説明

多層プリント配線板

【課題】ヒートサイクルなどの条件下での耐クラック性に優れる多層プリント配線板を提案すること。
【解決手段】コア基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、該コア基板には、スルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、前記コア基板上に設けられた層間樹脂絶縁層は平坦であり、かつ前記コア基板に設けた導体回路には、側面を含む全表面に、同一種類の粗化層が形成されており、前記層間樹脂絶縁層を介して形成される導体回路は、無電解めっきとその上に形成された電解めっきとからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板に関し、特に、耐ヒートサイクル特性に優れる多層プリント配線板について提案する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層配線基板の高密度化という要請から、いわゆるビルドアップ多層配線基板が注目されている。このビルドアップ多層配線基板は、例えば特公平4−55555号公報に開示されているような方法により製造される。即ち、コア基板上に、感光性の無電解めっき用接着剤からなる絶縁材を塗布し、これを乾燥したのち露光現像することにより、バイアホール用開口を有する層間絶縁材層を形成し、次いで、この層間絶縁材層の表面を酸化剤等による処理にて粗化したのち、その粗化面にめっきレジストを設け、その後、レジスト非形成部分に無電解めっきを施してバイアホール、導体回路を形成し、このような工程を複数回繰り返すことにより、多層化したビルドアップ配線基板が得られる。
【0003】
このような多層プリント配線板では、コア基板にスルーホールを設けて上下の導体層を接続することにより、さらなる多層化を図ることができる。
コア基板にスルーホールを有するこの種の多層プリント配線板では、まず、コア基板にスルーホールを含む導体回路を形成し、次いで、スルーホールの壁面を含む導体表面に酸化還元処理による粗化層を設けてから該スルーホール内および導体回路間に樹脂充填材を充填し、研磨により基板表面を平坦化した後、インタープレート(荏原ユージライトのCu−Ni−Pからなる合金粗化めっき)などによる粗化めっきを施して、その上に層間樹脂絶縁層を形成していた(図1参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この方法で製造した多層プリント配線板では、導体回路表面の粗化層がインタープレートによる合金めっき粗化層からなり、導体回路側面の粗化層が黒化還元処理層からなる場合、これらの粗化層を介して導体に接合された層間樹脂絶縁層は、その粗化層の形態が異なるために、ヒートサイクル試験などによってクラックが発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その主たる目的は、ヒートサイクルなどの条件下での耐クラック性に優れる多層プリント配線板とその製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、以下に示す内容を要旨構成とする本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
コア基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、該コア基板にはスルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、
前記コア基板上に設けられた層間樹脂絶縁層は平坦であり、かつ前記コア基板に設けた導体回路には、側面を含む全表面に、同一種類の粗化層が形成されており、前記層間樹脂絶縁層を介して形成される導体回路は、無電解めっきとその上に形成された電解めっきとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本発明によれば、銅導体と層間樹脂絶縁層との界面において、導体の表面側と側面側の粗化形態の違いが原因となるクラックを効果的に防止できる。その結果、本発明の多層プリント配線板は、ヒートサイクルなどの条件下での耐クラック性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、コア基板上の層間樹脂絶縁層の表面が平坦であり、かつコア基板に設けたスルホールランドを含む導体回路の側面を含む全表面に、同一種類の粗化層が形成されている点に特徴がある。即ち、平坦な層間樹脂絶縁層を有し、コア基板に設けた銅導体と充填材や層間樹脂絶縁層との界面が全て同一種類の粗化層で構成されている。
【0009】
これにより、層間樹脂絶縁層の表面を平坦化することにより、露光現像によるバイアホール形成用開口の形成不良を招いたり、ICチップなどの実装不良を招くこともない。また、銅導体と充填材や層間樹脂絶縁層との界面において、導体の表面側と側面側の粗化形態の違いが原因となるクラックが防止できる。
【0010】
ところで、本発明においては、スルーホール内壁の導体表面に粗化層を形成するが、この理由は、充填材とスルーホールとがその粗化層を介して密着し隙間が発生しないからである。もし、充填材とスルーホールとの間に空隙が存在すると、その直上に電解めっきで形成される導体層が、平坦なものとならなかったり、空隙中の空気が熱膨張してクラックや剥離を引き起こしたりし、また一方で、空隙に水が溜まってマイグレーションやクラックの原因となったりする。この点、粗化層が形成されているとこのような不良発生を防止することができる。
【0011】
また、コア基板に設けた導体回路の表面に粗化層を形成する理由は、粗化層を介して層間樹脂絶縁層やバイアホールとの密着性を改善することができるからである。
【0012】
このような粗化層の形成方法としては、エッチング処理、研磨処理、酸化還元処理あるいはめっき処理がある。
例えば、酸化還元処理による粗化層は、酸化浴として、NaOH(20g/l)、NaCl02(50g/l)、Na3PO4(15.0g/l)の水溶液、還元浴として、NaOH(2.7g/l)、NaBH4(1.0g/l)の水溶液を用いて形成される。めっき処理による粗化層としては、硫酸銅1〜40g/l、硫酸ニッケル0.1〜6.0g/l、クエン酸10〜20g/l、次亜リン酸塩10〜100g/l、ホウ酸10〜40g/l、アセチレン含有ポリオキシエチレン系の界面活性剤0.01〜10g/lの水溶液からなる液組成の無電解めっき浴を用いて形成したCu−Ni−P合金層がある。
