説明

リーチ式フォークリフト

【課題】安価な構造で磁気式エンコーダへの配線の断線を正確に検出できるリーチ式フォークリフトを提供する。
【解決手段】走行及び換向を行う駆動用車輪5と、操舵装置31及び操舵制御装置51とを有するリーチ式フォークリフトであって、操舵装置31に、ハンドル32の軸部に設けられた軸受34の回転側と非回転側とに亘って設けられてハンドル32の回転変位量を検出する磁気式エンコーダ35と、ハンドル32のトルクを検出するトルク検出器39と、駆動用車輪5の換向を補助する換向補助電動機46とを具備させ、さらに、磁気式エンコーダ35及びトルク検出器39からのそれぞれの検出信号の有無により、磁気式エンコーダ35への配線の断線を検出する断線検出装置71を具備させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーチ式フォークリフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リーチ式フォークリフトは、小回りが利くために、倉庫や工場内など屋内の比較的狭い場所での使用に適している。また、頻繁にハンドル操作を行うので、パワーステアリング方式が適しており、実際に多くのリーチ式フォークリフトで採用されている。パワーステアリング方式では、通常はハンドルの回転を電動モータにより補助するものであるため、ハンドルおよびタイヤの回転角を正確に認識しておく必要がある。しかし、これら回転角の検出器が断線すれば、正確に回転角を検出できず、正常な走行操作を行えなくなるので、このような断線を検出できるものとして、回転角を検出するポテンショメータの断線検出装置を備えたフォークリフトが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記特許文献1のフォークリフトは、ハンドルおよびタイヤの回転角をそれぞれ検出するポテンショメータが必要であり、一般に高価である。したがって、安価な構造とするために、センサベアリングを採用してハンドル側にのみ設け、センサベアリングで認識されたハンドルの回転角を操舵制御装置により補正する構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−240398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のように1個のセンサベアリングを設けたリーチ式フォークリフトでは、ポテンショメータが用いられていないため、上記特許文献1の断線検出装置を備えることができない。また、センサベアリングは回転方向および回転変位量を検出するに過ぎないので、上記リーチ式フォークリフトでは、センサベアリングの断線とハンドルの回転の停止を区別できず、正確に断線を検出できない。
【0006】
そこで、本発明は、安価な構造で断線を正確に検出できるリーチ式フォークリフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係るリーチ式フォークリフトは、走行および換向を行う駆動用車輪と、操舵装置および操舵制御装置とを有するリーチ式フォークリフトであって、
上記操舵装置に、ハンドルの軸部に設けられた軸受の回転側と非回転側とに亘って設けられて当該ハンドルの回転変位量を検出するエンコーダと、ハンドルのトルクを検出するトルク検出器と、駆動用車輪の換向を補助する換向補助電動機とを具備させ、
さらに、上記エンコーダおよびトルク検出器からのそれぞれの検出信号の有無により、当該エンコーダへの配線の断線を検出する断線検出手段を具備させたものである。
【0008】
また、請求項2に係るリーチ式フォークリフトは、運転席が設けられた後方の本体部およびこの本体部から前方に突出された左右一対のアウトリガー部を有する車両本体と、この車両本体のアウトリガー部に前後方向で設けられたガイド溝に移動可能に案内される荷役装置と、上記本体部に設けられて車両本体の走行および換向を行う駆動用車輪と、この駆動用車輪の換向を操作する操舵装置および操舵制御装置とを有するリーチ式フォークリフトであって、
