説明

電動パワーステアリング装置

【課題】操舵補助力発生用モータの制御における安定性の向上、操舵に対する応答性の向上、および操舵に対する外乱の影響の低減を図ることができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリングホイール2の操舵トルクをトルクセンサ22により検出し、その検出操舵トルクに対応する基本アシストトルクに応じた操舵補助力が発生するように、操舵補助力を発生するモータ10を制御する。操舵トルクに対する基本アシストトルクの変化率であるアシスト勾配が操舵トルクの変化に応じて変化するように、操舵トルクと基本アシストトルクとの対応関係が設定される。アシスト勾配の変化に応じてモータ10の出力の補正量が変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵補助力をモータによって付与する電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操舵補助力発生用モータを備える電動パワーステアリング装置においては、トルクセンサや速度センサにより検出した操舵トルクや車速等の運転条件に応じて操舵補助力を変化させている。また、その操舵補助力を付与するモータの出力を、そのモータやステアリングホイールの回転角速度または回転角加速度、操舵トルク、操舵トルクの変化速度、車輪の舵角変化加速度等に応じて補正することで、操舵に対する応答性を向上してモータの慣性の影響を補償したり、操舵系に粘性を付与することで外乱の影響を低減することが図られている。さらに、トルクセンサの出力信号におけるノイズや系の遅れの影響により制御系の安定性が低下するのを防止するため、トルクセンサの出力信号に対する位相補償特性を車速に応じて変化させることが提案されている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2003−226252号公報
【特許文献2】特開2004−98754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来技術を採用した電動パワーステアリング装置においては制御系の安定性を十分に向上することができず振動が発生したり、また、外乱の影響を十分に低減できないという問題がある。本発明は、そのような問題を解決することのできる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、操舵補助力を発生するモータと、ステアリングホイールの操舵トルクを検出するトルクセンサと、操舵トルクと基本アシストトルクとの対応関係を記憶する手段と、検出操舵トルクに対応する基本アシストトルクに応じた操舵補助力が発生するように、前記モータを制御する手段とを備える電動パワーステアリング装置に適用される。
【0005】
本件発明者らは、トルクセンサの出力信号に応じた操舵補助力発生用モータの制御特性が、操舵トルクに対する基本アシストトルクの変化率であるアシスト勾配に応じて変化することを見出したことに基づき、本件発明を想到した。すなわち、アシスト勾配が増加すると、トルクセンサの入力に対する出力のオープンループ特性における位相余裕が減少し、制御系の安定性が低下する。よって、アシスト勾配に応じてモータの出力の補正量を変更することで制御特性の適正化を図ることができる。
【0006】
本発明において、検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、前記アシスト勾配と、このアシスト勾配に逆相関するアシスト勾配ゲインとの間の対応関係を記憶する手段と、前記ステアリングホイールまたは前記モータの回転角加速度に対応する回転角加速度対応値を求める手段と、前記回転角加速度対応値と、この回転角加速度対応値に正相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、前記モータの出力を、求めたアシスト勾配に対応するアシスト勾配ゲインと、求めた回転角加速度対応値に対応するモータ出力補正値との積に応じて補正する手段とが設けられているのが好ましい。
これにより、前記ステアリングホイールの操舵周波数と、前記ステアリングホイールの操舵角度に対する操舵トルクの振幅比とにより表される周波数応答特性において、少なくとも人間がステアリングホイールを操舵する際の操舵周波数範囲で、前記モータの出力の補正によりその振幅比が同一周波数に対しては小さくなるように、前記回転角加速度対応値とモータ出力補正値との間の対応関係が設定できる。よって、操舵補助力発生用モータの出力がステアリングホイールまたはモータの回転角加速度に正相関する値に応じて補正され、少なくとも人間がステアリングホイールを操舵する際の操舵周波数範囲で、ステアリングホイールの操舵角に対する操舵トルクの振幅比が小さくされる。すなわち、操舵に対する操舵補助力発生用モータの出力の応答性を向上し、迅速に操舵補助を行って操舵トルクを低減できる。
しかも、そのモータの出力の補正量はアシスト勾配に逆相関するので、アシスト勾配の増加による制御系の安定性の低下を、制御量を少なくすることで抑制し、振動発生を防止できる。
【0007】
本発明において、検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、前記アシスト勾配と、このアシスト勾配に逆相関するアシスト勾配ゲインとの間の対応関係を記憶する手段と、前記モータの回転角加速度に対応する回転角加速度対応値を求める手段と、前記回転角加速度対応値と、この回転角加速度対応値に逆相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、前記モータの出力を、求めたアシスト勾配に対応するアシスト勾配ゲインと、求めた回転角加速度対応値に対応するモータ出力補正値との積に応じて補正する手段とが設けられているのが好ましい。
あるいは本発明において、検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、前記アシスト勾配と、このアシスト勾配に逆相関するアシスト勾配ゲインとの間の対応関係を記憶する手段と、前記操舵トルクの変化加速度に対応する変化加速度対応値を求める手段と、前記変化加速度対応値と、この変化加速度対応値に正相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、前記モータの出力を、求めたアシスト勾配に対応するアシスト勾配ゲインと、求めた変化加速度対応値に対応するモータ出力補正値との積に応じて補正する手段とが設けられているのが好ましい。
これにより、車輪を介して接地面から操舵系に入力される外乱トルクの周波数と、その外乱トルクに対する操舵トルクの振幅比とにより表される周波数応答特性において、前記モータの出力の補正によりその振幅比がピーク値になる共振周波数が小さくなるように前記回転角加速度対応値と前記モータ出力補正値との間の対応関係が設定できる。よって、操舵補助力発生用モータの出力がモータの回転角加速度に逆相関する値、あるいは操舵トルクの変化加速度に正相関する値に応じて補正され、外乱トルクに対する操舵トルクの振幅比がピーク値になる操舵系の共振周波数が小さくされる。すなわち、その共振周波数に対応する外乱トルクの入力周波数が小さくなることから、外乱として影響を与える外乱の周波数範囲が狭まることになり、操舵に対する外乱の影響を低減することができる。
しかも、そのモータの出力の補正量はアシスト勾配に逆相関するので、アシスト勾配の増加による制御系の安定性の低下を、制御量を少なくすることで抑制し、振動発生を防止できる。
【0008】
本発明において、検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、前記アシスト勾配とアシスト勾配ゲインとの間の対応関係を記憶する手段と、前記操舵トルクの変化速度に対応する変化速度対応値を求める手段と、前記変化速度対応値と、この変化速度対応値に正相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、前記モータの出力を、求めたアシスト勾配に対応するアシスト勾配ゲインと、求めた変化速度対応値に対応するモータ出力補正値との積に応じて補正する手段とが設けられ、前記アシスト勾配ゲインは、前記アシスト勾配が設定値以下である時は零よりも大きくされるのが好ましい。