【0013】
特に、本発明では、Cu−Ni−Pからなる合金めっき粗化層(例えば、荏原ユージライトのインタープレート)を用いることが好ましい。この理由は、針状合金層であるこの粗化層によれば、層間樹脂絶縁層やバイアホールとの密着性がより確実に改善することができるからである。
【0014】
この合金めっき粗化層は、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属または貴金属の層で被覆されていてもよい。これらの金属または貴金属の層は、粗化層を被覆し、層間樹脂絶縁層を粗化する際に起こる局部電極反応による導体回路の溶解を防止できるからである。その層の厚さは0.1〜2μmがよい。
このような金属としては、チタン、アルミニウム、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマスから選ばれるいずれか少なくとも1種がある。貴金属としては、金、銀、白金、パラジウムがある。これらのうち、特にスズがよい。スズは、無電解置換めっきにより薄い層を形成でき、粗化層に追従できるため有利である。このスズの場合、ホウフッ化スズ−チオ尿素、塩化スズ−チオ尿素液を使用する。そして、Cu−Snの置換反応により0.1〜2μm程度のSn層が形成される。貴金属の場合は、スパッタや蒸着などの方法が採用できる。
【0015】
本発明において、充填材としては、層間樹脂絶縁層と同程度の熱膨張係数を有する樹脂組成物を用いることが望ましい。この理由は、層間樹脂絶縁層と充填材の熱膨張率の差に起因したクラックがその界面に発生するのを防止するためである。
【0016】
本発明において、層間樹脂絶縁層としては、熱硬化性樹脂(熱硬化基の一部または全部を感光化したものを含む)、熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂(熱硬化基の一部または全部を感光化したものを含む)と熱可塑性樹脂の複合体を用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル(PPE)などが使用できる。特に、エポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを用いることができる。なお、この熱硬化性樹脂は、熱硬化官能基の一部を感光基で置換して感光性を付与しておくことが好ましい。この理由は、感光性を付与した熱硬化性樹脂を樹脂成分として含む樹脂絶縁剤を用いれば、露光,現像処理により、その層間樹脂絶縁層にバイアホール用の開口部を容易に形成できるからである。熱硬化基の一部または全部を感光化する場合は、熱硬化基の一部または全部をメタクリル酸やアクリル酸などと反応させてアクリル化させる。なかでもエポキシ樹脂のアクリレートが最適である。
熱可塑性樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、熱可塑型ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフォン(PPES)、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体(FEP)、4フッ化エチレンパーフロロアルコキシ共重合体(PFA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン系樹脂などが使用できる。熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体としては、エポキシ樹脂−PES、エポキシ樹脂−PSF、エポキシ樹脂−PPS、エポキシ樹脂−PPESなどが使用できる。
【0017】
本発明では、層間樹脂絶縁層としてガラスクロス含浸樹脂複合体を用いることができる。このガラスクロス含浸樹脂複合体としては、ガラスクロス含浸エポキシ、ガラスクロス含浸ビスマレイミドトリアジン、ガラスクロス含浸PTFE、ガラスクロス含浸PPE、ガラスクロス含浸ポリイミドなどがある。
【0018】
また本発明において、層間樹脂絶縁層としては、無電解めっき用接着剤を用いることができる。
この無電解めっき用接着剤としては、硬化処理された酸あるいは酸化剤に可溶性の耐熱性樹脂粒子が、硬化処理によって酸あるいは酸化剤に難溶性となる未硬化の耐熱性樹脂中に分散されてなるものが最適である。この理由は、酸や酸化剤で処理することにより、耐熱性樹脂粒子が溶解除去されて、表面に蛸つぼ状のアンカーからなる粗化面を形成できるからである。
【0019】
上記無電解めっき用接着剤において、特に硬化処理された前記耐熱性樹脂粒子としては、(i)平均粒径が10μm以下の耐熱性樹脂粉末、(ii)平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末を凝集させた凝集粒子、(iii)平均粒径が2〜10μmの耐熱性樹脂粉末と平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末との混合物、(iv)平均粒径が2〜10μmの耐熱性樹脂粉末の表面に平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末または無機粉末のいずれか少なくとも1種を付着させてなる疑似粒子、(v)平均粒径が
0.1〜0.8μmの耐熱性樹脂粉末と平均粒径が 0.8μmを超え2μm未満の耐熱性樹脂粉末との混合物、(vi)平均粒径が 0.1〜1.0μmの耐熱性樹脂粉末、から選ばれるいずれか少なくとも1種を用いることが望ましい。これらは、より複雑なアンカーを形成できるからである。この無電解めっき用接着剤で使用される耐熱性樹脂は、前述の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体を使用できる。
【0020】
以下、本発明の多層プリント配線板を製造する方法について一例を挙げて具体的に説明する。なお、以下に述べる方法は、セミアディティブ法による多層プリント配線板の製造方法に関するものであるが、本発明における多層プリント配線板の製造方法では、フルアディティブ法やマルチラミネーション法、ピンラミネーション法を採用することができる。
【0021】
(1)まず、両面に金属層が形成された基板を用意する。
