説明

ワーク搬送ロボット

【課題】ロボット本体およびアーム相互間の成す角度を各々光学的に正確に検出することにより、最終的な搬送位置のズレを生じさせないようにしたワーク搬送ロボットを提供する。
【解決手段】ロボット本体と、該ロボット本体に対して順次関節部を介して相対回動可能に連接された複数のアームと、該複数のアームの先端側アームに相対回動可能に取付けられたリストブロックと、上記複数のアームの各々を回動作動する連係手段と、上記連係手段を所定の連係関係で駆動する駆動手段とを備えてなるワーク搬送ロボットであって、上記ロボット本体および複数のアーム間の各関節部には、ロボット本体およびアーム相互の相対的な回転角度情報を示す角度情報表示部42と、該角度情報表示部の角度情報を光学的に読み取る光学センサー51とを設け、上記各関節部の連結軸を介して相互に相対回動するロボット本体およびアーム相互の実際の回転角を検出できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、相対回転可能な複数の関節部を有した多関節型のワーク搬送用ロボットの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体ウエハの搬送等に使用されている産業用ロボットは、一般に昇降機構を有するロボット本体に対して、相対回転可能なスカラー型多関節リンク構造のロボットアームを備えて構成されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
そして、このような多関節ロボットでは、ロボット本体および各ロボットアーム間の関節部は、駆動用の原動機の数をできるだけ少なくするために、各アーム間相互の回転角度をプーリおよびタイミングベルトなどの連係手段を介して予じめ所定の相対回転角度関係でリンクさせたものとなっている。
【0004】
今、図5〜図10は、そのような多関節ロボットの構造およびアーム部の動作原理を示している。
【0005】
先ず図5〜図8は、当該ロボットの全体的な外観構造とその基本的な動作状態を示している。
【0006】
図5〜図8中において、符号FPは、クリンルームなどの床面上に固定して設けられたロボット設置用のフロアプレートであり、該フロアプレートFP上には、シリンダ構造の基台部1および同基台部1の昇降シリンダおよび駆動モータによって上下Z軸方向および軸周りθ方向に任意に駆動される昇降台部2を備えて昇降および回転可能に構成されたロボット本体が設置されている。このロボット本体の上記昇降台部2の上部には、第1,第2の2本のアーム3,4を介して先端側に半導体ウエハ把持用のチャック部7を備えたチャック部材6が設けられている。
【0007】
第1のアーム3は、扁平な中空構造体よりなり、その基端側を第1の関節部を介して水平回転可能に昇降台部2の上端部に同軸状に支持されている。また第2のアーム4は、扁平な中空構造体よりなり、その基端側を上記第1のアーム3の先端側上部に第2の関節部を介して水平回転可能に支持されている。またリストブロック5は、全体として前方後円形状で、後円部が短かい円筒体構造となっている。そして、同円筒体部分の底壁5bを上記第2のアーム4の先端側上部に相対回動可能に軸支されている一方、前方側部分が上壁5aの厚さ部分だけ低い状態で前方に所定の長さ延設されて、該延設部に次に述べるチャック部材6の基端側がビス等の螺合手段により重合締結されるようになっている。またチャック部材6は、さらに扁平な中空構造体よりなり、その基端側を上記のようにしてリストブロック5に取り付けられ、同リストブロック5および第3の関節部を介して上記第2のアーム4の先端側上部に水平回転可能に支持されている。
【0008】
さらにチャック部7は、先端がY形に分岐され、それら一対の分岐片7a,7aの先端側上部に各々ウエハ吸着部7b,7bを有して構成されており、これら各ウエハ吸着部7b,7bで、図5のように半導体ウエハWを吸着固定することによって、半導体ウエハWを確実に把持するようになっている。ウエハ吸着部7b,7bは、例えばチャック部材6内の配設パイプから吸引負圧を作用させることによってウエハを吸着するようになっている。
【0009】
ところで、上記第1の関節部は、例えば図9に示すように、上述した昇降台部2の天板構造の支持壁2b上に立設された第1の中実シャフト2dと、該第1の中実シャフト2dの外周に相対回転可能に嵌合された第1の中空シャフト15とからなり、第1の中空シャフト15は上記第1のアーム3の基端側下部から下方に筒状に延びているとともに、同延設部の下端外周部には所定の外径の第1の歯付プーリ20が一体に設けられている。