上記荷役装置に、両側面に上記ガイド溝に案内される前後一対のガイドローラがそれぞれ設けられた移動体と、この移動体に、リフト用シリンダ装置を介して少なくとも昇降自在に設けられた荷物保持用のフォーク部とを具備させ、
上記操舵装置に、運転席に設けられたハンドルと、このハンドルの軸部に設けられた軸受の回転側と非回転側とに亘って設けられて当該ハンドルの回転変位量を検出するエンコーダと、上記ハンドルのトルクを検出するトルク検出器と、ハンドルにより回転されて下部に上記駆動用車輪が設けられた換向ギアと、この換向ギアの回転を補助する換向補助電動機とを具備させ、
さらに、上記エンコーダおよびトルク検出器からのそれぞれの検出信号の有無により、当該エンコーダへの配線の断線を検出する断線検出手段を具備させたものである。
【0009】
さらに、請求項3に係るリーチ式フォークリフトは、請求項2に記載のリーチ式フォークリフトにおいて、断線検出手段が、少なくとも、トルク検出器でトルクが有ると判断された検出信号を受信し且つエンコーダからの検出信号を受信しない場合に当該エンコーダへの配線が断線したと仮定する信号を発信する一次断線判断部と、エンコーダへの配線が断線したと仮定する信号を一次断線判断部から受信し且つトルクが有ると判断された信号を受信しない場合に当該断線について二次判断の必要が有ると判断する信号を発信する判別部と、二次判断の必要が有ると判断された信号を判別部から受信し且つエンコーダから所定時間内において検出信号を受信しない場合に上記断線について最終判断の必要が有ると判断する信号を発信する二次断線判断部と、補助換向電動機のデューティ比を検出して当該検出信号を発信するデューティ比検出部と、二次判断の必要が有ると判断された信号を上記二次断線判断部から受信した場合または二次判断の必要が有ると判断された信号を判別部から受信しない場合であって上記デューティ比検出部から検出信号として受信した上記デューティ比が所定値以上であればエンコーダへの配線が断線したと確定する断線確定部とから構成されるものである。
【0010】
また、請求項4に係るリーチ式フォークリフトは、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリーチ式フォークリフトにおいて、エンコーダへの配線の断線が検出された際に、走行速度を所定値以下に制限するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
上記リーチ式フォークリフトによると、ポテンショメータの代わりにエンコーダを用いており、このエンコーダへの配線の断線を検出するために、ハンドル変位量の有無だけでなく、トルク検出器で検出されるトルクも判断材料に用いているので、設けられたエンコーダが1個であっても、断線をハンドルの回転停止と誤認することなく正確に検出できる。なお、ポテンショメータを用いていないことからも、安価な構造にすることができる。
【0012】
また、トルクがトルク検出器の不感帯の内外かを判断した後に再度エンコーダからの信号を用いて断線を判断しているので、ハンドルの回転を停止または逆回転させた場合でも、より正確にセンサベアリングへの配線の断線を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1に係るリーチ式フォークリフトの概略構成を示す斜視図である。
【図2】同リーチ式フォークリフトの本体部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】同リーチ式フォークリフトの断線検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】同リーチ式フォークリフトにおいてセンサベアリングへの配線の断線が検出されるフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
以下に、本発明の実施例1に係るリーチ式フォークリフトについて図1〜図4に基づき説明する。