この基板へのスルーホールは、基板にドリルで貫通孔を明け、この貫通孔の壁面および基板表面に、無電解めっきおよび電解めっきを施すことにより形成される。
ここで、上記基板としては、ガラスエポキシ基板やポリイミド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂基板、フッ素樹脂基板などの樹脂基板、あるいはこれらの樹脂基板の銅張積層板、セラミック基板、金属基板などを用いることができる。特に、誘電率を考慮する場合は、両面銅張フッ素樹脂基板を用いることが好ましい。この基板は、片面が粗化された銅箔をポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂基板に熱圧着したものである。無電解めっきとしては銅めっきがよい。フッ素樹脂基板基板のようにめっきのつきまわりが悪い基板の場合は、有機金属ナトリウムからなる前処理剤(潤工社製、商品名:テトラエッチ)、プラズマ処理などの表面改質を行う。電解めっきとしては銅めっきがよい。
【0022】
(2)次に、上記配線基板のスルーホール内壁を含む金属層表面に粗化層を形成する。
この粗化層としては、酸化還元処理によるものやCu−Ni−Pからなる合金めっき粗化層などがある。例えば、Cu−Ni−P合金のめっき水溶液の液組成は、銅イオン濃度、ニッケルイオン濃度、次亜リン酸イオン濃度が、それぞれ2.2×10-2〜4.1×10-2mol/l、2.2×10-3〜4.1×10-3mol/l、0.20〜0.25mol/lであることが望ましい。この範囲で析出する被膜の結晶構造は針状構造になるため、アンカー効果に優れるからである。なお、この無電解めっき浴には上記化合物に加えて錯化剤や添加剤を加えてもよい。
【0023】
(3)次に、スルーホール内に充填材を充填する。
具体的には、充填材は、スルーホール部分に開口を設けたマスクを載置した基板上に、印刷法にて塗布することによりスルーホールに充填され、充填後、乾燥、硬化される。
この充填材には、添加剤として、アクリル系消泡剤やシリコン系消泡剤などの消泡剤、シリカやアルミナ、タルクなどの無機充填材を添加してもよい。なお、無機充填材の表面には、シランカップリング剤を付着させてもよい。
【0024】
(4)次いで、スルーホールからはみ出した充填材を研磨して基板表面を平坦化する。この工程において、金属層上の粗化面を除去する。
(5)このような処理がなされた基板の金属層を常法に従い、パターン状にエッチングして、導体回路およびスルーホールランドを形成し、コア基板とする。
(6)このコア基板の導体回路およびスルーホールランドの側面を含む全表面に同一種類の粗化層を形成する。粗化層の形成方法は、前記(2)の方法に準ずる。
【0025】
本発明においては、層間樹脂絶縁層を形成する際に、基板表面の平坦化を行っているため、基板表面を平坦化するための研磨処理が省略でき、研磨によるゴミや異物の混入を防止することができる。しかも、本発明では、導体間の凹部に充填材を充填することなく、スルーホールランドを含む導体回路の側面および上面を同時に粗化処理するため、多層プリント配線板の製造工程が短縮され、製造コストが低減できる。
また、導体回路の側面および上面に同一種類の粗化層を形成することにより、粗化形態の違いにより発生するクラックを防止できる。
【0026】
(7)次に、スルーホール内に充填材を充填した配線基板上に、層間樹脂絶縁剤を塗布する。
層間樹脂絶縁剤としては、前述した熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体、無電解めっき用接着剤を用いることができる。
層間樹脂絶縁層は、これらの樹脂の未硬化液を塗布したり、フィルム状の樹脂を熱圧着してラミネートすることにより形成される。
【0027】
(8)次に、塗布した層間樹脂絶縁剤(無電解めっき用接着剤)を乾燥する。
この時点では、基板の導体回路上に設けた層間樹脂絶縁剤の層表面に凹凸が発生しているので、金属板や金属ロールを用いて加熱しながら押圧(加熱プレス)して、その表面を平坦化する。
ここで用いる金属板や金属ロールは、ステンレス製のものがよい。その理由は耐腐食性に優れるからである。
加熱プレスは、層間樹脂絶縁剤の層を設けた基板を金属板または金属ロールにて挟持し、加熱雰囲気でプレスすることにより行う。この加熱プレスにより、層間絶縁剤の樹脂が流動して層間樹脂絶縁剤の層の表面が平坦になる。
この加熱プレスにおける加熱温度、圧力、時間は、層間樹脂絶縁剤に用いる樹脂により異なる。例えば、エポキシ樹脂を樹脂マトリックスとし、エポキシ樹脂粒子を耐熱性樹脂粒子とした無電解めっき用接着剤を層間樹脂絶縁剤に用いる場合は、加熱温度:40〜60℃、圧力:3.5〜6.5kgf/cm2、時間:30〜90秒とすることが望ましい。この理由は、加熱プレス条件を、40℃未満、圧力3.5Kgf/cm2未満、プレス時間30秒未満にすると、充分な平坦性が得られない。一方、プレス温度が60℃を超えると、露光,現像前に層間樹脂絶縁剤の硬化が進んでしまうおそれがあり、プレス圧力が6.5Kgf/cm2を超えると、層間絶縁樹脂が基板から流れ出してしまうおそれがあり、プレス時間が90秒を超えると、従来の露光時間やポストベーク時間を考慮した場合、生産性が落ちると予想されるからである。また、エポキシ樹脂のアクリレートとポリエーテルスルフォンの複合体を樹脂マトリックスとし、エポキシ樹脂粒子を耐熱性樹脂粒子とした無電解めっき用接着剤を層間樹脂絶縁剤に用いる場合は、加熱温度を60〜70℃、圧力を15〜25kgf/cm2、時間を15〜25分とすることが望ましい。
【0028】
なお、金属ロールを用いる場合は、搬送しながら加熱プレスすることができ、量産性の観点から有利である。特に、ゴムのような弾性体のロールと金属ロールを組み合わせて用いることが有利である。例えば、最初にゴムロールにより加熱プレスし、次いで、金属ロールにて加熱プレスする。この場合、層間樹脂絶縁剤の層を設けた基板は最初のゴムロールにより予備加熱され、予備加熱されたその基板は金属ロールにより平坦化される。
【0029】
本発明では、層間樹脂絶縁剤が感光性の場合は、必要に応じて加熱プレス前に透光性フィルムを層間樹脂絶縁剤の層上に貼り付けることができる。
この透光性フィルムは、光重合反応の際に酸素が反応を阻害して、現像時の膜減りやピール強度の低下を招くのを防止するために使用される。このため、浅いアンカー深さでも、ピール強度の低下は見られない。
