説明

配線基板およびその製造方法ならびに半導体装置

【課題】平坦性によるインピーダンス整合及び設計自由度が高く、高密度実装が可能な多層配線基板及びその製造方法並びに半導体装置を提供する。
【解決手段】多層配線基板10は、基板11の上部に絶縁層12を備え、これと対称に基板11の下部に絶縁層13を備える。これらの絶縁層は、ポリイミド樹脂により形成されており、基板11に対してキャスティングによりビルドアップして形成される。ビルドアップされた絶縁層12,13のいずれか又は両方が、基板の流れ方向であるMD方向と、基板の垂直方向であるTD方向とにおいて強度を同じに設定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板およびその製造方法ならびに半導体装置に関し、特に配線基板の構造に特化した技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高密度化に伴い、複数枚の半導体チップを積層して3次元実装構造を実現した高密度の半導体装置(半導体パッケージ)が開発されている。このような半導体装置は、例えば、板状又はフィルム状の基板の表面に、集積回路、抵抗器、コンデンサー等の多数の電子部品を固定し、その部品間を配線で接続することで電子回路を構成するものである。
【0003】
このような半導体装置を形成する多層配線基板として、層毎に積層、穴あけ加工、回路形成などを繰り返す工法にて作製されたビルドアップ基板が普及している。ビルドアップ基板における回路形成過程では、絶縁層を、フィルム状の樹脂でラミネートして形成しているものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−34247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年益々薄型化が進む多層配線基板においては、電子部品を実装する際の取扱い上、基板の剛性を維持することが課題となっており、上記文献における多層配線基板においても、高剛性で取扱いの容易さを狙っている。しかしながら、上記の従来技術では、基板の絶縁層にフィルム状の樹脂をラミネートする際に配向が生じ、配線基板に反りが起きる原因となっていた。
【0006】
本発明は、以上のような従来技術の課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、平坦性によるインピーダンス整合及び設計自由度が高く、高密度実装が可能な多層配線基板及びその製造方法並びに半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、ベースとなる樹脂製の基板と、前記基板上に形成された配線パターンと、前記配線パターンを被覆しつつ、前記基板の両面に対称にビルドアップして形成した絶縁層と、を有し、前記絶縁層は、MD方向及びTD方向において強度が同じであることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1の多層配線基板の製造方法であって、樹脂製の基板の所定位置に第1の貫通孔を形成する工程と、前記基板の上面及び下面に第1の金属下地層を形成する工程と、前記第1の金属下地層の所定位置に銅を主成分とする第1の金属層を形成するとともに、前記第1の貫通孔に銅を主成分とする第2の金属層を充填する工程と、前記第1の金属層から露出している前記第1の金属下地層を除去し、前記第1及び第2の金属層から構成される配線パターンの一部を形成する工程と、前記基板の上面側及び下面側であって、前記一部の配線パターン上に、ポリイミド樹脂よりなる絶縁層をキャスティングにより形成し、前記第1の金属層を被覆する工程と、前記絶縁層の所定位置に前記配線パターンの一部が露出するまで第2の貫通孔を形成する工程と、前記第2の貫通孔に第2の金属下地層を形成するとともに、前記絶縁層に第3の金属下地層を形成する工程と、前記第2の金属下地層を形成した前記第2貫通孔に、銅を主成分とする第3の金属層を充填するとともに、前記第3の金属下地層に第4の金属層を形成する工程と、前記第4の金属層より露出している前記第3の金属下地層を除去する工程と、前記第2及び第3の金属層から構成される配線パターンの残り部分を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
以上の態様では、絶縁層において、基板の流れ方向であるMD方向(Machine Direction)と、基板の垂直方向であるTD方向(Transverse Direction)とを、同じ強度に設定した。これにより、基板に絶縁層をビルドアップしても反りの少ない平坦性ある多層配線基板を提供することができる。また、基板の上面と下面において上下対称構造とすることで基板の反りがなく、同時に低熱膨張を実現可能であり、大きなサイズの基板であっても、実装ずれが生じることがない。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記絶縁層は、キャスティングにより形成したことを特徴とする。
【0011】
以上の態様では、絶縁層をビルドアップするに当たって、キャスティング(溶液流延法(solution casting))により行うことで、フィルムに物理的な圧力を加えないため高分子の配向が起こらず、強度や光学特性などに方向性が生じない。また、フィルムとして市販されている絶縁層は、規格品で、厚さが決まっているが、上記態様のとおり、絶縁層をキャスティングすることで、任意の厚みを形成でき、また例えば傾斜構造も作製可能である。そのため、不要な絶縁層厚さによる製品の肥大化も防止できる。また、信号の遅延を考慮した厚さを任意に設定することや、絶縁層として回路密度や目的にあったCTE(線膨張係数)の材料を用いることができ、設計の自由度が高まる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記基板及び前記絶縁層のいずれか又はすべてが、ポリイミド樹脂によりなることを特徴とする。