これにより、車輪を介して接地面から操舵系に入力される外乱トルクの周波数と、その外乱トルクに対する操舵トルクの振幅比とにより表される周波数応答特性において、前記モータの出力の補正によりその振幅比が共振周波数で小さくなるように前記変化速度対応値と前記モータ出力補正値との間の対応関係が設定できる。よって、操舵補助力発生用モータの出力が操舵トルクの変化速度に正相関する値に応じて補正され、外乱トルクに対する操舵トルクの振幅比が共振周波数で小さくなるので、操舵に対する外乱の影響を低減することができる。
しかも、そのモータの出力の補正量はアシスト勾配ゲインに応じて変化し、そのアシスト勾配ゲインはアシスト勾配が設定値以下である時は零よりも大きくされている。これにより、直進走行状態や舵角が小さい状態であるために外乱の影響を受けやすいアシスト勾配の小さい範囲において、モータ出力の補正量を確保し、外乱トルクに対する操舵トルクの振幅比が共振周波数で小さくなるようにモータを制御し、操舵に対する外乱の影響を確実に低減することができる。
【0009】
本発明において、検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、前記トルクセンサの出力信号から高周波成分を除去するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタを通過する前記トルクセンサの出力信号の位相を、アシスト勾配の減少により進ませるアシスト勾配感応位相進み補償手段と、前記ステアリングホイールまたは前記モータの回転角速度に対応する回転角速度対応値を求める手段と、前記回転角速度対応値と、この回転角速度対応値に逆相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、前記モータの出力を、求めた回転角速度対応値に対応するモータ出力補正値に応じて補正する手段とが設けられるのが好ましい。
これにより、車輪を介して接地面から操舵系に入力される外乱トルクの周波数と、その外乱トルクに対する操舵トルクの振幅比とにより表される周波数応答特性において、前記モータの出力の補正によりその振幅比が共振周波数で小さくなるように前記回転角速度対応値と前記モータ出力補正値との間の対応関係が設定できる。よって、操舵補助力発生用モータの出力がステアリングホイールまたはモータの回転角速度に逆相関する値に応じて補正され、外乱トルクに対する操舵トルクの振幅比が共振周波数で小さくなるので、操舵に対する外乱の影響を低減することができる。
しかも、アシスト勾配が小さい範囲においては、基本アシストトルクに対応する検出操舵トルクをトルクセンサへのトルク入力に対して大きくし、モータの出力の補正量を増加させ、外乱トルクに対する操舵トルクの振幅比をフィルタゲインが大きくなっている周波数域で小さくし、操舵に対する外乱の影響をより低減することができる。
【0010】
本発明において、検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、前記トルクセンサの出力信号から高周波成分を除去するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタを通過する前記トルクセンサの出力信号の位相を、前記アシスト勾配の増加により遅らせるアシスト勾配感応位相遅れ補償手段と、前記ステアリングホイールまたは前記モータの回転角速度に対応する回転角速度対応値を求める手段と、前記回転角速度対応値と、この回転角速度対応値に逆相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、前記モータの出力を、求めた回転角速度対応値に対応するモータ出力補正値に応じて補正する手段とが設けられているのが好ましい。
これにより、車輪を介して接地面から操舵系に入力される外乱トルクの周波数と、その外乱トルクに対する操舵トルクの振幅比とにより表される周波数応答特性において、前記モータの出力の補正によりその振幅比が共振周波数で小さくなるように前記回転角速度対応値と前記モータ出力補正値との間の対応関係が設定できる。よって、操舵補助力発生用モータの出力がステアリングホイールまたはモータの回転角速度に逆相関する値に応じて補正され、外乱トルクに対する操舵トルクの振幅比が共振周波数で小さくなるので、操舵に対する外乱の影響を低減することができる。
しかも、アシスト勾配が大きい範囲においては、不安定周波数域で擬似的にアシスト勾配をおとすことができるため制御系の安定性が向上し、アシスト勾配の上限を大きくして操舵補助特性を向上することができる。
【0011】
本発明において、操舵トルクの変化に応じて変化するアシスト勾配に上限値が設定され、そのアシスト勾配の設定上限値が車速の変化に応じて変化するように、操舵トルクと基本アシストトルクとの対応関係が設定され、車速を検出する手段と、検出車速におけるアシスト勾配の設定上限値を求める手段と、前記トルクセンサの出力信号から高周波成分を除去するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタを通過する前記トルクセンサの出力信号の位相の進み遅れ補償を、進み終了周波数と遅れ開始周波数が検出車速におけるアシスト勾配の設定上限値に応じて変化するように行うアシスト勾配感応位相補償手段とが設けられ、前記進み遅れ補償は、車速が増加すると位相の進み終了周波数が小さくなると共に遅れ開始周波数が大きくなるように行われるのが好ましい。
これにより、車速が増加してアシスト勾配が減少する程に、トルクセンサの入力に対する出力のオープンループ特性における位相余裕が増加し、制御系の安定性が向上する。また、車速が増加するとアシスト勾配の設定上限値が減少し、基本アシストトルクに対応する検出操舵トルクがトルクセンサへのトルク入力に対して大きくなるので、操舵に対する応答性を向上することができる。すなわち、制御系の安定性と操舵に対する応答性を両立させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動パワーステアリング装置によれば、操舵補助力発生用モータの制御における安定性の向上、操舵に対する応答性の向上、および操舵に対する外乱の影響の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示す第1実施形態の車両用電動パワーステアリング装置1は、操舵によるステアリングホイール2の回転を舵角が変化するように車輪3に伝達する機構を備える。本実施形態では、ステアリングホイール2の回転がステアリングシャフト4を介してピニオン5に伝達されることで、ピニオン5に噛み合うラック6が移動し、そのラック6の動きがタイロッド7やナックルアーム8を介して車輪3に伝達されることで舵角が変化する。
【0014】
ステアリングホイール2の回転を車輪3に伝達する経路に作用する操舵補助力を発生するモータ10が設けられている。本実施形態では、モータ10の出力シャフトの回転を減速ギヤ機構11を介してステアリングシャフト4に伝達することで操舵補助力を付与する。
【0015】
モータ10は駆動回路21を介してコンピュータにより構成される制御装置20に接続される。制御装置20に、ステアリングホイール2の操舵トルクTを検出するトルクセンサ22、ステアリングホイール2の回転角度に対応する操舵角度θh を検出する舵角センサ23、車速Vを検出する車速センサ24、モータ10の駆動電流iを検出する電流センサ26が接続される。なお、本実施形態のステアリングシャフト4は、ステアリングホイール2側とピニオン5側とに分割されると共にトーションバー29により連結され、操舵角度θh とピニオン5の回転角度θp の差であるトーションバー29の捩れ角(θh −θp )に、トーションバー29のバネ定数Ksを乗じて得られた操舵トルクTがトルクセンサ22により検出される。