この透光性フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムが望ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)などのフィルムがよい。
【0030】
なお、これらのフィルムは、貼着側の面に粘着剤を塗布しておくことが望ましい。その理由は、層間樹脂絶縁層との密着性を確保できるからである。この粘着剤は、特に限定されないが、「伊保内
賢、小松公栄、北崎寧昭編著、工業調査会発行 粘着剤活用ノート」に記載されたものを使用できる。例えば、天然ゴム系、スチレンーブタジエン系、ポリイソブチレン系、イソプレン系、アクリル系、アクリルエマルジョン系、シリコーン系、天然ゴム−ブタジエンラテックス系の粘着剤が挙げられる。
具体的には、次のような組成の粘着剤を挙げることができる。
・天然ゴム系
天然ゴム 100重量部
粘着付与剤樹脂 150〜120重量部
亜鉛華 25〜50重量部
炭酸カルシウム 35〜60重量部
カーボンブラック 〜15重量部
老化防止剤 〜1.5重量部
イオウ 0.5〜2.25重量部
・スチレン−ブタジエン系
ゴムラテックス 100重量部
高融点粘着付与剤 89重量部
石鹸生成樹脂酸 5.6重量部
抵酸化剤 4.8重量部
アンモニア水 0.7重量部
水 151重量部
・ポリイソブチレン系
ポリイソブチレン 100重量部
ポリブテン 10重量部
ホワイトオイル20重量部
・イソプレン系
クラレ製、商品名:クラプレンIR−10
・アクリル系
アクリル酸2−エチルヘキシン 78重量部
アクリル酸メチル 20重量部
無水マレイン酸 2重量部
ヘキサメチレンジアミン0.5重量部
・アクリルエマルジョン系
2−エチルヘキシルアクリレート 70重量部
酢酸ビニル 30重量部
アクリル酸 2重量部
・シリコーン系
シリコーンゴム 100重量部
シリコーンレジン 80〜120重量部
縮合触媒 0.01〜0.5重量部
溶剤 100〜150重量部
【0031】
本発明では、透光性フィルムを、凹凸状態にある層間樹脂絶縁剤の層に貼着し、これを加熱プレスしてもよく、凹凸状態にある層間樹脂絶縁剤の層を加熱プレスして平坦化した後に透光性フィルムを貼着してもよい。平坦化した後に透光性フィルムを貼着した方が、樹脂が動きやすく層間樹脂絶縁剤の層を平坦化しやすいため、有利である。
【0032】
(9)そして、層間樹脂絶縁剤の層を硬化して層間樹脂絶縁層とするとともに、後で形成する上層の導体回路とスルーホールとの電気的接続を確保するために、その層間樹脂絶縁層にバイアホール形成用の開口を設ける。
このバイアホール形成用の開口は、層間樹脂絶縁剤が感光性樹脂からなる場合は、露光、現像処理にて行い、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂からなる場合は、レーザ光にて行う。このとき、使用されるレーザ光としては、炭酸ガスレーザ、紫外線レーザ、エキシマレーザなどがある。レーザ光にて孔明けした場合は、デスミア処理を行ってもよい。このデスミア処理は、クロム酸、過マンガン酸塩などの水溶液からなる酸化剤を使用して行うことができ、また酸素プラズマなどで処理してもよい。
【0033】
(10)次に、バイアホール形成用開口を設けた層間樹脂絶縁層の表面を、必要に応じて粗化する。
上述した無電解めっき用接着剤を層間樹脂絶縁層として使用した場合は、表面を酸や酸化剤で処理して接着剤層の表面に存在する耐熱性樹脂粒子のみを選択的に溶解または分解により除去して粗化する。また、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を使用した場合でも、クロム酸、過マンガン酸塩などの水溶液から選ばれる酸化剤による表面粗化処理が有効である。なお、酸化剤では粗化されないフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)などの樹脂の場合は、プラズマ処理やテトラエッチなどにより表面を粗化することができる。このとき、粗化面の深さは、1〜5μm程度がよい。
ここで、上記酸としては、リン酸、塩酸、硫酸、あるいは蟻酸や酢酸などの有機酸があるが、特に有機酸を用いることが望ましい。粗化処理した場合に、バイアホールから露出する金属導体層を腐食させにくいからである。一方、上記酸化剤としては、クロム酸、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウムなど)の水溶液を用いることが望ましい。
【0034】
(11)そして、以下に示す(i)〜(vi)により、上層の導体回路を形成する。
(i)層間樹脂絶縁層の表面を粗化した配線基板に、無電解めっき用の触媒核を付与する。
一般に触媒核は、パラジウム−スズコロイドであり、この溶液に基板を浸漬、乾燥、加熱処理して樹脂表面に触媒核を固定する。また、金属核をCVD、スパッタ、プラズマにより樹脂表面に打ち込んで触媒核とすることができる。この場合、樹脂表面に金属核が埋め込まれることになり、この金属核を中心にめっきが析出して導体回路が形成されるため、粗化しにくい樹脂やフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)のように樹脂と導体回路との密着が悪い樹脂でも、密着性を確保できる。この金属核としては、パラジウム、銀、金、白金、チタン、銅およびニッケルから選ばれる少なくとも1種以上がよい。なお、金属核の量は、20μg/cm2以下がよい。この量を超えると金属核を除去しなければならないからである。
【0035】
(ii)次に、層間樹脂絶縁層の表面に無電解めっきを施し、粗化面全面に、その粗面に沿って凹凸を有する薄膜の無電解めっき膜を形成する。このとき、無電解めっき膜の厚みは、0.1〜5μm、より望ましくは0.5〜3μmとする。
【0036】
(iii)次に、この無電解めっき膜上にめっきレジストを形成する。めっきレジスト組成物としては、特にクレゾールノボラック型エポキシ樹脂やフェノールノボラック型エポキシ樹脂のアクリレートとイミダゾール硬化剤からなる組成物を用いることが望ましいが、他に市販品のドライフィルムを使用することもできる。
【0037】
(iv)次に、無電解めっき膜を形成した基板を、10〜35℃、望ましくは15〜30℃の水で水洗する。