【0013】
基板を含む、絶縁層のいずれか又はすべてをポリイミド樹脂にて形成することで、良好な耐熱性と低誘電率、低線膨張係数からなる多層配線基板を提供することができる。また、ポリイミド樹脂を用いて、エポキシ系絶縁材料及びソルダーレジストを使用しないことで、良好な耐熱性、低誘電率及び低線膨張率を実現することが可能となり、大きな基板でも、実装ずれがない。このようなポリイミド樹脂により作製した多層配線基板は、剛性が高く、従来のガラスエポキシ基板と同様の扱いが可能で、キャリア不要なフレキシブル基板となる。そのため、従来の搬送設備にて対応が可能で、リフロー方式にも対応することができる。さらに、エポキシ系絶縁材料に比較して、安価な多層配線基板を作製することができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層配線基板を備えた半導体装置であって、半導体チップ積層体と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層配線基板と、前記多層配線基板と半導体チップ積層体と、から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、平坦性によるインピーダンス整合及び設計自由度が高く、高密度実装が可能な多層配線基板及びその製造方法並びに半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る多層配線基板の構成を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す図面である。
【図4】第1の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す図面であって、図3の後続工程を示す図面である。
【図5】第2の実施形態に係る多層配線基板の構成を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す図面である。
【図7】第2の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す図面であって、図6の後続工程を示す図面である。
【図8】第3の実施形態に係る多層配線基板の構成を示す断面図である。
【図9】第3の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図10】第3の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す図面であって、図9の後続工程を示す図面である。
【図11】第3の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す図面であって、図10の後続工程を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。上述の通り、本発明は、多層配線基板に係る発明として捉えることが可能であるとともに、この多層配線基板を作製する製造方法、半導体装置として捉えることも可能である。そこで、以下の実施形態では、まず、半導体装置の構成を説明した上で、多層配線基板の構成を具体的に説明し、さらに、多層配線基板の製造方法について説明することとする。
【0018】
[1.第1の実施形態]
[1−1.半導体装置の構成]
本実施形態の半導体装置1は、いわゆるTSV(Through Silicon Via)構造を有する半導体パッケージであり、図1に示すとおり、多層配線基板10と、半導体チップ積層体Sと、多層配線基板10と半導体チップ積層体Sとの間に配置されるコントローラCと、から構成される。
【0019】
図1に示すとおり、半導体チップ積層体Sは、複数枚のSi製の半導体チップS1が積層され構成されている。各半導体チップS1は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)として機能するものである。各半導体チップS1には貫通孔S2(Via)が形成されており、貫通孔S2を通じて貫通電極S3が形成されている。各半導体チップS1は、貫通電極S3を通じて他の半導体チップS1やコントローラCと電気的に接続されている。
【0020】
コントローラCは、Si製の半導体チップC1からなる。半導体チップC1にも貫通孔C2(Via)が形成されており、貫通孔C2(Via)を通じて貫通電極C3が形成されている。半導体チップC1は、アンダーフィルC4により封止されている。コントローラCは、貫通電極C3を通じて半導体チップ積層体Sや多層配線基板10と電気的に接続されている。
【0021】
[1−2.多層配線基板の構成]
多層配線基板10は、半導体チップC1の電極ピッチ拡張のための配線基板である。多層配線基板10は、可撓性のフレキシブル基板にバンプが形成されたいわゆる半田バンプ付き多層配線基板である。
【0022】
図1及び図2に示すとおり、多層配線基板10は、ベースとなる樹脂製の基板11を有している。基板11は、たとえばガラス、シリコーン、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂など、いかなる樹脂によっても形成可能である。本実施形態においては、ガラス、シリコーン又はポリイミド樹脂により形成するのが好ましい。
【0023】
多層配線基板10は、基板11の上部に絶縁層12を備え、これと対称に基板11の下部に絶縁層13を備える。これらの絶縁層は、ポリイミド樹脂により形成されており、基板11に対してキャスティング(溶液流延法(solution casting))によりビルドアップして形成される。