このリーチ式フォークリフトは、図1に示すように、大きく分けて、運転席4が設けられた後方の本体部3およびこの本体部3から前方に突出された左右一対のアウトリガー部7を有する車両本体2と、この車両本体2のアウトリガー部7に設けられて断面が溝型状にされたガイド部材の溝部に前後方向で移動可能(出退可能)に案内される荷役装置9とから構成されている。なお、本体部3に駆動用車輪5およびガイド輪6が、また左右のアウトリガー部7に案内用車輪10がそれぞれ設けられており、この駆動用車輪5の換向は、本体部3に具備された操舵装置31および操舵制御装置51により行われる。
【0015】
また、上記荷役装置9は、両側面にガイド部材の溝部内に移動可能に案内される前後一対のガイドローラがそれぞれ設けられた移動体11と、この移動体11と本体部3とに亘って配置されて当該移動体11を前後方向で移動(出退)させるリーチ用シリンダ装置と、昇降用シリンダ装置19およびチルト用シリンダ装置を介して昇降自在および前後方向で傾動自在に設けられた荷物保持用のフォーク部14とから構成されている。
【0016】
上記移動体11は、マスト体15と、このマスト体15の両側面に固定されて側面視が略直角三角形状にされたマスト支持部材と、上記マスト体15に上下方向で案内される昇降部材17とから構成されるとともに、この昇降部材17にフォーク部14が鉛直面内で揺動可能に保持されている。この昇降部材17とフォーク部14とに亘ってチルト用シリンダ装置が配置されている。
【0017】
なお、マスト体15は、マスト支持部材が取り付けられる固定側マストと、この固定側マストに昇降可能に設けられる昇降側マストと、固定側マストおよび昇降部材17に設けられて上記昇降部材17の高さを検出する揚高検出装置とから構成されている。そして、昇降部材17は固定側マストに昇降可能に案内されるとともにチェーン18を介して固定側マストに連結され、このチェーン18は昇降側マストに設けられたスプロケット16に噛合されている。つまり、昇降側マストが昇降用シリンダ装置19により昇降されると、スプロケット16およびチェーン18を介して昇降部材17は固定側マストに対して昇降することになる。
【0018】
一方、上記操舵装置31は、図2に示すように、運転席4に設けられたハンドル32と、このハンドル32の軸部に設けられてハンドル32の回転変位量(相対値)を検出するセンサベアリング33と、当該ハンドル32の軸部の先端に設けられてハンドル32のトルクを伝達するスプロケット36と、先端にスプロケット38が設けられた入力軸を有するとともに当該スプロケット38とハンドル32の軸部のスプロケット36にチェーン37が掛け渡されて伝達されたトルクを検出するトルク検出器39と、このトルク検出器39の出力軸40の先端に一端部が接続されてハンドル32のトルクを伝達するユニバーサルジョイント41と、このユニバーサルジョイント41の他端部に接続された駆動ギア42と、上記駆動用車輪5を換向させるとともに回転自在に支持する取付部44と、この取付部44の上端で水平に設けられて上記駆動ギア42に噛合された換向ギア43と、当該取付部44の旋回半径内に位置するように本体部3に設けられて駆動用車輪5が所定の角度(以下、最大換向角という)以上に換向することを制限する位置決め用のストッパー45と、出力軸に設けられたピニオンに噛合して換向ギア43の回転を補助する換向補助電動機46とから構成される。なお、上記センサベアリング33は、上記ハンドル32の軸部を受ける軸受34と、この軸受34の回転側と非回転側とに亘って設けられて磁気力を介して当該軸部の回転変位量を検出する磁気式エンコーダ(エンコーダの一例である)35とから構成される。例えば、この回転側は、軸受34の内輪であって、外周に多極磁石が鋸歯状に設けられており、非回転側は、軸受34の外輪であって、内周に上記多極磁石を検知する磁気センサが設けられている。なお、トルク検出器で微小なトルクまで検出されると、操舵制御装置51による駆動用車輪5の換向が過敏となる。よってハンドル32の遊びを設けるためにも、上記トルク検出器39では、微小なトルクを検出しない範囲、すなわち不感帯が設けられている。
【0019】