【0010】
一方、上記昇降台部2側支持壁2bの外周寄り下面側にはアーム駆動用のモータ(ステッピングモータ)10が、その駆動軸12を所定の長さ上方に突出させた状態で設けられており、同駆動軸12の上端には上記第1の歯付プーリ20に対応する同第1の歯付プーリ20よりも小径の歯付モータプーリ13が固着されている。
【0011】
そして、これら歯付モータプーリ13と第1の歯付プーリ20との間には、第1のタイミングベルト(歯付ベルト)14が架けられ、モータ10が作動すると歯付モータプーリ13を介して第1の歯付プーリ20が回転せしめられ、その回転角、回転方向に応じて上記第1のアーム3が、例えば図6〜図8に示すような水平方向の所定の方向に、所定角回動するようになっている。モータ10には、上記歯付モータプーリ13の回転角に応じて所定の数のパルス信号を発生するパルスエンコーダ11が同軸構造で付設されている。
【0012】
一方、上記第1の中実シャフト2dの上端は上記第2のアーム4の基端部内に嵌挿され、同嵌挿部の上端において所定の外径の第2の歯付プーリ30が固着されている。
【0013】
なお、上記第1の中空シャフト15の外周は、軸受部材16を介して、上記昇降台部2を覆うカバー部材2cに支持されている。
【0014】
第2の関節部は、上記中空構造の第1のアーム3の底壁部3bの先端側部分において中空構造の第2のアーム4の底壁部4bの基端側を貫通して所定の高さ上方に突設された第1のアーム3の底壁部3bと一体構造の第2の中実シャフト3cと、該第2の中実シャフト3cの外周に、回転可能に嵌合され、軸受部材22を介して第2のアーム4の天井壁4cにより相対回転可能に支持された第2の中空シャフト19とからなっている。そして、上記第2の中実シャフト3cの上端は上記第2のアーム4先端部内に嵌挿され、同嵌挿部の上端において所定の外径の第4の歯付プーリ40が固着されている。また上記第2の中空シャフト19の下端には、上記第2の歯付プーリ30よりも小径の第3の歯付プーリ31が固着されている。そして、該第3の歯付プーリ31と上記第2の歯付プーリ30との間には、第2のタイミングベルト(歯付ベルト)18が架けられ、相互に連係して回転するようになっている。
【0015】
第3の関節部は、上記チャック部材6を支持しているリストブロック5の下端側から所定の長さ下方に延びる第3の中実シャフト4aを、軸受部材25を介して上記第2のアーム4の天井壁4c部分に回転可能に支持して構成されており、同第3の中実シャフト4aの下端には、第4の歯付プーリ40よりも外径が小さな上記第2の中実シャフト3c上端の第5の歯付プーリ41が設けられている。そして、この第5の歯付プーリ41は、小径側第4の歯付プーリ40に対して第3のタイミングベルト(歯付ベルト)24を介して連係されている。
【0016】
以上の歯付モータプーリ13、第1〜第5の歯付プーリ20,30,31,40,41、第1〜第3のタイミングベルト14,18,24相互の係合関係を示すと、例えば図10のようになる。
【0017】
ここで、例えば上記第2の歯付プーリ30の外径と第3の歯付プーリ31の外径との比(ピッチ円の比)を2:1とし、また第4の歯付プーリ40の外径と第5の歯付プーリ41の外径との比(同)を1:2に設定している。
【0018】
そして、これにより例えば図6に示すように、上記第1のアーム3がロボット本体側の昇降台2に対してα角回動すると、上記第2のアーム4は、上記第1のアーム3に対して2α角回動し、上記リストブロック5は上記第2のアーム4に対して角度αだけ回動する。また、例えば図8に示すように、上記第1のアーム3がロボット本体側の昇降台2に対して図7の状態から上記とは逆方向にα角回動すると(−α)、上記第2のアーム4は、上記第1のアーム3に対して逆方向に2α角回動し(−2α)、上記リストブロック5は上記第2のアーム4に対して逆方向に角度αだけ回動する(−α)。それらの結果、上記リストブロック5に取り付けたチャック部材6は、ロボット本体側昇降台2の中心(2d中心)に対して、放射状に動作することになる。
【0019】