【0024】
これによりビルドアップされた絶縁層12,13のいずれか又は両方が、基板の流れ方向であるMD方向(Machine Direction)と、基板の垂直方向であるTD方向(Transverse Direction)とにおいて強度を同じにすることが可能となる。
【0025】
ここで、本実施形態の絶縁層のキャスティングにおいては、ボイド(積層ボイド、すなわち通常あるべきエリアに樹脂又は接着剤がないこと。)の発生を防止するために、ポリイミド樹脂の前駆体である粘度の低いワニスを回路間に充填し乾燥後、粘度の高いワニスをキャスティングする。このワニスのキャスティング(塗布、硬化)は、平坦性を出すために複数回行う。なお、各ワニスの粘度、キャスティング回数は、L/S(回路密度)や回路厚み、CTEの傾斜具合に応じて適宜設定する。このようなキャスティングにより形成される絶縁層は、配線パターンとの密着性を維持し、ボイドを生じさせない。
【0026】
基板11上には、絶縁層12から絶縁層13にかけて3次元的構造を有する配線パターン14が形成されている。配線パターン14は、銅を主成分とした金属で構成されている。「銅を主成分とする金属」とは、銅単体であってもよいし、銅に対してニッケル、コバルト、鉄などが添加された合金であってもよい。銅を主成分とする金属を合金とする場合、銅に対するニッケルなどの添加量は好ましくは20%以下である。
【0027】
配線パターン14は主に、下部配線部14a、連結配線部14bおよび上部配線部14cから構成されている。以後の説明を分かり易くするために、配線パターン14をこれら部位に区画しているが、これら部位は実際には一体に形成されている。
【0028】
下部配線部14aは、絶縁層13に被覆されている。絶縁層13は、所定パターンにパターニングされており、下部配線部14aの一部が絶縁層13の開口部13aから露出している。下部配線部14aの露出部が外部接続電極として機能するようになっており、当該露出部に半田ボールなどが形成され、半導体装置1がマザーボードなどの回路基板に実装される。
【0029】
連結配線部14bは、絶縁層13及び基板11を貫通するように形成され、上下端部において下部配線部14aと上部配線部14cとに接続され、これら配線部を連結している。
【0030】
上部配線部14cは、絶縁層12中に形成されている。上部配線部14cには、ポスト15が形成されている。ポスト15は、絶縁層12を貫通した状態で配線パターン14上に立設されている。ポスト15の先端部(頂部15b)は、絶縁層12から露出している。絶縁層12は、ポストの先端部(頂部15b)を突出させた状態でポスト15の側面を被覆しており、ポスト15を保護する保護層として機能している。
【0031】
ポスト15上には、半田バンプ15aが形成されている。半田バンプ15aは、半導体チップなどの電子デバイスと電気的にフリップチップ接続するための突起電極であり、たとえばスズ−銀−銅合金から構成されている。
【0032】
図2の拡大部に示すとおり、ポスト15は、頂部15bから基部15cに向けて先細り形状(逆テーパ状)を呈している。頂部15bは、半田バンプ15aを介してコントローラCの半導体チップC1と接続される部位である。基部15cは、配線パターン14の上部配線部14cと接続された部位である。たとえば、頂部15bの径は、半導体チップC1の電極C5(図1)の径に対し+10〜20μmであり、基部15cの径は、半導体チップC1の電極C5の径に対し±10μmである。
【0033】
ポスト15がこのような形状を呈するため、ポスト15の頂部15bは、基部15cより平面視したときの面積が広く、半導体チップC1との接続時における電極間の位置ずれを防止することができる。その一方、ポスト15の基部15cは、頂部15bより平面視したときの面積が狭く、ポスト15の形成時に上部配線部14cとの位置ずれや、ポスト15が所望の上部配線部14cの隣の上部配線部14cに誤って接続されるのを防止することができる。
【0034】
なお、図2では省略しているが、基板11、絶縁層12および絶縁層13と配線パターン14との界面や、絶縁層12とポスト15との界面には、下地金属層が形成されている。このような下地金属層により、配線パターン14やポスト15の基板11などに対する接着性が高められている。この下地金属層は、たとえばニッケルクロム合金や銅などから構成されている。
【0035】
以上の構成を有する半導体装置1の各種寸法は、たとえば、下記のとおりに設計されている(図1〜図2参照)。
パッケージサイズ(多層配線基板10)は、11mm×15mmである。
チップサイズ(半導体チップC1)は、7mm×8mmである。
貫通電極C3の直径aは、20μmである。
貫通電極C3間のピッチbは、35μmである。
貫通電極C3の直径cは、20μmである。
貫通電極C3間のピッチdは、70μmである。
ポスト15の直径eは、ほぼ20μmである。
半田バンプ15a間のピッチfは、70μmである。
外部接続電極(半田ボール)間のピッチgは、800μmである。
半田バンプ15aの高さhは、5μmである。
ポスト15の高さiは、35μmである。
基板11の厚みjは、38μmである。
配線パターン14の連結配線部14bの高さkは、38μmである。
【0036】
ここで、半導体装置1において、コントローラC(半導体チップC1)には底面から多層配線基板10側に向けて突出する電極C5が形成されている。この半導体チップC1の電極C5の高さと多層配線基板10のポスト15の高さとの合計H(図1参照)は、好ましくは35μm以上であり、さらに好ましくは50μm以上である。
【0037】