【0016】
制御装置20は、検出操舵トルクTに対応する基本アシストトルクに応じた操舵補助力を発生するようにモータ10を制御し、また、その操舵補助力を検出車速Vに応じて変化させ、ステアリングホイール2の回転角加速度に応じてモータ10の出力を補正する。
【0017】
図2、図3は制御装置20によるモータ10の制御ブロック線図を示す。
図2に示すように、トルクセンサ22の出力信号はローパスフィルタ61を介して演算部41に入力され、基本アシスト電流ioを定めるために用いられる。演算部41において、操舵トルクTと基本アシスト電流ioとの対応関係が例えばテーブルや演算式として記憶され、検出操舵トルクTに対応する基本アシスト電流ioが演算される。ローパスフィルタ61によりトルクセンサ22の出力信号から不要な高周波成分が除去される。操舵トルクTと基本アシスト電流ioとの対応関係は、例えば演算部41に示すように、操舵トルクTの大きさが大きくなる程に基本アシスト電流ioの大きさが大きくなるものとされる。操舵トルクTと基本アシスト電流ioの正負の符号は、右操舵時と左操舵時とで逆とされる。
【0018】
演算部42において、車速Vと基本車速ゲインGvとの対応関係が例えばテーブルや演算式として記憶され、求めた車速Vに対応する基本車速ゲインGvが演算される。車速Vと基本車速ゲインGvとの対応関係は、例えば演算部42に示すように、車速Vが小さい時は大きい時よりも基本車速ゲインGvが大きくなるものとされる。
【0019】
基本アシスト電流ioと基本車速ゲインGvの積が基本アシストトルクに対応する。例えば図4に示すように、車速Vが一定であれば、操舵トルクTの大きさが大きくなる程に、基本アシストトルクToの大きさが設定上限値まで大きくなり、且つ、操舵トルクTに対する基本アシストトルクToの変化率であるアシスト勾配R(=dTo/dT)が設定上限値Roまで大きくなるものとされている。また、基本アシストトルクToは車速Vに応じて変化し、操舵トルクTが一定であれば車速Vが減少する程に基本アシストトルクToが大きくなり、アシスト勾配Rが大きくなるものとされている。すなわち、アシスト勾配Rが操舵トルクTの変化に応じて変化し、そのアシスト勾配Rに上限値Roが設定され、このアシスト勾配Rの設定上限値が車速Vの変化に応じて変化するように、操舵トルクTと基本アシストトルクToとの対応関係が設定され、その設定された対応関係が制御装置20に記憶されている。本実施形態では、操舵トルクTの大きさが設定値T1以上では、アシスト勾配Rは設定上限値Roとなり、その設定上限値Roは車速Vが減少する程に大きくなる。上記のように操舵トルクTと基本アシスト電流ioとの対応関係と、車速Vと基本車速ゲインGvとの対応関係とが記憶されることで、操舵トルクTと基本アシストトルクToとの対応関係が記憶されることになる。制御装置20は、検出操舵トルクTと検出車速Vに対応するアシスト勾配Rを求める。
【0020】
図3に示すように、演算部31において、舵角センサ23により求めた操舵角度θh の二階微分により回転角加速度d2 θh /dt2 が回転角加速度対応値として求められる。回転角加速度d2 θh /dt2 とモータ出力補正値である補正基準電流iaとの間の設定された対応関係が、例えばテーブルや演算式として制御装置20に記憶される。回転角加速度d2 θh /dt2 に補正基準電流iaが正相関するものとされ、例えば演算部31に示すように設定される。すなわち、回転角加速度対応値と、この回転角加速度対応値に正相関するモータ出力補正値との間の対応関係が記憶され、求めた回転角加速度d2 θh /dt2 に対応する補正基準電流iaが記憶された対応関係に基づき演算部31において演算される。回転角加速度d2 θh /dt2 と補正基準電流iaの正負の符号は、右操舵時と左操舵時とで逆とされる。
【0021】
演算部32において、アシスト勾配Rとアシスト勾配ゲインGaaとの間の設定された対応関係が例えばテーブルや演算式として記憶され、求めたアシスト勾配Rに対応するアシスト勾配ゲインGaaが演算される。アシスト勾配ゲインGaaはアシスト勾配Rに逆相関し、例えば演算部32に示すように、アシスト勾配Rが大きくなる程にアシスト勾配ゲインGaaが小さくなるものとされる。
【0022】
演算部33において、車速Vと補正用車速ゲインGvaとの間の設定された対応関係が例えばテーブルや演算式として記憶され、求めた車速Vに対応する補正用車速ゲインGvaが演算される。車速Vと補正用車速ゲインGvaとの対応関係は、図示例では車速Vが大きい時は小さい時よりも補正用車速ゲインGvaが大きくなるものとされるが、特に限定されない。
【0023】
図3に示すように、乗算部34、35において補正基準電流iaにアシスト勾配ゲインGaaと補正用車速ゲインGvaを乗じることで補正電流i1が求められる。補正電流i1と基本アシスト電流ioの和が加算部43において演算され、その和に基本車速ゲインGvを乗算部44において乗じることでモータ10の目標駆動電流i* が求められる。目標駆動電流i* と求めた駆動電流iとの偏差を低減するようにモータ10をフィードバック制御することで、ピニオン5の回転角度θp を変化させ、操舵補助力を付与する。すなわち制御装置20は、求めたアシスト勾配Rに対応するアシスト勾配ゲインGaaと、求めた回転角加速度d2 θh /dt2 に対応する補正基準電流iaとの積である補正電流i1に応じて、モータ10の出力を補正する。これにより、モータ10の出力の補正量はアシスト勾配Rの変化に応じて変更される。
【0024】
図5のフローチャートは制御装置20によるモータ10の制御手順を示す。まず、各センサによる検出値V、θh 、T、iを読み込み(ステップS1)、次に、時系列に求めた操舵角度θh を2階時間微分することで回転角加速度d2 θh /dt2 を求め、また、検出操舵トルクTと検出車速Vに対応するアシスト勾配Rを求める(ステップS2)。なお、制御開始当初においては回転角加速度d2 θh /dt2 とアシスト勾配Rとして予め定めた初期値を用いればよい。次に、求めた回転角加速度d2 θh /dt2 に対応する補正基準電流iaに、求めたアシスト勾配Rに対応するアシスト勾配ゲインGaaと、検出車速Vに対応する補正用車速ゲインGvaを乗じることで、補正電流i1=Gaa・Gva・iaを求め(ステップS3)、目標駆動電流i* =Gv・(io+i1)を求め(ステップS4)、その目標駆動電流i* と検出駆動電流iとの偏差を低減するようにモータ10をフィードバック制御する(ステップS5)。しかる後に制御を終了するか否かを例えばイグニッションスイッチがオンかオフかにより判断し(ステップS6)、制御を終了しない場合はステップS1に戻る。
【0025】
第1実施形態によれば、図6に示す周波数応答特性を表すボード線図が得られる。図6は、横軸がステアリングホイール2の単位時間当たりの往復操作数に対応する操舵周波数(Hz)、縦軸がステアリングホイール2の操舵角度θh に対する操舵トルクTの振幅比(dB)を表す。図6に示されるような操舵周波数と、操舵角度θh に対する操舵トルクTの振幅比とにより表される周波数応答特性において、少なくとも人間がステアリングホイールを操舵する際の操舵周波数範囲(例えば2Hz以下の範囲)で、モータ10の出力の補正により、その振幅比が同一周波数に対しては小さくなるように回転角加速度d2 θh /dt2 と補正基準電流iaとの間の対応関係が設定されている。
【0026】
例えば、モータ10による操舵系への投入トルクTiを、基本アシストトルクToと、補正トルクTaとの和として、以下の式により求めるものとする。
Ti=To+Ta…(1)
To=Ka・Ks(θh −θp )…(2)
Ta=Kw・d2 θh /dt2 …(3)
Kaは基本アシスト制御ゲイン、Kwは操舵角速度微分(操舵角2階微分)制御ゲインである。
図6に示す周波数応答特性において、周波数ω1 と減衰比ζ1 は以下の式により求められる。
ω1 ={K/(Jp−Kw)}1/2 …(4)
ζ1 =Cp/[2・{(Jp−Kw)・α1/α2}1/2 ]…(5)