また、上記操舵制御装置51は、センサベアリング33で検出された検出信号としてのハンドル32の回転変位量が入力されるハンドル変位量入力部52と、このハンドル変位量入力部52に入力された当該回転変位量により現状のハンドル32の回転角(絶対値)を算出して記憶するハンドル角演算部53と、当該回転変位量により駆動用車輪5の必要な換向変位量を算出する換向変位量演算部54と、トルク検出器39で検出された検出信号としてのハンドル32のトルクが入力されるトルク入力部55と、上記換向変位量演算部54で算出された換向変位量およびトルク入力部55に入力されたトルクに基づいて換向補助電動機46を駆動させる換向補助指示部56とから構成される。さらに、上記操舵制御装置51には、換向補助電動機46の電流を計測して当該電流が所定値以上であればハンドル角補正部(後述する)58に指示を行う電流判断部(具体的には、電流を計測する電流計と、計測された電流が所定値以上であるかを判断する判断部と、指示を行う指示部とからなる)57と、電流判断部57からの指示を受けてハンドル角演算部53に記憶された回転角を補正するハンドル角補正部58とが具備される。このハンドル角補正部58は、具体的には、駆動用車輪5が最大換向角での位置に対応するハンドル32の回転角が予め設定されており、電流判断部57からの指示を受けた時に、ハンドル角演算部53で算出されて記憶させる回転角を、上記の設定された回転角へ変更する補正を行うものである。例えば、ハンドル32の回転と駆動用車輪5の換向の比率が14:1であり、最大換向角が90度である場合、予めハンドル角補正部58には90×14=1260度(3.5回転)が設定されている。そして、駆動用車輪5が最大換向角(90度)の位置の時に、ハンドル角演算部53で算出された回転角が正確な角度(1260度)でなくても、予め設定された角度(1260度)に補正される。
【0020】
なお、本体部3には、運転席4に設けられて走行速度を制御するアクセルペダル61と、換向ギア43の上方に設けられて駆動用車輪5を走行駆動させる走行電動機62と、この走行電動機62の回転数を制御するとともに最大回転数を制限する走行制御装置63とが具備されている。すなわち、この走行制御装置63は、アクセルペダル61の踏込量に応じて走行電動機62の回転数を制御するとともに、上記ハンドル角演算部53で算出された回転角が大きくなるにつれて走行電動機62の回転数の上限を抑える制御を行う。
【0021】
ところで、上記センサベアリング33への配線が断線すれば、ハンドル32の回転角変位量を検出できず、換向補助電動機46を適切に作動させることができないので、センサベアリング33の断線を検出する断線検出装置(断線検出手段の一例である)71が本体部3に具備されている。
【0022】
この断線検出装置71は、図3に示すように、トルク入力部55に入力されたトルクがトルク検出器39の不感帯外であれば検出信号を一次断線判断部76および判別部77(いずれも後述する)へ発信するトルク判断部73と、ハンドル変位量入力部52に入力されたハンドル変位量(センサベアリング33からの検出信号)が有れば検出信号を一次断線判断部76および二次断線判断部(後述する)78へ発信するハンドル回転判断部72と、上記トルク判断部73から検出信号を受信し且つハンドル回転判断部72から検出信号を受信しない場合にセンサベアリング33への配線が断線したと仮定する信号(以下、断線仮定信号という)を判別部77へ発信する一次断線判断部76とから構成される。なお、この一次断線判断部76にはメモリが内蔵されており、センサベアリング33への配線が断線したと仮定されると、この情報が当該メモリに一時記憶され、すなわちフラグが立てられる。
【0023】
さらに、上記断線検出装置71には、上記一次断線判断部76から断線仮定信号を受信し且つトルク判断部73から検出信号を受信しない場合に上記断線について二次判断の必要が有ると判断する信号(以下、要二次判断信号という)を二次断線判断部78および断線確定部(後述する)79へ発信する判別部77と、この判別部77から要二次判断信号を受信し且つ所定時間内においてハンドル回転判断部72から検出信号を受信しない場合に上記断線について最終判断の必要が有ると判断する信号(以下、要最終判断信号という)を断線確定部79へ発信する二次断線判断部78とが具備される。なお、上記所定時間を任意に設定でき、この間にハンドル回転判断部72から検出信号を受信しなければ、二次断線判断部78から断線確定部79へ要最終判断信号が発信され、また当該検出信号を受信すれば、フラグリセット信号が一次断線判断部76へ発信される。したがって、当該所定時間を長く設定すれば、断線検出の反応が遅くなるが、正確性は向上し、例えば図4では2.0秒間に設定した例を示す。