つまり、上記モータ10が所定の回転量、所定の回転方向に駆動されると、上記第1,第2のアーム3,4およびチャック部材7が、図6、図7、図8のような状態に任意に作動されて、例えば図示しない洗浄チャンバ内への半導体ウエハWの搬入、また同洗浄チャンバー内からの洗浄終了後の半導体ウエハWの取り出し、収納トレイへの搬送などに使用される。
【0020】
以上のような構成の場合、単一のモータ10で複数のアーム部材3,4,6の各々を相互に所定の位相角でリンク駆動することができるので、アーム部材数の割には駆動手段が少なくて足り、低コストに構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2003−188228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、上記のような構成の場合、使用時間の経過により各タイミングベルト14,18,24が伸びて徐々にロボット本体とアームおよびアーム相互間の位相角にズレが生じる問題がある。
【0023】
もちろん各タイミングベルトは組立、調整時に適正な張力管理をされているが、やはり経年変化、アーム部材3,4,6の加減速度の変化、積載負荷の相違などにより、伸びを生じ、しかも該タイミングベルトの伸びは各々で必ずしも一定ではない。
【0024】
したがって、最終的なワーク搬送位置も、その分だけ所定の位置よりずれ、適正な位置に搬送することができないことになる。
【0025】
したがって、このような搬送位置のずれを解消するためには、該タイミングベルトの伸びによる搬送位置のずれを何らかの方法で検出し、各アーム部材間の移動のずれを補正することが必要になる。
【0026】
これに関して、上記タイミングベルトの伸びは必ず存在し、かつその伸び量が変動するものとして、上記タイミングベルトの伸びを、例えば図9に示すように、モータ10に同軸状態で付設されているパルスエンコーダ11により検出することによって、目的とする制御位置データを補正することも考えられる。
【0027】
しかし、そのような構成では、ロボット本体および各アーム間毎の相対角のずれを正確に検出することはできず、やはり正確な搬送制御を実現することはできない。
【0028】
本願発明は、このような問題を解決するためになされたもので、ロボット本体およびアーム相互間の成す角度を各々光学的に正確に検出することにより、最終的な搬送位置のズレを生じさせないようにしたワーク搬送ロボットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本願発明は、同目的を達成するために、次のような有効な課題解決手段を備えて構成されている。
【0030】
(1) 請求項1の発明
この発明の課題解決手段は、ロボット本体と、該ロボット本体に対して順次関節部を介して相対回動可能に連接された複数のアームと、該複数のアームの先端側アームに相対回動可能に取付けられたリストブロックと、上記複数のアームの各々を回動作動する連係手段と、上記ロボット本体側にあって上記連係手段を所定の連係関係で駆動する駆動手段とを備えてなるワーク搬送ロボットであって、上記ロボット本体および複数のアーム間の各関節部には、ロボット本体およびアーム相互の相対的な回転角度情報を示す角度情報表示部と、該角度情報表示部の角度情報を光学的に読み取る光学センサーとを設け、上記各関節部の連結軸を介して相互に相対回動するロボット本体およびアーム相互の実際の回転角を検出できるようにしている。
【0031】
したがって、このような構成のワーク搬送ロボットでは、実際のロボット本体および複数のアーム相互間の相対的な位相角のズレを、角度情報表示部に表示された相対的な回転角度情報を読み取る光学センサーによって高精度に検出することができ、同検出値に基いて確実に位相角のズレ量を補正制御することができる。
【0032】
(2) 請求項2の発明
この発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、角度情報表示部は、連結軸の外周囲に周方向に設けられたバーコードパターンよりなっている。
【0033】
したがって、該構成のワーク搬送ロボットでは、実際のロボット本体およびアーム相互間の相対的な位相角のズレをバーコードパターンを基準として光学センサーによって高精度に読み取ることができ、同読み取り値に基いて確実に位相角のズレ量を補正することができる。
(3) 請求項3の発明
この発明の課題解決手段は、上記請求項1又は請求項2の発明の課題解決手段の構成において、光学センサーは、発光および受光手段を備えて角度情報表示部のバーコード情報を読み取るように構成されている。