α1は周波数が零の時の操舵の重さのパラメータであり、α2は周波数が零の時の外乱の伝達割合であり、以下の式により表される。
α1=Ks・K/{Ks・(1+Ka)+K}
α2=1/{(1+Ka)+K/Ks}
Kは車両軸力の弾性係数、Jpは操舵系におけるピニオン軸換算の慣性、Cpはトーションバー29よりも下方の操舵系におけるピニオン軸換算粘性係数である。
【0027】
図6において、モータ10の出力を補正する前の状態を実線で示し、補正した後の状態を破線で示す。補正電流i1はステアリングホイール2の回転角加速度d2 θh /dt2 に正相関し、その回転角加速度d2 θh /dt2 のゲインはKwであるから、モータ出力を補正すると上記式(3)より周波数ω1 が大きくなる。すなわち、図6における補正前の実線に対し補正後の破線は周波数ω1 が大きくなる方向にシフトする。これにより、人間がステアリングホイール2を操舵する際の操舵周波数範囲で、その補正によりステアリングホイール2の操舵角に対する操舵トルクの振幅比が同一周波数に対しては小さくなることから(例えば図6において周波数2Hzでの振幅比は補正により小さくなっている)迅速に操舵補助がなされ、操舵に対する応答性が向上される。
【0028】
しかも第1実施形態によれば、アシスト勾配Rの変化に応じてモータ10の出力の補正量を変更することで制御特性の適正化を図ることができる。すなわち、基本アシスト電流ioはアシスト勾配Rに逆相関する補正電流i1だけ補正されるので、そのモータ10の出力の補正量はアシスト勾配Rに逆相関する。これにより、アシスト勾配Rの増加による制御系の安定性の低下を、モータ10の制御量を少なくすることで抑制し、振動発生を防止できる。
【0029】
図7、図8は第2実施形態を示す。以下、第1実施形態と同様部分は同一符号で示すと共に相違点を説明する。第1実施形態との相違は、ステアリングホイール2の回転角加速度d2 θh /dt2 に代えてモータ10の回転角加速度d2 θm /dt2 に応じてモータ10の出力が補正される。そのため、舵角センサ23に代えて、モータ10の回転角度θm を検出する角度センサ27が制御装置20に接続され、演算部31において角度センサ27により検出した回転角度θm の二階微分により回転角加速度d2 θm /dt2 が回転角加速度対応値として求められ、回転角加速度d2 θm /dt2 と補正基準電流iaとの間の設定された対応関係が記憶される。回転角加速度d2 θm /dt2 と補正基準電流iaとの対応関係は、回転角加速度d2 θm /dt2 に補正基準電流iaが正相関するものとされ、求めた回転角加速度d2 θm /dt2 に対応する補正基準電流iaが記憶された対応関係に基づき演算部31において演算される。
他の構成は第1実施形態と同様とされ、補正基準電流iaにアシスト勾配ゲインGaaと補正用車速ゲインGvaを乗じることで補正電流i1が求められ、補正電流i1と基本アシスト電流ioの和に基本車速ゲインGvを乗じることでモータ10の目標駆動電流i* が求められることで、モータ10の出力の補正量がアシスト勾配Rの変化に応じて変更される。これにより、第2実施形態の電動パワーステアリング装置は第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。例えば、上記式(3)において操作角θhを回転角度θm に置換し、式(3)、(4)、(5)において操舵角速度微分制御ゲインKwをモータ回転角速度微分(モータ回転角2階微分)制御ゲインKmに置換することで、第1実施形態において図6で表されるのと同様の特性が得られ、操舵に対する応答性を向上することができる。
【0030】
図9、図10は第3実施形態を示す。以下、第2実施形態と同様部分は同一符号で示すと共に相違点を説明する。第2実施形態との相違は、回転角加速度d2 θm /dt2 と補正基準電流iaとの対応関係が、回転角加速度d2 θm /dt2 に補正基準電流iaが逆相関するものとされている点にある。
他の構成は第2実施形態と同様とされ、補正基準電流iaにアシスト勾配ゲインGaaと補正用車速ゲインGvaを乗じることで補正電流i1が求められ、補正電流i1と基本アシスト電流ioの和に基本車速ゲインGvを乗じることでモータ10の目標駆動電流i* が求められることで、モータ10の出力の補正量がアシスト勾配Rの変化に応じ変更される。
【0031】
第3実施形態の電動パワーステアリング装置は第2実施形態と異なる作用効果を奏することができ、図10に示す周波数応答特性を表すボード線図が得られる。図10は、横軸が車輪3を介して接地面から操舵系に入力される外乱トルクの入力周波数(Hz)、縦軸が外乱トルクに対する操舵トルクTの振幅比(dB)を表す。モータ10の出力の補正により、図10に示されるような外乱トルクの周波数と、外乱トルクに対する操舵トルクTの振幅比とにより表される周波数応答特性において、その振幅比がピーク値になる共振周波数が小さくなるように、回転角加速度d2 θm /dt2 と補正基準電流iaとの間の対応関係が設定されている。
【0032】
例えば、モータ10による操舵系への投入トルクTiを以下の式により求めるものとする。
Ti=To+Ta…(1)
To=Ka・Ks(θh −θp )…(2)
Tb=Km・d2 θm /dt2 …(6)
Kmはモータ回転角速度微分(モータ回転角2階微分)制御ゲインである。
図10に示される周波数応答特性において、周波数ω2 、減衰比ζ2 は以下の式により求められる。
ω2 =[{Ks・(1+Ka)+K}/(Jp−Km)]1/2 …(7)
ζ2 =Cp/[2・{(Jp−Km)・Ks/α2}1/2 ]…(8)
【0033】
図10において、モータ10の出力を補正する前の状態を実線で示し、補正した後の状態を破線で示す。補正電流i1はモータ10の回転角加速度d2 θm /dt2 に逆相関し、その回転角加速度d2 θm /dt2 のゲインはKmであるから、モータ10の出力を補正すると上記式(7)より周波数ω2 が小さくなる。すなわち、図10における補正前の実線に対し補正後の破線は周波数ω2 が小さくなる方向にシフトする(例えば図10において振幅比のピーク点Pの周波数は補正により小さくなっている)。これにより、モータ出力を補正することで、外乱トルクに対する操舵トルクTの振幅比がピーク値になる操舵系の共振周波数が小さくなる。よって、その共振周波数に対応する外乱トルクの入力周波数が小さくなることから、外乱として影響を与える外乱の周波数範囲が狭まることになり、操舵に対する外乱の影響を抑制できる。
【0034】
しかも第3実施形態によれば、アシスト勾配Rの変化に応じてモータ10の出力の補正量を変更することで制御特性の適正化を図ることができる。すなわち、基本アシスト電流ioはアシスト勾配Rに逆相関する補正電流i1だけ補正されるので、モータ10の出力の補正量はアシスト勾配Rに逆相関することになる。これにより、アシスト勾配Rの増加による制御系の安定性の低下を、モータ10の制御量を少なくすることで抑制し、振動発生を防止できる。
【0035】
図11、図12は第4実施形態を示す。以下、第3実施形態と同様部分は同一符号で示すと共に相違点を説明する。第3実施形態との相違は、モータ10の回転角加速度に代えて操舵トルクTの変化加速度d2 T/dt2 に応じてモータ10の出力が補正される。そのため、角度センサ27は不要とされ、演算部31においてトルクセンサ22により検出した操舵トルクTの二階微分により変化加速度d2 T/dt2 が回転角加速度対応値に代わり変化加速度対応値として求められ、変化加速度d2 T/dt2 と補正基準電流iaとの間の設定された対応関係が記憶される。変化加速度d2 T/dt2 と補正基準電流iaとの対応関係は、変化加速度d2 T/dt2 に補正基準電流iaが正相関するものとされ、求めた変化加速度d2 T/dt2 に対応する補正基準電流iaが記憶された対応関係に基づき演算部31において演算される。