この理由は、水洗温度が35℃を超えると水が揮発してしまい、無電解めっき膜の表面が乾燥して、酸化してしまい、電解めっき膜が析出しない。そのため、エッチング処理により、無電解めっき膜が溶解してしまい、導体が存在しない部分が生じてしまう。一方、10℃未満では水に対する汚染物質の溶解度が低下し、洗浄力が低下してしまうからである。特に、バイアホールのランドの径が200μm以下になると、めっきレジストが水をはじくため、水が揮発しやすく、電解めっきの未析出という問題が発生しやすい。
なお、洗浄水の中には、各種の界面活性剤、酸、アルカリを添加しておいてもよい。また、洗浄後に硫酸などの酸で洗浄してもよい。
【0038】
(v)次に、めっきレジスト非形成部に電解めっきを施し、導体回路、ならびにバイアホールとなる導体部を設ける。
ここで、上記電解めっきとしては、銅めっきを用いることが望ましく、その厚みは、10〜20μmがよい。
【0039】
(vi)さらに、めっきレジストを除去した後、硫酸と過酸化水素の混合液や過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶液からなるエッチング液でめっきレジスト下の無電解めっき膜を溶解除去し、無電解めっき膜と電解めっき膜の2層からなる独立した導体回路、ならびにバイアホールを得る。
【0040】
(12)前記(11)で形成した導体回路の表面に粗化層を形成した後、前記(7)〜(11)の工程を繰り返してさらに上層の導体回路を設けることにより、所定の多層プリント配線板を製造する。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
A.上層の無電解めっき用接着剤の調製
(i)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を80wt%の濃度でDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315)3.15重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65)0.5重量部、NMPを3.6重量部を攪拌混合した。
(ii)ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径1.0μmのものを7.2重量部、平均粒径 0.5μmのものを3.09重量部を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合した。
(iii)イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュアI−907)2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S)0.2重量部、NMP1.5重量部を攪拌混合した。これらを混合して2層構造の層間樹脂絶縁層を構成する上層側の接着剤層として用いられる無電解めっき用接着剤を調製した。
【0042】
B.下層の層間樹脂絶縁剤の調製
(i)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を80wt%の濃度でDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315)4重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65)0.5重量部、NMPを3.6重量部を攪拌混合した。
(ii)ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径 0.5μmのものを14.49重量部、を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合した。
(iii)イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュアI−907)2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S)0.2重量部、NMP1.5重量部を攪拌混合した。これらを混合して、2層構造の層間樹脂絶縁層を構成する下層側の絶縁剤層として用いられる樹脂組成物を調製した。
【0043】
C.樹脂充填材の調製
(i)ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル製、分子量310,YL983U)100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径1.6μmのSiO2 球状粒子(アドマテック製、CRS1101−CE、ここで、最大粒子の大きさは後述する内層銅パターンの厚み(15μm)以下とする)170重量部、レベリング剤(サンノプコ製、ペレノールS4)1.5重量部を3本ロールにて混練して、その混合物の粘度を23±1℃で45,000〜49,000cpsに調整した。
(ii)イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)6.5重量部。これらを混合して樹脂充填材を調製した。
【0044】
D.プリント配線板の製造
(1)厚さ1mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅張積層板を出発材料とした(図2参照)。まず、この銅張積層板をドリル削孔し、無電解めっきおよび電解めっきを施してスルーホール9を形成した(図3参照)。
【0045】
(2)次に、スルーホール9を含む銅箔表面に、酸化浴として、NaOH(20g/l)、NaCl02(50g/l)、Na3PO4(15.0g/l)の水溶液、還元浴として、NaOH(2.7g/l)、NaBH41.0g/l)の水溶液を用いた酸化還元処理に供し、そのスルーホール9を含む導体の全表面に粗化層11を設けた(図4参照)。
【0046】
(3)前記Cで調製した樹脂充填材10を、スルーホール部分に開口を設けたマスクを介して、スクリーン印刷法によってスルーホール9内に充填し、乾燥、硬化させた(図5参照)。そして、銅箔上面の粗化層11およびスルーホール9からはみ出した充填材10を、#600
のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により除去した(図6参照)。
【0047】
(4)次に、銅箔を常法に従い、例えば塩化第二鉄などの水溶液でエッチング処理し、導体回路およびスルーホールランドを形成した(図7参照)。