この場合に、半導体チップC1の電極C5と多層配線基板10のポスト15とでいずれが高くてもよいが、好ましくはポスト15を高くしてポスト15の高さを35μm以上確保する。これは(i)半導体チップC1側で高さを確保しようとすると、半導体チップC1ごとに(枚葉ごとに)電極C5を製造しなければならず手間がかかるのに対し、多層配線基板10側で高さを確保しようとする方がロールツーロール方式で容易にポスト15を製造することができるからである。また、(ii)半導体チップC1と多層配線基板10の歩留まりを考慮すると、多層配線基板10側で高さを確保したほうがトータルの歩留まりが良いからである。従って、好ましくは、半導体チップC1の電極C5はパッド電極のみから構成し、電極C5にはバンプなどを形成しないのが良い。
【0038】
[1−3.多層配線基板の製造方法]
続いて、多層配線基板10の製造方法について説明する。
図3に示すとおり、レーザを用いて基板11の所定位置に貫通孔A1を形成し、そのスミア(削りかす)を除去する(S1)。その後、基板11に金属をスパッタリングして金属下地層B1を形成する(S2)。
【0039】
その後、金属下地層B1の所定位置に銅を主成分とする金属をめっきし、金属下地層に金属層ML1を形成するとともに、貫通孔A1にも金属層ML2を充填する(S3)。その後、金属層ML1から露出している金属下地層B1をエッチングして除去する(S4)。その結果、金属層ML1および金属層ML2から構成される配線パターン14(下部配線部14a、連結配線部14bおよび上部配線部14c)が形成される。
【0040】
その後、基板11の上面側の配線パターン14(上部配線部14c)上にキャスティングにより、ポリイミド樹脂よりなる絶縁層12を形成し、配線パターン14の上部配線部14cを絶縁層12で被覆する。併せて、基板11の下面側にも、配線パターン上にキャスティングによりポリイミド樹脂よりなる絶縁層13を形成し、配線パターン14の下部配線部14aを絶縁層13で被覆する(S5)。
【0041】
ここで、本実施形態の絶縁層のキャスティングにおいては、上述のとおり、ボイドの発生を防止するために、ポリイミド樹脂の前駆体である粘度の低いワニスを回路間に充填し乾燥後、粘度の高いワニスをキャスティングする。このキャスティングは、平坦性を出すために複数回行う。
【0042】
その後、絶縁層12上に樹脂製のドライフィルムD1を貼付し、露光してドライフィルムD1を硬化させる(S6)。その後、レーザを用いてドライフィルムD1および絶縁層12の所定位置に上部配線部14cが露出するまで貫通孔A2を形成する。それとともに、レーザを用いて絶縁層13の所定位置にも下部配線部14aが露出するまで貫通孔(開口部13a)を形成し、それらスミア(削りかす)を除去する(S7)。
【0043】
その後、図4に示すとおり、ドライフィルムD1および貫通孔A2に金属をスパッタリングして金属下地層B2を形成するとともに、絶縁層13および開口部13aにも金属をスパッタリングして金属下地層B3を形成する(S8)。その後、金属下地層B3に樹脂製のドライフィルムD2を貼付するとともに、金属下地層B2に銅を主成分とする金属をめっきし、金属下地層B2に金属層ML3を形成し、さらに、貫通孔A2にも金属層ML4を充填する(S9)。その後、ドライフィルムD1上の金属下地層B2および金属層ML3をエッチングして除去する(S10)。その結果、金属層ML4から構成されるポスト15が形成される。
【0044】
その後、ポスト15に半田をめっきして半田バンプ15aを形成し、半田バンプ15aおよびドライフィルムD1上にドライフィルムD3をラミネートし、露光してドライフィルムD3を硬化させる(S11)。その後、金属下地層B3に形成されたドライフィルムD2を剥離する(S12)。その後、金属下地層B3をエッチングして除去し、絶縁層12上のドライフィルムD1,D3を同時に剥離する(S13)。
以上のS1〜S13の処理を経て多層配線基板10を製造することができる。
【0045】
[1−4.効果]
(基板の反り低減効果)
以上の多層配線基板10及びそれを備えた半導体装置1によれば、キャスティングすることで、絶縁層12,13において、基板11の流れ方向であるMD方向と、基板11の垂直方向であるTD方向とにおいて強度を同じにすることができる。そのため、基板11の両面に絶縁層12,13をビルドアップにより形成したとしても、これによる基板11の反りを低減することができる。特に、基板11を含む絶縁層のすべてを同じ材料により構成することにより、基板11の反りをより効果的に低減することができる。
【0046】
また、上下絶縁層12及び13を、対称構造とすることで基板11の反りがなく、同時に低熱膨張を実現することができる。そのため、大きなサイズの基板であっても、実装ずれが生じることがない。
【0047】
(ポリイミド樹脂を用いた効果)
基板11を含む、絶縁層12,13のいずれか又はすべてをポリイミド樹脂に形成することで、良好な耐熱性と低誘電率、低線膨張係数からなる多層配線基板10を提供することができる。また、ポリイミド樹脂を用いて、エポキシ系絶縁材料及びソルダーレジストを使用しないことで、良好な耐熱性、低誘電率及び低線膨張率を実現することが可能となり、基板11が大きな場合でも、実装ずれがない。
【0048】
このようなポリイミド樹脂により作製した多層配線基板10は、剛性が高く、ガラスエポキシ基板と同様の扱いが可能で、キャリア不要なフレキシブル基板となる。そのため、従来の搬送設備にて対応が可能で、リフロー方式にも対応することができる。さらに、エポキシ系絶縁材料に比較して、安価な多層配線基板10を作製することができる。
【0049】
(配線パターン上にキャスティングで絶縁層を形成する効果)
絶縁層12,13をビルドアップするに当たって、キャスティング(溶液流延法(solution casting))により行うことで、フィルムに物理的な圧力を加えないため高分子の配向が起こらず、強度や光学特性などに方向性が生じない。