他の構成は第3実施形態と同様とされ、補正基準電流iaにアシスト勾配ゲインGaaと補正用車速ゲインGvaを乗じることで補正電流i1が求められ、補正電流i1と基本アシスト電流ioの和に基本車速ゲインGvを乗じることでモータ10の目標駆動電流i* が求められることで、モータ10の出力の補正量がアシスト勾配Rの変化に応じ変更される。
【0036】
第4実施形態によれば、第3実施形態において図10で表されるのと同様の特性が得られる。
例えば、モータ10による操舵系への投入トルクTiを以下の式により求めるものとする。
Ti=To+Ta…(1)
To=Ka・Ks(θh −θp )…(2)
Tb=Kdd・d2 Ks(θh −θp )/dt…(9)
Kddはトルク2階微分制御ゲインである。
図10で表されるのと同様の周波数応答特性において、周波数ω2 、減衰比ζ2 は以下の式により求められる。
ω2 =[{Ks・(1+Ka)+K}/(Jp+Kdd)]1/2 …(10)
ζ2 =Cp/[2・{(Jp+Ks・Kdd)・Ks/α2}1/2 ]…(11)
【0037】
補正基準電流iaは操舵トルクTの変化加速度d2 T/dt2 に正相関し、その変化加速度d2 T/dt2 のゲインはKddであるから、モータ出力を補正すると上記式(10)より周波数ω2 が小さくなる。すなわち、第3実施形態と同様に、図10における補正前の実線に対し補正後の破線は周波数ω2 が小さくなる方向にシフトする。しかも、基本アシスト電流ioはアシスト勾配Rに逆相関する補正電流i1だけ補正されるので、モータ10の出力の補正量はアシスト勾配Rに逆相関する。これにより、アシスト勾配Rの増加による制御系の安定性の低下を、モータ10の制御量を少なくすることで抑制し、振動発生を防止できる。
【0038】
図13、図14は第5実施形態を示す。以下、第4実施形態と同様部分は同一符号で示すと共に相違点を説明する。第4実施形態との相違は、操舵トルクTの変化加速度d2 T/dt2 に代えて操舵トルクTの変化速度dT/dtに応じてモータ10の出力が補正される。そのため、演算部31においてトルクセンサ22により検出した操舵トルクTの微分により変化速度dT/dtが変化加速度対応値に代わる変化速度対応値として求められ、変化速度dT/dtと補正基準電流iaとの間の設定された対応関係が記憶される。変化速度dT/dtと補正基準電流iaとの対応関係は、変化速度dT/dtに補正基準電流iaが正相関するものとされ、求めた変化速度dT/dtに対応する補正基準電流iaが記憶された対応関係に基づき演算部31において演算される。
【0039】
第5実施形態におけるアシスト勾配Rとアシスト勾配ゲインGaaとの間の対応関係は第4実施形態と相違し、演算部32において、アシスト勾配Rとアシスト勾配ゲインGaaとの間の設定された対応関係が例えばテーブルや演算式として記憶され、求めたアシスト勾配Rに対応するアシスト勾配ゲインGaaが演算される。アシスト勾配ゲインGaaは、アシスト勾配Rが設定値以下である時に零よりも大きくされている。そのアシスト勾配Rの設定値は、アシスト勾配の小さい範囲において操舵に対する外乱の影響を低減できるように適宜設定すればよい。アシスト勾配ゲインGaaはアシスト勾配Rに図中実線で示すように正相関してもよいし図中破線で示すように逆相関してもよい。
【0040】
演算部33における車速Vと補正用車速ゲインGvaとの対応関係は、第5実施形態では車速Vが変化しても補正用車速ゲインGvaが一定とされるが特に限定されない。
【0041】
第5実施形態における他の構成は第4実施形態と同様とされ、補正基準電流iaにアシスト勾配ゲインGaaと補正用車速ゲインGvaを乗じることで補正電流i1が求められ、補正電流i1と基本アシスト電流ioの和に基本車速ゲインGvを乗じることでモータ10の目標駆動電流i* が求められることで、モータ10の出力の補正量がアシスト勾配Rの変化に応じ変更される。
【0042】
第5実施形態の電動パワーステアリング装置は第2実施形態と異なる作用効果を奏することができ、図14に示す周波数応答特性を表すボード線図が得られる。図14は、横軸が車輪3を介して接地面から操舵系に入力される外乱トルクの入力周波数(Hz)、縦軸が外乱トルクに対する操舵トルクTの振幅比(dB)を表す。モータ10の出力の補正により、図14に示されるような外乱トルクの周波数と、外乱トルクに対する操舵トルクTの振幅比とにより表される周波数応答特性において、その振幅比がモータ10の出力の補正により共振周波数で小さくなるように、変化速度dT/dtと補正基準電流iaとの間の対応関係が設定されている。
【0043】
例えば、モータ10による操舵系への投入トルクTiを以下の式により求めるものとする。
Ti=To+Ta…(1)
To=Ka・Ks(θh −θp )…(2)
Tb=Kd・d{Ks(θh −θp )}/dt…(12)
Kdはトルク微分制御ゲインである。
図14に示す周波数応答特性において、周波数ω2 、減衰比ζ2 は以下の式により求められる。
ω2 =[{Ks・(1+Ka)+K}/Jp]1/2 …(13)
ζ2 =(Cp+Ks・Kd)/{2・(Jp・Ks/α2)1/2 }…(14)
【0044】
図14において、モータ10の出力を補正する前の状態を実線で示し、補正した後の状態を破線で示す。補正基準電流iaは操舵トルクTの変化速度dT/dtに正相関し、その変化速度dT/dtのゲインはKdであるから、モータ出力を補正すると上記式(14)より減衰比ζ2 が大きくなる。すなわち、図14における補正前の実線に対し補正後の破線は共振周波数で振幅比のピーク値が小さくなる方向にシフトする(図14において振幅比のピーク点Pの振幅比は補正により小さくなっている)。よって、操舵に対する外乱の影響を抑制できる。
【0045】
しかも第5実施形態によれば、アシスト勾配Rの変化に応じてモータ10の出力の補正量を変更することで制御特性の適正化を図ることができる。すなわち、モータ10の出力の補正量はアシスト勾配ゲインGaaに応じて変化し、そのアシスト勾配ゲインGaaはアシスト勾配Rが設定値以下である時は零よりも大きくされている。これにより、直進走行状態や舵角が小さい状態であるために外乱の影響を受けやすいアシスト勾配Rの小さい範囲において、モータ出力の補正量を確保し、外乱トルクに対する操舵トルクの振幅比が共振周波数で小さくなるようにモータ10を制御し、操舵に対する外乱の影響を確実に低減することができる。
【0046】
図15〜図18は第6実施形態を示す。以下、第1施形態と同様部分は同一符号で示すと共に相違点を説明する。第1実施形態との相違は、ステアリングホイール2の回転角加速度d2 θh /dt2 に代えてモータ10の回転角速度dθm /dtに応じてモータ10の出力が補正される。そのため、舵角センサ23に代えて、図15に示すようにモータ10の回転角度θm を検出する角度センサ27が制御装置20に接続され、図17に示すように演算部31において角度センサ27により検出した回転角度θm の微分により回転角速度dθm /dtが回転角加速度対応値に代わる回転角速度対応値として求められ、回転角速度dθm /dtと補正基準電流iaとの間の設定された対応関係が記憶される。回転角速度dθm /dtと補正基準電流iaとの対応関係は、回転角速度dθm /dtに補正基準電流iaが逆相関するものとされ、求めた回転角速度dθm /dtに対応する補正基準電流iaが記憶された対応関係に基づき演算部31において演算される。
【0047】
演算部32において、アシスト勾配Rとアシスト勾配ゲインGaaとの間の設定された対応関係に代えて、操舵トルクTの大きさとトルクゲインGteとの間の設定された対応関係が例えばテーブルや演算式として記憶され、求めた操舵トルクTに対応するトルクゲインGteが演算される。
演算部33における車速Vと補正用車速ゲインGvaとの対応関係は、図示例では車速Vが大きい時は小さい時よりも補正用車速ゲインGvaが小さくなるものとされるが、特に限定されない。
【0048】