【0034】
このような構成によれば、発光手段でバーコード表示された角度情報を照射し、その反射光を受光手段に入力して角度情報を正確かつ確実に読み取ることができるようになる。
【0035】
その結果、実際のアーム相互間の相対的な位相角のズレを高精度に読み取ることができ、確実にズレ量を補正することができる。
【0036】
(4) 請求項4の発明
この発明の課題解決手段は、上記請求項1,請求項2又は請求項3の発明の課題解決手段の構成において、ワークが半導体ウエハであることを特徴としている。
【0037】
最近のICチップ製造工程等の半導体製造分野では、回路パターンの極微細化が進み、極微量の金属、有機物等の不純物による汚染の影響が問題視されている。そして、その解決手段として、超臨界流体を用いた洗浄技術が実用化されようとしている。
【0038】
このような超臨界流体洗浄装置によれば、従来からのRCA洗浄、各種の高周波や超音波による洗浄、その他の洗浄方法、またスピンドライヤーやレーザー照射、加熱等による乾燥方法のような微細構造を破壊させる問題を解決することができる。
【0039】
しかし、このように1枚毎の洗浄処理しか行えないのでは、処理効率が悪く、多くの枚数の被洗浄物を洗浄処理するのには相当に長い時間が必要となる。
【0040】
洗浄前の被洗浄物を洗浄処理チャンバー内に搬送搬入する搬送搬入ロボットおよび洗浄処理終了後の被洗浄物を洗浄処理チャンバーから取り出す搬出搬送ロボットを設け、洗浄処理チャンバー内の適切な位置に複数枚の被洗浄物を適正に収納セットして順次洗浄処理することができるようにすることができると、上述の問題を解決することができる。
【0041】
上記請求項1,請求項2または請求項3の発明の課題解決手段の構成によるワーク搬送ロボットは、そのようなワーク搬送装置に適している。
【発明の効果】
【0042】
以上の結果、本願発明によると、ロボット本体とアームおよびアーム相互間の成す角度を正確に検出し、同検出された正確な回転位置情報によって搬送制御することにより、経時的なタイミングベルトの伸張があっても、搬送位置のズレを生じさせることのない高精度のワーク搬送ロボットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本願発明の最良の実施の形態1に係るワーク搬送ロボットの縦断面図である。
【図2】同ロボットの第3の関節部の構成を示す縦断面図である。
【図3】同第3の関節部における回転角検出部の構成を示す分解斜視図である。
【図4】同図3の回転角検出部における角度情報表示部の構成を示す部分拡大図である。
【図5】従来のワーク搬送ロボットの外部構成を示す斜視図である。
【図6】同ロボットのアーム伸張状態の平面図である。
【図7】同ロボットのアーム中間待機状態の平面図である。
【図8】同ロボットのアーム収縮格納状態の平面図である。
【図9】同ロボットの縦断面図である。
【図10】同ロボットの各アームのリンク関係を示す該略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(実施の形態1)
先ず図1〜図4は、本願発明の実施の形態1に係るワーク搬送ロボットの構成を示している。
【0045】
先ず図1は、当該ロボットの全体的な断面構造(前述の図9に対応)を示している。
【0046】
図1中において、符号2は、前述した図5のものと同様のシリンダ構造の基台部1のシリンダおよび駆動モータによって上下Z軸方向および軸周りθ方向に駆動されるロボット本体の昇降台部である。この昇降台部2の上部には、第1,第2の2本のアーム3,4を介して先端側に半導体ウエハ把持用のチャック部7を備えたチャック部材6が設けられている。
【0047】
第1のアーム3は、所定の長さを有する偏平な中空構造体よりなり、その基端側を第1の関節部を介して水平回転可能に昇降台部2の上端部に同軸状に支持されている。また第2のアーム4は、所定の長さを有する一層偏平な中空構造体よりなり、その基端側を上記第1のアーム3の先端側上部に第2の関節部を介して水平回転可能に支持されている。またリストブロック5は、全体として前方後円形状で、後円部が短かい円筒体構造となっている。そして、同円筒体部分の底壁5bを上記第2のアーム4の先端側上部に相対回動可能に軸支されている一方、前方側部分が上壁5aの厚さ部分だけ低い状態で前方に所定の長さ延設されて、該延設部に次に述べるチャック部材6の基端側がビス等の螺合手段により重合締結されるようになっている。またチャック部材6は、所定の長さを有する偏平な中空構造体よりなり、その基端側を上記のようにしてリストブロック5の延設部に締結固定され、リストブロック5および第3の関節部を介して上記第2のアーム4の先端側上部に水平回転可能に支持されている。