【0050】
また、フィルムとして市販されている絶縁層は、規格品で、厚さが決まっているが、本実施形態のように、絶縁層12,13をキャスティングすることで、任意の厚みを形成でき、また例えば傾斜構造も作製可能である。そのため、不要な絶縁層厚さによる製品の肥大化も防止できる。また、信号の遅延を考慮した厚さを任意に設定することや、絶縁層として回路密度や目的にあったCTE(線膨張係数)の材料を用いることができ、設計の自由度が高まる。
【0051】
半導体パッケージ実装構造は、上述のように、LSIチップ/NCP(Non Conductive Paste)/インターポーザー/アンダーフィル/マザーボードの順で積層されている。このうち、LSIチップにおいてCTEは小さく(3〜5ppm)、マザーボードにおいて大きい。そこで、本実施形態では、例えば、半導体パッケージでは、多層配線基板10において、絶縁層12側(LSIチップ側)にCTEの小さい材料を選択し、絶縁層13側(マザーボード側)にCTEの大きい材料を選択する。これにより、1次(LSIチップとの接続)、2次(マザーボードとの接続)接続端子への負荷を軽減できる。このように設計の自由度が極めて高い多層配線基板10を提供することができる。
【0052】
また、キャスティングでは、溶融押出成型法に比べ樹脂にかける熱量が低く(フィルム状樹脂のような溶融も不要)、熱安定剤などの添加量を低減できる。また、キャスティング時の溶融温度の設定によりカール具合を調整することができる。
【0053】
また、このようなキャスティングにより、溶液をろ過する工程を設置できるため樹脂の塊(フィッシュアイ)が発生せず、キズもつきにくいため、絶縁層12,13に用いるための透明性の高いフィルムを成型できる。
【0054】
このように、絶縁層12,13の成形にキャスティングを用いることで、厚み精度が高く、平滑性、透明性、光沢性に優れた絶縁層12,13を形成できるといったメリットがある。なお、このようにキャスティングを用いることで、融点が高く押出成形が難しいポリイミドフィルムによって絶縁層12,13を形成することが容易となる。
【0055】
[2.第2の実施形態]
第2の実施形態は、多層配線基板の構成において第1の実施形態と異なるものであり、その他の構成については、第1の実施形態と同様であるので、以下では第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。また、多層配線基板の構成であっても、特に言及しない点については、第1の実施形態における説明を援用するものとする。
【0056】
[2−1.多層配線基板の構成]
図5に示すとおり、本実施形態の多層配線基板20は、基板21の上部に絶縁層22を備え、これと対称に基板21の下部に絶縁層23を備える。これらの絶縁層は、第1の実施形態と同様、ポリイミド樹脂により形成されており、基板21に対してキャスティングを用いてビルドアップして形成される。このようにビルドアップされた絶縁層22,23のいずれか又は両方が、基板の流れ方向であるMD方向と、基板の垂直方向であるTD方向とにおいて強度を同じにすることができる。
【0057】
基板21上には、絶縁層22から絶縁層23にかけて3次元的構造を有する配線パターン24が形成されている。配線パターン24は主に、最上部配線部24a、上部配線部24b、連結配線部24c、下部配線部24dおよび最下部配線部24eから構成されている。ここでは、第1の実施形態と同様、説明の便宜上、配線パターン24をこれら部位に区画しているが、これら部位は実際には一体に形成されている。
【0058】
下部配線部24d及び最下部配線部24eは、絶縁層23に被覆され、最下部配線部24eの一部が絶縁層23の開口部23aから露出している。最下部配線部24eの露出部が外部接続電極として機能するようになっており、当該露出部に半田ボールなどが形成され、半導体装置1がマザーボードなどの回路基板に実装される。
【0059】
連結配線部24cは、基板21を貫通するように形成され、上下端部において上部配線部24bと下部配線部24dとに接続され、これら配線部を連結している。
【0060】
上部配線部24bは絶縁層22に被覆されており、この上部配線部24bと接続した最上部配線部24aは、絶縁層22の上部に露出して配置されている。絶縁層22は、最上部配線部24aを突出させた状態となっている。
【0061】
最上部配線部24a上には、半田バンプ25が形成され、最上部配線部24aは、半田バンプ25を介してコントローラCの半導体チップC1と接続される部位である。半田バンプ25は、半導体チップなどの電子デバイスと電気的にフリップチップ接続するための突起電極であり、たとえばスズ−銀−銅合金から構成されている。
【0062】
なお、第1の実施形態と同様、基板21、絶縁層22および絶縁層23と配線パターン24との界面には、下地金属層が形成されている。このような下地金属層により、配線パターン24の基板21などに対する接着性が高められている。この下地金属層は、たとえばニッケルクロム合金や銅などから構成されている。
【0063】
以上の構成を有する多層配線基板20の各種寸法は、たとえば、下記のとおりに設計されている(図5参照)。
(a)絶縁層22に形成されたビアホールの直径は、15μm〜100の範囲で設計される。
(b)ビアランドの幅は、160μmより大きく設計される。
(c)最上部配線部24a間のスペースは、15μmより大きく設計される。
(d)ラインの幅は、15μmより大きく設計される。
(e)最上部配線部24aの厚さは、18μmより小さく設計される。
(f)半田バンプ25の厚さは、2〜8μmの範囲で設計される。
(g)最下部配線部24eにおける開口部23a間のピッチは、250μmより小さく設計される。
(h)最下部配線部24eの間のスペースは、50μmより大きく設計される。