さらに、この導体回路およびスルーホールランドの側面を含む全表面に、厚さ2.5μmのCu−Ni−P合金からなる粗化層(凹凸層)11を形成し、さらにこの粗化層11の表面に厚さ0.3μmのSn層を設けた(図8参照、但し、Sn層については図示しない)。
その形成方法は以下のようである。即ち、基板を酸性脱脂してソフトエッチングし、次いで、塩化パラジウムと有機酸からなる触媒溶液で処理して、Pd触媒を付与し、この触媒を活性化した後、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤(日信化学工業製、サーフィノール465)0.1g/lの水溶液からなるpH=9の無電解めっき浴にてめっきを施し、スルーホール9を含む導体回路4の全表面にCu−Ni−P合金からなる粗化層11を設けた。さらに、この基板に対し、100℃で30分間、120℃で30分間、150℃で2時間の加熱処理を施し、10重量%硫酸水溶液、0.2mol/lのホウフッ酸水溶液で処理し、ついで、ホウフッ化スズ0.1mol/l、チオ尿素1.0mol/lの水溶液を用い、温度50℃、pH=1.2 の条件でCu−Sn置換反応させ、粗化層11の表面に厚さ0.3μmのSn層を設けた(Sn層については図示しない)。
【0048】
(5)基板の両面に、Bの層間樹脂絶縁剤(粘度15Pa・s)をロールコータで塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥を行い、絶縁剤層2aを形成した。さらにこの絶縁剤層2aの上にAの無電解めっき用接着剤(粘度8Pa・s)をロールコータを用いて塗布し、55℃で40分の乾燥を行い、接着剤層2bを形成し、層間樹脂絶縁剤の層2を形成した(図9参照)。このとき、層間樹脂絶縁剤の層2の表面は、導体間の凹凸に起因して平坦ではなかった。
【0049】
(6)前記(5)で形成した層間樹脂絶縁剤の層2の表面にポリエチレンテレフタレートフィルム18を貼着した後、ステンレス板19で挟み、20kgf/cm2で加圧し、加熱炉内で65℃で加熱しながら、20分間加熱プレスした(図9参照)。この加熱プレスにより、層間樹脂絶縁剤の層2の表面を平坦化した(図10参照)。
【0050】
(7)前記(6)で平坦化した基板の両面に、85μmφの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯により500mJ/cm2で露光した。これをDMDG溶液でスプレー現像することにより、その層間樹脂絶縁剤の層2に85μmφのバイアホールとなる開口を形成した。さらに、当該基板を超高圧水銀灯により3000mJ/cm2で露光し、100℃で1時間、その後150℃で5時間の加熱処理をすることにより、フォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた開口(バイアホール形成用開口6)を有する厚さ35μmの層間樹脂絶縁層2を形成した(図11参照)。なお、バイアホールとなる開口には、スズめっき層を部分的に露出させた。
【0051】
(8)バイアホール形成用開口を形成した基板を、800g/lのクロム酸水溶液に70℃で19分間浸漬し、層間樹脂絶縁層2の接着剤層2bの表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去することにより、当該層間樹脂絶縁層2の表面を粗面(深さ3μm)とし、その後、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いした(図12参照)。さらに、粗面化処理した該基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック製)を付与することにより、層間樹脂絶縁層12の表面およびバイアホール用開口6の内壁面に触媒核を付けた。
【0052】
(9)以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ0.6μmの無電解銅めっき膜12を形成した(図13参照)。このとき、めっき膜が薄いために無電解めっき膜表面には凹凸が観察された。
〔無電解めっき水溶液〕
EDTA150g/l
硫酸銅20g/l
HCHO30 ml/l
NaOH40g/l
α、α’−ビピリジル80mg/l
PEG0.1g/l
〔無電解めっき条件〕
70℃の液温度で30分
【0053】
(10)前記(9)で形成した無電解めっき膜12上に市販の感光性ドライフィルムを張り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2で露光、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのめっきレジスト3を設けた(図14参照)。
【0054】
(11)ついで、基板を50℃の水で洗浄して脱脂し、25℃の水で水洗後、さらに硫酸で洗浄してから、以下の条件で電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜13を形成した(図15参照)。
〔電解めっき水溶液〕
硫酸銅180g/l
硫酸銅80g/l
添加剤(アドテックジャパン製、カパラシドGL)1ml/l
〔電解めっき条件〕
電流密度1A/dm2
時間30分
温度 室温
【0055】
(12)めっきレジスト3を5%KOH水溶液で剥離除去した後、そのめっきレジスト3下の無電解めっき膜12を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、無電解銅めっき膜12と電解銅めっき膜13からなる厚さ18μmの導体回路(バイアホール7を含む)5を形成した(図16参照)。さらに、70℃で800g/lのクロム酸水溶液に3分間浸漬して、導体回路非形成部分に位置する導体回路間の無電解めっき用接着剤層の表面を1μmエッチング処理し、その表面に残存するパラジウム触媒を除去した。
【0056】
(13)導体回路5を形成した基板を、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤(日信化学工業製、サーフィノール465)0.1g/lの水溶液からなるpH=9の無電解めっき液に浸漬し、該導体回路5の表面に厚さ3μmの銅−ニッケル−リンからなる粗化層11を形成した(図17参照)。このとき、形成した粗化層11をEPMA(蛍光X線分析装置)で分析したところ、Cu:98mol%、Ni:1.5mol%、P:0.5mol%の組成比であった。