図16に示すように、ローパスフィルタ61はスイッチ62を介して演算部41と位相進み補償フィルタ63とに選択的に接続され、位相進み補償フィルタ63は演算部41に接続される。制御装置20の補償制御部20aは、検出操舵トルクTに対応するアシスト勾配Rを求め、求めたアシスト勾配Rに応じてスイッチ62を切り換える。このスイッチ62の切換により、ローパスフィルタ61は、アシスト勾配Rが設定値以下である時は位相進み補償フィルタ63に接続され、アシスト勾配Rが設定値を超える時は演算部41に接続される。そのアシスト勾配Rの設定値は、アシスト勾配Rが小さい範囲において操舵に対する外乱の影響を十分に低減できるように設定すればよい。これにより、制御装置20とスイッチ62と位相進み補償フィルタ63により、ローパスフィルタ61を通過するトルクセンサ22の出力信号の位相を、アシスト勾配Rの減少により進ませるアシスト勾配感応位相進み補償手段が構成されている。
【0049】
制御装置20は、補正基準電流iaにトルクゲインGteと補正用車速ゲインGvaを乗じることで求めた補正電流i1と基本アシスト電流ioの和に、基本車速ゲインGvを乗じることでモータ10の目標駆動電流i* が求める。これにより、補正基準電流iaに応じてモータ10の出力が補正され、アシスト勾配Rの変化によりトルクセンサ22の出力信号の位相が変化するので、モータ10の出力の補正量はアシスト勾配Rの変化に応じて変更される。
【0050】
第6実施形態の電動パワーステアリング装置は第1実施形態と異なる以下の作用効果を奏することができる。
例えば、モータ10による操舵系への投入トルクTiを以下の式により求めるものとする。
Ti=To+Ta…(1)
To=Ka・Ks(θh −θp )…(2)
Tb=−Kdo・dθm /dt…(15)
Kdoは回転角速度dθm /dtの制御ゲインである。
外乱トルクの入力周波数(Hz)と、外乱トルクに対する操舵トルクTの振幅比とにより表される周波数応答特性において、周波数ω2 、減衰比ζ2 は以下の式により求められる。
ω2 =[{Ks・(1+Ka)+K}/Jp]1/2 …(16)
ζ2 =(Cp+Kdo)/{2・(Jp・Ks/α2)1/2 }…(17)
【0051】
補正基準電流iaはモータ10の回転角速度dθm /dtに逆相関し、その回転角速度dθm /dtのゲインはKdoであるから、モータ出力を補正すると上記式(17)より減衰比ζ2 が大きくなる。よって、第5実施形態の図14に表される周波数応答特性と同様に、補正前の実線に対し補正後の破線が共振周波数で振幅比のピーク値が小さくなる方向にシフトする特性を得ることができる。すなわち、車輪3を介して接地面から操舵系に入力される外乱トルクの周波数と、その外乱トルクに対する操舵トルクTの振幅比とにより表される周波数応答特性において、モータ10の出力の補正によりその振幅比が共振周波数で小さくなるように回転角速度dθm /dtと補正基準電流iaとの間の対応関係が設定されている。よって、操舵に対する外乱の影響を抑制できる。
【0052】
しかも、アシスト勾配Rの減少によりローパスフィルタ61を通過するトルクセンサ22の出力信号の位相が進むことで、アシスト勾配Rの変化に応じてモータ10の出力の補正量が変更される。例えば図18は、基本アシスト電流ioを定めるため演算部41に入力されるトルク信号の周波数応答特性を表し、横軸がトルクセンサ22の出力信号の周波数、縦軸がトルクセンサ22へのトルク入力に対する演算部41へのトルク入力の振幅比を示す。図18において、位相進み補償フィルタ63により信号の位相を進ませない場合の特性は実線で表され、位相を進ませる場合の特性は破線で表される。位相進み補償フィルタ63の伝達関数をGpa、ローパスフィルタ61の伝達関数をGf、トルクセンサ22への入力をSi、位相進み補償フィルタ63からの出力をSoaとした場合、Soa=Gpa・Gf・Siが成立する。ここで、t1、t2を時定数、sをラプラス演算子、Gpa=(1+t2・s)/(1+t1・s)、t2>t1とした場合、位相進み開始周波数は1/(2π・t2)となり、1/(2π・t1)で位相進みが終了する。これにより、アシスト勾配Rが小さい範囲においては、トルクセンサ22へのトルク入力に対する演算部41へのトルク入力の振幅比が大きくなるので、基本アシストトルクToに対応する検出操舵トルクTをトルクセンサ22へのトルク入力に対して大きくし、モータ10の出力の補正量を増加させ、外乱トルクに対する操舵トルクTの振幅比を共振周波数で小さくし、操舵に対する外乱の影響をより低減することができる。
【0053】
図19、図20は第7実施形態を示す。以下、第6施形態と同様部分は同一符号で示すと共に相違点を説明する。第6実施形態との相違は、図19に示すように、ローパスフィルタ61はスイッチ64を介して演算部41と位相遅れ補償フィルタ65とに選択的に接続され、位相遅れ補償フィルタ65は演算部41に接続される。制御装置20の補償制御部20aは、検出操舵トルクTに対応するアシスト勾配Rを求め、求めたアシスト勾配Rに応じてスイッチ64を切り換える。このスイッチ64の切換により、ローパスフィルタ61は、アシスト勾配Rが設定値以上である時は位相遅れ補償フィルタ65に接続され、アシスト勾配Rが設定値未満である時は演算部41に接続される。そのアシスト勾配Rの設定値は、アシスト勾配Rが大きい範囲において制御系の安定性を向上できるように設定すればよい。これにより、制御装置20とスイッチ64と位相遅れ補償フィルタ65により、ローパスフィルタ61を通過するトルクセンサ22の出力信号の位相を、アシスト勾配Rの増加により遅らせるアシスト勾配感応位相遅れ補償手段が構成されている。
【0054】
他の構成は第6実施形態と同様とされ、補正基準電流iaにトルクゲインGteと補正用車速ゲインGvaを乗じることで求めた補正電流i1と基本アシスト電流ioの和に基本車速ゲインGvを乗じることでモータ10の目標駆動電流i* が求められる。これにより、補正基準電流iaに応じてモータ10の出力が補正される。第7実施形態の電動パワーステアリング装置によれば、第6実施形態と同様に、車輪3を介して接地面から操舵系に入力される外乱トルクの周波数と、その外乱トルクに対する操舵トルクTの振幅比とにより表される周波数応答特性において、モータ10の出力の補正によりその振幅比が共振周波数で小さくなるように回転角速度dθm /dtと補正基準電流iaとの間の対応関係が設定され、操舵に対する外乱の影響を抑制できる。
【0055】
しかも、第7実施形態の電動パワーステアリング装置によれば第6実施形態と異なる作用効果を奏することができる。すなわち、アシスト勾配Rの増加によりローパスフィルタ61を通過するトルクセンサ22の出力信号の位相が遅れることで、アシスト勾配Rの変化に応じてモータ10の出力の補正量が変更される。例えば図20は、基本アシスト電流ioを定めるため演算部41に入力されるトルク信号の周波数応答特性を表し、横軸がトルクセンサ22の出力信号の周波数、縦軸がトルクセンサ22へのトルク入力に対する演算部41へのトルク入力の振幅比を示す。図20において、位相遅れ補償フィルタ65により信号の位相を遅らせない場合の特性は実線で表され、位相を遅らせる場合の特性は破線で表される。位相遅れ補償フィルタ65の伝達関数をGpd、ローパスフィルタ61の伝達関数をGf、トルクセンサ22への入力をSi、位相遅れ補償フィルタ65からの出力をSodとした場合、Sod=Gpd・Gf・Siが成立する。ここで、t1、t2を時定数、sをラプラス演算子、Gpa=(1+t2・s)/(1+t1・s)、t1>t2とした場合、位相遅れ開始周波数は1/(2π・t1)となり、1/(2π・t2)で位相遅れが終了する。これにより、アシスト勾配Rが大きい範囲においては、トルクセンサ22へのトルク入力に対する演算部41へのトルク入力の振幅比が小さくなるので、基本アシストトルクToに対応する検出操舵トルクをトルクセンサ22へのトルク入力に対して小さくし、モータ10の出力の補正量を減少させることで制御系の安定性を向上し、アシスト勾配Rの上限を大きくして操舵補助特性を向上することができる。
【0056】