(i)最下部配線部24eの厚さは、18μmより小さく設計される。
(j)基板21の厚さは、12.5,25,38,40,50μmのいずれかにより設計される。
【0064】
[2−2.多層配線基板の製造方法]
続いて、多層配線基板20の製造方法について説明する。
図6に示すとおり、レーザを用いて基板21の所定位置に貫通孔A1を形成し、そのスミア(削りかす)を除去する(S1)。その後、基板21に金属をスパッタリングして金属下地層B1を形成する(S2)。
【0065】
その後、基板21の下面側の金属下地層B1に樹脂製のドライフィルムD1をラミネートし、上部配線部24b、連結配線部24c及び下部配線部24dに対応するパターンのマスクを用いてドライフィルムD1を露光・現像することによって形成する。これにより、金属下地層B1を所定パターンの樹脂層(ドライフィルムD1)で被覆することとなる(S3)。
【0066】
その後、ドライフィルムD1から露出している金属下地層B1の所定位置に銅を主成分とする金属をめっきし、金属下地層B1に金属層ML1及びML2を形成する(S4)。その後、ドライフィルムD1及びドライフィルムD1の位置にある金属下地層B1をエッチングして除去する(S5)。その結果、金属層ML1および金属層ML2から構成される配線パターン24の一部(上部配線部24b、連結配線部24c及び下部配線部24d)が形成される。
【0067】
その後、基板21の上面側と下面側との双方に、ポリイミド樹脂を絶縁層22及び23としてキャスティングする。さらに、レーザを用いて絶縁層22及び23の所定位置に、配線パターン24が露出するまで貫通孔A2を形成し、そのスミア(削りかす)を除去する(S6)。その後、絶縁層22及び23に金属をスパッタリングして金属下地層B2を形成する(S7)。
【0068】
その後、絶縁層22及び23上に樹脂製のドライフィルムD2を貼付し、露光してドライフィルムD2を硬化させる(S8)。その後、図7に示すように、絶縁層22及び23の所定位置に銅を主成分とする金属をめっきし、絶縁層22及び23に金属層ML3及びML4を形成する(S9)。その後、ドライフィルムD2と、ドライフィルムD2の位置にある金属下地層B2をエッチングして除去する(S10)。これにより、金属層ML3から最上部配線部24aが形成され、金属層ML4から最下部配線部24eが形成される。
【0069】
その後、基板21の上面及び下面側と、配線部に樹脂製のドライフィルムD3をラミネートし、半田バンプ25に対応するパターンを、マスクを用いて露光してドライフィルムD3を硬化させる。その後、絶縁層22上に設けられた配線パターン24の最上部配線部24a上に、スズ−銀−銅合金からなる半田バンプ25が形成される(S11)。半田バンプ25は、半導体チップなどの電子デバイスと電気的にフリップチップ接続するための突起電極である。その後、基板21に形成されたドライフィルムD3を剥離する(S12)。
【0070】
その後、基板下面側にポリイミド樹脂をキャスティングする(絶縁層23の残存部分の形成)。さらに絶縁層23の所定位置に、レーザを用いて最下部配線層24eが露出するまで貫通孔23aを形成し、そのスミア(削りかす)を除去する(S13)。
以上のS1〜S13の処理を経て多層配線基板20を製造することができる。
【0071】
[2−3.効果]
以上のような本実施形態における多層配線基板20によれば、基板21に対して絶縁層22及び23をビルドアップするに際して、配線パターン24上にキャスティングにより絶縁層を形成する。これにより、絶縁層の厚みなど、設計の自由度が高いので、多層基板の作製を容易に行うことができる。そのため、ビア・オン・ビアやフィルドビアでの設計自由度、高密度実装、層間信頼性、層厚安定が高く、平坦性によるインピーダンス整合を得ることもできる。また、本実施形態の多層配線基板では、フィルドビアを用いることにより、接続強度を良好にすることができる。
【0072】
[3.第3の実施形態]
第3の実施形態は、多層配線基板の構成において第1及び第2の実施形態と異なるものであるが、その他の構成については、第1及び第2の実施形態と同様であるので、以下では第1及び第2の実施形態と異なる点についてのみ説明する。また、多層配線基板の構成についても、特に言及しない点については第1及び第2の実施形態における説明を援用するものとする。
【0073】
[3−1.多層配線基板の構成]
図8に示すように、本実施形態に係る多層配線基板30は、ベースとなる樹脂製の基板31の下部に、絶縁層32が形成され、この絶縁層32の下部にさらに、絶縁層33が形成されている。これらの絶縁層は、ポリイミド樹脂により形成されており、基板31に対してキャスティングを用いてビルドアップして形成される。
【0074】
第1の実施形態において説明したのと同様、このように絶縁層32,33のいずれか又は両方がビルドアップされることで、基板の流れ方向であるMD方向(Machine Direction)と、基板の垂直方向であるTD方向(Transverse Direction)とにおいて強度を同じにすることができる。
【0075】
基板31上では、絶縁層32から絶縁層33にかけて3次元的構造を有する配線パターン34が形成されている。配線パターン34は主に、上部配線部34a、連結配線部34bおよび下部配線部34cから構成されている。ここでは、第1及び第2の実施形態と同様、説明の便宜上、配線パターン34をこれら部位に区画しているが、これら部位は実際には一体に形成されている。
【0076】
上部配線部34aは、絶縁層32中に形成されている。上部配線部34aには、ポスト35が形成されている。ポスト35は、基板31を貫通した状態で配線パターン34上に立設されている。ポスト35の先端部(頂部35b)は、基板31からわずかに露出している。基板31は、ポストの先端部(頂部35b)を突出させた状態でポスト35の側面を被覆しており、ポスト35を保護する保護層として機能している。