【0048】
さらにチャック部7は、その先端がY形に分岐され、それら一対の分岐片7a,7aの先端に各々半導体ウエハ吸着部(真空吸引口を備えた吸着パッド)7b,7bを有して構成されており、これら各半導体ウエハ吸着部7b,7bで、図5のように半導体ウエハWを吸着固定することによって、半導体ウエハWを確実に把持するようになっている。半導体ウエハ吸着部7b,7bは、例えばチャック部材6内の図示しない配設パイプを介して真空ポンプからの吸引負圧を作用させることによって、半導体ウエハWを吸着するようになっている。
【0049】
第1の関節部は、図1に示すように、昇降台部2の天板構造の支持壁2b上に一体に立設された第1の中実シャフト2dと、該第1の中実シャフト2dの外周に相対回転可能に嵌合された筒状の第1の中空シャフト15とからなっている。そして、第1の中空シャフト15は、上記第1のアーム3の基端側下部から所定の長さ下方に筒状に延びているとともに、同延設部の下端外周部には所定の外径の第1の歯付プーリ20が一体に固着されている。
【0050】
一方、上記昇降台部2側支持壁2bの外周寄り下面側にはアーム駆動用のモータ(ステッピングモータ)10が、その駆動軸12を所定の長さ上方に突出させた状態で設けられており、同駆動軸12の上端には上記第1の歯付プーリ20に対応する同第1の歯付プーリ20よりも小径の歯付モータプーリ13が固着されている。
【0051】
そして、これら歯付モータプーリ13と第1の歯付プーリ20との間には、第1のタイミングベルト(歯付ベルト)14が架けられ、上記アーム駆動用のモータ10が作動すると、上記歯付モータプーリ13を介して第1の歯付プーリ20が回転せしめられ、その回転角および回転方向に応じて上記第1のアーム3が水平方向の所定の方向に、所定の角度回動するようになっている。モータ10には、上記歯付モータプーリ13の回転角に応じて所定の数のパルス信号を発生するパルスエンコーダ11が同軸構造で付設されている。
【0052】
一方、第1の中実シャフト2dの上端は上記第2のアーム4の基端内に嵌挿され、同嵌挿部の上端において所定の外径の第2の歯付プーリ30が固着されている。
【0053】
なお、上記第1の中空シャフト15の外周は、軸受部材16を介して、上記昇降台部2の支持壁2bを覆うカバー部材2cに支持されている。
【0054】
第2の関節部は、上記中空構造の第1のアーム3の底壁部3bの先端側部分において中空構造の第2のアーム4の底壁部4bの基端側を貫通して所定の高さ上方に突設された第1のアーム3の底壁部3bと一体構造の第2の中実シャフト3cと、該第2の中実シャフト3cの外周に相対回転可能に嵌合され、軸受部材22を介して第2のアーム4の天井壁4cにより相対回動可能に支持された第2の中空シャフト19とからなっている。そして、第2の中実シャフト3cの上端は上記中空構造の第2のアーム4の先端部内に嵌挿され、同嵌挿部の上端に所定の外径の第4の歯付プーリ40が固着されている。また上記第2の中空シャフト19の下端には、上記第2の歯付プーリ30の外径よりも小径の第3の歯付プーリ31が固着されている。そして、該第3の歯付プーリ31と上記第2の歯付プーリ30との間には、第2のタイミングベルト(歯付ベルト)18が架けられ、相互に連係して回転するようになっている。
【0055】
第3の関節部は、上記チャック部材6を支持しているリストブロック5の底壁部5b部分から所定の長さ下方に延びる大径の第3の中実シャフト4aを、軸受部材25を介して上記第2のアーム4の天井壁4c部分に回転可能に支持して構成されており、同第3の中実シャフト4aの下端には、上記第2の中実シャフト3c上端の第3の歯付プーリ40よりも小径の第5の歯付プーリ41が設けられている。そして、この第5の歯付プーリ41は、上記第2の中実シャフト3c上端の第4の歯付プーリ40に対して第3のタイミングベルト(歯付ベルト)24を介して連係されている。
【0056】