さらに、ホウフッ化スズ0.1mol/l、チオ尿素 1.0mol/lの水溶液を用い、温度50℃、pH=1.2の条件でCu−Sn置換反応を行い、前記粗化層11の表面に厚さ0.3μmのSn層を設けた(Sn層については図示しない)。
【0057】
(14)前記(5)〜(13)の工程を繰り返すことにより、さらに上層の導体回路を形成し、多層配線板を得た。但し、上層の層間樹脂絶縁層の平坦化、ならびに最上層の導体回路におけるSn置換は行わなかった(図18〜23参照)。
【0058】
(15)一方、DMDGに溶解させた60wt%のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)を46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80wt%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート1001)15.0重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)1.6重量部、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬製、R604)3重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄社化学製、DPE6A)1.5重量部、分散系消泡剤(サンノプコ社製、S−65)0.71重量部を混合し、さらにこの混合物に対して光開始剤としてのベンゾフェノン(関東化学製)を2重量部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学製)0.2重量部を加えて、ソルダーレジスト組成物を得た。
【0059】
(16)前記(14)で得た多層配線基板の両面に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布した。次いで、70℃で20分間、70℃で30分間の乾燥処理を行った後、クロム層によってソルダーレジスト開口部の円パターン(マスクパターン)が描画された厚さ5mmのソーダライムガラス基板を、クロム層が形成された側をソルダーレジスト層に密着させて1000mJ/cm2の紫外線で露光し、DMTG現像処理した。さらに、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、 150℃で3時間の条件で加熱処理し、はんだパッドの上面、バイアホールおよびランド部分を開口した(開口径200μm)ソルダーレジストパターン層14(厚み20μm)を形成した。
【0060】
(17)次に、ソルダーレジストパターン層18を形成した基板を、塩化ニッケル30g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/l、クエン酸ナトリウム10g/lの水溶液からなるpH=5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層15を形成した。さらに、その基板を、シアン化金カリウム2g/l、塩化アンモニウム75g/l、クエン酸ナトリウム50g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/lの水溶液からなる無電解金めっき液に93℃の条件で23秒間浸漬して、ニッケルめっき層15上に厚さ0.03μmの金めっき層16を形成した。
【0061】
(18)そして、ソルダーレジストパターン層14の開口部に、はんだペーストを印刷して200℃でリフローすることによりはんだバンプ(はんだ体)17を形成し、はんだバンプ17を有する多層プリント配線板を製造した(図24参照)。
【0062】
(比較例1)
(1)厚さ1mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板の両面に18μmの銅箔がラミネートされている銅張積層板を出発材料とした。まず、この銅張積層板をドリル削孔し、めっきレジストを形成した後、無電解めっき処理してスルーホールを形成し、さらに、銅箔を常法に従いパターン状にエッチングすることにより、基板の両面に内層銅パターンを形成した。
(2)内層銅パターンを形成した基板を、水洗いし、乾燥した後、NaOH(10g/l)、NaClO2(40g/l)、Na3PO4(6g/l)の水溶液を酸化浴、またNaOH(10g/l)、NaBH4
(6g/l)の水溶液を還元浴とし、導体回路、スルーホール全表面に粗化層を設けた。
(3)実施例1のCの樹脂充填材を、スルーホール部に開口を設けた金属製印刷マスクを載置した基板の両面に、ロールコータを用いて印刷することにより導体回路間あるいはスルーホール内に充填し、次いで、100℃で1時間、120℃で3時間、150℃で1時間、180℃で7時間の加熱処理を行って硬化した。即ち、この工程により、樹脂充填材が内層銅パターンの間あるいはスルーホール内に充填される。
(4)前記(3)の処理を終えた基板の片面を、#600のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層銅パターンの表面やスルーホールのランド表面に樹脂充填材が残らないように研磨し、次いで、前記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。
このようにして、スルーホール等に充填された樹脂充填材の表層部および内層導体回路上面の粗化層を除去して基板両面を平滑化し、樹脂充填材と導体回路の側面とが粗化層を介して強固に密着し、またスルーホールの内壁面と樹脂充填材とが粗化層を介して強固に密着した配線基板を得た。即ち、この工程により、樹脂充填材の表面と内層銅パターンの表面が同一平面となる。ここで、充填した硬化樹脂のTg点は155.6℃、線熱膨張係数は44.5×10-5/℃であった。
(5)さらに、露出した導体回路およびスルーホールのランド上面に厚さ5μmのCu−Ni−P合金被覆層、厚さ2μmのCu−Ni−P針状合金粗化層および粗化層表面に厚さ0.3μmのSn金属被覆層を設けた。