【0077】
連結配線部34bは、基板31及び絶縁層32を貫通するように形成されている。連結配線部34bは、上部配線部34aと下部配線部34cとに接続され、これら配線部を連結している。
【0078】
下部配線部34cは、絶縁層33に被覆されている。絶縁層33は、所定パターンにパターニングされており、下部配線部34cの一部が絶縁層33の開口部33aから露出している。下部配線部34cの露出部が外部接続電極として機能するようになっており、当該露出部に半田ボールなどが形成され、半導体装置1がマザーボードなどの回路基板に実装される。
【0079】
ポスト35上には、半田バンプ35aが形成されている。半田バンプ35aは、半導体チップなどの電子デバイスと電気的にフリップチップ接続するための突起電極であり、たとえばスズ−銀−銅合金から構成されている。
【0080】
なお、第1の実施形態と同様、基板31、絶縁層32および絶縁層33と配線パターン34との界面や、基板31とポスト35との界面には、下地金属層が形成されている。このような下地金属層により、配線パターン34やポスト35の基板31などに対する接着性が高められている。この下地金属層は、たとえばニッケルクロム合金や銅などから構成されている。
【0081】
以上の構成を有する多層配線基板30の各種寸法は、たとえば、下記のとおりに設計されている(図8及び図9参照)。
パッケージサイズ(多層配線基板30)は、11mm×15mmである。
ポスト35の直径eは、ほぼ20μmである。
半田バンプ35a間のピッチfは、70μmである。
外部接続電極(半田ボール)間のピッチgは、800μmである。
半田バンプ35aの高さhは、5μmである。
ポスト35の高さiは、35μmである。
基板31の厚みjは、25μmである。
配線パターン34の連結配線部34bの高さkは、38μmである。
【0082】
ここで、半導体装置1において、コントローラC(半導体チップC1)には底面から多層配線基板30側に向けて突出する電極C5が形成されている。この半導体チップC1の電極C5の高さと多層配線基板30のポスト35の高さとの合計H(図1参照)は、好ましくは35μm以上であり、さらに好ましくは50μm以上である。
【0083】
[3−2.多層配線基板の製造方法]
続いて、多層配線基板30の製造方法について説明する。
多層配線基板30は、所定のロールに巻かれた長尺の基板31が別のロールに巻き取られるように搬送され、その搬送過程で配線パターン34などが形成されるロールツーロール方式により、製造される。
【0084】
具体的には、はじめに、図9に示すとおり、基板31に樹脂製のドライフィルムD1をラミネートし、露光してドライフィルムD1を硬化させる(S1)。その後、レーザを用いて基板31およびドライフィルムD1の所定位置に貫通孔A1を形成し、そのスミア(削りかす)を除去する(S2)。
【0085】
その後、基板31およびドライフィルムD1に金属をスパッタリングして金属下地層B1を形成する(S3)。その後、基板31の下面側の金属下地層B1に樹脂製のドライフィルムD2をラミネートする。そして、上部配線部34aに対応するパターンでドライフィルムD2を露光・現像し、金属下地層B1を所定パターンの樹脂層(ドライフィルムD2)で被覆する(S4)。
【0086】
その後、ドライフィルムD1上の金属下地層B1とドライフィルムD2から露出している金属下地層B1とに、銅を主成分とする金属をめっきし、金属下地層B1上に金属層ML1を形成するとともに、貫通孔A1にも金属層ML2を充填する(S5)。その後、基板31の下面側の金属層ML1およびドライフィルムD2上に樹脂製のドライフィルムD3を貼付し、ドライフィルムD1の上面側の金属下地層B1および金属層ML1をエッチングして除去する(S6)。その結果、金属層ML1から構成されるポスト35が形成される。
【0087】
なお、S2の処理では、レーザの出力を調整して上方から下方にかけて徐々に低下させ、貫通孔A1を先細り形状(逆テーパ状)に形成する。その結果、先細り形状のポスト35を形成することができる(図8拡大部参照)。
【0088】
その後、ポスト35に半田をめっきして半田バンプ35aを形成し(S7)、基板31に形成されたドライフィルムD1,D2,D3を剥離する(S8)。
【0089】
その後、図10に示すとおり、基板31に樹脂製のドライフィルムD4を貼付するとともに、基板31の下面においてドライフィルムD2で被覆されていた部分の金属下地層B1をエッチングして除去する(S9)。その結果、金属層ML2から構成される配線パターン34の上部配線部34aが形成される。その後、基板31の下面側にキャスティングにより、絶縁層32をビルドアップし、配線パターン34の上部配線部34aを絶縁層32で被覆する(S10)。
【0090】
その後、ドライフィルムD4を剥離する(S11)。続いて、レーザを用いて絶縁層32の所定位置に上部配線部34aが露出するまで貫通孔A2を形成し、そのスミア(削りかす)を除去する(S12)。
【0091】
その後、絶縁層32、貫通孔A2および上部配線部34aに金属をスパッタリングして金属下地層B2を形成する(S13)。その後、基板31に樹脂製のドライフィルムD5をラミネートする。これとともに、金属下地層B2にも樹脂製のドライフィルムD6をラミネートする。そして、下部配線部34cおよび連結配線部34bに対応するパターンのマスクを用いてドライフィルムD6を露光・現像し、金属下地層B2を所定パターンの樹脂層(ドライフィルムD6)で被覆する(S14)。
【0092】