なお、この実施の形態の場合、上記第3の関節部の上記第3の中実シャフト4aの上端面には、周方向に4ケ所のピン挿入孔H,H・・が設けられている一方、対向するリストブロック5の凹状の底壁部5b外面には、同様の位置にピン軸P,P・・が突設されている。そして、これらピン軸P,P・・とピン挿入孔H,H・・を相互に嵌合することにより、図2、図3のようにリストブロック5と第2のアーム4側の中実シャフト4aが相互に係脱可能な形で連結されている。
【0057】
以上の歯付モータプーリ13、第1〜第5の歯付プーリ20,30,31,40,41、第1〜第3のタイミングベルト14,18,24相互の係合関係も、前述の図10のようになる。
【0058】
ここで、例えば上記第2の歯付プーリ30の外径と第3の歯付プーリ31の外径との比(ピッチ円の比)を2:1とし、また第4の歯付プーリ40の外径と第5の歯付プーリ41の外径との比(同)を1:2に設定している。
【0059】
そして、これにより例えば前述の図6に示すように、上記第1のアーム3がロボット本体側の昇降台2に対してα角回動すると、上記第2のアーム4は、上記第1のアーム3に対して2α角回動し、上記リストブロック5は上記第2のアーム4に対して角度αだけ回動する。その結果、上記リストブロック5に取り付けたチャック部材6は、ロボット本体側昇降台2の中心(2d中心)に対して、放射状に動作することになる。
【0060】
つまり、上記モータ10が所定の回転量、所定の回転方向に駆動されると、上記第1,第2のアーム3,4およびチャック部材7が、前述の図6、図7、図8のような状態に任意に作動されて、図示しない洗浄チャンバ内への半導体ウエハWの搬入、また同洗浄チャンバー内からの洗浄終了後の半導体ウエハWの取り出し、収納トレイへの搬送などに使用される。
【0061】
このような構成の場合、単一のモータ10で複数のアーム部材3,4,6の各々を相互に所定の位相角でリンク駆動することができるので、アーム部材数の割には駆動手段が少なくて足り、低コストに構成することができる。
【0062】
ところが、上記のような構成の場合、使用時間の経過により各第1〜第3のタイミングベルト14,18,24が伸びて徐々にロボット本体側昇降台2、アーム3,4,チャック部材6相互間の位相角にズレが生じる問題がある。
【0063】
もちろん各タイミングベルト14,18,24は組立、調整時に適正な張力管理をされているが、やはり経年変化、第1,第2のアーム3,4,チャック部材6の加減速度の変化、積載負荷の相違などにより、所定の伸びを生じ、しかも該タイミングベルト14,18,24の伸びは各々で必ずしも一定ではない。
【0064】
そして、最終的なワーク搬送位置は、それら各タイミングベルト14,18,24の伸び量を合わせた分だけ所定の位置よりずれ、適正な位置に搬送することができないことになる。
【0065】
したがって、このような搬送位置のずれを解消するためには、該タイミングベルト14,18,24の伸びによる搬送位置のずれを何らかの方法で検出し、各アームの移動のずれを補正することが必要になる。
【0066】
本実施の形態では、このような問題を解決するために、上記ロボット本体側昇降台2およびアーム3,4,6各相互間の成す角度(第1〜第3の各関節部の相対角)を各々光学的に正確に検出して目標とする位置制御量を補正することにより、最終的な搬送位置のズレを生じさせないように構成している。
【0067】
すなわち、上記ロボット本体側昇降台2および第1,第2のアーム3,4、チャック部材6間の各関節部には、例えば図2、図3に示すように、それら相互間の相対的な回転角度情報42を示す角度情報表示部42と、該角度情報表示部42の角度情報を光学的に読み取る光学センサー51とを上下に対向する形で設け、当該各関節部の連結軸2d,3c,4aを介して相互に相対回動するロボット本体側昇降台2と第1のアーム3、第1のアーム3と第2のアーム4、第2のアーム4とチャック部材6相互間の実際の相対回転角を検出できるようにしている。
【0068】
なお、図2、図3では、第3の関節部に設置したものを示しているが、第1,第2の各関節部のものも全く同様のものであり、同様の作用を奏する。
【0069】
したがって、このような構成のワーク搬送ロボットでは、実際のロボット本体側昇降台部2および第1,第2のアーム3,4相互間の相対的な位相角のズレを、角度情報表示部42に表示された相対的な回転角度情報を読み取る光学センサー51によって高精度に検出することができ、同検出値に基いて確実に位相角のズレ量を補正制御することができる。