【0024】
加えて、断線検出装置71には、換向補助電動機46のデューティ比を検出して当該検出信号を断線確定部79へ発信するデューティ比検出部74と、要最終判断信号を受信した場合または要二次判断信号を受信しない場合であって当該デューティ比検出部74から受信する換向補助電動機46のデューティ比が所定値(任意に設定できる値であり、センサベアリング33から検出信号が確実に発信されるハンドル32の回転速度となるような値、例えば20%である)以上であれば上記断線が発生したと確定する信号(以下、断線確定信号という)を走行制御装置63へ発信するが当該デューティ比が当該所定値未満であればフラグリセット信号を一次断線判断部76へ発信する当該断線確定部79とが具備される。なお、上記デューティ比は、例えば換向補助電動機46の電圧のパルスから検出される。
【0025】
上記構成において、ハンドル32を回転させれば、ハンドル32の操作トルクは、ハンドル32の軸部からスプロケット36およびチェーン37を介してトルク検出器39に伝達される。そして、トルク検出器39の出力軸40からユニバーサルジョイント41を介して駆動ギア42までトルクが伝達される。この駆動ギア42で換向ギア43を回転させることにより、換向ギア43の下部に設けられた駆動用車輪5の換向が行われる。すなわち、駆動用車輪5の換向は、ハンドル32の操作トルクが直接伝達されて行われるものである。
【0026】
また、トルク検出器39で検出されたトルクは、操舵制御装置51のトルク入力部55に入力される。同様に、ハンドル32の回転変位量は、センサベアリング33により検出されて、操舵制御装置51のハンドル変位量入力部52に入力される。さらに、換向変位量演算部54では、この回転変位量に基づいて必要な駆動用車輪5の換向変位量が算出される。そして、換向補助指示部56は、この換向変位量およびトルクに基づいて、換向補助電動機46を駆動させる。すなわち、駆動用車輪5の換向は、換向補助電動機46により補助されるので、ハンドル32の操作負担が軽減される。
【0027】
一方、ハンドル角演算部53では、記憶されているハンドル32の回転角に、ハンドル変位量入力部52に入力された回転変位量が加えられて、新たなハンドル32の回転角が算出されて記憶される。
【0028】
ところで、駆動用車輪5が最大換向角まで換向されると、換向ギア43の回転がストッパー45で制限されるため、換向補助電動機46の電流が上昇し、所定値以上となる。この時、電流判断部57から指示が行われて、ハンドル角補正部58により、ハンドル角演算部53に記憶された回転角を、予め設定された正確な回転角(駆動用車輪5が最大換向角での位置に対応するハンドル32の回転角)へ変更する補正が行われる。したがって、駆動用車輪5が最大換向角まで換向される度に、操舵制御装置51で認識されるハンドル32の回転角が補正されるので、ハンドル32の正確な回転角を制御操舵装置31で認識することができ、さらに、ハンドル32の回転角の原点を検出するための機器を別途設けることが不要になる。
【0029】
また、走行制御装置63では、ハンドル角演算部53に記憶された回転角と、アクセルペダル61の踏込量に応じて、走行電動機62の回転数を制御する。したがって、アクセルペダル61の踏込量に応じて車両本体2の走行速度が制御されるとともに、ハンドル32の回転角に応じて当該走行速度の最大値が制限される。
【0030】
上記リーチ式フォークリフト1の走行中において、センサベアリング33への配線の断線が断線検出装置71により検出される。すなわち断線検出装置71では、トルク判断部73でトルク検出器39のトルクが不感帯の内外かを判断し、ハンドル回転判断部72ではハンドル変位量入力部52に入力されたハンドル変位量の有無を判断する。また、一次断線判断部76では、トルク判断部73から不感帯外の検出信号を受信し且つハンドル回転判断部72からハンドル変位量有りの検出信号を受信しない場合に、断線仮定信号を判別部77へ発信するとともに、フラグを立てる。このように、断線を確定せずに仮定することで、断線を正確に検出するための判断をさらに行えるようにし、断線検出の正確性を向上させる。