その後、図11に示すとおり、ドライフィルムD6から露出している金属下地層B2に銅を主成分とする金属をめっきし、金属下地層B2、貫通孔A2および上部配線部34aに金属層ML2を形成する(S15)。その後、ドライフィルムD6を剥離する(S16)。その後、ドライフィルムD6で被覆されていた金属下地層B2をエッチングして除去する。その結果、金属層ML2から構成される配線パターン34の下部配線部34cおよび連結配線部34bが形成される。
【0093】
その後、ドライフィルムD5を剥離し、絶縁層32、下部配線部34cおよび連結配線部34bに、ソルダーレジストを使用せずにポリイミド樹脂によりキャスティングを用いて絶縁層33を形成し、レーザを用いて、絶縁層33に開口部33aが形成することで、下部配線部34cの一部が開口部33aから露出する(外部接続電極が形成される。)(S17)。
以上のS1〜S17の処理を経て多層配線基板30を製造することができる。
【0094】
[3−3.効果]
以上のような本実施形態の多層配線基板30によれば、第1の実施形態同様、基板31上に絶縁層32,33をビルドアップしたことで、基板31の流れ方向であるMD方向と、基板31の垂直方向であるTD方向とにおいて強度を同じにすることできる。これにより、基板31の反りを低減することができる。特に、基板31を含む絶縁層のすべてを同じ材料により構成することにより、基板31の反りをより効果的に低減することができる。
【0095】
基板31を含む、絶縁層32,33のいずれか又はすべてをポリイミド樹脂により形成することで、良好な耐熱性と低誘電率、低線膨張係数からなる基板31を提供することができる。また、ポリイミド樹脂を用いて、エポキシ系絶縁材料及びソルダーレジストを使用しないことで、良好な耐熱性、低誘電率及び低線膨張率を実現することが可能となり、基板31が大きなサイズであっても、実装ずれがない。
【0096】
さらに、絶縁層32,33をビルドアップするに当たって、キャスティングにより行うことで、フィルムに物理的な圧力を加えないため高分子の配向が起こらず、強度や光学特性などに方向性が生じない。
【符号の説明】
【0097】
1…半導体装置
10…多層配線基板
11…基板
12,13…絶縁層
13a…開口部
14…配線パターン
14a…下部配線部
14b…連結配線部
14c…上部配線部
15…ポスト
15a…半田バンプ
15b…頂部
15c…基部
20…多層配線基板
21…基板
22,23…絶縁層
23a…開口部
24…配線パターン
24a…最上部配線部
24b…上部配線部
24c…連結配線部
24d…下部配線部
24e…最下部配線部
25…半田バンプ
30…多層配線基板
31…基板
32,33…絶縁層
33a…開口部
34…配線パターン
34a…上部配線部
34b…連結配線部
34c…下部配線部
35…ポスト
35a…半田バンプ
35b…頂部
A1,A2…貫通孔
B1〜B3…金属下地層
C…コントローラ
C1…チップ
C2…貫通孔
C3…貫通電極
C4…アンダーフィル
C5…電極
D1〜D6…ドライフィルム
ML1〜ML4…金属層
S…半導体チップ積層体
S1…半導体チップ
S2…貫通孔
S3…貫通電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースとなる樹脂製の基板と、
前記基板上に形成された配線パターンと、
前記配線パターンの一部をビルドアップして形成した絶縁層と、を有し、
前記絶縁層は、MD方向及びTD方向において強度が同じであることを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記絶縁層は、キャスティングにより形成したことを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記基板及び前記絶縁層のいずれか又はすべてが、ポリイミド樹脂によりなることを特徴とする請求項1又は2記載の多層配線基板。
【請求項4】
樹脂製の基板の所定位置に第1の貫通孔を形成する工程と、
前記基板の上面及び下面に第1の金属下地層を形成する工程と、
前記第1の金属下地層の所定位置に銅を主成分とする第1の金属層を形成するとともに、前記第1の貫通孔に銅を主成分とする第2の金属層を充填する工程と、
前記第1の金属層から露出している前記第1の金属下地層を除去し、前記第1及び第2の金属層から構成される配線パターンの一部を形成する工程と、
前記基板の上面側及び下面側であって、前記一部の配線パターン上に、ポリイミド樹脂よりなる絶縁層をキャスティングにより形成し、前記第1の金属層を被覆する工程と、
前記絶縁層の所定位置に前記配線パターンの一部が露出するまで第2の貫通孔を形成する工程と、
前記第2の貫通孔に第2の金属下地層を形成するとともに、前記絶縁層に第3の金属下地層を形成する工程と、
前記第2の金属下地層を形成した前記第2貫通孔に、銅を主成分とする第3の金属層を充填するとともに、前記第3の金属下地層に第4の金属層を形成する工程と、
前記第4の金属層より露出している前記第3の金属下地層を除去する工程と、
前記第2及び第3の金属層から構成される配線パターンの残り部分を形成する工程と、
を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
半導体チップ積層体と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層配線基板と、前記多層配線基板と半導体チップ積層体と、から構成されることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−204662(P2012−204662A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68642(P2011−68642)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】