図40(a)(b)、図41(b)参照)では、高周波反力成分123は、高周波反力切替手段167によって、高周波反力成分分離手段140へ送られる。そして、高周波反力成分分離手段140は、高周波反力成分123を正転域側高周波反力成分141と逆転域側高周波反力成分142とに分離する。こうして分離された正転域側高周波反力成分141と逆転域側高周波反力成分142とは、高周波反力成分振分手段158で、上記した減衰補正値163,164のそれぞれに対して加算される(振り分けられる)ことになる。
【0219】
次に、同期状態(同期領域83、図40、図41(b)参照)では、高周波反力成分123は、そのまま高周波反力成分集中手段166へ送られて、最も出力値の大きい反力発生装置8,9の減衰補正値163,164に加算されることになる。
【0220】
以上をまとめると、この実施例(変形例)によれば、高周波反力切替手段167は、上記したように、各反力発生装置8,9が拮抗状態となった時に、高周波反力成分振分手段158を作動させて、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを、各反力発生装置8,9に対して振分けさせるようにしている。
【0221】
即ち、拮抗状態では、各反力発生装置8,9は、逆方向に駆動されているので、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを振分けて、各反力発生装置8,9に主に反対向きの細かい動きをさせるようにする。これによって、バックラッシュによるガタ付きを有効に防止することができる。
【0222】
また、高周波反力切替手段167は、上記したように、各反力発生装置8,9が同期状態となった時に、高周波反力成分集中手段166を作動させて、高周波反力成分123を、最も出力値の大きい反力発生装置8,9に単独で負担させるようにしている。
【0223】
即ち、同期状態では、各反力発生装置8,9は、ほぼ同程度の出力値(或いは、補正値分程度の出力差)で、同じ方向に同じ動きで駆動されるなどしているので、拮抗状態の場合と同様に、正転域側高周波反力成分141と、逆転域側高周波反力成分142とを振り分けて、各反力発生装置8,9に主に同じ向きの細かい動きをさせると、バックラッシュによるガタ付きが発生されてしまうおそれがある。このバックラッシュによるガタ付きは、特に、出力値が小さくなった時に、起こり易い(図41(a)の低出力領域168参照)。そこで、上記したように、同期状態の時には、高周波反力成分を、最も出力値の大きい反力発生装置8,9に対して単独で負担させるようにする。これにより、バックラッシュによるガタ付きの発生を効果的に防止することができる。
【0224】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【産業上の利用可能性】
【0225】
少なくとも二基の反力発生装置をより多様に、または、より効率的に運用することができるようになると共に、バックラッシュによる歯車のガタつきを防止することができるようになる。
【符号の説明】
【0226】
1 ステアリングシステム
3 操舵装置
4 転舵装置
5 制御装置
6 ステアリングホイール
7 コラムシャフト
8 反力発生装置
9 反力発生装置
11 減速機構
12 プライマリーギヤ
19 噛合部
20 噛合部
55 目標反力
71 基本出力値(総出力値)
74 配分出力
75 配分出力
76 配分手段
77 ガタつき防止用出力
78 ガタつき防止用出力
79 ガタつき防止手段
91 不足分付替出力
92 不足分付替出力
93 不足分付替手段
105 出力判別手段
121 操舵反力
122 低周波反力成分
123 高周波反力成分
124 補正値
125 補正値生成手段
126 周波数分離手段
140 高周波反力成分分離手段
141 正転域側高周波反力成分
142 逆転域側高周波反力成分
143 周波数分離手段
144 周波数分離手段
145 ガタつき防止手段
158 高周波反力成分振分手段
161 信号減衰器
162 減衰値
163 減衰補正値
164 減衰補正値
166 高周波反力成分集中手段
A 操舵反力



【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵装置と転舵装置とが機械的に分離した状態で設置され、操舵装置と転舵装置とを電気的に制御可能な制御装置が設けられると共に、
操舵装置が、少なくとも、ステアリングホイールを有するコラムシャフトと、操舵反力を発生可能な反力発生装置と、両者間に設けられた歯車式の減速機構とを備え、
反力発生装置が少なくとも二基設けられ、
減速機構が、少なくとも、コラムシャフトに取付けられたプライマリーギヤを有し、
少なくとも二基の反力発生装置が、プライマリーギヤに対して少なくとも二箇所の噛合部を有するように構成されたステアリングシステムにおいて、