【0031】
上記判別部77では、当該断線仮定信号を受信し且つトルク判断部73から検出信号を受信しない場合に要二次判断信号を二次断線判断部78へ発信する。そして、二次断線判断部78は、要二次判断信号を受信し且つ所定時間(例えば2.0秒間)においてハンドル回転判断部72から検出信号を受信しない場合に、要最終判断信号を断線確定部79へ発信する。こうすることで、断線を仮定した後にハンドルの回転を停止または逆回転させた場合には、断線について二次判断を行えるようにし、断線検出の正確性を向上させている。
【0032】
さらに、デューティ比検出部74が、換向補助電動機46のデューティ比、すなわち、換向補助電動機46の回転数を制御する電圧の1周期あたりのパルス幅を検出し、当該検出信号を断線確定部79へ発信する。そして、断線確定部79は、要最終判断信号を受信した場合または判別部77から要二次判断信号を受信しない場合であって、デューティ比検出部74から受信する換向補助電動機46のデューティ比が所定値(例えば20%)以上であれば、センサベアリング33への配線の断線が発生したと確定する。また、このとき、安全のため走行速度を制限する必要があるので、断線確定信号が走行制御装置63へ発信されて、この走行制御装置63で走行電動機62の最大回転数を制限し、車両本体2の走行速度が例えば時速5kmを超えないようにする。一方、デューティ比が当該所定値(上記の例だと20%)未満であれば断線を検出しないようにすることで、ハンドル32の回転速度が遅くてハンドル回転判断部72から検出信号が発信されない場合でも、上記断線の誤検出を防ぐことができる。
【0033】
なお、二次断線判断部78または断線確定部79から一次断線判断部76へフラグリセット信号が発信されると、一次断線判断部76のメモリに記憶された情報が消去され、すなわちフラグがリセットされて、断線の仮定が解除される。
【0034】
このように、上記リーチ式フォークリフト1は、高価なポテンショメータ等や、ハンドル32の回転角の原点を検出するための機器を設ける必要がないので、安価にすることができる。また、ハンドル32の回転角の検出用に別途ギア等が設けられておらず、ハンドル32の操作性を向上させることができる。さらに、操舵制御装置51で認識されるハンドル32の回転角は、メンテナンス時など主電源をオフにするとずれるものであるが、駆動用車輪5が最大換向角まで換向される度に補正されるため、ハンドル32の正確な回転角を認識させることができる。また、ハンドル32の正確な回転角を認識できることにより、走行速度の制御を精度良く行い、車両本体2の転倒を防止することができる。
【0035】
さらに、センサベアリング33への配線の断線を検出するために、ハンドル変位量の有無だけでなく、トルク検出器39で検出されるトルクも判断材料に用いているので、上記リーチ式フォークリフト1のように設けられたセンサベアリング33が1個であっても、上記断線をハンドル32の回転停止と誤認することなく検出できる。
【0036】
また、トルクがトルク検出器39の不感帯の内外かを判断した後に再度センサベアリング33からの信号を用いて断線を判断しているので、ハンドル32の回転を停止または逆回転させた場合でも正確にセンサベアリング33への配線の断線を検出できる。さらに、換向補助電動機46のデューティ比が所定値(例えば20%)未満であれば上記断線を検出しないため、ハンドル32をゆっくり回転させてセンサベアリング33からの信号を受信できない場合でも、上記断線の誤検出を防ぐことができる。
【0037】
加えて、上記断線が検出されると、車両本体2の走行速度を制限することにより、安全性を向上させることができる。
ところで、上記実施例1では、エンコーダとして磁気式エンコーダ35を用いたものについて説明したが、磁気式に限定されるものではなく、光学式など他の方式によるエンコーダであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
33 センサベアリング
34 エンコーダ