【0070】
そして、上記角度情報表示部42は、例えば図4に拡大して示すような、連結軸4a(3c,2d)の外周囲に周方向に設けられたバーコードパターンよりなっている。
【0071】
したがって、該構成では、実際のロボット本体側昇降台2および第1,第2のアーム3,4、チャック部材6相互間の相対的な位相角のズレを当該バーコードパターンを基準として光学センサー51によって高精度に読み取ることができ、同読み取り値に基いて確実に位相角のズレ量を補正することができる。
また上記光学センサー51は、例えば発光部(LEDなど)および受光部(フォトトランジスタなど)を一体に備えたフォトセンサにより構成し、該フォトセンサにより角度情報表示部42のバーコード情報を光学的に読み取るように構成されている。
【0072】
したがって、同フォトセンサの発光部でバーコード表示された角度情報部42を照射し、その反射光を受光部に入力して角度情報を正確かつ確実に読み取ることができる(例えばON,OFFパルスの数により)。
【0073】
なお、上記角度情報表示部42および光学センサ51は、どちらが上で、どちらが下であってもかまわないが、それらを設置した各関節部の連結軸4a、3c・19、2d・15周りには、それら角度表示部42および光学センサ51を囲う形で、相互の回転に支障のない図2に示すような防塵カバー55を設けることが好ましい。
【0074】
これらの結果、本実施の形態の構成によると、ロボット本体側昇降台部2と第1のアーム3、第1のアーム3と第2のアーム4、第2のアーム4とチャック部材6相互間の成す角度を正確に検出し、同検出された回転位置情報によって上述したタイミングベルト14,18,24の伸びによるズレ量を適正に修正して搬送制御することにより、経時的なタイミングベルト14,18,24の伸張があっても、搬送位置のズレを生じさせることのない高精度のワーク搬送ロボットを提供することが可能となる。
【0075】
また、以上の結果、モータ10のパルスエンコーダ11を省略することもできる。
【符号の説明】
【0076】
1は基台部、2は昇降台部、3は第1のアーム、3cは第2の中実シャフト、4は第2のアーム、4aは第3の中実シャフト、5はリストブロック、6はチャック部材、7はチャック部、24は第3のタイミングベルト、25は軸受部材、31は第3の歯付プーリ、40は第4の歯付プーリ、41は第5の歯付プーリ、42は角度情報表示部、51は光学センサである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット本体と、該ロボット本体に対して順次関節部を介して相対回動可能に連接された複数のアームと、該複数のアームの先端側アームに相対回動可能に取付けられたリストブロックと、上記複数のアームの各々を回動作動する連係手段と、上記ロボット本体側にあって上記連係手段を所定の連係関係で駆動する駆動手段とを備えてなるワーク搬送ロボットであって、上記ロボット本体および複数のアーム間の各関節部には、ロボット本体およびアーム相互の相対的な回転角度情報を示す角度情報表示部と、該角度情報表示部の角度情報を光学的に読み取る光学センサーとを設け、上記各関節部の連結軸を介して相互に相対回動するロボット本体およびアーム相互の実際の回転角を検出できるようにしたことを特徴とするワーク搬送ロボット。
【請求項2】
角度情報表示部は、連結軸の外周囲に周方向に設けられたバーコードパターンよりなることを特徴とする請求項1記載のワーク搬送ロボット。
【請求項3】
光学センサーは、発光および受光手段を備えて角度情報表示部のバーコード情報を読み取るように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のワーク搬送ロボット。
【請求項4】
ワークが半導体ウエハであることを特徴とする請求項1,2又は3記載のワーク搬送ロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−11316(P2011−11316A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159430(P2009−159430)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(390000594)株式会社レクザム (64)
【Fターム(参考)】