前記制御装置が、少なくとも二基の反力発生装置に対する出力を配分可能な配分手段を備え、
該配分手段が、
コラムシャフトの回転域の全域に対して、少なくとも二基の反力発生装置を共同で駆動させる共同駆動モードと、
コラムシャフトの回転域を区分けして、少なくとも二基の反力発生装置を、区分けされた区分回転域に対応させてそれぞれ専用に駆動させる専用駆動モードとの、
少なくともどちらか一方となるように配分可能に構成されたことを特徴とするステアリングシステム。
【請求項2】
前記制御装置が、各配分出力値を、反力発生装置とプライマリーギヤとの噛合部のバックラッシュによって発生するガタつきを防止するために設定されたガタ防止用ロジックで調整して、それぞれ大きさの異なるガタつき防止用配分出力値とするガタつき防止手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のステアリングシステム。
【請求項3】
前記制御装置が、一基の反力発生装置の出力値が上限値に達して飽和した時に、不足分の出力を、他の反力発生装置の出力値に付替えて不足分付替型配分出力値を生成する不足分付替手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のステアリングシステム。
【請求項4】
前記ガタつき防止手段のガタ防止用ロジックが、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%になる時の、総出力値の値を、高出力側へシフトさせて、他の反力発生装置の出力値が相対的に高くなるようにすることにより、噛合部のバックラッシュによるガタつきを軽減し得るようにしたものであることを特徴とする請求項2または3記載のステアリングシステム。
【請求項5】
前記ガタつき防止手段のガタ防止用ロジックが、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%になる前後の部分で、当該反力発生装置の出力値の変化量を、他の部分の出力値の変化量よりも大きくして、出力値が0%になる部分を短時間で通過されるようにすることにより、噛合部のバックラッシュによるガタつきの影響を少なくし得るようにしたものであることを特徴とする請求項2または3記載のステアリングシステム。
【請求項6】
前記制御装置が、どれか一基の反力発生装置の出力値が0%に近付いたことを判別して、直前または直後の値を当該反力発生装置の出力値として出力させる出力判別手段を備えたことを特徴とする請求項2または3記載のステアリングシステム。
【請求項7】
操舵反力が、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分と、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分とを有し、
前記制御装置が、前記高周波反力成分を基にして、噛合部のバックラッシュによるガタつきを防止するための補正値を求める補正値生成手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のステアリングシステム。
【請求項8】
操舵反力が、主に走行ルートを要因とする低周波反力成分と、主に路面状況等を要因とする高周波反力成分とを有し、
前記制御装置が、高周波反力成分を、正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とに分ける周波数分離手段を備えると共に、
正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とを用いて、噛合部のバックラッシュによるガタつきを防止可能なガタつき防止手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のステアリングシステム。
【請求項9】
前記ガタつき防止手段が、
正転域側高周波反力成分と、逆転域側高周波反力成分とを、各反力発生装置に対して振分ける高周波反力成分振分手段と、
高周波反力成分を、最も出力値の大きい反力発生装置に対して単独で負担させる高周波反力成分集中手段とを備えると共に、
各反力発生装置が拮抗状態となった時に、前記高周波反力成分振分手段を作動させ、各反力発生装置が同期状態となった時に、前記高周波反力成分集中手段を作動させる高周波反力切替手段を備えたことを特徴とする請求項8記載のステアリングシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2010−159040(P2010−159040A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59171(P2009−59171)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】