39 トルク検出器
46 換向補助電動機
51 操舵制御装置
52 ハンドル変位量入力部
55 トルク入力部
62 走行電動機
63 走行制御装置
71 断線検出装置
72 ハンドル回転判断部
73 トルク判断部
74 デューディ比検出部
76 一次断線判断部
77 判別部
78 二次断線判断部
79 断線確定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行および換向を行う駆動用車輪と、操舵装置および操舵制御装置とを有するリーチ式フォークリフトであって、
上記操舵装置に、ハンドルの軸部に設けられた軸受の回転側と非回転側とに亘って設けられて当該ハンドルの回転変位量を検出するエンコーダと、ハンドルのトルクを検出するトルク検出器と、駆動用車輪の換向を補助する換向補助電動機とを具備させ、
さらに、上記エンコーダおよびトルク検出器からのそれぞれの検出信号の有無により、当該エンコーダへの配線の断線を検出する断線検出手段を具備させたことを特徴とするリーチ式フォークリフト。
【請求項2】
運転席が設けられた後方の本体部およびこの本体部から前方に突出された左右一対のアウトリガー部を有する車両本体と、この車両本体のアウトリガー部に前後方向で設けられたガイド溝に移動可能に案内される荷役装置と、上記本体部に設けられて車両本体の走行および換向を行う駆動用車輪と、この駆動用車輪の換向を操作する操舵装置および操舵制御装置とを有するリーチ式フォークリフトであって、
上記荷役装置に、両側面に上記ガイド溝に案内される前後一対のガイドローラがそれぞれ設けられた移動体と、この移動体に、リフト用シリンダ装置を介して少なくとも昇降自在に設けられた荷物保持用のフォーク部とを具備させ、
上記操舵装置に、運転席に設けられたハンドルと、このハンドルの軸部に設けられた軸受の回転側と非回転側とに亘って設けられて当該ハンドルの回転変位量を検出するエンコーダと、上記ハンドルのトルクを検出するトルク検出器と、ハンドルにより回転されて下部に上記駆動用車輪が設けられた換向ギアと、この換向ギアの回転を補助する換向補助電動機とを具備させ、
さらに、上記エンコーダおよびトルク検出器からのそれぞれの検出信号の有無により、当該エンコーダへの配線の断線を検出する断線検出手段を具備させたことを特徴とするリーチ式フォークリフト。
【請求項3】
断線検出手段が、少なくとも、トルク検出器でトルクが有ると判断された検出信号を受信し且つエンコーダからの検出信号を受信しない場合に当該エンコーダへの配線が断線したと仮定する信号を発信する一次断線判断部と、エンコーダへの配線が断線したと仮定する信号を一次断線判断部から受信し且つトルクが有ると判断された信号を受信しない場合に当該断線について二次判断の必要が有ると判断する信号を発信する判別部と、二次判断の必要が有ると判断された信号を判別部から受信し且つエンコーダから所定時間内において検出信号を受信しない場合に上記断線について最終判断の必要が有ると判断する信号を発信する二次断線判断部と、補助換向電動機のデューティ比を検出して当該検出信号を発信するデューティ比検出部と、二次判断の必要が有ると判断された信号を上記二次断線判断部から受信した場合または二次判断の必要が有ると判断された信号を判別部から受信しない場合であって上記デューティ比検出部から検出信号として受信した上記デューティ比が所定値以上であればエンコーダへの配線が断線したと確定する断線確定部とから構成されることを特徴とする請求項2に記載のリーチ式フォークリフト。
【請求項4】
エンコーダへの配線の断線が検出された際に、走行速度を所定値以下に制限するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリーチ式フォークリフト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−152807(P2011−152807A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13697(P2010−13697)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】