第6実施形態の変形例として、あるいは、第7実施形態の変形例として、モータ10の回転角速度dθm /dtに代えてステアリングホイール2の回転角速度dθh /dtに応じてモータ10の出力を補正してもよい。この場合、図21に示すように、角度センサ27に代えて、舵角センサ23が制御装置20に接続され、図22に示すように、演算部31において舵角センサ23により検出した操舵角度θh の微分により回転角速度dθh /dtが回転角速度対応値として求められ、回転角速度dθh /dtと補正基準電流iaとの間の設定された対応関係が記憶される。回転角速度dθh /dtと補正基準電流iaとの対応関係は、回転角速度dθh /dtに補正基準電流iaが逆相関するものとされ、求めた回転角速度dθh /dtに対応する補正基準電流iaが記憶された対応関係に基づき演算部31において演算される。上記式(15)において回転角度θm を操作角θhに置換し、式(15)、(16)、(17)において、回転角速度dθm /dtの制御ゲインKdoを回転角速度dθh /dtの制御ゲインに置換することで、操舵に対する外乱の影響を抑制できる。第6実施形態の変形例の他の構成は第6実施形態と同様とされ、第6実施形態と同様の作用効果を奏することができ、また、第7実施形態の変形例の他の構成は第7実施形態と同様とされ、第7実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0057】
図23〜図27は第8実施形態を示す。以下、第1施形態と同様部分は同一符号で示すと共に相違点を説明する。第1実施形態との相違は、ステアリングホイール2の回転角加速度d2 θh /dt2 に応じたモータ10の出力補正は行われない。そのため、舵角センサ23は設けられていない。図24に示すように、ローパスフィルタ61は位相補償フィルタ71を介して演算部41に接続される。位相補償フィルタ71は、ローパスフィルタ61を通過するトルクセンサ22の出力信号の位相の進み遅れ補償を行う。制御装置20の補償制御部20aは、図4に示されるような対応関係に基づき、検出車速Vにおけるアシスト勾配Rの設定上限値Roを求め、求めたアシスト勾配Rの設定上限値Roに応じて位相補償フィルタ71による位相の進み遅れ補償における位相の進み終了周波数と遅れ開始周波数を変化させる。これにより、アシスト勾配Rの変化に応じて基本アシストトルクToに対応する検出操舵トルクTが変化し、基本アシストトルクToが変化することでモータ10の出力の補正量が変更される。
【0058】
図25は、検出操舵トルクTを定めるため演算部41に入力されるトルク信号の周波数応答特性を表し、横軸がトルクセンサ22の出力信号の周波数、縦軸がトルクセンサ22の入力に対する位相補償フィルタ71からの出力の振幅比を示す。位相補償フィルタ71の伝達関数をGp、ローパスフィルタ61の伝達関数をGf、トルクセンサ22への入力をSi、位相補償フィルタ71からの出力をSoとした場合、So=Gp・Gf・Siが成立する。ここで、t1、t2、t3を時定数、a1、a2をフィルタ定数、sをラプラス演算子、Gp={(1+a1・t1・s)・(1+a2・t2・s)}/{(1+t1・s)・(1+t2・s)・(1+t3・s)}、t1>t2、a1≦1、a2≧1とした場合、位相遅れ開始周波数は1/(2π・t1)となり、1/(2π・a1・t1)で位相遅れが終了し、位相進み開始周波数は1/(2π・a2・t2)となり、1/(2π・t2)で位相進みが終了する。フィルタ定数a1、a2はアシスト勾配Rの設定上限値Roの関数とされ、フィルタ定数a1と設定上限値Roとの対応関係、 およびフィルタ定数a2と設定上限値Roとの対応関係が制御装置20に記憶される。本実施形態では、図26に示すようにフィルタ定数a1は設定上限値Roに正相関し、図27に示すようにフィルタ定数a2は設定上限値Roに逆相関するものとされる。補償制御部20aは、検出車速Vに基づき求めた設定上限値Roに対応するフィルタ定数a1、a2の値を求め、位相補償フィルタ71のフィルタ定数a1、a2を求めた値に設定する。これにより、車速Vが大きい程に設定上限値Roが小さいことから、フィルタ定数a1が大きくフィルタ定数a2が小さくなる。よって、図25において実線で示す状態から車速Vが増加すると、破線で示すようにトルクセンサ22の出力信号の位相の進み終了周波数が小さくなり、遅れ開始周波数が大きくなることから、トルクセンサ22の入力に対する位相補償フィルタ71からの出力の振幅比が増大する。
【0059】
他の構成は第1実施形態と同様とされ、基本アシスト電流ioに基本車速ゲインGvを乗じることでモータ10の目標駆動電流i* が求められる。第8実施形態の電動パワーステアリング装置によれば、第1実施形態と異なる作用効果を奏する。すなわち、車速Vが増加してアシスト勾配Rが減少する程に、トルクセンサ22の入力に対する出力のオープンループ特性における位相余裕が増加し、制御系の安定性が向上する。また、車速Vが増加するとアシスト勾配Rの設定上限値Roが減少し、基本アシストトルクToに対応する検出操舵トルクTがトルクセンサ22へのトルク入力に対して大きくなるので、操舵に対する応答性が向上する。すなわち、制御系の安定性と操舵に対する応答性を両立させることができる。
【0060】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、ステアリングホイールの回転を舵角が変化するように車輪に伝達する機構は実施形態に限定されず、ステアリングホイールの回転をステアリングシャフトからラックピニオン以外のリンク機構を介して車輪に伝達するようなものでもよい。さらに、操舵補助力発生用モータの出力の操舵系への伝達機構は操舵補助力を付与することができれば実施形態に限定されず、例えばラックと一体のボールスクリューにねじ合わされるボールナットをモータの出力により駆動することで操舵補助力を付与してもよい。また、演算部42において基本車速ゲインGvを求めるのに代えて、演算部41において予め定めた複数の設定車速毎に操舵トルクTと基本アシスト電流ioとの対応関係を例えばテーブルとして記憶し、検出車速Vが設定車速間の値である場合は補間演算により操舵トルクTと基本アシスト電流ioとの対応関係を求めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態の電動パワーステアリング装置の構成説明図
【図2】本発明の第1実施形態の電動パワーステアリング装置の制御ブロック線図
【図3】本発明の第1実施形態の電動パワーステアリング装置における補正基準電流を求めるための制御ブロック線図
【図4】本発明の実施形態の電動パワーステアリング装置における操舵トルクと基本アシストトルクと車速との間の関係を示す図
【図5】本発明の第1実施形態の電動パワーステアリング装置における制御手順を示すフローチャート
【図6】本発明の実施形態の電動パワーステアリング装置における操舵特性を示す周波数応答特性を表すボード線図
【図7】本発明の第2実施形態の電動パワーステアリング装置の構成説明図
【図8】本発明の第2実施形態の電動パワーステアリング装置における補正基準電流を求めるための制御ブロック線図
【図9】本発明の第3実施形態の電動パワーステアリング装置における補正基準電流を求めるための制御ブロック線図
【図10】本発明の第3実施形態の電動パワーステアリング装置における外乱の影響を示す周波数応答特性を表すボード線図
【図11】本発明の第4実施形態の電動パワーステアリング装置の構成説明図
【図12】本発明の第4実施形態の電動パワーステアリング装置における補正基準電流を求めるための制御ブロック線図
【図13】本発明の第5実施形態の電動パワーステアリング装置における補正基準電流を求めるための制御ブロック線図
【図14】本発明の第5実施形態の電動パワーステアリング装置における外乱の影響を示す周波数応答特性を表すボード線図
【図15】本発明の第6実施形態の電動パワーステアリング装置の構成説明図
【図16】本発明の第6実施形態の電動パワーステアリング装置の制御ブロック線図
【図17】本発明の第6実施形態の電動パワーステアリング装置における補正基準電流を求めるための制御ブロック線図
【図18】本発明の第6実施形態の電動パワーステアリング装置における検出操舵トルクを定めるために用いられるトルク信号の周波数応答特性を示す図
【図19】本発明の第7実施形態の電動パワーステアリング装置の制御ブロック線図