これらの層の形成方法は以下のようである。即ち、基板を酸性脱脂してソフトエッチングし、次いで、塩化パラジウムと有機酸からなる触媒溶液で処理して、Pd触媒を付与し、この触媒を活性化した後、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤(日信化学工業製、サーフィノール104)0.1g/lの水溶液からなるpH=9の無電銅めっき浴に基板を浸漬し、この基板を4秒に1回の割合で縦方向に振動させるとともに、めっき析出後、3分後に空気をバブリングさせて、銅導体回路およびスルーホールの表面にCu−Ni−Pの非針状合金の被覆層を最初に析出させ、次にCu−Ni−Pの針状合金を析出させて粗化層を設けた。
さらに、100℃で30分、120℃で30分、150℃で2時間の加熱処理を行い、10体積%の硫酸水溶液、および0.2mol/lのホウフッ酸水溶液で処理した後、ホウフッ化スズ0.1mol/l、チオ尿素1.0mol/lの水溶液を用い、温度50℃、pH=1.2の条件でCu−Sn置換反応させ、粗化層の表面に厚さ0.3μmのSn金属被覆層を設けた。
(6)実施例1の(5)以降の工程を実施し、はんだバンプを有する多層プリント配線板を製造した。
【0063】
このようにして製造した多層プリント配線板について、−55〜125℃で1000回のヒートサイクル試験を実施し、光学顕微鏡により層間樹脂絶縁層中のクラックの有無を確認した。その結果を表1に示す。また、電子部品の実装性について評価した。
【0064】
表1に示す結果から明らかなように、導体回路の側面と上面で粗化形態の相違がないため、導体回路の側面と上面とが交差する部分を起点とするクラックが発生しないことがわかる。また、電子部品の実装性についても問題はなかった。
【0065】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来技術にかかる多層プリント配線板の製造工程のを示す概略図である。
【図2】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図3】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図4】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図5】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図6】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図7】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図8】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図9】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図10】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図11】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図12】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図13】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図14】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図15】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図16】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図17】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図18】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図19】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図20】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図21】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図22】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図23】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図24】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 基板
2 層間樹脂絶縁層(接着剤層)
2a 絶縁剤層
2b 接着剤層
3 めっきレジスト
4,5 導体回路(導体パターン)
6 バイアホール用開口
7 バイアホール
8 銅箔
9 スルーホール
10 樹脂充填材
11 粗化層
12 無電解めっき膜
13 電解めっき膜
14 ソルダーレジスト層
15 ニッケルめっき層
16 金めっき層
17 はんだバンプ
18 透光性フィルム
19 金属板(ステンレス板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、該コア基板にはスルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、
前記コア基板上に設けられた層間樹脂絶縁層は平坦であり、かつ前記コア基板に設けた導体回路には、側面を含む全表面に、同一種類の粗化層が形成されており、前記層間樹脂絶縁層を介して形成される導体回路は、無電解めっきとその上に形成された電解めっきとからなることを特徴とする多層プリント配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2007−73991(P2007−73991A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312433(P2006−312433)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【分割の表示】特願平10−181021の分割
【原出願日】平成10年6月26日(1998.6.26)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】