【図20】本発明の第7実施形態の電動パワーステアリング装置における検出操舵トルクを定めるために用いられるトルク信号の周波数応答特性を示す図
【図21】本発明の第6、第7実施形態の変形例に係る電動パワーステアリング装置の構成説明図
【図22】本発明の第6、第7実施形態の変形例に係る電動パワーステアリング装置における補正基準電流を求めるための制御ブロック線図
【図23】本発明の第8実施形態の電動パワーステアリング装置の構成説明図
【図24】本発明の第8実施形態の電動パワーステアリング装置の制御ブロック線図
【図25】本発明の第8実施形態の電動パワーステアリング装置における検出操舵トルクを定めるために用いられるトルク信号の周波数応答特性を示す図
【図26】本発明の第8実施形態の電動パワーステアリング装置における位相補償フィルタのフィルタ定数とアシスト勾配の設定上限値との関係を表す図
【図27】本発明の第8実施形態の電動パワーステアリング装置における位相補償フィルタの別のフィルタ定数とアシスト勾配の設定上限値との関係を表す図
【符号の説明】
【0062】
1 電動パワーステアリング装置
2 ステアリングホイール
10 モータ
20 制御装置
22 トルクセンサ
23 舵角センサ
24 車速センサ
27 角度センサ
61 ローパスフィルタ
62 スイッチ
63 位相進み補償フィルタ
64 スイッチ
65 位相遅れ補償フィルタ
71 位相補償フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵補助力を発生するモータと、
ステアリングホイールの操舵トルクを検出するトルクセンサと、
操舵トルクと基本アシストトルクとの対応関係を記憶する手段と、
検出操舵トルクに対応する基本アシストトルクに応じた操舵補助力が発生するように、前記モータを制御する手段とを備える電動パワーステアリング装置において、
操舵トルクに対する基本アシストトルクの変化率であるアシスト勾配が操舵トルクの変化に応じて変化するように、操舵トルクと基本アシストトルクとの対応関係が設定され、
アシスト勾配の変化に応じて前記モータの出力の補正量が変更されることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、
前記アシスト勾配と、このアシスト勾配に逆相関するアシスト勾配ゲインとの間の対応関係を記憶する手段と、
前記ステアリングホイールまたは前記モータの回転角加速度に対応する回転角加速度対応値を求める手段と、
前記回転角加速度対応値と、この回転角加速度対応値に正相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、
前記モータの出力を、求めたアシスト勾配に対応するアシスト勾配ゲインと、求めた回転角加速度対応値に対応するモータ出力補正値との積に応じて補正する手段とが設けられている請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、
前記アシスト勾配と、このアシスト勾配に逆相関するアシスト勾配ゲインとの間の対応関係を記憶する手段と、
前記モータの回転角加速度に対応する回転角加速度対応値を求める手段と、
前記回転角加速度対応値と、この回転角加速度対応値に逆相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、
前記モータの出力を、求めたアシスト勾配に対応するアシスト勾配ゲインと、求めた回転角加速度対応値に対応するモータ出力補正値との積に応じて補正する手段とが設けられている請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、
前記アシスト勾配とアシスト勾配ゲインとの間の対応関係を記憶する手段と、
前記操舵トルクの変化加速度に対応する変化加速度対応値を求める手段と、
前記変化加速度対応値と、この変化加速度対応値に正相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、
前記モータの出力を、求めたアシスト勾配に対応するアシスト勾配ゲインと、求めた変化加速度対応値に対応するモータ出力補正値との積に応じて補正する手段とが設けられている請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、
前記アシスト勾配とアシスト勾配ゲインとの間の対応関係を記憶する手段と、
前記操舵トルクの変化速度に対応する変化速度対応値を求める手段と、
前記変化速度対応値と、この変化速度対応値に正相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、
前記モータの出力を、求めたアシスト勾配に対応するアシスト勾配ゲインと、求めた変化速度対応値に対応するモータ出力補正値との積に応じて補正する手段とが設けられ、
前記アシスト勾配ゲインは、前記アシスト勾配が設定値以下である時は零よりも大きくされている請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、
前記トルクセンサの出力信号から高周波成分を除去するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタを通過する前記トルクセンサの出力信号の位相を、アシスト勾配の減少により進ませるアシスト勾配感応位相進み補償手段と、
前記ステアリングホイールまたは前記モータの回転角速度に対応する回転角速度対応値を求める手段と、
前記回転角速度対応値と、この回転角速度対応値に逆相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、
前記モータの出力を、求めた回転角速度対応値に対応するモータ出力補正値に応じて補正する手段とが設けられている請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
検出操舵トルクに対応するアシスト勾配を求める手段と、
前記トルクセンサの出力信号から高周波成分を除去するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタを通過する前記トルクセンサの出力信号の位相を、前記アシスト勾配の増加により遅らせるアシスト勾配感応位相遅れ補償手段と、
前記ステアリングホイールまたは前記モータの回転角速度に対応する回転角速度対応値を求める手段と、
前記回転角速度対応値と、この回転角速度対応値に逆相関するモータ出力補正値との間の対応関係を記憶する手段と、
前記モータの出力を、求めた回転角速度対応値に対応するモータ出力補正値に応じて補正する手段とが設けられている請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
操舵トルクの変化に応じて変化するアシスト勾配に上限値が設定され、そのアシスト勾配の設定上限値が車速の変化に応じて変化するように、操舵トルクと基本アシストトルクとの対応関係が設定され、
車速を検出する手段と、
検出車速におけるアシスト勾配の設定上限値を求める手段と、
前記トルクセンサの出力信号から高周波成分を除去するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタを通過する前記トルクセンサの出力信号の位相の進み遅れ補償を、進み終了周波数と遅れ開始周波数が検出車速におけるアシスト勾配の設定上限値に応じて変化するように行うアシスト勾配感応位相補償手段とが設けられ、
前記進み遅れ補償は、車速が増加すると位相の進み終了周波数が小さくなると共に遅れ開始周波数が大きくなるように行われる請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2006−131191(P2006−131191A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325395(P2004−325395)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】